ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年9号
グローバル物流市場の実像
第3回 Part3 欧米メガフォワーダーの実態

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2012  88 Part3 欧米メガフォワーダーの実態 欧米大手五社の業績と事業展開  ヨーロッパの経済危機や中国をはじめとする 新興国市場のピークアウトなど、景気の先行き は極めて不透明である。
しかし、物流市場アナ リストで、英トランスポート・インテリジェンス 社CEOのジョン・マナーズ・ベル氏によると、 アジア、北米、ヨーロッパにおけるコンテナの 取扱数量は経済のスローダウンにもかかわらず 二〇〇九年以来、伸び続けているという。
 さらに同氏は、この三つのエリアにおける二 〇一二年のコンテナ取扱量を、上半期が前年比 四・五%増、下半期は七・五%増になると予測 している。
そのうち新興国における取扱量は年 間で八%増を見込んでいる。
つまり、コンテナ 貨物の荷動きはいまだに堅調なのである。
 ただし、船社の業績は総じて振るわない。
船 腹の需給調整の失敗が大きく影響している。
そ のために二〇一一年には業界全体で約五〇億ド ルの損失を被ったと言われている。
それとは対 照的に、フォワーダーの利益率は落ちていない。
二〇一一年は収入の伸び悩みにもかかわらず平 均利益率が五%を超えた注 (1) 。
 国際輸送における今日の荷主ニーズは、単な るポート・ツウ・ポートの輸送から着地のドア までの輸送へと変化している。
しかも、グロー バル化が進み、荷主が自分にとって最も有利な 受渡し方法を追求した結果として、貿易形態の 多様化が進んでいる。
 それに対してフォワーダーはFCL( Full Container Load)とLCL(Less than Container Load)の使い分けをはじめ、荷主の固有のニー ズに対応した、きめ細かなサービスを提供して いる。
国際ビジネスの多様化がフォワーダーに 対する評価を高めている。
 以下に欧米のメガフォワーダー五社の現在の 業績を対比する。
五社とは具体的には、欧州の 伝統的フォワーダーであるキューネ+ナーゲルと パナルピナ、買収によってドイツ鉄道の一事業 部門となったDBシェンカー、ヨーロッパの老 舗ダンザスやアメリカの No. 1エアフレイトフォワ ーダーAEIなどを統合したドイツポストDH L、そしてアメリカで多くのトップフォワーダー が買収されたことで、今ではアメリカの代表的 フォワーダーとみなされるようになったエクス ペダイターズである。
 表1は各社の二〇一一年の業績である。
これ を元に各市場セグメント(フレイトフォワーディ ング、コントラクト・ロジスティクス、内陸輸 送)の状況と、各社の収益力を見ていこう。
●フレイトフォワーディング市場  フォワーダーのコアビジネスである航空と海運 のフォワーディング収入を比較すると、一位は DHLで一兆二三二八億円、二位はキューネの 一兆一一四〇億円、三位DBシェンカー七七七 六億円、四位パナルピナ五〇四六億円、五位エ クスペダイターズ四九一〇億円と続く。
 ただし、DHLのフォワーディング収入には 二一九七億円分のプロジェクト貨物(大規模プ ラント施設やインフラ設備の輸送取扱)が含ま れている。
これを除外して航空と海運のフォワ ーディングのみの収入を比較すると、二位のキ ューネと順位は逆転する。
 フォワーディング部門の収入の対前年増減率  メガフォワーダーのビジネスモデルには、各社で 大きな違いがある。
欧州と米国の地域性の違いに加 え、各社の歴史と戦略が、内陸輸送事業や3PL 事 業の位置付け、エリア別売上比率などに表れている。
大手5 社の比較から、その現状を見る。
グローバル物流市場の実像 〜新たな可能性の探求に向けて〜 平田義章 国際ロジスティクスアドバイザー 第3 回 89  SEPTEMBER 2012 は、各社でプラスとマイナスが別れている。
DH Lとエクスペダイターズはプラス。
キューネ、D Bシェンカー、パナルピナはマイナスである。
後 者の収入減少は、おしなべて海運貨物の取扱量 減少が原因である。
●コントラクト・ロジスティクス(3PL)市場  メガフォワーダーのうちエクスペダイターズを 除く四社はコントラクト・ロジスティクスの分野 に参入している。
(編集部注:欧州では3PL を、コントラクト・ロジスティクスと呼ぶ)  同分野最大手のDHLのセグメント売上高は 一兆四六九三億円に上り、二位以下を大きく 引き離している。
これには同社が二〇〇五年に、 当時この分野で世界最大手だったイギリスのエ クセルを買収したことが大きく貢献している。
 
