ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年9号
SOLE
米国防調達システムの最新動向

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics SEPTEMBER 2012  102  
咤錬味兎本支部の調査研究会の ひとつ、ロジスティクス基盤技術分科 会では、米国防総省の調達システムと プロジェクトマネジメントをテーマとす る「DAG・PMBOK組合せ調査研 究」を展開している。
その活動成果から 今回は「DAG(Defense Acquisition Guidebook −米国防調達システムの手 引き)」のポイントとなる、いくつかの 視点を紹介する。
(SOLE日本支部会員 元ユニシス  斉藤一弥) 国防調達システムの研究  ロジスティクス技術の発展と普及を 目的に「SOLE(The International Society Of Logistics)」が設立された のは一九六六年である(日本支部の 設立は一九七八年)。
ただし、米国で ロジスティクス技術の研究開発が本格 化したのは、ベトナム戦争後の軍縮に 伴う軍事予算の削減によって、兵器 システムのライフサイクルコスト(L CC)を削減する必要性が高まって からのことだった。
 民間企業におけるロジスティクスは、 製品・商品を供給する機能、いわゆ る物流から発展し、顧客満足度向上 への要求に対処するため、サプライチ ェーンマネジメントへと進化した。
こ れに伴いロジスティクスの活動も製造 さらには調達へと広がって行った。
こ れに対して、軍隊のロジスティクスは 調達から始まると言ってよい。
 日本においては、古くは生産機能 を持っていた軍として「屯田兵」が いた。
屯田兵は明治初年から明治三 七年まで北海道に派遣され、普段は 農業労働者として開拓に従事し、戦 時には兵としてその地方を守った。
 近代の軍隊も研究プロセスの一環と して、あるいは整備のために機材など を自ら製作することはあるが、一般に は製造機能は外部(民間)に依存して いる。
近代兵器はシステム製品であり、 その調達はライフサイクル支援を前提と する。
それだけに調達システムの研究 が重要なテーマとなってくるのである。
 そもそもシステムズ・エンジニアリ ングの始まりは、米国防総省(DoD :Department of Defense)が一九六 九年に発行した規格「MIL-STD-499」 だとされている。
その後は他の世界各 国の機関が同様の規格化に動き、こ れらをまとめてISOが標準規格を 発行している。
ちなみに現在のDo Dは独自の規格を持たず、民間規格 に依存した形態をとっている。
 国際システムズ・エンジニアリン グ学会「I N C O S(International Council on Systems Engineering)」の 定義によると、「システムとは、定義 された目的を成し遂げるための、相互 に作用する要素(element)を組み合 わせたものである。
これにはハードウ ェア、ソフトウェア、ファームウェア、 人、情報、技術、設備、サービスおよ び他の支援要素を含む 」とある。
 別の言い方をすれば、「システムと は、ある境界内で、いくつかの要素 が、お互いに有機的に結び付き、そ の系の入力に従って、所定の出力を出 す機能の集まりである」。
ここでいう 「入力」とは、システムの要求事項で あり、「出力」とは、系の所定の目的 のことを指している。
この定義に基 づいてシステムズ・エンジニアリング の概要を図示したものが図1である。
 そして図2はDoDの調達システム のプロセスである。
「装備品ソリュー ション解析」、「技術開発」、「工学& 製造開発」、「生産&配備」、「運用& 支援」の計五つのフェーズから構成さ れる。
それぞれのフェーズ間に計三回 のマイルストーンレビューが設定され ている。
 現在のDoDの調達システムは、二 〇〇三年に発刊された「DoDD5000.01」 がその根拠となっている。
この指令は その後、〇八年に「DoDI5000.02」に 改訂されている。
この時の改訂点のひ とつは「スパイラル方式」の中止であ った。
 スパイラル方式とは、システム開発 における各フェーズに入るタイミングで、 その時点での新しいユーザーニーズを 盛り込むというやり方である。
それに よって当初設定された性能よりも優れ た製品を配備することを狙う。
しかし、 この方式は製品を配備するまでの時間 が長くなり、コストアップを招きやすい。
 そこで〇八年の改訂では、ユーザー ニーズの受付は、最初の「装備品ソリ ューション解析」の初期段階のみとし て、最終プロセスとなる「運用・支援」 フェーズで、それまでの追加のユーザ ーニーズをまとめて、改良・改善を加 えることになった。
この方式をDoD では「進化型プロセス」と呼んでいる が、狙いは調達コストの削減である。
 
