ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年10号
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第79回 ハマキョウレックス 物流見直し議論は3PL事業者にチャンス大型設備投資で成長加速の可能性に注目

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2012  64 3PL需要は増加トレンド  株式市場では3PL需要が減退、受注モメン タムがスローダウンしたといったような見方が増 えているように思える。
特に、東日本大震災以 降は大手3PL事業者の受注が前年並みになる など、実際に顧客の物流委託の需要が減速して いるようだ。
しかし、弊社ではこのような状況 は一過性とみており、3PLの需要増加のトレ ンドに変化はないと考えている。
 震災直後は西日本から東日本への輸送量の増 加、(リスクマネジメントの観点からの)倉庫拠 点の分散など物流ネットワークのあり方が議論さ れた。
倉庫拠点の一カ所集中はリスクと認識さ れ、一部では倉庫拠点を東西に分散した顧客も あったようだ。
ただ、拠点移転のコストとそれ に関わる輸送コストのバランス、競合他社の動向 などを精査する必要があり、物流ネットワークの あり方に関する議論は長引くだろう。
 これは、3PL事業者にとってはチャンスと 考えられる。
顧客の物流コストに対する意識の 高まりに対して、トータルコストの合理化を提案 するための商談が増加するといった可能性もあ るだろう。
弊社は、3PLの受注モメンタムが鈍 化したのは、一時的に商談が停滞したからだと 理解した方が良いと考えている。
特に大型案件 に関しては、商談が一時的に棚上げになってい るケースも多く、これが受注モメンタムの鈍化と 捉えられているのかもしれない。
二〇一二年後 半以降に潜在的な受注案件が顕在化する可能性 があるとみている。
 一時期は大半のトラック事業者が3PL事業 を標榜していた。
株式市場にも容易な事業との 錯覚があった。
しかし、3PL事業は相対的に 付加価値を付けやすく、一定の参入障壁がある 業務と今では考えられている。
実際に機能して いる事業者数は一時期に比べて減少したと考え られる。
 生き残った選ばれた3PL事業者の中では、サ ービス品質が均一化し、競争条件が悪化してい ることも事実であろう。
現状の3PL事業者は、 各社の強みを活かした受注に邁進しているよう にみえる。
 ハマキョウレックスは3PL事業者の中でも老 舗企業の一社と位置付けられる。
同社の一二年 三月期の売上高は八九九億円(前期比五・一% 増)、営業利益は六五億円(同一二・六%増、営 業利益率七・三%)、純利益三四億円(同二〇・ 七%増)だった。
 売上高の内訳は物流センター事業(3PL事 業)が四七%、一般貨物運送事業が五三%とな っており、ほぼ3PLとトラック事業の売上高が 同規模となっている。
しかし、営業利益の内訳 をみると、物流センター事業の比率が八〇%と高 ハマキョウレックス 物流見直し議論は3PL事業者にチャンス 大型設備投資で成長加速の可能性に注目  スローダウンしたように見える受注 モメンタムだが、二〇一二年後半以降、 一時的に棚上げされていた商談が顕在 化してくる可能性がある。
3PLを利 益創出ドライバーに据えた中期経営計 画でも、大規模な設備投資を打ち出し ており、成長の可能性が注目される。
第79回 土谷康仁 メリルリンチ日本証券 調査部 シニアアナリスト 65  OCTOBER 2012 い。
それだけ一般貨物運送事業の収益性が低い と言い換えることができる。
株式市場では、物 流センター事業の売上伸張を期待しつつ、一般 貨物運送事業の収益性改善の可能性の有無に注 目している。
 一般貨物運送事業の売上高では、子会社「近 物レックス」の貢献が大きく、一般貨物運送事 業売売上高の七五%を占めている。
弊社では従 来から当該子会社の低い収益性改善が課題と考 えている。
  他方、主力の物流センター事業は受注モメンタ ムも良好で、高い収益性を維持している。
ただし、 二〇一三年三月期の第1四半期決算では、一般 貨物運送事業が大幅増益となり、営業利益率も 二・七%に改善した一方、物流センター事業の 売上高は前期 比横ばい、営業 利益は同二% 減となり、従来 のトレンドに変 化が出たように みえた。
詳細を 考慮すると、同 社は相対的に 採算性が低か った顧客との 取引を解消し たため、売上 高は横ばいとな ったようだ。
結 果、同事業は 営業減益となったものの、営業利益率は十三・ 一%と高水準を維持している。
また、「近物レッ クス」は同社単体との共同営業も順調に進んでい るとみられる。
従って、同社の収益モメンタムに 変化はなかったと判断することができるだろう。
 同社の一三年三月期業績計画は売上高九一〇 億円(同一・二%増)、営業利益六九億円(同 五・七%増、営業利益率七・六%)、純利益三 五億円(同二・二%増)となっている。
足元業 績は概ね同社計画線で推移しているとみられる が、下期以降からの3PL案件の増加による利 益貢献に期待したい。
注目される設備投資計画  同社は二〇一三年三月期から一五年三月期ま での中期経営計画を発表している。
業績計画で は売上高を今期計画の九一〇億円から一〇〇〇 億円に、営業利益を六九億円(営業利益率七・ 六%)から八〇億円(同八%)に、純利益を三 五億円から四二億円に拡大させる考えだ。
物流 センター事業での年間受託目標を一五社以上と していることからも、3PLが利益創出ドライ バーになると考えられる。
 今回の計画で注目されたのは設備投資計画だ ろう。
今期の計画である二八億円に対して来期 以降は七六億円(一四年三月期)、二八億円(一 五年三月期)を想定している。
3PLの新規案 件の獲得を視野に置いたもので、大型物流セン ターの竣工などが主な資金使途と考えられよう。
冒頭、3PL受注モメンタムのスローダウンの懸 念に関して記述したが、同社の中期的な設備投 資計画を見る限り、3PL需要は堅調と判断で きるだろう。
 「近物レックス」に関しては営業利益率を二% 弱の水準まで改善させる計画だ。
グループ会社 一体となった案件獲得、幹線コストの削減を主 たる要因としている。
 同社は「近物レックス」のほか、JTB物流、 JALロジスティクスなどを買収してきた。
買収 当時のROA(総資本利益率)、ROE(自己資 本利益率)は低下傾向だったが、二〇一二年三 月期実績はROE一五%、ROA四%に改善し た。
有利子負債と株主資本の比率であるデット・ エクイティレシオも二〇〇五年三月期には二倍を 超える水準だったが、現状は一倍前半まで低下 しており、徐々に財務健全性が高まっている。
 株式市場では同社を成長銘柄と位置付けてい ると考えられるが、過去二桁を超えた利益成長 率も一桁台となっており、やや市場の期待を下 回っている。
それだけに来期の大型設備投資に よる利益成長の加速の可能性が注目されよう。
 想定したほどの利益成長が達成できなかった 場合には、株主還元にも目を配る必要があろう。
同社の配当性向は一〇%程度と同業他社との対 比でも相対的に低水準であり、その余地は残さ れている。
過去10年間の株価推移 つちや やすひと 一九九七年三月神戸大学大学院卒、 九八年四月和光証券入社。
三菱証券 などを経て、二〇〇五年一〇月にメ リルリンチ日本証券に入社。
運輸セ クター担当アナリストとして活躍し ている。

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