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71 NOVEMBER 2012
「三国志演義に登場する諸葛亮孔
明は、ロジスティクスを最優先に考え
ていた」──。 物流コンサルティング
や通販物流代行を手がけるイー・ロ
ジットの⻆井亮一社長が、分かりや
すいエピソードを満載した物流の解
説書「物流がわかる」を出版した。
基礎知識のほか、国内外の革新的
現場や国際ハブ空港で見聞した貴重
な体験と考察を披露。 物流の管理手
法も体系的に説明している。 読者が
自らの仕事に生かせそうなヒントが
盛り込まれた一冊だ。
冒頭、一日に全人口の三割近くに
相当する約三七〇〇万人がコンビニ
を訪れているものの、店舗で品切れ
はほとんど起こっておらず、「高度な
物流なしでは今のコンビニは成り立
たない」と指摘。 日米宅配業務比較
なども盛り込んでおり、物流がいか
に重要かを容易にイメージできる。
物流を作業と捉えて生産性向上や
物流やロジスティクスのことを全く
知らない人に「ロジスティクスって何
が大事なの」と素朴な疑問を投げか
けられて、的確に受け答える自信が
あるだろうか。 もし、少しでも不安
を感じたなら、本書を手に取る価値
はある。
主たるターゲット読者はタイトルに
あるとおり物流業界のフレッシュマ
ンだろうが、異動で新たに物流部門
に関わることになったり、専門外の
人に解説をする立場となったりした
ビジネスパーソン、物流業界に就職・
転職を考えている人たちなどにとっ
ても、大きなヒントが詰まっている。
初心者が躓きそうなポイントを重
点的に解説してあるから、ロジステ
ィクス分野の知識が何もなくてもぐ
いぐいと読み進められる。 全体を通
して読めば、基礎中の基礎から話題
の分野まで、最低限の論点を手っ取
経費抑制を進める「物流思考」と、企
業戦略に合うよう物流サービスの水準
を高める「戦略物流思考」の両方を
重視すべきだと主張。 「物流を戦略的
に捉えると企業力や商品力を上げる
ことができる」と意義を強調する。
出店者に代わって受注・決済・物
流を行うアマゾン、環境に配慮して
段ボールを使わない配送を展開する
カクヤス、顧客が指定した置き場所
に品物を届けるファンケルなど、先
進的取り組みの例には事欠かない。
また、物流の新たな動きとして注
目されている、実店舗とネット通販を
連携したサービス「O2O」(Online
to Offline)を実践している企業とし
て、米国の楽器販売会社ギターセン
ターを案内。 ネットで購入して店舗
で品物を受け取ったり、複数店舗に
分かれた品物を希望する一カ所に集
めたりと、柔軟な物流を展開してい
るという。 流通がさらに進化する可
能性を感じさせてくれるケースだ。
こうした数々の事例からは、「物流
の世界のおもしろさ、ダイナミックさ、
新しいビジネスモデルが生まれる最前
線を味わってほしい」との著者の熱
い思いが感じられる。 本書を通じて、
物流は企業が生き抜く上での重点分
野だと理解する人がさらに増えるこ
とを強く願いたい。 (藤原)
り早く確認できる。 3PLやKPI
(重要業績評価指標)、ROA(総資
産利益率)、L/C(信用状)といっ
た、業界では当たり前の専門用語に
も丁寧な説明がある。 図表や写真を
大きく使ったレイアウトで、要点のイ
メージを掴みやすく工夫してあるた
め、敷居の高さは感じさせない。
構成をざっと見てみよう。 導入部
分の第一章は、なぜロジスティクス
やSCMが必要とされるのかという
根本的な部分からの解説がある。 第
二章では企業に物流部が誕生した経
緯から、物流センター長の役割まで。
第三章は陸海空・鉄道輸送の特性や、
倉庫、パレット、マテハン機器、W
MSなどの倉庫・輸送管理システム
について。 第四・五章では物流の現
場改善や3PL、BCP(事業継続
計画)など。 第六・七章では国際物
流の現状と未来・・・・と、単に列挙す
るだけで、話題の広範さが分かって
もらえるだろうか。
そんな幅広いトピックを五七の項
目に分類し、二〜四ページに凝縮し
てある。 A5判一二八ページで、新
書並の取り回しができる。 どこから
でも読めて、気になった部分をざっ
と流し読みして、頭の中を素早く整
理できる。 通勤電車のお供にも最適
だ。 (渡邉)
「O2O」など国内外の先進事例満載
イー・ロジット⻆井社長が物流の解説本発刊
『ロジスティクスの基礎知識』をグッと凝縮
概念から実務まで五七のトピックを幅広く網羅
『物流がわかる』⻆井亮一
九〇三円(税込)日経文庫
『ロジスティクスの基礎知識』
─フレッシュマン必携本─ 浜崎章洋
一二六〇円(税込)海事プレス社
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