2012年9月号
特集
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Top Interview 「世界基準のサービスを日本で提供する」 DHLサプライチェーン 河村修一 社長
SEPTEMBER 2012 30
Top Interview
世界最大手3PLのDNA
──DHLサプライチェーンは、世界最大の3PLと
して知られた英エクセルが前身です。
日本でエクセル は二〇〇四年に富士通ロジスティクスを買収して地盤 を築きました。
その翌年にエクセルはドイツポストに 買収されて、DHLブランドに看板を付け替えるわ けですが、今もエクセルの持っていたリソースがDH Lサプライチェーンの核になっていると言われていま す。
「その通りです。
私自身エクセルの出身ですし、エ クセルのDNAは今も脈々と組織に受け継がれてい ます。
そして各分野の世界最大手クラスの企業とグ ローバルにパートナーシップを結んでいることが、日 本市場においても当社の強みになっています」 ──具体的には? 「現在の当社の主要荷主は、すべてグローバルセン スを持った会社です。
基本的に契約書は英語で、ス コープ・オブ・ワーク(業務範囲)やサービスレベル も明確に定めています。
そのため契約書は日本の一 般的なものとは比較にならないくらい分厚くなりま す。
当社の荷主はそれをグローバル標準として求めて くる。
当社以外なかなか対応できないはずです」 「コスト計算もあいまいな部分がありません。
オー プンブック(原価公開方式)のような、日本の物流 業界ではあまり馴染みのない契約形態もわれわれは 喜んで受け入れる。
現場スタッフの雇用確保がキーに なる場合は、お客様への提案書に雇用施策まで織り 込み、人事担当役員にプレゼンテーションさせる」 「そうした普通の物流会社ならやらないところまで 当社は踏み込んで提案します。
それが荷主の最も知 りたいところだと分かっているからです。
荷主が3 PLに何を期待しているのか、どこが評価ポイント なのか。
われわれは海外での取引実績から把握する ことができる。
グローバル企業の荷主が日本でコンペ を開く際には、海外から担当アカウントを呼んで提案 を詰めるといったこともしています」 ──そのやり方で実際にコンペに勝っているのですか。
「日本で実績のなかったリテール、コンシューマー 分野に当社が事業領域を拡大することができたのは、 グローバルネットワークが利いているからです。
富士 通ロジを買収した段階では、当社の売り上げの大半は テクノロジー系の荷主でした。
しかし、現在はテクノ ロジー系以外の荷主向けが半分近くを占めています」 ──日系荷主向けは? 「テクノロジー系以外だと、残念ながらまだまだこ れからです。
ただし、日系の荷主でもいったん当社 に流れてきたお客様には、まず逃げられることはあ りません。
オペレーションがしっかりしているのは当 然ですが、他の日本の物流会社とはコミュニケーショ ンが違う」 「お客様とKPI(重要業績評価指標)を共有し、 継続的に数値を管理して、実績や改善項目などにつ いてマンスリー、クオータリーのレビューミーティング で定期的にフィードバックするので、お客様はすごく 安心される。
KPIの開発や運用は当社がエクセル 時代から蓄積したノウハウで、どこにも負けない自信 があります」 ──KPIはどのようなものを用いていますか。
「大きく三種類あります。
一つはお客様と合意して フォローアップしていくためのKPI。
二つ目は、わ れわれ内部でオペレーションの生産性を管理していく ためのもの。
そして三つ目が、当社と協力会社さん との間で共有するKPIです。
それらを合わせて約 「世界基準のサービスを日本で提供する」 2004年の富士通ロジスティクス買収後、外資系荷主 向け事業でリテールやコンシューマー分野に領域を拡大 してきた。
世界標準のKPI や契約方式を日本に持ち込 み、グローバル企業のニーズに対応している。
ハイテクや ファッション、治験薬などの得意分野では、物流のプラッ トフォーム化を進め、中小荷主にまでターゲットを広げる。
DHLサプライチェーン 河村修一 社長 31 SEPTEMBER 2012 特 集 三〇〇ものKPIをグローバルレベルで設定していま す。
そのうち各現場に合うものを選んで使います」 ──庫内のオペレーションにもグローバル標準がある のでしょうか。
「KPIは世界共通ですが、オペレーションに関し てはそれぞれの現場レベルで工夫することが大事で す。
各事業所で同じKPIを取らせてデータを見る と、全体の中でどの事業所の生産性が低いかが分か ります。
その場所のボトルネックをつぶしていく。
物 量が少なくても生産性を高められるようにするため の施策を一つひとつ打っていく」 「最近、日本では物流センター内の作業員の動線を 把握するのに、超音波を使い始めました。
庫内に発 信器を設置して、二週間ぐらいかけて動線を調査し ます。
作業員の動線を分析することで、ロケーショ ンやレイアウトのムダが見えてきます。
