ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年10号
特集
第2部 開発ラッシュ続くも需要は底堅い シービーアールイー 鈴木公二 シニアコンサルタント

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2012  24 首都圏で賃料上昇の兆し  首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室 率は、本格的に開発の始まった二〇〇二年から〇 七年まで、五〜一〇%の幅で比較的安定して推移 していた。
ところが〇八年以降に湾岸部で大型供 給が相次いだことから、空室率は一〇%を超える 水準に大きく上昇して高止まりした。
 この時期、国内プレイヤー等が新たに市場に参戦 し、開発資金の貸し手である金融機関も投資を煽 りたてたことから、一部で用地獲得競争が激化し た。
供給スピードは飛躍的にピッチを上げ、空室が 消化される前に新たな物件が供給されるといった 状況が二年程度続いた。
 その後、リーマンショック以降に着工の凍結、延 期が相次いだことで、〇九年以降の供給は抑制さ れて、需給バランスは改善に転じた。
さらに、昨 年の東日本大震災を契機に、大型マーケットの空室 率は大幅に低下した。
当社シービーアールイー(C BRE)の調べによると、この時に発生した新規 需要のうち七〇%程度が震災に起因した緊急避難 的なニーズであった。
 直近の二〇一二年第2四半期の首都圏の空室率 は、前期から〇・九ポイント改善し三・六%とな って四・四半期連続の改善を示した。
今期は約一 年振りに二棟の新規供給があったが、うち一棟は 満室稼働している。
また、既存物件の空室率も前 期から一・七ポイント改善の二・六%と空室消化 が進んでいる。
まとまった規模の空室は現状では 希少となっている。
 テナントの動きとしては、消費財を扱う荷主を 獲得した物流会社やインターネット通販会社に引き 合いが多く見られた。
しかし、需給逼迫感が強ま って移転先の選択肢が限定的であることや、来期 以降に複数の大型物件の供給が控えていることも あり、テナントが様子見を継続している状況も一 方では伺える。
 近畿圏では、五月に〇九年第1四半期以来、三 年振りとなる大型マルチテナント型施設が竣工し た。
その影響で空室率は前期の〇%から八・八% に大きく上昇した。
ただし、新規供給案件に対す る引き合いは強く、空室消化が長引くことはなさ そう。
また、既存物件は一〇〇%稼働が前期より 継続している。
 賃料水準については、優良立地の大型高機能物 件に対する品薄感が続いているものの、荷主サイ ドの物流コスト削減意識も強いため、これまでは 横ばいが続いていたが、今期は品薄感が鮮明とな ったことで、首都圏については賃料水準に上昇の 開発ラッシュ続くも需要は底堅い  2013 年に首都圏では120 万?を超える物流施設が供給され る見通しだ。
供給がピークを迎えた2008 年の水準に迫る勢い である。
これによって不動産投資会社による累積開発実績(全 国)は1,000 万?を超える規模まで拡大する。
開発ラッシュ は2014 年以降も続きそう。
大量供給によって最新鋭施設の 真の実力が試されることになる。
シービーアールイー 鈴木公二 シニアコンサルタント 大型マルチテナント型施設 空室率の推移 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 Q1 Q2 (%) 近畿圏 首都圏 05 年 04 年 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 12 年 出典:CBRE 【空室率算出基準】 ・対象地域:首都圏=東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県 近畿圏= 大阪府、兵庫県 ・対象施設:延床面積10,000 坪以上  ・原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企画・ 設計された施設 ・対象棟数は、首都圏56 棟、近畿圏12 棟 ・空室率:(1)3月末(2)6月末(3)9月末(4)12月末 時点集計 25  OCTOBER 2012 兆しが見え始めている。
 売買取引動向では、既存プレーヤーやJリートの 日本ロジスティクスファンド投資法人、産業ファン ド投資法人が物件を取得するなど、取引市場は活 発となっている。
金融危機以降、安定的な収益が 見込める物流施設投資への注目度は高まっており、 総合不動産大手の三菱地所、三井不動産が物流施 設の開発事業に本格参入したことをはじめ、他の ディベロッパーも新規参入に向けて市場調査を進め ている状況が伺える。
 また、フォートレス・インベストメント・グルー プが川崎市川崎区東扇島の物流施設三棟を昨年末 に取得し、ブラックストーンが大阪南港の物流施設 を四月に取得するなど、新たな海外投資会社によ る物件取得も顕在化しており、各プレイヤーの取得 姿勢が強まってきている。
空室率が低下して需給 バランスが良好なことが積極投資を後押ししてい る。
 物流施設を組み入れたファンドがJリート市場へ の上場準備を進める動きも複数見られる。
マーケ ットへの情報開示が進んで投資家の認知度が向上 し、投資商品としての存在感が増していくことが 期待できる。
 期待利回りも低下傾向にある。
一二年七月の「C BRE不動産投資家調査」によると、首都圏湾岸 部のマルチテナント型物流施設の期待利回り(NC F)は、10bps(ベーシスポイント: 0.01 % =1bp) とわずかではあるが前期比で低下している。
空室率の上昇も一時的  首都圏については、一二年の全体の供給量は前 年より増加するが、過去の平均的な水準と比べれ ばまだ低い水準で、引き締まった需給バランスが年 末までは継続していくものと考えられる。
 ただし、一三年については、供給がピークであ った〇八年に次ぐ供給量となる見込みで、その大 部分がマルチテナント型施設であるため、エリアに よっては需給が一時的に崩れる可能性がある。
特 に、一三年までに新規に供給されるスペースの約 七割を占めている常磐自動車道の三郷から柏エリ アや、圏央道の開通が予定されている厚木から相 模原エリアについては、一時的にエリアの空室率が 上昇することも想定される。
 一四年については、現時点で主要ディベロッパー による具体的な開発計画の発表はまだ限定的であ るが、今後上積みされるだろう。
 今後も大型の新規供給に対しては足元の逼迫し た市況から潜在的な需要喚起が期待できるものの、 テナントサイドが拠点の新設等について様子見の姿 勢を強めるようであれば、一時的に賃料が弱含む 局面も想定される。
 ただし、〇八年時とは需要の中身は変わってき ている。
昨今の大型物流施設に対する需要の主役 となっているインターネット通販業界が活況である ことや、3PL企業を中心とした拠点の集約・統 合に伴う動きがマーケットの下支えとなるため、首 都圏全域では〇八年時のような空室率の大幅上昇 は考えにくい。
 
