2012年12月号
特集

解説 PB台頭、商社系列化で何が変わる

DECEMBER 2012  16 国産ビールまで呑み込む  十一月、サッポロビールがセブン&アイ・ホールデ ィングスに、NBよりも一割安いPBビールの供給を 開始した。
既に発泡酒では二〇〇九年七月から、サ ントリーがイオンとセブン&アイのそれぞれにPBを 提供しているが、本丸のビールで国産メーカーがPB を手掛けるのは今回が初めて。
大手ビールメーカー四 社のうち、三位、四位が切り崩された。
 大手コンビニのPB比率は今や四〇〜五〇%にも 達している。
大型総合スーパー(GMS)で二〇% 前後、スーパー全体でも一〇%程度まで上昇した模 様だ。
今後もチェーンストア各社はPBを拡大する方 針だ。
国内の食品消費量が増えない限り、それだけ NBが浸食されることになる。
 通常であればNBのトップブランドメーカーは、P Bの生産を請け負わない。
欧米のPBはほとんどが 中小メーカーのOEM(相手先ブランド)生産だ。
し かし、調査によると、日本では各カテゴリーの一位、 二位メーカーの約七割が、PB生産を手掛けている という(注)。
 トップクラスのNBと同レベルの商品を割安なPB として供給すれば、当然ながらNBが値崩れを起こ す。
メーカーの収益性は悪化し商品開発に回せる資 金も細る。
付加価値の高い新商品や強いブランドが育 たなくなる。
市場は停滞し、価格競争に拍車がかか る。
それでもメーカーは需要の減少で持て余した生産 ラインを使いたいという大手小売りの要請を拒否で きない。
断れば他社に棚を奪われてしまう。
背に腹 は変えられない。
 ビールだけが、これまでPBの侵略を免れていた。
ビールは日本の食品業界では例外的に寡占化の進ん だカテゴリーだ。
小売りとしてもNBを棚から外すわ けにはいかない。
NBメーカー四社は、自分で自分 の首を絞めることになるPB生産をずっと拒み続け てきた。
その牙城が崩れた。
 PBの拡大は、小売りの業態間競争にも大きな影 響を及ぼす。
日本チェーンストア協会の調査によると、 スーパーの既存店売上高は二〇一一年度まで一五年 連続で減少している。
ただし、従来はGMSの業績 低迷がその主な原因で、リージョナルな食品スーパー は元気だった。
 ところが〇八年のリーマンショックを境に、食品ス ーパーの業績に陰りが見え始めた。
それとは対照的 にコンビニの売り上げが伸びている。
大手三社(セ ブン─イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマー ト)は二〇一二年二月期にいずれも過去最高の営業 利益を計上した。
なかでもセブンイレブンの好調ぶり が際立っている。
〇八年二月期まで低下傾向にあっ た同社の既存店売上高は〇九年二月期以降、増収基 調に転じている。
 同社のPBシリーズ「セブンプレミアム」がその原 動力だ。
値頃感のある加工食品が地域スーパーから客 を奪っている。
生鮮品の品揃え拡大が、それに拍車 をかけている。
事業規模を活かしたナショナルチェー ンのPBに、地域スーパーは単独では対抗できない。
各地のスーパーが共同でPBを開発しているCGCジ ャパンの元には現在、新規加盟を希望する中小スーパ ーが列を成している状態だという。
 ただし、PBを調達できたとしてもそれでスーパ ーが儲けられるとは限らない。
PBは買い取りが大 前提で、売れ残りリスクが高い。
スーパーの多くはこ れまで需要予測や在庫管理を実質的にベンダーに依存 してきた。
専用センターは通過型で保管機能を持た PB台頭、商社系列化で何が変わる  PB の拡大が止まらない。
総合商社による食品卸の系列 化も進んでいる。
メーカーが築き上げてきたサプライチェー ンが大きく塗り替えられようとしている。
その行き着く先 は欧米型の寡占化か、それとも日本特有の小規模分散が 独自の進化を遂げるのか。
誰と組み、誰と戦うか。
経営 レベルのSCMが問われている。
     (本誌編集部) 解 説 17  DECEMBER 2012 をペイさせるには、通常五〇〇〜六〇〇店舗分のボリ ュームを確保する必要がある。
定温センターのテリトリ ーと、製造工場の採算分岐ラインにはズレがある。
独 自の中食商品を今まで以上に増強するという戦略は、 この問題をより浮き彫りにする格好となった。
 これに対応するため、ファミリーマートは二つある いは三つの定温センターの中間地点に製造工場を配備 するなどの施策を採っている。
二〜三センター分の製 造を一つの工場で行えば、採算ラインをクリアできる。
