2012年9月号
特集

Top Interview 「倉庫業を脱して総合物流に舞台を移す」 三井倉庫 藤岡圭 社長

SEPTEMBER 2012  28 三洋電機ロジ買収で3PLを強化 ──二〇一三年三月期を最終年度とする中期経営計 画「新成長戦略@2010」を一〇年八月に発表し て以降、M&Aや海外投資など、積極的な施策が目 立っています。
 「このまま?倉庫屋?として頑張るのか、それとも ?物流屋?になるのかという議論が中期計画を策定す る上での出発点でした。
その気になれば伝統的な倉 庫会社として、資産やリソースを絞り込み、国内だ けでやっていくこともできるでしょう。
しかし、当 社はそれを選ばなかった。
後者を選び、物流事業を グローバルに展開していく方針を固めました」 ──倉庫会社、とりわけ財閥系には代々受け継いで きた優良な資産があります。
それを使った「不動産 事業」は利益率も高く非常に安定している。
それに 対して物流事業は、なかなか儲からないし、リスク も大きい。
 「確かに現状では、当社の利益の大半を不動産事業 が生み出しています。
ただし、それを今後の成長エ ンジンに位置付けるのは難しい。
これは他の倉庫会 社も同じだと思いますが、高度成長期に倉庫用地と して仕入れた不動産をオフィスや住宅に転換するとい うビジネスは既に一段落しました。
今後も不動産事 業を伸ばしていくには、純粋なデベロッパーとして相 当量の不動産を毎年購入し続けていかなくてはなら ない。
当社の手には余ります」  「その一方で当社は既に海外に四〇〇〇人近くのス タッフを抱えています。
国内は本社だけで約八〇〇 人、関連会社を入れても千数百人ですから、海外に いる人間のほうがずっと多い。
それを切り捨てて国 内の倉庫業に特化するという縮小均衡策は誰も望ん でいません。
そうではなく、仮に不動産事業がゼロ になったとしても生き残っていけるほどに、物流事 業を強化するつもりです」 ──昨年から続く一連のM&Aはその一環ですか。
 「その通りです。
例えば国際物流においては、当社 はNVOCCとしては、それなりの伝統もネットワー クも持っている。
しかし、エアは手薄だった。
そこ で昨年三月にまずJTBエアカーゴの全株式を取得 し、商号を『三井倉庫エアカーゴ』に改めました。
さ らに今年七月にはトヨタグループのTASエクスプレ スを連結子会社化し、三井倉庫エアカーゴと合併さ せ、『三井倉庫エクスプレス』として新たに発足させ ています」 ──エアの機能を揃えるだけならJTBだけでも十 分だったのでは。
 「競争力のある仕入れには、やはり一定の規模が 必要です。
JTBエアカーゴにTASエクスプレスを 加えることで、三井倉庫エクスプレスは航空フォワー ディング業界で一〇位前後のポジションを確保するこ とになります。
これが我々の求める必要最低限のラ インで、今後もさらにプレゼンスを高めていく方針で す」 ──TASの買収で、トヨタグループに切り込むルー トも開けた?  「そう簡単な話ではありません。
もちろん喉から手 が出るほど欲しい仕事ですが、あくまでも必要な機 能を整備することが、買収の目的です」 ──今年四月には約二三五億円を投じて三洋電機ロ ジスティクスの全株式を取得しました。
 「当社が配送センター型のビジネスに本格参入を果 たすことになります。
従来は倉庫にストックした荷物 を配送センターに納入するという業務がメーンでした 「倉庫業を脱して総合物流に舞台を移す」  倉庫業から総合物流業へ、本格的に舵を切った。
航空フォワーディングのJTB エアカーゴとTAS エクス プレス、3PL の三洋電機ロジスティクスと、積極的な M&Aによって必要な機能を整備した。
今期売上高は前 期比約5 割増の1580億円を見込む。
今後も事業規模 を拡大し、アジアナンバー1 の総合物流企業を目指す。
三井倉庫 藤岡圭 社長 Top Interview 29  SEPTEMBER 2012 特 集 が、買収によって配送センター内でのオペレーション や、そこから先のデリバリー業務まで一貫して手掛け る体制が整いました」 ──買収価格は周囲の予想以上に高額でした。
 「一般的な評価方法に基づく企業価値を大幅に超え るような値段ではありません。
それでも期待効果に、 各社で違いがあるのは確かです。
