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DECEMBER 2012 38
物流センターの運営を内製化
牛丼チェーン第三位の松屋フーズは二〇一一年
度に過去最高となる年間一二五店舗(うち牛めし
定食店一一八店舗、とんかつ業態七店舗)を出店
した。 今年度も半期で六五店を出店、十一月時点
で総店舗数は一〇二八店舗(とんかつや鮨など牛
丼以外も含む)に達している。 国内約一八〇〇店
舗のすき家、同約一二〇〇店舗の吉野屋を激しく
追撃している。
一一年十一月に完成した埼玉県比企郡川島町の
「川島生産物流センター」が、松屋の出店攻勢を支
えている。 全国の店舗に肉類を供給する工場であ
ると同時に、最大六〇〇店をカバーする広域配送
拠点としての機能も備えた同社初の生産・物流兼
用拠点だ。
同センターは土地・建物共に自社物件で総投資
額は四七億円。 延べ床面積は約一万三〇〇〇?の
三階建てで、一、二階が物流センター、三階が食
材加工工場となっている。 トヨタL&Fの協力を
得て専用のWMSを開発し、自動ピッキングシステ
ム、自動倉庫、自動仕分けシステムなどのマテハン
機器を導入している。 建物には大きくロゴと「M
ATSUYA」の文字を配置し、ブランドのPR
にも活用している。
工場部分では、「ショートプレート」と呼ばれる
板状の肉を用途別に加工し、決められた枚数・量
に合わせてパックして、自動倉庫に保管する。 在
庫は原料で一〜二日分。 生産の翌日には出荷され
翌日もしくは翌々日には店舗に到着する。
これまで同社は関東地区に、輸入拠点を兼ねる
大黒ふ頭DCのほか、習志野TC、府中TC、鶴
ヶ島TCの計四
つの物流センタ
ーを構えていた。
川島センターの
新設に伴い、こ
のうち鶴ヶ島T
Cを廃止・吸収、他の三センターが担当していた
店舗も半分以上を川島センターに集約した。 工場
併設型の川島センターへの集約によって店舗への直
送を進めた。
同社では全国の物流センターの運営をこれまです
べて3PLにアウトソーシングしてきた。 しかし、
川島センターでは物流の内製化に踏み切った。 一つ
のセンター内のオペレーションを、生産と物流で分
離しない方が良いという判断だった。
同社の山田知則製造部川島生産物流センター物
流グループグループマネジャーは「生産工場の出荷
業務は以前から自社で行っており、ノウハウもあ
る程度は蓄積していた。 だが、物流業務を自社で
本格的に行うのは初めてで、下調べはしたが、や
ってみて初めてわかることも沢山あった」と言う。
ピッキング業務の所要時間は想定通りだったが、
その下準備に手間取った。 荷物が到着し、検品を
し、ラップをはがし、混載をばらして品種ごとに
並べ替えるという、これまで当たり前のように業
務委託先にやってもらっていた作業に、想定して
いたよりも多くの時間が必要だった。
ピッキングの品質についても試行錯誤があった。
食材のピッキングはスーパーで買い物をするイメー
ジに近い。 カゴに食材を入れていく際に、固いも
のを下、柔らかいものが上になるように隙間無く
詰めるにはコツがいる。 店舗での検品作業を楽にす
松屋フーズ
──自社運営の戦略拠点を新設し出店攻勢
生産機能と物流機能を統合した戦略拠点を新設。 それま
で3PL に委託してきた庫内オペレーションを内製化した。
食材の店舗直送率を高めると同時に物流センターへの横持
ち輸送費を解消した。 物流インフラの整備を進めて出店ス
ピードを上げる。 同様の拠点を次は関西に建設する計画だ。
(渡邉一樹)
Case study 外食チェーン
山田知則物流グループ
グループマネジャー
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るためには、商品の種類や数を一目で分かるよう
に詰める必要がある。 そうした細かなノウハウを、
オペレーションを通して積み上げていった。
いったん手順が固まり、従業員が習熟すると、
効率・品質は一気に良くなった。 自動ピッキング
システムの導入で、作業員の歩行距離が短縮され
た。 自動仕分けシステムがシンプルな作業動線を実
現した。 自動倉庫のおかげで出入庫作業が軽減さ
れ、冷凍環境下での作業も無くなった。 在庫数の
把握や作業の進捗状況がシステムで把握できるよ
うになり、人員配置や出荷時間の調整も容易にな
った。 オリコンに直接出荷先の店舗名を印刷する
システムなどの設備もミスの低下に貢献した。 コス
ト面でも横持ち費用の削減も含めて従来比で年間
数千万円規模の効果が上がっているという。
現在、物流センター部分では日々三〇〜四〇人
のスタッフが勤
務している。 店
舗への納品時
間は毎日二〇
時から翌朝五
時ぐらいまで。
それに合わせて
シフトを組んで
いる。 客数は
週末に増す傾
向があるため、
木金土の出荷
は多めになる。
新商品販売や
テレビコマーシ
ャルを打った
タイミングで特
需も起きるが、
繁閑の波は最
大でも一・二倍
レベルと安定
している。
配送は運送
会社への委託
だが、品質の維持には注意を払っている。 四半期
に一度の頻度で協力会社と会議を開くほか、抜き
打ちチェックをすることもある。 物流グループのス
タッフが店舗に出向いて、ドライバーが時間通りに
到着しているか、製品を店舗に運び入れる時にエ
ンジンを切っているか、トラックの観音扉を閉めて
いるか、追突防止のコーンを置いているか、車止
めをしているか等々の取り決めが守られているか
をチェックする。
夜間の納品には、店舗周辺住民への配慮が不可
欠だ。 また、主力となっているビルインタイプの店
舗では、裏口からの納品ができないケースも多く、
店内で食事をしている顧客への配慮や店内での事
故が起きないような丁寧な納品が必須となってい
る。
西日本は六甲アイランドに拠点を建設
毎週のようにある新規開店や、三週間〜一月に
一度ある新製品の開発に合わせて、庫内・配送ラ
インの組み直しも行っている。 店舗の少ない地方
では共同配送の余地も大きいと睨んでいる。 山田
グループマネジャーは「今のところ共同配送は業務
委託先に任せているが、今後は自らが情報発信を
行って、より効率的な組み合わせを追求していき
たい」と言う。
川島センターの完成で、首都圏の物流改革は一
段落ついた。 次は西日本での店舗拡大に備えるた
め、関西地区にも生産拠点を設けて、川島と同じ
ように生産・物流を一体化する計画だ。 センター
建設の時期・規模は未定だが、既に神戸市の六甲
アイランドに、約二万平米の土地を一四億八〇〇
〇万円で取得済みだ。
勝つのは誰だ
食品SCM 特集
マテハンシステムの導入で効率化が進んだ川島生産物流センターの内部
トラックへの積み込みを待つ
コンテナ
配送先の店名が印字されてい
るオリコン
ピッキングもシステム制御で
作業効率を上げた
オリコンへは自動印刷システ
ムで直接印字する
自動倉庫システムで冷凍環境
下の作業がゼロに
チルド帯は保冷カバーを活用
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