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72 MARCH 2004
として「LOGITEX体質改革プロジェクト」を設けた。
ロジスティクスの目的は「最大顧客満足を最小コストで実現」で
あるが、経営トップを納得させるには顧客満足もさることながら、コ
スト削減効果を理論的に証明することが最もインパクトがある。 プ
ロジェクトメンバー自身が確信することも重要だが、同時に各カン
パニーをどのように巻き込み、実現に結びつけることが可能かを経
営トップに明らかにすることも必須である。
4 物流拠点最適化モデルの検討
各カンパニーの物流最適化のために、どこにセンターを設ければ
輸配送費が最小になるかを検討した。
作業手順としては、まず容積物量の重心は「全出荷先への物量×
距離の総和」(≒トータル配送費)が最小になる地点と考え、これを
求めた。 カンパニー別に国内出荷容積を推定し、これに輸出物量
(成田・東京港向け)を加え、全国の都道府県市町村別に集計し、
LOGITEXからの総出荷物量重心を算出し、そこを最小物流費の拠点
立地候補としたのである。 この重心を「販売・輸出重心」と名づけ
た。
ただし、この「販売・輸出重心」はLOGITEXからの出荷物量のみ
を対象に求めたもので、国内各工場ならびに輸入に伴う入荷物量を
含んでいない。 このため輸配送のトータルコストが一番安くなると
は言いきれない。 また、海外生産比率のアップで輸入量増の傾向が
強く、全体の輸配送を考えると、港もしくは空港へのアクセスが近
ければ近いほど今後、トータル輸配送コストは下がると考えられる。
こうした観点から総合的に判断し、「販売・輸出重心」、「海港隣接
地」、「空港隣接地」を結ぶ三角形の内側に費用最小の最適解が存在
すると推定した。 そこで、実際の拠点立地候補として、Sea拠点(品
川)・Air拠点(船橋)に「販売・輸出重心」を加えた3カ所で輸配
送費用を比較することとした。
このとき計算した拠点モデル数は全部で35通りにもなった。 こう
したシミュレーションに加えて、各々のカンパニーごとに物流サー
ビスの面から評価を加えて最適モデルを選定した。
検討の結果、各カンパニーのニーズを加味したときにも、最終的
にはSea拠点に全カンパニーの物流を集約する必然性があることが確
認できたと判断した。
5 物流子会社の風土改革
この「国内物流拠点最適化プロジェクト」の実施により、
LOGITEXは物流子会社の風土改革をも実現することができた。 すな
わち、体質変革による自主独立への挑戦と、一般物流業者とコス
ト・サービスの両面で同等の能力のある企業体への新生を目指すこ
とになった。 具体的な取り組みとしては、組織の簡素化、直接部門
の低費用化の実現、改善専任部門の新設とスタッフの育成、物流機
能の拡大などを掲げることができる。
2月のフォーラムでは、デム研究所の城戸俊二社長に「新しいプロ
ジェクトマネジメント(PM)教育方法論」を紹介してもらった。 そ
の内容は次回、紹介する。
3月のフォーラムはロジスティクス技術の研究として、JILSの浜崎
章洋氏による「ロジスティクス成熟度評価」と題した講演を予定し
ている。
このフォーラムは年間計画に基づいて開催しているが、単月のみ
の参加も可能。 この場合は1回の費用が6,000円となる。 フォーラムに
参加希望の方や、SOLE東京支部の活動内容に関するお問い合わせは
sole_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス
技術、マネジメントに関する意見交換を行い、会員相互の啓発に努め
ている。
前回フォーラムは1月21日に開催され、オリンパスロジテックスの
取締役東京センター長、酒井路朗氏による講演「オリンパスの国内
物流拠点最適化と物流子会社の風土改革の同時実現…副題:顧客と
は誰のことか」が行われた。 以下、講演の概要を紹介する。
はじめに
私が初めてロジスティクスという言葉、概念に接したのは、当学
会(SOLE)の資料による。 システム、製品のコストはライフサイク
ルを通して見なければいけないという、いわゆるライフサイクルコス
トの主張は大変、インパクトがあった。
以来、その考えをベースにオリンパスの物流改革を手がけてきた
のだが、昨年、その成果が評価され日本ロジスティクスシステム協
会(JILS)のロジスティクス大賞を受賞することになった。 本日は
その内容の一端をお話しさせていただく。
1 オリンパスの物流改革前の問題・課題
オリンパスは社内カンパニー制を導入し、デジタルカメラなどの
映像関連商品、内視鏡などの医療機器、測定器などの工業機器を製
造・販売している。 だが、これらの多種多様な製品を、異なる市場
へ販売しているため、各カンパニーはあたかも独立した企業のごと
く個別の物流ニーズを持っていた。 また、海外生産へのシフトとそ
の拡大などグローバリゼーションの面からも大きな環境変化が続い
ていた。
一方、オリンパスの物流子会社であるオリンパスロジテックス(以
下、LOGITEX)は、オリンパスのすべての製品保管・包装・輸配送
に携わってきた。 その拠点は八王子地区と伊那地区に大小15カ所あ
り、合計の延べ面積が約一万坪ある倉庫群である。 この倉庫の分散
こそが、迅速に変貌すべきオリンパス全体の物流の足かせとして物
流改革を難しくしていた。 物流コスト増・在庫増の問題などに対し、
抜本的かつ効果的な対策が打てない状況だった。
将来の事業展開を考慮した顧客最優先・全体最適・トータルライ
フサイクルコスト削減の方向性がなかった、すなわちロジスティク
スの観点がなかったのである。
2 国内物流拠点の最適化の実現
この状況を打開するために、2000年春にオリンパスの物流推進部
とLOGITEXが共同で「国内物流拠点最適化プロジェクト」を発足。
全体最適・SCMの観点から各カンパニーの異なる要望を整合し、
2001年8月に拠点を川崎に統合して国内物流拠点の最適化を実現した。
同時に、物流子会社のあり方を抜本的に見直した結果、約28%のコ
スト削減と大幅な在庫削減を実現することができた。
3 物流改革プロジェクトのポイント
物流拠点の統廃合は全体最適の視点から全カンパニーを巻き込む
事業であり、オリンパス本体の“横機能”(営業管理本部や生産技術
本部等)が指揮をとらなければ整合は無理である。 各カンパニーの
意向・ニーズを徹底して引き出し、同じ土俵に乗せることが不可欠
だ。
さらに、オリンパスの経営トップの強力なバックアップもまた絶
対条件だった。 実際のプロジェクトは、全社推進体制として「物流
改革推進実行委員会」を設置し、その下に実行推進体制として「物
流拠点統合推進プロジェクト」と、LOGITEXの改革を推進する組織
SOLE東京支部フォーラムの報告
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