ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年9号
特集
Top Interview 「成長力のある荷主をパートナーに」 センコー 高橋久男 専務執行役員

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2012  24 流通系のコンペに強い理由 ──流通系のコンペに強い理由は?  「一つは経験だと思います。
当社は三〇年も前から 小売チェーンの物流で実績を積み上げてきました。
そ れが顧客の安心感に繋がっているのではないでしょ うか。
少しくらいの料金差なら当社の実績や強みを 買ってもらえることが多い」 ──安心感や実績が大切なのは理解できますが、コ ンペとなると最後はやはり価格勝負です。
料金に関 して、センコーは安いという話は聞きません。
 「確かに管理費やパートを含めた人件費は他社と横 並び、あるいは当社の方が高いこともあるかもしれ ません。
実際、『センコーは高い』と、おしかりを受 けることもあります。
それでも、それを十分に補え るだけの競争力は備えています」  「例えばWMSをはじめとする情報システムの部分 では当社にコスト競争力があります。
これまで数多 くのシステムを構築してきているので、それを多少ア レンジするだけでどんなニーズにも対応できる。
信頼 度の高いシステムを低価格で素早く提供できます」  「車両の調達力にも強みがあります。
全国で多くの トラックを回しているので、積み合わせや車両の運用 を工夫する余地が大きい。
メーカー物流で使用してい る車両を、流通業に融通するといったこともできる。
当社独自のTMSを駆使して、そうした効率化を実 現しています。
物量のボリュームから来る強みです」 ──ボリュームは3PL事業の差別化ポイントになり ますか。
中堅以下の3PLにも強い会社はあります。
 「ただし、その場合にはエリアが限定されます。
企 業規模としては中堅以下でも、そのエリアでボリュー ムを持っていれば確かに競争力を発揮できる。
しか し、その会社が他のエリアで3PL案件を立ち上げよ うとすれば、どうしてもコストが高く付いてしまう。
当社の場合は全国展開しているので、どこであって も一定以上のボリュームがある。
もちろん、なかには 実績の薄いエリアもありますが、そうした地域ほど 積極的に打って出て地盤を築こうと張り切ります」 ──昨年、総額約一〇〇億円を投じて千葉県に「野 田第1PDセンター」と「野田第2PDセンター」を 建設しました。
倉庫を賃借ではなく所有する狙いは?  「自社倉庫の強みは、やはりコストです。
最近は外 資系を中心とした不動産会社が大型の物流施設をど んどん建設していますが、やはり坪単価が高い。
自 社倉庫と比べると一割以上も差があります。
野田の センターくらい大きな案件になると、自分で建てな いとコストが合いません。
特に今は金利が安いので、 借りるよりも建てる方が有利です」 ──不動産を所有するリスクもあるはずです。
 「大きな資産をバランスシート上に載せることが経 営的に正解なのかどうかは、当然ながら常に検討し ています。
その結果として現在は、倉庫の自社保有 比率が全体だと約六割、首都圏に限れば約三割とい うバランスになっています」  「首都圏に関して言えば、都心から三〇キロ圏内が一 つのラインだと見ています。
都心から四〇キロ、五〇 キロの距離にあった物流センターは、リーマンショッ ク後の物量減少で、どんどん空いていきました。
沿岸 部や三〇キロ圏内の好立地にあった倉庫の賃料が下が り、そこへ移ってくる荷主が多かった。
逆に言えば、 三〇キロ圏内にある倉庫なら必ずニーズはある」 ──北海道や仙台など地方でも倉庫への投資を加速 しています。
地方に関しては賃借という選択肢があ ってもよさそうですが。
「成長力のある荷主をパートナーに」  チェーンストア向けの流通センター事業で先行し、 盤石の地盤を築いた。
ハンドリングの難しい日用雑貨 品でノウハウを構築し、食品や他の産業に横展開を進 めた。
荷主の成長力を見極めてパートナーを選ぶことで、 地盤沈下の進む日本市場においても持続成長は可能だ と判断している。