ただし、工場から定温センターまでの横持ち輸送が 頻繁に発生し、物流コストの増加を招いている。
 同社物流部業務グループの松本昭男マネジャーは 「この物流コストをどう吸収するかが現在の課題の一 つになっている。
全体の物流ネットワークと製造工場 の立地のバランスを取りながら、コストが最適化する よう融合を図る必要がある。
新しく物流センターを設 ける際にも、単なる物流の合理化だけでなく、商品 製造との関係まで視野に入れてネットワークを調整し ている」と説明する。
 コンビニの垂直統合が加工食品から和日配や生鮮 品にまで広がっている。
立地や営業時間帯の利便性 に、消費者ニーズに合致した品揃えが加わって、ス ーパーや外食チェーンからさらにコンビニへと顧客が 流れていく。
「RDC/FDC構想」の終わり  事実上、第三者によるリテールサポートを必要とし ないPBとコンビニの拡大は中間流通の再編を加速す る。
三菱食品、日本アクセス、国分の食品卸大手三 社の売上高合計は、この一〇年間で倍以上に膨れあ がった。
三菱商事、伊藤忠商事の総合商社二社によ る食品卸の系列化が進んでいる。
ない。
PBの取り扱いはハードルが高い。
 コンビニにとってはPBの拡大が負担増ではなく、 むしろ物流の効率化に繋がる。
ファミリーマートの矢 野憲生物流部企画グループマネジャーは「PB開発で 協力してもらうメーカーに対しては、物流の効率が 上がるような商品企画やロットをお願いすることが 可能になる。
物流オペレーションの観点から見れば、 PBの増加は悪い面ばかりではない」と言う。
 同社が全国に展開する自社センターに納品される商 品の大半はメーカーからの直送だ。
卸の帳合は挟んで いても、卸のセンターを経由して入ってくる商品はほ とんど無い。
センターのオペレーションは、荷受けや 在庫、流通加工、仕分け、配送といったフローの全 てをコンビニ本部が自ら設計し、事細かく管理してい る。
PBもNBと同様に管理すれば済む。
 コンビニ物流の現在の課題はむしろ和日配や生鮮品 をベースとした「中食」の取り扱いにある。
その強 化をファミリーマートは経営戦略の中で鮮明に打ち出 している。
従来から取り組んでいる「三つ星パスタ」 「Sweets+(デザート)」「できたてファミマキッチン (ファストフード)」「あじわいFamima Café(チルド 飲料)」の四つの重点カテゴリーに加え、昨年九月か ら第五の柱として惣菜・サラダの新ブランド「彩り FamimaDELI」を立ち上げた。
 中食の強化は物流にも影響を及ぼしている。
同社 の場合、中食商品は全国四四カ所に配備している定 温(チルド)物流センターで取り扱っている。
そのう ち一八カ所が製造工場と一体型のセンターだ。
一体型 ではないセンターでも、その近隣に専用製造工場が 立地しているケースもある。
 一つの定温センターから商品を供給できるのは 二〇〇〜三〇〇店舗ほど。
これに対し一つの専用工場 勝つのは誰だ 食品SCM 特集 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 三菱食品 日本アクセス 国分 加藤産業 伊藤忠食品 三井食品 日本酒類販売 旭食品 ヤマエ久野 スターゼン 三菱商事グループ 伊藤忠商事グループ 三井物産グループ 総合 チルド 総合 総合 総合 総合 酒 総合 総合 食肉 21,519 15,819 14,713 7,024 6,054 6,035 4,929 3,773 2,984 2,593 連結 連結 連結 連結 連結 連結 連結 連結 連結 連結 12 年3月期 12 年3月期 11 年12月期 11 年9月期 12 年3月期 12 年3月期 12 年3月期 12 年3月期 12 年3月期 12 年3月期 社名 主要 連結/単体 カテゴリー 11 年度 順位 売上高(億円) 決算期 食品卸の2011 年度売上高ランキング 注:山星屋(単体・2971 億円、菓子)は決算期変更で11 年2 月〜12 年3 月(14 カ月)の変則決算のため、表からは除外した 出所:日経MJ(流通新聞)「第41回日本の卸売業調査」、各社 財務資料等を基に本誌作成 ファミリーマートの矢野 憲生物流・品質管理本 部物流部企画グループ マネジャー ファミリーマートの松本 昭男物流・品質管理本 部物流部業務グループ マネジャー DECEMBER 2012  18  これまで総合商社の食品部門はメーカー相手の食 糧貿易で口銭を稼いできた。