庁硲未砲箸辰董▲灰鵐肇薀ト・ロジスティク ス部門(同社のセグメント分けでは「サプライ チェーン部門」)の収入は、フレイトフォワーデ ィングと内陸輸送を合わせた「グローバルフォ ワーディング、フレイト部門」、郵便事業の「メ ール部門」に続き三位となっている注 (2) 。
(四 位は「エクスプレス部門」)  ただし、「グローバルフォワーディング、フレ イト部門」から内陸輸送分を除いた収入と比較 すると、コントラクト・ロジスティクス事業の収 入の方が大きい。
事実上、同部門がメール部門 に次ぐ柱となっているのである。
 フォワーダーのコントラクト・ロジスティク ス収入でDHLに続く二位はキューネの三七六 〇億円で、三位はDBシェンカーの一六五二億 円、四位はパナルピナ八一七億円である。
(編 集部注:二番手以下のクラスになるとその事業 規模は日本の主要3PLと同レベルとなってい る。
またメガフォワーダーとは別に、3PLを 主業とする欧米大手も別途存在する)  売上高の前年対比はキューネだけが三・四% のマイナスだった。
他はDBシェンカーが十三・ 五%の大幅増を記録し、DHLとパナルピナは それぞれ微増である。
また米国のエクスペダイ ターズは、後にも見るようにフォワーディング 部門に集中し、付加価値倉庫サービスなどの物 理的なオペレーションをともなうコントラクト・ ロジスティクス業務は行っていない。
●内陸輸送(道路・鉄道)市場  ヨーロッパ域内の内陸輸送業務はフォワーダ ーの基幹ビジネスの一つとなっている。
順位は DBシェンカーが七〇八五億円でトップだ。
同 社は親会社ドイツ鉄道との関連もあり内陸輸送 に強い。
二位はDHLで四五四三億円、三位 がキューネで二六七六億円である。
各社とも前 年度から取り扱いを大きく伸ばしている。
伸び 率はDHLが九・五%増、 DBシェンカー八・ 七%増、キューネが六・九%増である。
 メガフォワーダーのうち、パナルピナは航空・ 海運貨物とロジスティクスをコアビジネスとして おり、報告書等には内陸輸送業務の実績の記 載はない。
同社をはじめヨーロッパの伝統的フ ォワーダーはどこも航空と海運貨物のフレイト フォワーディングをコアとし、それにコントラク ト・ロジスティクスおよび域内の内陸輸送が加 わるという事業構成になっている。
 また米国のエクスペダイターズは内陸輸送に 関与していない。
同社も含め米系フォワーダー の多くは、内陸輸送はもちろんロジスティクス 表1 メガフォワーダーの業績(2011) (単位:百万現地通貨、億円、対前年増減%) 注:換算レート:米ドル¥79.84( エクスペダイターズ)、ユーロ¥111.12(DHL、DBシェンカー)、 スイスフラン¥90.20(キューネ+ナーゲル、パナルピナ) ( )はマイナス、* プロジェクト貨物、** 通関その他。
なお、キューネ+ナーゲル、DHL、DBシェンカーの収入合計はその他項目未記載のため各項目の計に合致しない。
出所:各社財務資料より作成 航空貨物 海運貨物 その他 収入小計 コントラクト・ ロジスティクス 道路と鉄道 (内陸輸送) 収入合計 EBIT フリーキャッシュフロー 対収入EBIT 率 (前年) 人員(人) キューネ+ナーゲルDHL DB シェンカーパナルピナエクスペダイターズ Sフラン 億円 前年増減 ユーロ 億円 前年増減 ユーロ 億円 前年増減 Sフラン 億円 前年増減 USドル 億円 前年増減 4,020 8,330 − 12,350 4,168 2,967 19,596 750 74 3,626 7,514 − 11,140 3,760 2,676 17,676 677 67 (0.6%) (7.4%) − (5.3%) (3.4%) 6.9% (3.3%) (2.0%) (89.8%) 3,281 2,313 − 5,594 906 − 6,500 174 42 2,959 2,086 − 5,046 817 − 5,863 157 38 (6.3%) (16.5%) − (10.8%) 1.8% − (9.3%) 21.7% 570.9% 2,893 1,879 **1,378 6,150 − − 6,150 618 377 2,310 1,500 1,100 4,910 − − 4,910 493 301 2.5% (3.9%) 15.8% 3.1% − − 3.1% 13.0% 6.6% 5,573 3,544 *1,977 11,094 13,223 4,088 28,267 791 1,242 6,193 3,838 2,197 12,328 14,693 4,543 31,410 879 1,380 2.6% 2.8% 7.0% 3.4% 1.2% 9.5% 3.2% 28.8% (35.8%) 6,998 − 6,998 1,487 6,376 14,867 403 7,776 − 7,776 1,652 7,085 16,520 448 ( 1.9%) − (1.9%) 13.5% 8.7% 3.9% 32.6% 3.8%(3.8%) 63,110 2.8%(2.2%) 176,462 2.7%(2.1%) 62,197 2.7%(2.0%) 15,051 10.0%(9.2%) 13,000 航空+海運 n/a SEPTEMBER 2012  90 のサービスにも自らは関与しない。
