ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年11号
物流指標を読む
第47回 自転車ナンバープレート制度は有効か 「交通事故統計年報」交通事故総合分析センター「自転車問題の解決に向けて」東京都自転車対策懇談会

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む 第1 回 NOVEMBER 2012  80 自転車ナンバープレート制度は有効か 第47 ●警察は自転車の歩道通行を引き続き黙認 ●東京都自転車対策懇談会が解決策を提言 さとう のぶひろ 1964年 ●安全教育や悪質な違反の取締り等の強化を 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
我が物顔で歩道を暴走  先月号の本欄で、次回の企業物流短期動向調査 (九月調査)において、「荷動き指数がさらに改善 するようであれば、足元において景気が後退局面 に入っていたとしても、そのトンネルは案外短い のではないか」と書いた。
しかし残念ながら、七 〜九月実績(速報値)はマイナス一五と、前回調 査時における見通し(マイナス三)よりも大きく 下ブレし、一〇〜十二月見通しについても、マイ ナス一六とさらに一ポイント低下する予想になって しまった。
この結果、景気は調整局面(あるいは 後退局面)入りしたことはほぼ確実だろう。
かつ、 景気が持ち直すまでにもう少し時間を要するもの とみられる。
 なお、本調査は九月上旬に実施していることか ら、中国における反日暴動の影響はほとんど盛り 込まれていない。
資本財をはじめとして、日本国 内での生産・出荷にも少なからぬ影響を及ぼすの は必至であり、次回調査において、一〇〜十二月 実績は見通しよりも下ブレする可能性が高そうだ。
 さて、昨年の一〇月に警察庁が「良好な自転車 交通秩序の実現のための総合対策の推進について」 という文書を各管区警察局長および各都道府県警 察の長に通達し、原則として「自転車は車道通行」 という方針を打ち出した。
これを受け、筆者は本 欄において「当該ルールが徹底される二〇一二年 には、貨物車と自転車の事故は再び増加に転じる 可能性が高い」と書いた。
 一二年の結果が公表されるのは来年の九〜一〇 月頃であるが、筆者の心配は、幸いにも杞憂に終 わりそうだ。
 ちなみに、交通事故総合分析センター「交通事 故統計年報」(一一年版)により、昨年発生した、 貨物車が第一当事者で自転車が第二当事者の事故 件数をみると二万七六六件であり、前年比で一〇 〇八件減少している(四・六%減)。
月別の発生 件数は不明であるが、少なくとも昨年一〇月以降 に、件の通達を受けて、貨物車と自転車の事故が 急増したという事実はなさそうだ。
 理由は簡単だ。
通達が出たにもかかわらず、各 都道府県の警察は自転車の歩道通行を引き続き黙 認しているからである。
その結果、あいかわらず、 自転車が歩道を我が物顔で暴走している。
 一方、これは歩道上の事故なのかどうかは不明 であるが、昨年における自転車が第一当事者で歩 行者が第二当事者の事故件数は二七三三件(注: うち、死亡事故は五件)で、前年比で五八件、率 にして二・二%増加している。
 自転車を「走る凶器」と呼ぶ人もいるが、何の 規制もなく野放しにしている結果ではないのか。
 警察はなぜ、違法行為を黙認しているのか。
以 前も書いたが、考えられる理由を列挙してみよう (注:あくまでも筆者の推測である)。
?これまで自 動車優先の道路整備をしてきたため、自転車の車 道通行が危険になり、交通事故をなるべく減らし たい警察が緊急避難的な措置として、自転車に歩 道を通行させた。
そして、その状況が数十年間も 続いているうちに、いつのまにか自転車の歩道通 行が当たり前のようになってしまい、警察も、か つて自転車に対し「歩道を通行しなさい」と指導 した手前、今さら「車道に降りなさい」とは言え 「交通事故統計年報」交通事故総合分析センター 「自転車問題の解決に向けて」東京都自転車対策懇談会 81  NOVEMBER 2012 促進、?悪質な違反に対する取締り等、?自転車 の車体の安全性の向上、?自転車に関する損害賠 償責任保険の普及、?ヘルメット着用の促進、? 自転車走行空間の整備及びネットワーク化、?自 転車利用者等にわかりやすい表示、?ナンバープ レート制度の導入、があげられている。