しかし、メーカーが海 外の産地を自ら管理するようになれば、総合商社は 必要とされなくなる。
これに対応して総合商社はビ ジネスモデルの転換を図っている。
国際貿易だけでな く、産地から流通の末端までをカバーして、食品サ プライチェーンの全体をコントロールする。
 最大手の三菱食品はそのコンセプトを「バリューチ ェーン・コーディネーター」と呼んでいる。
加工食品 の菱食、酒類に強い明治屋商事、菓子のサンエス、ロ ーソン向けチルド商品のフードサービスネットワークの 四社を合併して昨年七月に誕生した同社は、二〇一五 年度の売上高目標を三兆円に置いている。
あらゆる 食品カテゴリーでナンバーワンを目指すという。
 それと同時に従来の卸の枠を超えた業態変革を進 める。
一〇月には食品のネット通販事業への参入を発 表した。
価格比較サイトの「価格.com」を運営する デジタルガレージとの合弁で「FOOZA」を設立、 一三年一月中旬にネット通販サイトを立ち上げる。
三 菱食品の「首都圏RDC(リージョナル・ディストリ ビューション・センター)」の一角をその物流拠点と して使う。
 同社は菱食時代の九〇年代に「RDC/FDCネッ トワーク」と呼ぶ加工食品のプラットフォームを一〇 年がかりで構築した。
重装備のマテハン機器を導入し たRDCでピースピッキングを集中処理。
RDCを衛 星上に取り巻くように配置したFDC(フロント・デ ィストリビューション・センター)に横持ちして、そ こでケース商品とドッキングして店舗に一括納品する という汎用インフラだ。
 その物流サービスを武器に同社は二〇期連続の増収 増益を成し遂げた。
しかし、取引先のチェーンストア が専用センターを持つようになったことで、汎用イン フラは?歯抜け?が目立ってきた。
物量の減少は設 備の稼働率と横持ち輸送の積載率を下げる。
その対 策として近年はRDCとFDCを一カ所に統合する 改修を進めてきた。
 さらに汎用インフラの空きスペースがネット通販の 専用センターとして活用されようとしている。
しか も荷主は卸自身。
「RDC/FDC構想」と共に?物 流の菱食?の時代は去り、卸が小売りを中抜きする 直販にまで手を伸ばした。
「小商い」重視し拠点整備を進める国分  食品のサプライチェーンを丸ごと手中に収める戦略 は伊藤忠商事も同じだ。
傘下の日本アクセス、伊藤 忠食品を合わせた売上高は三菱食品を上回っている。
小売市場においてもコンビニのファミリーマートに加 え、スーパーのユニーを系列化した。
食品分野では出 遅れている三井物産もセブン&アイとの結びつきをテ コに挽回を狙う。
 大手食品卸で独立系は今や国分と加藤産業の二社 だけだ。
その国分は特定の総合商社とチェーンスト アが結びつく食品流通の系列化に対して、伝統的な 「小商い」を重視するという対照的な方針を打ち出し ている。
ニュートラルな立場でGMSから個人商店 まであらゆる小売りをカバーする「全方位外交」だ。
ネット通販や介護施設、調剤薬局といった、食に絡 む新たなチャネルにも対応する。
それと同時に畜産を 除くほぼすべての食のマーケットに対応した「食のフ ルライン問屋」を自らの将来像に位置付けている。
 売上規模には固執しない。
二〇一五年までの第九 次長期経営計画「QUALITY300」では、連 結経常利益二〇〇億円(一一年十二月期は一二八億 国分の秋山隆司取締役 物流改革担当部長兼物 流事業部長 2012年に稼動した国分の「三郷流通センター」(左、埼玉県三郷市、 延べ床7万3597?)と「藤沢流通センター」(右、神奈川県藤沢市、 2万282?)。
いずれも三温度帯の汎用センターで、低温事業強化に 向けた首都圏の主要拠点と位置付けている 19  DECEMBER 2012 勝つのは誰だ 食品SCM 特集 円)、ネットキャッシュ一〇〇〇億円超を目標に設定 している。
売上目標は「あくまで体質強化、売り上 げの質追求を優先し、事業規模はそれに付随する」 との考え方に基づき、あえて盛り込まなかった。
 物流改革には従来以上に本腰を入れる。
今年一月 には経営統括本部直轄の物流改革担当部長のポスト を新設し、営業畑が長い幹部二人を起用した。
営業 部門をメインに歩いてきた人間を物流改革のトップに 起用するのは創業以来初めてのこと。
 その一人、東京支社長から物流改革担当部長とな った秋山隆司取締役物流事業部長は「営業、物流双 方の担当者に新しい観点からモノを考えていく癖をつ けさせる」と抱負を語る。
もう一人の担当部長であ る小松崎寿文執行役員と協力し、全国のエリアごと に、長計に基づく物流効率化の遂行状況チェックな どで陣頭指揮を採っている。