庁錚弔猟潅システムでは、調達す べき対象物の金額規模や性格によって 調達カテゴリーを四つに分類し、カテゴ リー別に意思決定権者、評価者、レビ ューポイントを規定している。
またそれ 米国防調達システムの最新動向 103  SEPTEMBER 2012 業分解図」、「作業分割構成」 、「作業 の詳細構造」などと訳される。
 
廝贈咾粒道泙砲ける最下位の要 素を「ワークパッケージ(WP:Work Package)」と呼ぶ。
プロジェクトを 管理する最小単位を示し、その「期 間」、「成果物名」、「成果物量」、「予 算」、それぞれのレベルの「責任者」 等を記述する。
WPの値を積算する ことで、全体の成果物量や予算、期 間等を求めることができる。
 
庁錚弔裡廝贈啜格は一九六八年 に「MIL-STD-881」として初めて発刊 されたが、その後、冷戦終結後の軍事 予算を規定した、いわゆる?ペリーメ モ?の「MIL Spec Reform」によって、 ハンドブック「MIL-HDBK-881」に改 定されて、規格から単なるガイダンス に位置付けが下がった。
しかし、最近 になって調達業務におけるWBSの重 要性が改めて認識され、二〇一一年 には再び標準規格(STD)として 「MIL-STD-881C」が発行されている。
 また最近はDoDだけでなく、民 間企業も含めた様々な分野でWBS が使用されるようになっている。
と りわけ情報システム構築時などによく 利用されている。
ただし、成果物ベ ースでWBSを作成することは少なく、 プロセスベースが多い。
 成果物ベースでWBSを作成する か、プロセスベースでWBSを作成す に従ったレビューを実施している。
こ のような仕組みが調達を確実に成功さ せる一つの要因になっている。
WBS:作業分解図  システムの調達や製作を確実に成功さ せるための方法論として、DoDは「W BS(Work Breakdown Structure)」 を採用している。
システムの成果物を 分解して記述するもので、通常は「作 ぞれのレビューポイントで評価対象とな る文書や評価基準も明確に定めている。
 国防総省の内部部局と統合参謀本部 という二大組織によるレビューも行わ れている。
この二つの組織は、それぞ れ独自の調達プロセスを規定し、それ 図1 システムエンジニアリング プロセスの例 図2 DoD5000シリーズの調達システム SEPTEMBER 2012  104 るかは、どちらを採用してもかまわ ないが、どちらか一方に統一するこ とが望ましい。
またプロセスベースを 採用した場合には、そのプロセスで出 来上がる成果物を意識してWBSを 構築する必要がある。
成果物のない プロセスは無用のプロセスであること を認識すべきである。
EVM:出来高管理  プロジェクトの予算管理は古くから 実施されている。
その端緒は対艦弾 道ミサイル計画のプロジェクト進捗管 理のために一九六〇年代に開発が進 んだ「PERT(Program Evaluation and Review Technique)手法」に見 られる。
 その後、九〇年代後半には作業の 進捗をコスト面から把握する「EVM (Earned Value Management)」が民 間によって規格化されて多くの分野で 利用されるようになった。
 