当社にとっては是 非とも必要な機能なので、相当の興味をもって手に 入れました」 ──今後もM&A戦略は続く?  「否定はしません。
条件が揃えば、当社に不足し ている機能は足していきます。
既に一通りのサービ スメニューは揃っていますが、例えばエアが厚くなれ ば、今度は他の機能が相対的に薄くなるので、そこ を補う。
バランスを見ながら、グローバルで闘える事 業ポートフォリオを整えていきます」 ── 一連の買収で三井倉庫の連結売上高は今期 一五〇〇億円以上に膨れあがります。
 「世界市場で存在感を発揮するには、まだ中途半端 な規模です。
しかし、グローバルとは言っても、当社 が軸足を置くのは当面アジアパシフィックです。
それ も工業品や日用雑貨品、アパレルなど注力するインダ ストリーを絞り込む。
そこではナンバーワンになりた い」 アセット戦略も転換 ──倉庫業から物流業に転換することで、不動産を 始めとするアセット戦略はどう変わりますか。
 「3PL事業に関しては完全に荷主目線で物流を設 計します。
ライバルの施設でも躊躇なく利用させても らう。
当社のアセット使用は前提にしません。
アセッ トの縛りを設けてしまうと、どうしても顧客の最適 物流といった観点からは外れたものになってしまう」 ──そうはいっても、現実に自社の倉庫が空いてい れば、担当者は他社の倉庫を使おうとはしないはず です。
 「例えば当社は花王さんのアジア全域における国際 物流を3PLとしてお手伝いさせていただいていま すが、この案件ではアジア各国で半年もしくは一年 に一回というペースでフォワーディングのビッドをか けています。
当然、各国の三井倉庫もそのビッドに 応じますが、ビッドの結果、それまでいただいてい た仕事を失うという事態が多々起きています。
そう までしなければ、3PLとして荷主の信頼を得るこ とはできません」 ──現場から不満の声もあがりそうです。
 「当然ありました。
現在の方針を採用した当初、私 は3PL事業の責任者を務めていたのですが、『絵空 事ではないのか』と自分自身でも半信半疑でした。
そ れでも、当時の田村和男社長(現会長)が力強く後 押ししてくれた。
その後を引き継いだ私も今、同じ ように3PLの担当者を後押ししているのです。
社 長が二代に渡って言い続けることで、ようやく社内 の意識も変わり始めてきた」 ──物流事業にシフトする方針とのことですが、今 後は不動産への投資は手控える?  「先ほど言ったように不動産事業は当社の大切なファ ンデーションですから、それはそれで続けていきます。
条件の良い土地があれば仕込み、そこにニーズのある 施設を建てる。
今年二月に神戸で着工した医薬品専用 センターのように、場合によっては荷主が決まってい なくても、先行投資をすることもあります。
不動産 事業という確固たる基盤の上に、今後は成長のドライ バーとして物流事業を加速していきます」 近年の主なトピック業績推移 新中期経営計画「新成長戦略@2010」を発表 JTBエアカーゴの全株式を約47 億円で取得、 「三井倉庫エアカーゴ」に商号変更 アジア地域内で日本と同様のサービスを提供する 「FLEXPRESS]を開始 神戸流通センター内に医薬品専用施設を着工、 総投資額は約35 億円 約52 億円を投じてTASエクスプレスを子会社化、 三井倉庫エアカーゴと合併させ「三井倉庫エクスプレス」発足 上海市に「三井倉庫(中国)投資有限公司」設立 三洋電機ロジスティクスを子会社化、買収価格は約235 億円。
商号を「三井倉庫ロジスティクス」に変更 2010 年8月 2011 年3月 2011 年4月 2012 年2月 2012 年7月 2012 年3月 2012 年4月 (百万円) (百万円) 180,000 160,000 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 7,600 7,400 7,200 7,000 6,800 6,600 6,400 6,200 6,000 5,800 5,600 営業利益(右軸) 連結売上高(左軸) 2008年 3月期 2009年 3月期 2010年 3月期 2011年 3月期 2012年 3月期 2013年 3月期(計画)

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