 なかでも注目すべきはナンバープレート制度であ り、同制度に関して、同提言では「自転車の安全 な利用を推進するためには、自転車利用者に対す る安全教育の徹底、通行場所の明確化を含めた走 行空間の整備等の対策を充実するとともに、そも そも、自転車利用者が『自転車は車両であり自ら は車両の運転者である』という自覚と責任を持つ ことが重要である。
そのためには、自転車にナン バープレートを取り付け、周囲からナンバーを容易 に識別できるようにすることにより、自転車利用 者の責任感を醸成し、ルールの遵守やマナーの向 上を図ることが考えられる」と記載している。
 たしかにナンバープレート制度には、悪質な違反 を抑止する何らかの効果があると考えられる。
し かし、東京都だけが実施するのでは、効果は限定 されよう。
また、懇談会の中でも様々な課題が指 摘されたようであるが、早期の実現可能性はあま り高くないのではないか。
提言の?目玉?が必要 だったのかもしれないが、筆者はむしろ、安全教 育の機会の確保と受講の促進、悪質な違反に対す る取締り等、自転車に関する損害賠償責任保険の 普及などを早急に推進してほしいと思う。
 ところで、提言を提出する際、森地座長は、「自 転車を使って便利さを感じる人より、自転車から迷 惑を受ける人の方が多い」と発言したそうであるが、 併せて、その発言には数字などの根拠はない旨の 話をしたため、自転車利用者などからは「妄言で ある」など反発の声が上がっているようだ。
たし かに、「自転車を使って便利さを感じる人」と「自 転車から迷惑を受ける人」のどちらが多いかを測 定することは無理であり、森地氏の発言は感覚的 でやや重みに欠けるように思う。
しかし、どちら が多いかということが問題なのではない。
自転車 の利用者が少なからず歩行者に迷惑をかけている ことは歴然とした事実であり、自転車の利用者は そのことを認識しなければならない。
なくなったのではないか。
?自転車の数が多すぎ て(注:自転車産業振興協会の統計によると、〇 八年において六九一〇万台)、取締りが困難なた めではないか。
識者に聞いたところ、各警察署の 交通課の警察官は少なく、常時、自転車を取り締 ることは無理とのことだった。
?自転車の利用を 減らしたくない業界団体が、警察に対して厳しい 取締りをしないようにお願いをしていた可能性が あるのではないか。
 警察という組織は、役所の中で最も役所らしい 役所だという話を聞いたことがある。
もちろん全 部が全部そうだとは言わないが、先日の大津市で のいじめ自殺事件でも明らかになったように、極 めて事なかれ主義的な組織らしい。
ということは、 自転車の暴走による大きな事故が起こり、それを 黙認していた警察に対して世間から猛烈な批判が 湧き上がらない限り、警察は動かないということ か。
自転車は凶器という認識を  こうした警察の怠慢に業を煮やしたからなのか どうかは分からないが、今年九月、東京都自転車 対策懇談会(座長:森地茂・政策研究大学院大学 特別教授)は東京都に対して、「自転車問題の解 決に向けて」という提言を行った。
 同提言では、安全かつ適正な自転車利用を促す ために解決すべき課題として、1.自転車の安全 利用の推進、2.放置自転車の減少、3.安全で 快適な利用環境の整備の三項目をあげている。
そ のうち、安全で適正な自転車利用を推進するため の対策として、?安全教育の機会の確保と受講の 貨物車と自転車の事故件数の推移 ?貨物車が第1当事者、自転車が第2当事者の事故 ?自転車が第1当事者、貨物車が第2当事者の事故 ?自転車が第1当事者、歩行者が第2当事者の事故 出所)「交通事故統計年報」(交通事故総合分析センター) 年 件 31,033 30,894 29,356 27,135 26,086 24,641 22,769 21,774 20,766 年 件 2,967 2,911 2,834 2,633 2,511 2,301 2,137 2,041 1,926 年 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 2003 04 05 06 07 08 09 10 11 件2,110 2,367 2,432 2,631 2,736 2,817 2,835 2,675 2,733

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