釘孱佑蓮崕侏莵盍浜」と訳され る。
コストを評価することによって、 計画に対するスケジュールや予算の差 異等を簡単に求めることができるよ うになっている。
 
釘孱佑隆靄槓竸瑤蓮独立変数と して「時間」を取り、従属変数として、 「成果物予定量(PV【BCWS】)」、 「成果物実績量(EV【BCWP】)」、 「実績費用(AC【ACWP】)」を採 用する。
ただし、成果物量は、計画 値、実績値ともに、計画時に設定した コストへの変換手法によって、コスト に変換して比較する(表1参照)。
「システム・オブ・システムズ」  大規模システムは、構成要素の一 つひとつが十分に大きく、構成要素 自体が一つのシステムを形成している ことがある。
このようなシステムを取 り扱う方法として、「システムのシス テム(SoS:System of Systems)」 という概念が登場している。
 
咤錚咾療一的な考え方はまだ確 立されてはいないが、DoDでは、 その枠組み作りが始まっている。
表2 はDoDが作成したSoSの形態分 類例である。
ガバナンスの観点からの 分類であるが、システムに関わる全て の観点から、整合性のある分類が実 施されて、総合システムあるいは統合 システムとも呼ばれる本格的なシステ ム構築の手法が早期に確立されるこ とが望まれている。
 陸・海・空合同でのミサイル防御シ ステムなどが、SoSの具体例である。
従来は陸、海、空で別々に調達を行っ てきたが、目的が同じである以上、一 つに統合すればより有効なシステムに なるはずである。
現状では、それぞれ の部隊の効率的な情報交換という手段 によってそれが具体化しつつある。
 我が国でも最近「PPP」という 言葉を耳にすることがある。
「Public Private Partnership」の略で、「官民 連携」などと訳されている。
官であ る国や自治体と民間企業の連携を意 味している。
 インフラ投資などで活発化してきた 「PFI(Private Finance Initiative :プライベート・ファイナンス・イニ シアティブ)」や「指定管理者制度」 などがその具体例である。
本来であ れば自治体が実施すべき業務に民間 の資金力やノウハウを利用し、コスト パフォーマンスを上げようという取り 組みであり、これにはSoSの概念 を適用できるだろう。
表1 EVM 管理指標例 スケジュール差異 SV( Schedule Variance) SV =EV−PV SV<0なら時間予定遅れ コスト差異 CV(Cost Variance) CV =EV−AC CV<0ならコスト超過 スケジュール効率指標 SPI( Schedule Performance Index) SPI=EV÷PV    SPIが1 以下の場合は遅れ コスト効率指標 CPI( Cost Performance Index) CPI=EV÷AC    CPIが1 以下の場合はコスト超過 表2 SoS のシステム形態の例 形態定義 仮想(Virtual) 協働 (Collaborative) 認める (Acknowledged) 監督(Directed) 仮想SoS は中央の管理権限を持たず、SoS の目的に合意しているもの。
大規模な行動が現 れることが望ましい。
しかし、このタイプのSoSは、 それを維持するために、比較的目に見えないメ カニズムに頼るべきであるかもしれない。
協働SoS では、コンポーネントシステムは、中 央の目的合意を達成するために、多かれ少なか れ、自発的な対話を行う。
インターネットは、協 働システムのツールである。
インターネットエンジ ニアリングタスクフォースは、基準を作成するが、 それらを強制する力を持っていない。
中央のプ レーヤーは総称して、それによって基準を適用し、 維持するいくつかの手段を提供し、サービスを 提供する、または拒否する方法を決定する。
それぞれの構成システムは、それらの独立した 所有者、目的、資金調達、開発及び持続的 なアプローチを維持しつつ、SoS 目的、指定 管理者、およびSoS のリソースを認識している。
当該システムの変更はSoS とそのシステム間 のコラボレーションに基づいている。
監督的SoS は、統合されたSoS の構築およ び特定の目的を達成するために管理されている ものである。
それは単一的な目的だけでなく、シ ステムの所有者が対処する可能性のある新しい ものを満たすためにも、継続して長期的に管理 されている。
コンポーネントシステムは独立して 動作する能力を維持するが、彼らの通常の動 作モードは、中央管理の目的に従属している。
(Defense Acquisition Guidebook-2010 第4 章より)

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