2012年12月号
ケース
ケース
エステー コスト削減 売上高物流費比率を8期連続で改善フマキラーとのシナジー効果も実現
DECEMBER 2012 48
物流コストの分析システムを導入
エステーの売上高物流費比率は、この一〇
年で大幅に改善した。
二〇〇二年三月期に 三・七二%だったのが、一二年三月期には 二・六八%まで低下。
〇四年以降は売上高 が伸び悩むなか八期連続で改善している。
同社の物流効率化を長年、牽引してきた岡 田章一参与は「当社は二〇年前から売上高物 流費比率を追いかけてきた」と言う。
物流費 比率を経営指標の一つに掲げ、エステーの経 営陣も日頃からその推移や在庫水準などを熱 心にウォッチしてきた。
「ただし、他社との比較はあまり考えてい ない。
物流費の計上方法は企業によって違う し、製品のコスト負担力も異なる。
自分たち が下げ続けることを大事にしてきた」と岡田 参与は説明する。
エステーは日用品業界の共通ITインフラ 運用会社であるプラネットと、そこから派生 したプラネット物流の設立メンバーでもある。
こうした協業の場を通じて他社と情報交換し、 自らの管理レベルを客観視してきた。
物流管理の実務はシェアードサービス子会 社のエステービジネスサポート(STB)が担 っている。
グループの共通業務を管理する目 的で〇五年に設立した会社で、ロジスティク ス事業のほか、小売業の店頭管理支援サービ スなどを手掛けている。
岡田参与は一一年四 月までSTBの社長として、エステーの需給 調整や物流の高度化に取り組んでいた。
その一環で、一〇年には業務管理を高度化 するための新システムを二つ稼働させている。
一つは「PIS」(プロダクション・インベン トリー・セールス)と呼ぶシステムで、製品 の在庫量や販売データを一元管理することに よって需給調整業務を支援する。
この仕組み の導入によってエステーは需給管理の高度化 に成功した(本誌二〇一〇年九月号参照)。
ほぼ同時期に物流コストの分析システムも 導入した。
主にSTBで利用しており、協力 物流会社に委託している輸送業務のコスト管 理や、その際に蓄積されるデータに基づくコ スト分析などを行っている。
エステーにとって、商品別や顧客別に輸送 コストを正確に把握することは長年の課題だ った。
保管料や荷扱料については以前から細 部まで把握できていた。
ところが輸送費につ いては、一〇トン車でどんな製品を運び、金 額はいくらだった、といった協力会社の請求 伝票レベルの情報しかなかった。
日々の輸送データを蓄積し、それを分析す れば改善はさらに進む。
しかし、「その部分 売り上げが伸び悩むなか、8期連続で売上高物 流費比率を改善している。
卸の物流センターの大 規模化に対応して、物流拠点の集約や直送化など を推進してきた。
その管理ノウハウを業務提携先 のフマキラーにも適用。
フマキラーのコストを削減 しながら、自身の物流効率も高めるという好循環 につなげている。
コスト削減 エステー 売上高物流費比率を8期連続で改善 フマキラーとのシナジー効果も実現 エステーの岡田章一参与 49 DECEMBER 2012 はドンブリになっていた。
輸送費を商品ごと に落とし込んだり、顧客ごとに分析するため の仕組みをずっと考えていたのだが、なかな か実現できずにいた」と岡田参与。
そんなな かで出会ったのが上記の分析ツールだった。
主力品の設計を見直しコスト大幅減 エステーは数百万円を投じて、この物流コ スト分析システムを導入した。
協力輸送会社 との間でも新たなルールを整備し、従来は請 求伝票というかたちでしか収受していなかっ た運賃情報をデータでも受け取れるように改 めた。
そのデータとエステー自身の出荷伝票 を突き合わせることでシステムを活用できる 体制を、二カ月ほどかけて整備した。
準備が整うと、さっそく主力製品の一つで ある「ドライペット・スキット三個入り」と いう除湿材の分析に適用した。
二〇年余り前 に発売したこの製品は、当初、七〇〇円程度 で販売されていた。
だが近年は二〇〇円を割 り込む水準まで実勢価格が下がっており、コ スト削減が急務になっていた。
この製品の物流に改善の余地があることは 誰の目にも明らかだった。
約二〇年前の発売 時には、パレチゼーションを前提に製品を設 計していなかった。
このため製品サイズがパ レットに適合しておらず、積み付けたときに 多くのムダな隙間が発生していた。
もちろん、この点は物流部門も自覚してお り、かねて製品の設計変更を要望していた。
だが「ドライペット」は売れ筋商品であり、エ ステーの国内三工場(福島・埼玉・九州)に それぞれ専用ラインを構えている。
設計変更 には数千万円の投資が避けられない。
その妥 当性を判断するためには、投資のリターンを 明示する必要があった。
ところが設計変更によるコスト削減の効果 を正確に見積る方法がなかった。
以前から経 営陣や他部門に尋ねられるたびに、人手で調 べて、おおよそのコスト計算はしていた。
し かし、投資の判断を裏付けられる精度ではな かった。
それだけに新しいコスト分析システ ムへの期待は大きかった。
「ドライペット」について調べた結果は、衝 撃的なものだった。
「売上高物流費比率が 八・四九%もかかっていた。
この物流コスト の高さはもちろんだが、仮に製品の設計変更 をした場合に見込める削減額の大きさにも驚 かされた。
『え、こんなに下がるの?』とい う結果が出た」と岡田参与は振り返る。
データの裏づけを得たエステーは、ついに 「ドライペット」の設計変更に踏み切った。
