2012年11月号
特集
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第3部 転職市場に見る物流人材ニーズと年収
NOVEMBER 2012 38
医療系マネジャーは年俸一五〇〇万円超
外資系転職エージェントのロバート・ウォルター
ズ・ジャパン(RW)は、サプライチェーン人材の専
門チームを組織している。
六人の専属スタッフが所 属し、登録型人材紹介のほかヘッドハンティングを行 っている。
同チームの前田智子マネジャーによると、 「二〇〇四年に専門チームを立ち上げてからこれまで、 サプライチェーン人材には非常に安定したニーズがあ る」という。
他の分野に比べて景気変動の影響が少 ないのが特徴だ。
同社のクライアントは八割以上が外資系で、その うちサプライチェーン人材を募集しているのは荷主企 業が約七割、物流企業が約三割の比率だという。
階 層としては、役員クラスの「ディレクター」から、部 課長のクラスの「マネジャー」、専門職の「プランナ ー」、平社員の「スタッフ」まで幅広い募集がある。
とりわけ近年は医療・ヘルスケア分野のマネジャー クラスの求人が目立っている。
先日も医療系荷主の SCMマネジャーの求人案件が成立した。
年俸は約 一五〇〇万。
3PL会社で現場マネジャーを経験し、 その後、荷主の物流部門に移ってプランニング等の経 験を積んだ四〇代が採用された。
3PLと荷主両サ イドの経験があり、需要予測からフルフィルメントま でサプライチェーン全体を統括できることが採用のポ イントだった。
一五〇〇万円という年俸は必ずしも破格とはいえ ない。
「もともと医療系は他の業種より給与水準が 高い。
マネジャークラスで一五〇〇万円以上が目安。
同様のポジションでも消費財系だと約一〇〇〇万〜 一二〇〇万、リテール系だと約七〇〇万〜八〇〇万 が相場だ」と前田マネジャーは説明する。
図は同社が調査した二〇一二年のサプライチェーン 人材の年収相場だ。
大まかな年齢層で見ていくと結 果的に採用に至るのは、ディレクタークラスが四〇代 後半、マネジャーは四〇代前半が中心、その下のロジ スティクスマネジャーになると三〇代も入ってくる。
部下の付かないポジションでは二〇代後半〜三〇代半 ばがボリュームゾーンだという。
ただし、需要予測・供給計画のプランナーはシニ ア・ジュニアを問わず募集が出ている。
プランナーを 擁しているのは比較的大手企業に限られるため、ス ペシャリストは「貴重な人材」(前田氏)だ。
三〇代 前半でも年俸七〇〇万、製薬業界でシニアクラスなら 九〇〇万での成立もあったという。
また、最近の傾向として、サプライチェーン改善の 担当者、特にシックスシグマやリーン生産方式でプロ ジェクトマネージメントの経験がある人材も人気で、 業種の垣根を超えての転職するケースも見られる。
要 求されるスペックが高いだけに、それを満たすことの できる転職希望者は多くない。
特定の人材にオファ ーが集中することも珍しくないという。
RWと同様に外資系企業を主なクライアントとする 転職エージェントのJACリクルートメントも物流専 門チームを組織している。
現在、同チームには荷主企 業約五〇〇件、物流企業約一〇〇件の求人が集まっ ている。
リーマンショック前を上回る水準だ。
物流企業では外資系フォワーダーの求人が増えてい る。
これまでの欧米系に加え、中国系など、日本市 場の新規開拓を狙う企業が営業職を求めている。
3PL企業ではM&Aや拠点の新規立ち上げに伴 って、地方の物流センター長を中途採用するケースが 増加している。
川崎藍子コンサルタントは「新センタ ーの立ち上げ経験者や医薬品など特殊な知識が必要 転職市場に見る物流人材ニーズと年収 物流人材の求人ニーズが安定して増えている。
転職 エージェントは専門部隊を組織して対応に当たる。
外 資系企業がハイクラス人材を求める一方で、国内の有 力物流企業は基礎能力の高い若手未経験者の中途採用 を積極化している。
キャリアとしての物流の価値は確 実に高まっている。
(渡邉一樹) 第 3部 39 NOVEMBER 2012 なセンターの経験者は売り手市場で、ベテランが好条 件で採用されるケースも少なくない」という。
EC関連企業の物流センター長、配車管理、物流 設計などのマネジャーポジションもここ数年で大幅に 拡大し、物流関連の中では主流の一つに成長してい る。