 物流改革の中心的施策として、拠点の統廃合を加 速している。
全国各地に散らばる汎用センターを長 計の期間中、一七〇カ所から一一〇カ所程度まで減 らす方向で調整中だ。
秋山氏は「環境変化に応じて 拠点数をさらに絞り込むこともあり得る。
一〇〇を 切る可能性もある」と言う。
代わりに、三温度帯に 対応する新拠点を順次開設していく。
 一一年中に拠点統廃合のマスタープランをまとめ、 一二年は同社の売り上げ比率で約五割を占める首都圏 エリアの拠点見直しに重点を置いた。
トータルで一五 拠点を閉鎖。
その一方、五月に埼玉県三郷市、九月 には神奈川県藤沢市でそれぞれ大型物流センターが 稼働した。
さらに一三年中には名古屋で常温の大型 センター、東京で新たな三温度帯対応のセンターを設 ける予定だ。
(注)二〇一二年七月三一日付け日本経済新聞  昨年から始まった「製・配・販連携協議会」(注) には、日本の流通の現状に対する経済産業省の危機 感が反映されている。
食品流通におけるSCMの手 法としてアメリカで九〇年代初頭に開発された「E CR( Efficient Consumer Response)」はその後、 ヨーロッパに波及し、啓蒙活動を必要とする時代を 既に終えて、現在は個別の取り組みに落とし込まれ て広がっている。
それに対して日本はいまだに啓蒙 が必要な段階だ。
 ヨーロッパにおけるE C R 運動の全盛期は 二〇〇三年から〇五年くらいだった。
小売りとメー カーとのコラボレーションという点で、当時のヨーロッ パはアメリカに遅れをとっていた。
ウォルマートと P&Gの取り組みに代表されるように、アメリカは 九〇年代にECRを大きく進めて、一定の成果を得た。
 それを見たヨーロッパも二〇〇〇年代に入って本 格的にECR運動を開始した。
流通業のテスコとメ トロ、メーカーではP&G、ユニリーバ、コルゲート、 ネスレなどがそれを牽引した。
ECRは取引先との コラボレーションがベースになるため、業界全体の コンセンサスが大事だ。
その装置として組織された ECRヨーロッパには当時、多くの企業が参加し、 積極的な意見交換や事例発表が行われていた。
 しかし、啓蒙が済めば、次は個別の取り組みに移る。
成果の上がるプログラムをわざわざライバルに公表 する必要はないので、この段階になると活動は水面 下に潜る。
その結果、 ECRヨーロッパの 活動はピークを過ぎ た。
最近は年次総 会の盛り上がりも 以前ほどではなく なっている。
ただし、 それと反比例して個別の取り組みは高度化が進んで いる。
 ECRのコンセプトは日本でも九〇年代から知ら れていた。
しかし、これまで啓蒙活動や取り組みの 機運が盛り上がることはなかった。
ECRが日本市 場に馴染まないとは思わない。
確かにアメリカと日 本では流通構造に大きな違いがある。
しかし、ヨー ロッパのフランスやイタリア、スペインなどは日本と 同様、小規模な個人商店が分散し、市場や卸が大き な役割を果たしている。
著しく寡占化が進んでいる イギリスや北欧とは違って日本に近い。
その影響か フランスのカルフールはECRで出遅れた。
しかし、 その後は姿勢を改め、現在はコラボレーションに本 格的に取り組み、挽回に懸命になっている。
 日本の小売業も今や本格的に海外に出ようとして いる。
しかし、日本の商慣行をそのまま持ち込んで も、現地のサプライヤーには相手にされない。
日本 の流通がいかにガラパゴス化していたのかを肌で感 じているはずだ。
 国内でもウォルマートの傘下に入った西友の取引 制度に対して好意的な評価をするサプライヤーが増 えている。
価格交渉は厳しいが後から不透明なマー ジンを要求されることがない。
メーカーと手を組み 数年かけて商品カテゴリーを育てるというスタイル の同社のコラボレーションは、メーカーと激しい原 価商談を行う小売業よりも信頼できるという評価だ。
日本市場だけは特別で外資系小売業は通用しないと いう考えはそろそろ改めるべきだろう。
   (談) ECRは水面下で広がっている デロイト トーマツ コンサルティング 矢矧晴彦 パートナー (注)サプライチェーンの最適化を目的に、経産省が音頭を 取り、消費財分野におけるメーカー、卸、小売りの代表的 企業一五社を発起人として設立された。
取引慣行の是正、 配送共同化、情報システムの標準化について、それぞれ協 議を行っている。

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから