ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年12号
特集
Case study 流通業 ベイシア──満を持して新常温DCを千葉に稼働

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2012  30 ?ヤドカリ戦略?で物流投資のリスク軽減  群馬県を本拠地とするチェーンストアのベイシア は、圧倒的なEDLP(エブリデー・ロープライス) によって、本家の米国ウォルマート・ストアーズで さえ注目する有力企業だ。
ディスカウント型の総合 小売業態「スーパーセンター」などを、東日本を中 心に十三県に約一〇〇店舗展開している。
 二〇一二年二月期の売上高は約二八七〇億円。
前身の「いせや」から現社名に変更した一九九七 年以降、毎年売上高を伸ばしている。
さらに、大 手ホームセンターのカインズ、作業服専門店チェー ンのワークマンなどと一大流通企業集団を形成、グ ループの年商規模は今期約八三〇〇億円に達する 見通しだ。
 ベイシアのEDLPのカギとなるのが物流だ。
同 社の赤石好弘社長は「流通業界では、大手寡占化 が進むなど優勝劣敗が鮮明になっている。
競合の 中で勝ち残る決め手は物流だ。
“商業の工業化”で コストを一段と引き下げ、競争力を高めなければな らない」と強調する。
 ベイシアの常温商品の物流拠点は現在、前橋流通 センター(群馬県)、千葉流通センター(千葉市)、 矢板流通センター(栃木県)、長野流通センター(長 野県)、藤枝流通センター(静岡県)、名古屋流通 センター(愛知県)の六カ所。
 このうち中核となってきたのが、〇四年九月に 稼動した前橋流通センターだ。
他のセンターがいず れも通過型(TC)であるのに対し、前橋は延べ 床面積約二万八六〇〇?(うちベイシア使用分約 一万九八〇〇?)の在庫型(DC)で、お膝元の 北関東エリアの店別配送と同時に、他のセンターに 商品を供給する横持ち機能を担ってきた。
 その体制が今年一〇月、大きく変わった。
千葉 TCを閉鎖し、その近接地にDCとして千葉流通 センターを新たに開設した。
同社の内山誠ロジステ ィクス事業部ドライセンターマネジャーは「前橋D Cの開設から約八年が経過し、店舗が大幅に増え、 センターのキャパシティが飽和してきた。
その状態 を解消するのがきっかけだった」と説明する。
 他の大手スーパーでは長期出店計画に基づき、物 流拠点を先行して設置するケースもある。
しかし、 ベイシアはそうしない。
「物流拠点を先に設けると、 巨額の先行投資が必要となるうえに、初期には遊 休スペースができやすい。
さらに、途中の出店計画 の変更などにも対応しにくい」(内山氏)という考 えからだ。
 同社はまず、エリア内の貨物量が少ない段階で は、カインズの物流センターの一部をTCとして間 借りする“ヤドカリ戦略”を採る。
カインズは、ベ イシアに先んじて広域に店舗展開をしており、ベイ シアの出店エリアをカバーできる。
カインズにとっ ても、物流拠点の稼動率が上がる。
グループとして ベイシア ──満を持して新常温DCを千葉に稼働  今年10 月、常温商品で2 つ目となる在庫型センターを千 葉に稼働させた。
対象エリアで十分な物量を確保できたこ とから、既存の通過型センターを廃止し、大型拠点を新設 した。
約10%のコスト削減を見込んでいる。
物流の効率化 によってEDLP をさらに強化する。
ベイシア千葉流通センター 所在地 千葉県東金市山田字下山沢944-1 建物構造 地上1階建て(一部2階) 敷地面積 40,554? 延べ床面積 20.567? トラックバース 61台 従業員数 90人 仕分け能力 8000ケース/時 Case study 流通業 31  DECEMBER 2012 のシナジーを発揮できる。
 対象エリアの物量が十分に担保されて、時が満ち た段階でTCをDCに格上げする。
その第一弾が千 葉DCだ。
「前橋DCの成功事例を水平展開するこ とで、店舗の運営効率化、原価の圧縮を図る」と 内山氏。