一方、海外勤務スタッフの募集は以前とは様変わ りしている。
日本人物流マンを厚遇で迎え入れ、駐 在員として東南アジアや中国をはじめとするBRI Csに派遣するというやり方は既に過去のものにな りつつある。
日本人で物流のマネジメントができるうえ、コミュ ニケーションに長け、現地の言語・商流・文化にも精 通している人材は、なかなか転職市場には出てこな い。
いざ見つかったとしても、待遇面で折り合いが付 きにくくなっている。
そのため、従来は日本人に任さ れていた現地法人のトップクラスのポジションに現地 採用者を起用するケースが多くなっている。
とはいえ、物流マンにとって英語力の重要性は日 に日に増している。
外資系に転職するに は、ほぼ必須と言っても良い。
ただし、 TOEICの点数は外資系では重視され ない。
JACが二〇一一年に実施した調 査によると、TOEICは七〇〇点が目 安で、それ以上の点数をとっても年収も 転職のチャンスも向上しないという結果が 出ている。
これに対してJACは「英語での実務 経験がTOEICのスコアよりも圧倒的 に重要」とし、「六〇〇点程度に達した ら、その後は実務上での英語の実践度を 高めるべきだ」とアドバイスしている。
一方、国内の物流企業では若手〜中堅層の「業界 未経験者」を中途採用する流れも出てきている。
転職 エージェント国内最大手のリクルートキャリアは一〇 月現在、物流企業から約三〇〇件の求人票を預かっ ている。
同社で物流企業を担当するリクルーティングアドバ イザーの森尚樹氏は「ここ数年で物流業界の経験者 でなくても良いという募集が圧倒的になった。
業界 未経験者の募集がここまで増えるのは、非常に珍し い」と話す。
「経験無しでも応募可」も 以前は「物流業界の業務経験あり、かつ高学歴」 を採用条件に挙げるケースがほとんどだった。
それが 現在は「マルチタスク能力」や「コミュニケーション 力」など、能力重視で採用する方向に大きく転換し ている。
営業ポジションで「法人営業経験無しでも 応募可」というケースすらある。
しかも、業績好調な大手や冠系の物流企業が牽引 役となっていることもあり、「営業職などでは給与も 他業種の営業一般より気持ち高め」だと森氏は言う。
その背景には近い将来の海外展開をにらんで、柔軟 性があり、ポテンシャルが高い人材を確保しておきた いという狙いがありそうだ。
このようにサプライチェーン人材、物流人材に対す るニーズは、非常に手堅く推移している。
リーマン ショック時の求人の落ち込みも他の分野に比べて小 さかった。
さらに昨年の震災を契機として、事業継 続の観点から物流ネットワークの見直しを進める企業 が増えていることから人材需要はむしろ増加してい る。
キャリアとしての物流の価値は確実に高まって いる。
特集 物流のプロになる JACリクルートメントの 川崎藍子コンサルタント リクルートキャリアの 森尚樹氏 ロバート・ウォルターズ・ ジャパンの 前田智子マネジャー (調査地・東京) 注:特に断りがない限 り、表示額は諸手当、 ボーナスを除く基本給 (ロバート・ウォルター ズ・ジャパン 給与調査 2012 より抜粋) 物流・購買・サプライチェーン分野での給与の現状 工場マネジャー オペレーションディレクター 間接購買マネジャー 生産管理マネジャー 購買・調達マネジャー プロジェクトマネジャー 品質管理/品質保証マネジャー サプライチェーンマネジャー 倉庫管理マネジャー 施設管理マネジャー ロジスティクスマネジャー カスタマーサービスマネジャー プランナー 品質管理/品質保証スペシャリスト サプライチェーンスタッフ 購買・調達スタッフ 生産管理スタッフ カスタマーサービススタッフ 施設管理スタッフ ロジスティクススタッフ 倉庫管理コーディネーター 輸出入業務スタッフ 1500〜2200 万円 1500〜2000 万円 1000〜1500 万円 1000〜1500 万円 900〜1400 万円 900〜1300 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1100 万円 700〜1000 万円 600〜900 万円 600〜900 万円 450〜700 万円 450〜700 万円 450〜700 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 300〜500 万円 職種正社員(年俸)