達贈劭鼎諒流施設マーケットの中期予測(延 床面積五〇〇〇?以上対象)では、一三年は首都 圏では大量供給の影響から空室率がいったん上昇 するが、その後は供給が落ち着くことで緩やかに 空室率は低下していくと予想している。
 近畿圏については、一二年下半期から一三年上 半期にかけては大型マルチテナント型施設の開発予 定はなく、今後は今年五月に供給された大型マル チテナント型施設「プロロジスパーク大阪4」(大 阪市西淀川区)の空室消化が進んでいくと予想さ れる。
 一三年下半期にはグッドマンジャパンの「グッド マン堺」(堺市堺区)の供給予定が控えているが、 全体の供給量としては限定的であり、現段階では 需給バランスが崩れることは想定し難い。
物流施設マーケットの空室率中期予測(首都圏) 出典:CBRE 【予測手法】 物流マーケットに関連性が高い経済指標等を用いて予測モデルを構築し、定 量的なアプローチから供給量、需要量を予測し、空室率の予測値を算出して いる。
2013 年の供給量については、概ね確定していることから予定物件を積 み上げた供給面積を採用している。
延床面積5,000?以上の不動産投資会社等が保有する物流施設を対象とし ている。
10.0% 5.0% 0.0% 05 年 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 13 年 14 年 15 年 16 年 予測 鈴木公二(すずき・こうじ) 二〇〇 四年に生駒データサービスシステム(現 シービーアールイー)入社。
物流施設を 中心とした事業用不動産の調査・分析、 コンサルティングサービスを提供するほ か、物流マーケットの指標の作成や講 演・執筆活動も行っている。

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