この改善を実 施した現場では庫内作業の生産性が二〇%ぐらい上 がっています」 ──改善活動はどのようなポジションにいるスタッフ が担当するのですか。
「本社に専門部隊を置いています。
ただし、本社か ら現場にスペシャリストを派遣するだけでは、人が育 たず、現地の側に自分たちでやろうという意識が生 まれません。
そこで本社側の先生役とすべての事業 所が毎月、電話会議を行って、KPIを見ながら対 応の仕方などを議論するかたちをとっています。
現 場に担当を張り付けるのではなく、やり方を教える。
時間はかかりますが、全体の底上げにつながります」 中小荷主にターゲットを拡大 ──今後の事業展開は。
「これまでは外資系や日系でも比較的大手をメーン にしてきましたが、今後は中小の荷主にも顧客層を 拡大する考えです。
このことは私の個人的意見とい うだけでなく、DHL全体でグローバルに目指してい る方向性でもあります。
そのためにターゲットを絞っ て物流の?プラットフォーム化?を進めてきます。
汎 用倉庫、一元化された在庫管理システム、そして共 同配送ネットワークの三つが備わったインフラを、産 業分野ごとに整備していく」 「サービスパーツは富士通ロジのインフラがあるし、 治験薬も当社はトップシェアを握っていて、既にプ ラットフォームに近いかたちで運営しています。
汎用 倉庫に厳密な温度管理などの機能をすべて入れ込み、 管理システムもうちの仕組みが入っていて、複数の 荷主にそれを使ってもらっている」 「当社のインフラには乗れないという場合には仕事 を断ることもあります。
そうしないと高くついてし まいますから。
それでいて当社も利益が出ないので、 お互いが不幸になってしまう。
反対に当社のプラット フォームに乗ってもらえれば、高品質のサービスを割 安で提供できる。
他ではなかなか相手にされないよ うな小規模な荷主にも対応できるので、お客様には 感謝されるし、われわれも採算が合う」 「通販分野でも先日、アパレル関連のeコマース支 援を手掛けるダイアモンドヘッド社と業務提携しまし た。
これにより商品撮影からサイト運営、在庫管理、 配送までの包括的なサービスが可能になりました」 「そして従来は倉庫の仕事を取りに行くところから ビジネス展開を考えていましたが、今後は輸送から取 りに行こうと話しています。
一般宅向けの『 to C』に は宅配便を使うとしても、『B to B』には効率化の余 地がある。
実際、治験薬などは当社独自の配送網を敷 いています。
他の分野でも展開していきます」 「東京新木場ロジスティクスセンター」の作業風景。
他の拠点と 同様、KPIを駆使して生産性向上を進めている。
「東京新木場ロジスティクスセンター」で「KAIZEN活動」に取 り組む従業員。
職場で進めた業務改善策の成果などを掲示して いる。
日本でエクセル は二〇〇四年に富士通ロジスティクスを買収して地盤 を築きました。
その翌年にエクセルはドイツポストに 買収されて、DHLブランドに看板を付け替えるわ けですが、今もエクセルの持っていたリソースがDH Lサプライチェーンの核になっていると言われていま す。
「その通りです。
私自身エクセルの出身ですし、エ クセルのDNAは今も脈々と組織に受け継がれてい ます。
そして各分野の世界最大手クラスの企業とグ ローバルにパートナーシップを結んでいることが、日 本市場においても当社の強みになっています」 ──具体的には? 「現在の当社の主要荷主は、すべてグローバルセン スを持った会社です。
基本的に契約書は英語で、ス コープ・オブ・ワーク(業務範囲)やサービスレベル も明確に定めています。
そのため契約書は日本の一 般的なものとは比較にならないくらい分厚くなりま す。
当社の荷主はそれをグローバル標準として求めて くる。
当社以外なかなか対応できないはずです」 「コスト計算もあいまいな部分がありません。
オー プンブック(原価公開方式)のような、日本の物流 業界ではあまり馴染みのない契約形態もわれわれは 喜んで受け入れる。
現場スタッフの雇用確保がキーに なる場合は、お客様への提案書に雇用施策まで織り 込み、人事担当役員にプレゼンテーションさせる」 「そうした普通の物流会社ならやらないところまで 当社は踏み込んで提案します。
それが荷主の最も知 りたいところだと分かっているからです。
荷主が3 PLに何を期待しているのか、どこが評価ポイント なのか。
われわれは海外での取引実績から把握する ことができる。
グローバル企業の荷主が日本でコンペ を開く際には、海外から担当アカウントを呼んで提案 を詰めるといったこともしています」 ──そのやり方で実際にコンペに勝っているのですか。
「日本で実績のなかったリテール、コンシューマー 分野に当社が事業領域を拡大することができたのは、 グローバルネットワークが利いているからです。
富士 通ロジを買収した段階では、当社の売り上げの大半は テクノロジー系の荷主でした。
しかし、現在はテクノ ロジー系以外の荷主向けが半分近くを占めています」 ──日系荷主向けは? 「テクノロジー系以外だと、残念ながらまだまだこ れからです。
ただし、日系の荷主でもいったん当社 に流れてきたお客様には、まず逃げられることはあ りません。
オペレーションがしっかりしているのは当 然ですが、他の日本の物流会社とはコミュニケーショ ンが違う」 「お客様とKPI(重要業績評価指標)を共有し、 継続的に数値を管理して、実績や改善項目などにつ いてマンスリー、クオータリーのレビューミーティング で定期的にフィードバックするので、お客様はすごく 安心される。
KPIの開発や運用は当社がエクセル 時代から蓄積したノウハウで、どこにも負けない自信 があります」 ──KPIはどのようなものを用いていますか。
「大きく三種類あります。
一つはお客様と合意して フォローアップしていくためのKPI。
二つ目は、わ れわれ内部でオペレーションの生産性を管理していく ためのもの。
そして三つ目が、当社と協力会社さん との間で共有するKPIです。
それらを合わせて約 「世界基準のサービスを日本で提供する」 2004年の富士通ロジスティクス買収後、外資系荷主 向け事業でリテールやコンシューマー分野に領域を拡大 してきた。
世界標準のKPI や契約方式を日本に持ち込 み、グローバル企業のニーズに対応している。
ハイテクや ファッション、治験薬などの得意分野では、物流のプラッ トフォーム化を進め、中小荷主にまでターゲットを広げる。
DHLサプライチェーン 河村修一 社長 31 SEPTEMBER 2012 特 集 三〇〇ものKPIをグローバルレベルで設定していま す。
そのうち各現場に合うものを選んで使います」 ──庫内のオペレーションにもグローバル標準がある のでしょうか。
「KPIは世界共通ですが、オペレーションに関し てはそれぞれの現場レベルで工夫することが大事で す。
各事業所で同じKPIを取らせてデータを見る と、全体の中でどの事業所の生産性が低いかが分か ります。
その場所のボトルネックをつぶしていく。
物 量が少なくても生産性を高められるようにするため の施策を一つひとつ打っていく」 「最近、日本では物流センター内の作業員の動線を 把握するのに、超音波を使い始めました。
庫内に発 信器を設置して、二週間ぐらいかけて動線を調査し ます。
作業員の動線を分析することで、ロケーショ ンやレイアウトのムダが見えてきます。
この改善を実 施した現場では庫内作業の生産性が二〇%ぐらい上 がっています」 ──改善活動はどのようなポジションにいるスタッフ が担当するのですか。
「本社に専門部隊を置いています。
ただし、本社か ら現場にスペシャリストを派遣するだけでは、人が育 たず、現地の側に自分たちでやろうという意識が生 まれません。
そこで本社側の先生役とすべての事業 所が毎月、電話会議を行って、KPIを見ながら対 応の仕方などを議論するかたちをとっています。
現 場に担当を張り付けるのではなく、やり方を教える。
時間はかかりますが、全体の底上げにつながります」 中小荷主にターゲットを拡大 ──今後の事業展開は。
「これまでは外資系や日系でも比較的大手をメーン にしてきましたが、今後は中小の荷主にも顧客層を 拡大する考えです。
このことは私の個人的意見とい うだけでなく、DHL全体でグローバルに目指してい る方向性でもあります。
そのためにターゲットを絞っ て物流の?プラットフォーム化?を進めてきます。
汎 用倉庫、一元化された在庫管理システム、そして共 同配送ネットワークの三つが備わったインフラを、産 業分野ごとに整備していく」 「サービスパーツは富士通ロジのインフラがあるし、 治験薬も当社はトップシェアを握っていて、既にプ ラットフォームに近いかたちで運営しています。
汎用 倉庫に厳密な温度管理などの機能をすべて入れ込み、 管理システムもうちの仕組みが入っていて、複数の 荷主にそれを使ってもらっている」 「当社のインフラには乗れないという場合には仕事 を断ることもあります。
そうしないと高くついてし まいますから。
それでいて当社も利益が出ないので、 お互いが不幸になってしまう。
反対に当社のプラット フォームに乗ってもらえれば、高品質のサービスを割 安で提供できる。
他ではなかなか相手にされないよ うな小規模な荷主にも対応できるので、お客様には 感謝されるし、われわれも採算が合う」 「通販分野でも先日、アパレル関連のeコマース支 援を手掛けるダイアモンドヘッド社と業務提携しまし た。
これにより商品撮影からサイト運営、在庫管理、 配送までの包括的なサービスが可能になりました」 「そして従来は倉庫の仕事を取りに行くところから ビジネス展開を考えていましたが、今後は輸送から取 りに行こうと話しています。
一般宅向けの『 to C』に は宅配便を使うとしても、『B to B』には効率化の余 地がある。
実際、治験薬などは当社独自の配送網を敷 いています。
他の分野でも展開していきます」 「東京新木場ロジスティクスセンター」の作業風景。
他の拠点と 同様、KPIを駆使して生産性向上を進めている。
「東京新木場ロジスティクスセンター」で「KAIZEN活動」に取 り組む従業員。
職場で進めた業務改善策の成果などを掲示して いる。