六人の専属スタッフが所 属し、登録型人材紹介のほかヘッドハンティングを行 っている。
同チームの前田智子マネジャーによると、 「二〇〇四年に専門チームを立ち上げてからこれまで、 サプライチェーン人材には非常に安定したニーズがあ る」という。
他の分野に比べて景気変動の影響が少 ないのが特徴だ。
同社のクライアントは八割以上が外資系で、その うちサプライチェーン人材を募集しているのは荷主企 業が約七割、物流企業が約三割の比率だという。
階 層としては、役員クラスの「ディレクター」から、部 課長のクラスの「マネジャー」、専門職の「プランナ ー」、平社員の「スタッフ」まで幅広い募集がある。
とりわけ近年は医療・ヘルスケア分野のマネジャー クラスの求人が目立っている。
先日も医療系荷主の SCMマネジャーの求人案件が成立した。
年俸は約 一五〇〇万。
3PL会社で現場マネジャーを経験し、 その後、荷主の物流部門に移ってプランニング等の経 験を積んだ四〇代が採用された。
3PLと荷主両サ イドの経験があり、需要予測からフルフィルメントま でサプライチェーン全体を統括できることが採用のポ イントだった。
一五〇〇万円という年俸は必ずしも破格とはいえ ない。
「もともと医療系は他の業種より給与水準が 高い。
マネジャークラスで一五〇〇万円以上が目安。
同様のポジションでも消費財系だと約一〇〇〇万〜 一二〇〇万、リテール系だと約七〇〇万〜八〇〇万 が相場だ」と前田マネジャーは説明する。
図は同社が調査した二〇一二年のサプライチェーン 人材の年収相場だ。
大まかな年齢層で見ていくと結 果的に採用に至るのは、ディレクタークラスが四〇代 後半、マネジャーは四〇代前半が中心、その下のロジ スティクスマネジャーになると三〇代も入ってくる。
部下の付かないポジションでは二〇代後半〜三〇代半 ばがボリュームゾーンだという。
ただし、需要予測・供給計画のプランナーはシニ ア・ジュニアを問わず募集が出ている。
プランナーを 擁しているのは比較的大手企業に限られるため、ス ペシャリストは「貴重な人材」(前田氏)だ。
三〇代 前半でも年俸七〇〇万、製薬業界でシニアクラスなら 九〇〇万での成立もあったという。
また、最近の傾向として、サプライチェーン改善の 担当者、特にシックスシグマやリーン生産方式でプロ ジェクトマネージメントの経験がある人材も人気で、 業種の垣根を超えての転職するケースも見られる。
要 求されるスペックが高いだけに、それを満たすことの できる転職希望者は多くない。
特定の人材にオファ ーが集中することも珍しくないという。
RWと同様に外資系企業を主なクライアントとする 転職エージェントのJACリクルートメントも物流専 門チームを組織している。
現在、同チームには荷主企 業約五〇〇件、物流企業約一〇〇件の求人が集まっ ている。
リーマンショック前を上回る水準だ。
物流企業では外資系フォワーダーの求人が増えてい る。
これまでの欧米系に加え、中国系など、日本市 場の新規開拓を狙う企業が営業職を求めている。
3PL企業ではM&Aや拠点の新規立ち上げに伴 って、地方の物流センター長を中途採用するケースが 増加している。
川崎藍子コンサルタントは「新センタ ーの立ち上げ経験者や医薬品など特殊な知識が必要 転職市場に見る物流人材ニーズと年収 物流人材の求人ニーズが安定して増えている。
転職 エージェントは専門部隊を組織して対応に当たる。
外 資系企業がハイクラス人材を求める一方で、国内の有 力物流企業は基礎能力の高い若手未経験者の中途採用 を積極化している。
キャリアとしての物流の価値は確 実に高まっている。
(渡邉一樹) 第 3部 39 NOVEMBER 2012 なセンターの経験者は売り手市場で、ベテランが好条 件で採用されるケースも少なくない」という。
EC関連企業の物流センター長、配車管理、物流 設計などのマネジャーポジションもここ数年で大幅に 拡大し、物流関連の中では主流の一つに成長してい る。
一方、海外勤務スタッフの募集は以前とは様変わ りしている。
日本人物流マンを厚遇で迎え入れ、駐 在員として東南アジアや中国をはじめとするBRI Csに派遣するというやり方は既に過去のものにな りつつある。