フォワーダ ー、内陸輸送、3PLの区分が明確にされてい ることが米国市場の一つの特徴である。
●EBITとフリーキャッシュフロー  各社のEBIT(支払金利前税引前利益)を 比較すると絶対額では一位から、DHL八七九 億円、キューネ六七七億円、エクスペダイター ズ四九三億円、DBシェンカー四四八億円、パ ナルピナ一五七億円の順である。
 ただし、EBITを対収入比率でみると、航 空と海運貨物のフォワーディングに専念してい るエクスペダイターズが一〇・〇%と最も高い収 益性を誇っている。
二位がキューネの三・八%。
他はDHLが 二・八%。
DBシェンカー、パナ ルピナは共に二・七%である。
 このうち例えば、キューネのEBIT率の三・ 八%は、各部門の収入を合算した収入合計に対 するEBIT率である。
これを部門ごとに見る と、海運貨物は四・九%、航空貨物は五・八%、 コントラクト・ロジスティクスは一・五%である。
コントラクト・ロジスティクス部門の収益性はフ ォワーディング部門よりも大幅に劣っているこ とが分かる。
 各社のフリーキャッシュフローは、エクスペ ダイターズが三〇一億円、キューネが六七億円、 パナルピナは三八億円である。
DHLは一三八 〇憶円のフリーキャッシュフローを生み出してい るが、これは郵便事業およびエクスプレス事業 を含めた全社での金額である。
ビジネスモデルの歴史的変化  シェンカーはゴットフリート・シェンカーが一 八七二年にシェンカー&カンパニーをウイーン に創立したことを嚆矢とする。
キューネ+ナー ゲルは一八九〇年にキューネ氏とナーゲル氏の 両氏によりドイツで設立された。
スイスのパナ ルピナはライン川の水運に始まり、その発祥は 一九一八年に遡る。
この三社がヨーロッパの伝 統的フレイトフォワーダーの代表格である。
 一方、米ワシントン州のシアトルに本社を置 くエクスペダイターズは一九七九年に設立され た海運フォワーダーを前身とする。
現在のピー ター・ローズ会長はサンフランシスコの老舗フ ォワーダー兼通関業のハーパー・ロビンソン商 会から独立し、八一年にエクスペダイターズに 参加している。
ヨーロッパのフォワーダーと比 べれば歴史は浅いが、やはり米国型の伝統的フ レイトフォワーダーといえる。
 これに対して、ドイツポストDHLはそもそ も東西ドイツの郵便局を統合したドイツの国営 郵便局である。
それがEU統合の機をとらえ積 極果敢なM&Aによってグローバルな総合物流 企業への転身を図った。
 同社はフォワーディングのみならずエクスプ レスやコントラクト・ロジスティクス市場にも参 入し、それぞれのセグメントでナンバーワン企 業になることを目指した。
グローバル化に焦点 を合わせて、「規模の経済性」理論を実践する 新たなビジネスモデルを構築したといえるだろ う。
 ドイツポストの事業展開は、その後のフォワ ーダー業界の再編とグローバル化の一つのドラ イバーとなった。
それまでのフレイトフォワー ダーは、航空と海運の輸出入貨物の取り扱いに 集中し、在庫・配送業務は付帯的サービスに過 ぎなかった。
しかし、EUの統合によって環境 は大きく変化した。
国別に分断されていたロジ スティクスを統合し、効率化する巨大な荷主ニ ーズが生まれた。
これとドイツポストによるロ ジスティクス市場への本格的かつ電撃的な参入 が、伝統的なフレイトフォワーダーだったキュ ーネやシェンカーをコントラクト・ロジスティク ス分野への参入に踏み切らせたといえる。
 特にキューネは積極的なM&Aによってロジ スティクスと内陸輸送のオペレーションを素早 く手中に収めた。
その結果、同社のビジネスモ デルは伝統的フォワーダーが特徴としてきたノ ンアセットベースからアセットベースへと色彩 を変えていった。
 メガフォワーダー各社の二〇一一年末時点で の人員規模を比較すると、DHLの一七万六四 六二人が群を抜いて多い。
その内訳はグローバ ルフォワーディング・フレイトが四万二八四七 人、コントラクト・ロジスティクスが一三万三 六一五人である。
他はキューネが六万三一一〇 人、DBシェンカーが六万二一九七人となって いる。
これに対してパナルピナは一万五〇五一 人、エクスペダイターズは一万三〇〇〇人あま りで大きな差がある。