今後、矢板、長野、藤枝、名古屋のTC がDCとして独立する際には、前橋と千葉のノウハ ウが水平展開されることになる。
 千葉DCは千葉県のほぼ真ん中、“へそ”の位置 に当たる千葉東金道路・山田ICから至近距離に ある。
鉄骨造り平屋建て(事務所など一部二階建 て)で、敷地面積は約四万六〇〇?、延べ床面積 は約二万六〇〇?。
土地はリースで総投資額は一八 億円だ。
 配送対象は現在、千葉県全域と茨城県南部、栃 木県西部、埼玉県南部などの直営三四店舗で、最 大で約八〇店舗になる見込み。
通過額は原価ベー スで初年度三〇〇億円、最大約四五〇億円を予定 している。
 加工食品のほか、日用雑貨、衣料品、住居用品 が対象商品で、店舗で取扱う常温商品の約八割を 供給する。
取扱アイテム数は、加工食品の在庫型が 約三〇〇〇、通過型が約四〇〇〇。
非食品はすべ て通過型となる。
 週一回転以上するような主要取引メーカーの商品 を中心に、貨物量の七〇〜八〇%を在庫するのが 目標だ。
運営管理は自社で行うが、庫内業務は3 PL方式で、日立物流に委託した。
ベイシアの正社 員一名、日立物流約九〇名、うち正社員は一〇名 という陣容だ。
定休日は日曜日(祝日は稼動)。
 センターの目玉は店舗に対する“カテゴリー別納 品?だ。
前橋DCで採用した仕組みを、千葉DC にも導入した。
旧千葉TCでは、カーゴテナーで各 店舗に納品していたため、店舗では売場で商品を 仕分けてからの陳列作業を行わねばならず、手間 がかかった。
 しかし、千葉DCでは、商品を予めカテゴリー 別に仕分けて小型の台車に積み、台車ごとトラック に乗せて出荷している。
台車は店舗に着くと、売 場まで直接搬入して、そのまま商品の陳列作業が できる。
これにより、店舗の生産性が大幅に向上 する。
 商品の仕分け作業は、店舗で行うよりも物流拠 点で集約して行ったほうが効率的。
まさに、“商業 の工業化”というわけだ。
メーカーからの直接納品を推進  そのオペレーションは以下の通り。
入荷用トラッ クバース(一七台分)で荷受けした商品は検品後、 通過型と在庫型に区分される。
庫内の搬送ライン (ダイフク製)は自動化されており、通過型のケー ス商品は入荷ラインで店別に振り分けられる。
在庫 型商品はいったん保管スペースに格納する。
五三〇 〇パレット分の在庫容量があり、パレットラック六 〇四基、フローラック五六基、中量ラック七四基を 備えている。
 在庫型商品のうち、飲料や調味料など回転の速 い商品はケース単位、レトルト食品など約一〇〇〇 アイテムはピース単位で出荷する。
ピッキングされ た商品は、一時間当たり八〇〇〇ケース処理できる ソーターで店別シュート(四一本)に仕分けられ、 出荷用トラックバース(四二台分)へ。
配送は多い ときで夕方と翌朝の一日二便。
 商品の受発注データは、情報システムで一元管理 している。
データを記載したラベルの自動貼り付け・ 読み取りシステム(無線ラベル発行機五台・オート ラベラー四基・無線ハンディ四〇台)によって、入 荷時とピッキング・出荷時の商品データを照合する ことで、店着時の検品作業を不要にした。
 千葉DCの稼働によって、対象エリアの品出し作 業コストは約一〇%削減される見通しだ。
前橋D C経由を、千葉DCへの直接納品に切り替えるこ とで横持ち運賃が不要になる。
さらに卸を通さな いメーカーからの直接納品を増やすことで、その分 のフィーも下げられる。
ちなみに現在、加工食品の 直接取引は約一割だという。
 今春から加工食品の完全自動発注化もスタートし ている。
「(その運用を高度化して精度の高い)需 要予測ができるようになれば、在庫管理や配車の スケジューリングがより効率化でき、物流費のさら なる削減につなげられる」と内山氏は意欲を見せて いる。
     (フリージャーナリスト・野澤正毅) 最大保管能力は5300パレット分。
パレットラック604基、 フローラック56基、中量ラック74基を備えている。
勝つのは誰だ 食品SCM 特集

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