日本人で物流のマネジメントができるうえ、コミュ ニケーションに長け、現地の言語・商流・文化にも精 通している人材は、なかなか転職市場には出てこな い。
いざ見つかったとしても、待遇面で折り合いが付 きにくくなっている。
そのため、従来は日本人に任さ れていた現地法人のトップクラスのポジションに現地 採用者を起用するケースが多くなっている。
とはいえ、物流マンにとって英語力の重要性は日 に日に増している。
外資系に転職するに は、ほぼ必須と言っても良い。
ただし、 TOEICの点数は外資系では重視され ない。
JACが二〇一一年に実施した調 査によると、TOEICは七〇〇点が目 安で、それ以上の点数をとっても年収も 転職のチャンスも向上しないという結果が 出ている。
これに対してJACは「英語での実務 経験がTOEICのスコアよりも圧倒的 に重要」とし、「六〇〇点程度に達した ら、その後は実務上での英語の実践度を 高めるべきだ」とアドバイスしている。
一方、国内の物流企業では若手〜中堅層の「業界 未経験者」を中途採用する流れも出てきている。
転職 エージェント国内最大手のリクルートキャリアは一〇 月現在、物流企業から約三〇〇件の求人票を預かっ ている。
同社で物流企業を担当するリクルーティングアドバ イザーの森尚樹氏は「ここ数年で物流業界の経験者 でなくても良いという募集が圧倒的になった。
業界 未経験者の募集がここまで増えるのは、非常に珍し い」と話す。
「経験無しでも応募可」も 以前は「物流業界の業務経験あり、かつ高学歴」 を採用条件に挙げるケースがほとんどだった。
それが 現在は「マルチタスク能力」や「コミュニケーション 力」など、能力重視で採用する方向に大きく転換し ている。
営業ポジションで「法人営業経験無しでも 応募可」というケースすらある。
しかも、業績好調な大手や冠系の物流企業が牽引 役となっていることもあり、「営業職などでは給与も 他業種の営業一般より気持ち高め」だと森氏は言う。
その背景には近い将来の海外展開をにらんで、柔軟 性があり、ポテンシャルが高い人材を確保しておきた いという狙いがありそうだ。
このようにサプライチェーン人材、物流人材に対す るニーズは、非常に手堅く推移している。
リーマン ショック時の求人の落ち込みも他の分野に比べて小 さかった。
さらに昨年の震災を契機として、事業継 続の観点から物流ネットワークの見直しを進める企業 が増えていることから人材需要はむしろ増加してい る。
キャリアとしての物流の価値は確実に高まって いる。
特集 物流のプロになる JACリクルートメントの 川崎藍子コンサルタント リクルートキャリアの 森尚樹氏 ロバート・ウォルターズ・ ジャパンの 前田智子マネジャー (調査地・東京) 注:特に断りがない限 り、表示額は諸手当、 ボーナスを除く基本給 (ロバート・ウォルター ズ・ジャパン 給与調査 2012 より抜粋) 物流・購買・サプライチェーン分野での給与の現状 工場マネジャー オペレーションディレクター 間接購買マネジャー 生産管理マネジャー 購買・調達マネジャー プロジェクトマネジャー 品質管理/品質保証マネジャー サプライチェーンマネジャー 倉庫管理マネジャー 施設管理マネジャー ロジスティクスマネジャー カスタマーサービスマネジャー プランナー 品質管理/品質保証スペシャリスト サプライチェーンスタッフ 購買・調達スタッフ 生産管理スタッフ カスタマーサービススタッフ 施設管理スタッフ ロジスティクススタッフ 倉庫管理コーディネーター 輸出入業務スタッフ 1500〜2200 万円 1500〜2000 万円 1000〜1500 万円 1000〜1500 万円 900〜1400 万円 900〜1300 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1500 万円 800〜1100 万円 700〜1000 万円 600〜900 万円 600〜900 万円 450〜700 万円 450〜700 万円 450〜700 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 450〜600 万円 300〜500 万円 職種正社員(年俸)