 フレイトフォワーディング事業だけであれば、 パナルピナやエクスペダイターズのように一万 数千人規模の陣容で市場をカバーするに足りる ものと考えられる。
キューネやDBシェンカー の人員がその数倍にも及んでいるのは、コント ラクト・ロジスティクスや内陸輸送部門への進 出の結果である。
91  SEPTEMBER 2012 もなうロジスティクス業務とは距離を置いてい る。
市場の中心は欧米からアジアへシフト  メガフォワーダーのグローバル化の現状を各 社の二〇一一年度の地域別売上高を元に概観 してみよう。
●キューネ+ナーゲル  ヨーロッパが六三%、アメリカが二一%、ア ジア・パシフィックが九%、中東・中央アジア・ アフリカが七%であり、圧倒的にヨーロッパの シェアが大きい(図1)。
●パナルピナ  ヨーロッパ・中東・ アフリカ・CISが四 九%、北米が一九%、 アジア・パシフィック が一九%、中・南米が 十三% のシェアであ り、やはりヨーロッパ を主体とする地域の比 率が高い(図2)。
●エクスペダイターズ  アジア・パシフィッ クが五一%、米国が 二五%、ヨーロッパ・ アフリカが一四%、中 東・インドが五%など であり、アジア・パシ フィックの比率が高い (図3)。
●ドイツポストDHL  一方、米国市場では荷主のロジスティクスの 効率化を狙う新たなビジネスモデルとして3P Lが台頭したが、そのサービスの中心は国内の 輸送と在庫管理にあり、基本的にフォワーデイ ングサービスとは分離されている。
 ペンスキーやメンローなどの米国の有力3P Lは、ヨーロッパやアジアなどの国際市場にも 進出しているが、そこでもメーンとするのはフ ォワーディングではなく3PLビジネスである。
一方、エクスペダイターズをはじめとする米国 のフォワーダーは典型的なノンアセットベース で展開しており、輸送や物理的なサービスをと  郵便事業やエクスプレスを含む全社的シェア をみると、ドイツ本国が三二%、ドイツを除く ヨーロッパが三三%、アメリカが一七%、アジ ア・パシフィックが一四%などであり、ドイツ 国内の郵便事業を独占的に取扱っていることか ら本国のシェアが比較的高い(図4)。
 各社とも出身地域の比率が高いのは当然とし て、エクスペダイターズではアジア・パシフィッ ク地域への集中的な取扱いが顕著であり、同地 域の比率が自国のシェアを超えている点が目に 付く。
 アジア地域ならびに新興国市場への積極的な 参入は、規模の大小を問わず、現在のフォワー ダー業界に共通する動きとなっている。
拠点の 新設、LCLルートの増設、特定荷主業界への 深耕など、各社がしのぎを削っている。
 フォワーダーのビジネスは、変化する荷主の ニーズにどのように対応するかにかかっている。
それが現在は急激なアジアシフトというかたち で表面化しているのである。
注 (1) J o h n M a n n e r s - B e l l C E O , T r a n s p o r t Intelligence,"Davy Global Transportation & logistics Conference", 27th June 2012, London. (2) DHLの二〇一一年の収入は郵便部門が一三九 七三百万ユーロ、エクスプレス一一七六六、グロー バルフォワーディング・フレイト一五〇四四、サプ ライチェーンが一三二二三、調整一一七七、合計五 二八二九百万ユーロ(約五兆八七〇〇億円)であ るが、本稿ではグローバルフォワーディング・フレ イトとサプライチェーン部門の収入のみを抽出した。
図1 キューネ+ナーゲルの 地域別シェア(2011) 注:総収入19,596百万スイスフラン 出所:キューネ+ナーゲル財務資料 図2 パナルピナの 地域別シェア(2011) 図3 エクスペダイターズの 地域別シェア(2011) 注:総収入6,150百万USドル 出所:エクスペダイターズ財務資料 図4 DHLの地域別シェア(2011) 注:各部門合計総収入52,829百万ユーロ 出所:Deutsche Post DHL 財務資料 63% 19% 19% アジア・パシフィック 49% 51% アジア・パシフィック 25% 14% 14% アジア・パシフィック 32% ドイツ 33% その他 4% 3% 17% 2% 中東・インド 5% 13% 21% 9% 7% ヨーロッパ アメリカ アメリカ アジア・パシフィック ヨーロッパ・中東 アフリカ・CIS 中東・中央アジア・アフリカ 中央・南アメリカ アメリカ アメリカ ドイツ以外の 欧州 ヨーロッパ アフリカ その他北米 ラテンアメリカ 注:ネットフォワーディング収入合計6,500百万 スイスフラン 出所:パナルピナ財務資料

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