2012年9月号
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第78回 日本郵船 一三年第1四半期で5四半期ぶりの経常黒字「運賃安定型事業」の成長で全体の体質改善へ

SEPTEMBER 2012  74 不定期専用船・定期船事業が改善  七月三一日発表の二〇一三年度第1四半期決 算で、日本郵船の経常損益は前年同期の一〇一 億円の赤字から四八億円の黒字に転換し、一四 九億円の改善で、5四半期ぶりに経常黒字を計 上した。
 損益改善に貢献したのは主に以下の二つだ。
? 不定期専用船事業(ドライバルク部門、自動車輸 送分門、タンカー部門、LNG部門等が含まれ る)で前年同期五四億円赤字から五六億円黒字 へ一一〇億円改善、?定期船事業で同八六億円 赤字から三三億円赤字へ五二億円改善。
 不定期専用船はVLCC(超大型油槽船)、L NG船の償却負担軽減、自動車船の回復が大き い。
自動車船については、一二年三月期に震災 やタイ洪水の影響を受けたが、一三年三月期は 米国の景気回復や新興国の経済成長が自動車輸 送需要を支えよう。
自動車船部門の利益は非開 示であるが、この第1四半期決算時点で、年度 利益会社見通しが上方修正されたと当社では推 察する。
 定期船については、コンテナ運賃の上昇が大 きい。
前年同期比では欧州向けコンテナ運賃が約 一〇%、前四半期比では約三〇%上昇した。
新 造船供給が需給悪化要因になってはいるものの、 グローバルコンテナプレイヤーの船腹供給調整が 需給マッチング・運賃上昇をもたらした。
各社が 赤字に陥る中、適正運賃収受へのインセンティブ がより強くなった結果といえる。
 現状の運賃は、船社によっては黒字計上も可 能なレベルと捉えられるが、各社とも閑散期の需 給緩和を警戒し、最適化への動きを継続してお り、コンテナ損益が再び大きく悪化するリスクは 限定的と当社では見ている。
 元々定期船事業は損益の変動が大きい。
過去五 年間の同社定期船経常損益を見ても、〇八年三月 期一一五億円黒字、〇九年三月期二五九億円赤 字、一〇年三月期五五四億円赤字、一一年三月 期三〇二億円黒字、一二年三月期四四七億円赤 字、とリーマンショックによる需要の急減、新造 船増加による需給悪化、バンカー価格上昇、シェ アトッププレイヤーによるシェア拡大戦略等、様々 な外部環境、競争環境に直面し、コンテナ事業損 益は大きく振れてきた。
ただし今後については、 運賃適正収受の動きが継続すれば、定期船事業 の損益を一定範囲内に収めながら、それ以外の 「運賃安定型事業」を伸ばすことで、全体の利益 を拡大させていくことが可能になる。
日本郵船は そのポテンシャルを持っている。
 運賃安定型事業は、主に長期契約を基本とす る資源エネルギー輸送、物流(完成車輸送を含 む)等から成り立つ。
運賃安定型損益の経常損 益レベルは一一年三月期七四五億円、一二年三 日本郵船 一三年第1四半期で5四半期ぶりの経常黒字 「運賃安定型事業」の成長で全体の体質改善へ  不定期専用船・定期船事業がとも に好転した。
さらに資源エネルギーを 中心とする長期輸送契約や物流部門な ど、「運賃安定型事業」が伸長傾向。
こ のまま順調なら定期船事業が一二年三 月期並の赤字になったとしても、経常 黒字を計上できる体質が整いつつある。
第78回 姫野良太 バークレイズ証券株式会社 株式調査部 運輸担当アナリスト 75  SEPTEMBER 2012 月期五一二億円、一三年三月期会社予想七五〇 億円、一四年三月期会社計画八〇〇億円と、着 実に増加していく見通しだ。
運賃安定型事業の経 常利益が七〇〇億円を超えてくると、今後、定 期船事業の環境が一二年三月期並に厳しくなっ たとしても、会社全体として経常黒字を計上で きると当社では見ている。
 日本郵船は資源エネルギー輸送分野において 中長期契約案件を積み上げている。
一二年以降 開始の案件は、ドライバルク輸送分野では、Rio Tinto社向け鉄鉱石専用船(一三年以降二〇年)、 BHP Billiton社向け鉄鉱石専用船(一三年以降 十二年)。
エネルギー輸送分野ではフランスの GDF Suez社向けLNG船(一二年夏から四年)、 イタリアEnte Nazionale Idrocarburi社向けシャ トルタンカー二隻(一三年以降十年)、Petrobras 社向けFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯 蔵積出設備、一三年以降二〇年)、東京電力向け LNG船(一四年以降一五年)などがある。
ド ライバルク部門における長期契約比率は邦船三社 の中でも相対的に高く、スポット市況の改善期待 が乏しい中にあって、同社の競争力になっている といえよう。
 LNG船部門に関しては、開発のプロジェクト 起案から稼働開始までに一〇年以上要すること もあるため、輸送契約も二〇〜二五年という超 長期にわたることが多く、収益の安定度も高い。
このLNG船分野において、同社は六六隻を有 する世界トッププレイヤーである。
LNG需要自 体も増加が期待できる。
天然ガスの海上荷動き は、〇〇年〜〇七年の年平均伸び率が二・七%、 〇八年〜二〇年が二・二%と安定的に見込める (国際エネルギー機関及びNYK予測)。
 また、同社は一二年六月に豪州ウィートストー ンLNGプロジェクトに共同参画すると発表。
本 プロジェクトからは年間八九〇万トンのLNGが 供給される予定。
うち、同社を含むJVの持分 は七〇万トンで、一六年末の生産開始を目指す。
海運オペレーターとしては初の資源権益取得で、 今後需要拡大の見込めるLNG分野で、バリュ ーチェーンを押さえるというアプローチは評価で きる。
 海洋事業分野でも長期契約の獲得を進めてい る。
日本郵船は同分野で最上流の探査・探鉱には じまり、掘削、生産設備建造・設置、海上での 生産・貯蔵、海上輸送、貯蔵/精製、物流、最 下流の販売まで、バリューチェーンすべてに関わ る体制を敷いている。
一一年には、掘削における ドリルシップ、海上での生産・貯蔵におけるFP SO、海上輸送におけるシャトルタンカーに各々 参入した。
世界の石油消費量は日量約八五〇〇 万バレルで、このうち九%の八〇〇万バレルが深 海油田で生産される。
これが、二〇年には十三%、 一二〇〇万バレルを超える見込み。
従来のコンテ ナやドライバルク部門と比較しても参入障壁は高 く、安定した利益が期待できよう。
物流事業は循環的な調整局面に  物流事業ではここ数年、グループ内の組織再 編を進めてきた。
一〇年一〇月に旧NYKロジ スティックスと旧郵船航空サービスを統合し、郵 船ロジスティクスを設立。
一一年四月から海外新 体制をスタートし、海外事業の統合を一二年四月 までにほぼ完了した。
 同社の物流事業を担う郵船ロジスティクスの第 1四半期営業利益は前年同期比四二%(三億円) 減の四億円であった。
航空貨物、海上貨物とも取 り扱い数量は拡大したものの、競争激化による料 金の低下、海上運賃の上昇等が影響した。
特に、 東アジア地域ではシェア拡大戦略を優先したこと もあり、営業損益が前年同期の五・四億円黒字 から二・五億円の赤字へ、約八億円悪化した。
 第2四半期以降は、統合効果が進み、減益幅 は縮小に向かうと見るが、海上運賃は引き続き 高水準である上、シェア優先戦略が直ちに修正 されるとも限らないため、増益転換へのハードル は決して低く無いと見る。
今回の第1四半期決 算発表と同時に会社側は中間期の営業利益見通 しを四五億円から二〇億円へ、通期の同見通し を九五億円から五五億円へ各々下方修正した。
 物流事業は、定期船事業等に比較すると、利 益変動率は小さく、安定利益の一部ではあるも のの、循環的な調整局面を迎えつつあると言えよ う。
同社の場合、統合効果を深化させることに よる利益率改善も期待できる他、集荷戦略、イ ールドカーブ戦略等により、損益悪化を防げる部 分もあるため、今後の戦略に注目したい。
ひめの・りょうた 二〇〇四年慶應義塾大学経済学 部卒業、同年三菱証券入社。
明治 ドレスナー・アセットマネジメント のアナリスト、三菱UFJモルガ ン・スタンレー証券の運輸セクタ ー担当シニアアナリストを経て、一 二年四月より現職。

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