センコー 高橋久男 専務執行役員 Top Interview 25  SEPTEMBER 2012 特 集  「地方は首都圏に比べて土地を安く仕入れることが できます。
北海道や仙台もそうでしたが、入居する メインの荷主に長期の契約年数を保証してもらえる なら、自社で所有した方が良い」 ──流通業界は景気の煽りを受けて厳しい環境に置 かれています。
御社の物量にも影響があるのでは。
 「ところが当社の扱う流通系の物量は落ちていない んです。
それどころか設備投資に不足感を覚えるほ ど一貫して伸びている。
これは当社の顧客がいずれ も業績を伸ばしているか、少なくとも横ばいを堅持 しているためです。
成長力のある荷主を選ぶことが、 この商売の最大のマーケティングだと考えています」  「当社が一九七〇年に『物流システム部』を新設し て、今で言う3PL事業を開始してからしばらくは、 業種・業態のターゲットを絞っていました。
しかし、 市場と共に当社の3PL事業が成長し、あらゆる地 域のあらゆる業種・業態に対応できるようになった ことで、マーケティング戦略も変わってきました」 ──センコーはもともと住宅やケミカルなどメーカー 物流が主体です。
三〇年も前に川下物流に取り組む ようになった理由は?  「あるホームセンターから依頼を受け、当社が店舗 納品の実態調査に乗り出したのが発端です。
当時は 各ベンダーがばらばらに店舗に商品を納めていて、店 舗効率に悪影響を及ぼしていた。
そこで一括物流セ ンターを設けて一回で納品する形に改めた。
私自身 その仕事に関わっていたのですが、まさに物流の創 造だと感じました。
面白かった」  「その次がドラッグストアでした。
ホームセンターと 同様に日用雑貨系でハンドリングが難しいため他社は なかなかやりたがらなかった。
そこでノウハウを蓄積 して、その後はディスカウントストアやGMSの食品 物流などに手を広げていきました。
物流の主導権が メーカーから小売業にシフトしていく流れに上手く乗 ることができました」 まだまだ国内でも成長できる ──海外展開、とくに『流通ロジスティクス事業』の 海外展開が遅れています。
 「荷主から要請があれば出ていきますが、現状では 言語や宗教の違い、人件費の高騰などを考えるとリ スクが高いと判断しています。
それよりも、国内に まだまだ伸びる余地がある。
日本でのシェアを高める ことを重視しています」 ──しかし、国内市場は今後もパイの縮小が避けら れません。
 「それでもサービスの領域を広げ、シェアを拡大し ていくことはできます。
例えば当社が柱の一つにし ている住宅産業は、国内市場の規模が縮小傾向にあ りますが、当社の売り上げは伸びている。
従来のよ うにメーカーから建設現場までの物流だけでなく、資 材ベンダーからメーカーまで手を広げているためです」  「昨年八月には包装資材や食品・酒類、生活産業関 連の商社、スマイルを五〇億円で買収しました。
商社 機能と物流を一体にしたサービスを提供することがね らいです。
そうやってサービスの対象をサプライチェー ン全体に広げていけば、経済がシュリンクするなかで も持続的に成長することが十分可能だと考えています」 ──今期を最終年とする中期経営計画では売上高三 〇〇〇億円、経常利益八五億円を目標に掲げています。
 「下期に大崩れしない限り達成できる見込みです。
自律成長に加え、スマイルの買収も寄与します。
今 後は物流子会社や、当社に無い機能を持つ物流企業 のM&Aも積極的に進めていく考えです」 連結売上高の推移 350,000 300,000 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 (百万円) 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期 13 年3月期 (計画) うち3PL 事業売上高 昨年稼働した野田第1PD センター(上)と野田第 2PD センター(下)。
第1PD センターの延床面積は 79,800 ?で、センコーにとって最大の拠点

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