製 品一個で除湿できる容量(水換算)を三五〇 ミリリットルから四〇〇ミリリットルに増量 工場直送の推進と拠点集約などによって物流の効率化を進めてきた 仕入先 工場 (3工場) 福島工場 埼玉工場 九州工場 在庫センター (3カ所) 福島在庫C 埼玉在庫C 九州在庫C 流通センター (4カ所) プラ物北海道 プラ物中部 近畿流通C プラ物九州 ※プラ物=プラネット物流 製品 仕入輸入 (横持) 横持 横持 工場直送 配送 卸店 物流アウトソーシング 一体運用 エステーの売上高(単体)と物流費の推移 売上高(億円)、物流費(千万円) 売上高物流費比率(%) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 01 /3 02 /3 03 /3 04 /3 05 /3 06 /3 07 /3 08 /3 09 /3 10 /3 11 /3 12 /3 売上高 物流費比率 物流費 DECEMBER 2012 50 し、形状を円筒型から四角のボックス型に変 更。
サイズも改めた。
そして旧製品の供給を 続けながら、生産ラインの刷新に着手。
埼玉 工場からスタートして、福島工場、九州工場 の順にラインを入れ換えていった。
結果として、一枚のパレットに積める製品 数は三〇個から四八個に増えた。
保管効率や 輸送効率が高まったことで、売上高物流費比 率は五・七三%に低下。
この目覚ましい成果 は、物流コスト分析システムの有用性を社内 に認知させることにつながった。
もっともエステーにとって「ドライペット」 は例外的なケースだった。
他の主力製品につ いては、すでにリニューアルなどのタイミング で物流効率の観点から見直していた。
たとえば消臭剤の主力である「消臭力」は、 一ケースあたりの製品数を一八個にしている。
一般には一〇個単位やダース単位が多いため、 あえて一八個という中途半端な入り数にする ことには多くの抵抗があったのだが、物流効 率を盾に押し切った。
このため物流コスト分析システムによって 劇的な改善を次々に実現できるわけではなか ターを構えていた理由は、BCP(事業継続 計画)のためのリスクヘッジという意味合いが 大きかった。
だが東日本大震災を経験し、埼 玉在庫センターの堅牢性が実証されたことか ら、拠点を分散する必然性は薄れた。
そこで 流通センターを集約すると同時に、埼玉在庫 センターに流通センターの機能をもたせるこ とにした。
この拠点集約によって埼玉在庫センターの 運営パートナーである愛宕倉庫の取扱物量は 大幅に拡大した。
さらに後述するフマキラー の物流業務の一部も愛宕倉庫に任せた。
業務 委託先を集約するかたちで協力会社とのパイ プを太くしたことが、一層のコスト削減を後 押しすることになった。
フマキラーの物流業務を受託し効率化 エステーは一〇年五月、殺虫剤大手のフマ キラーと資本・業務提携を結んだ。
すでに物 流面でも本格的な共同化が始まっている。
ま ずはエステーの返品回収の仕組みをフマキラ ーに適用した。
さらに両社の物流拠点も一部 統合して、物流効率化につなげている。
両社の協業は、「業務提携委員会」の物流 部会を通じて、提携の果実を生み出す方策を 模索するところからスタートした。
当初は相 手がどのような物流管理をしているのかもわ からなかった。
互いの物流管理について情報 を交換するうちに、物流の共同化や返品回収 についてエステーがフマキラーに提案するとい った。
それでも、いざ問題が発生したときに 事実関係を裏付けられるツールを得たことは、 物流部門にとって大きな武器になった。
STBの箱守直人シェアードサービス事業 部長は「問題をこの分析システムで掘り下げ ることで原因を特定する。
どこを変えれば良 くなるのかも確認する。
そうやって、ある事 象の問題点や対策の正しさを証明できるよう になった」と説明する。
こうした物流管理手法の高度化と並行して、 工場直送比率の向上や、物流拠点の集約とい った施策にも取り組んできた。
日用品業界では近年、卸売業者の集約が急 速に進んだ。
パルタックやあらたといった大 手卸による物流インフラの整備が進み、これ に応じてメーカーの納品先も大型化した。
そ の結果、製品を細かく仕分ける「流通センタ ー」を経由せず、一〇トン車などで直接、卸 に納品できる環境が整ってきた。
この変化を追い風に、エステーは「工場直 送」の比率を高めてきた。
二年前の直送比 率は全体の二〇%程度だったが、現在では三 〇%以上に増えている。
物流拠点の集約も進めてきた。
二年前に 全国に六カ所構えていた「流通センター」は、 現状では四カ所まで減っている。
埼玉県内に 二カ所あった流通センターを、埼玉工場の近 郊に構える「埼玉在庫センター」に集約した ためだ。
それまで埼玉県内だけで二カ所の流通セン エステービジネスサポートの 箱守直人シェアードサービス 事業部長 51 DECEMBER 2012 にも踏み切った。
カイロを扱うエステーの前 橋センターは、以前から夏場に扱う荷物を探 していた。
フマキラーの殺虫剤と組み合わせ れば一年通して荷物を確保でき、双方にとっ てメリットが大きい。
そこでフマキラーが千葉 県野田に構えていた東日本の物流拠点を、愛 宕倉庫が運用するエステーの前橋センターに 統合することにした。
季節波動を補完しあえる商材を組み合わせ ることで両者の協業は軌道に乗った。
配送の 共同化も視野に入ってきた。
かつて外販をほ とんど扱っていなかったSTBの売り上げの うち、いまや一割程度をフマキラー関連の業 務が占めるようになっている。
この件に絡んでフマキラーは、商品輸送に 貨物鉄道を一定割合以上利用している荷主を 認定する「エコレールマーク」を取得してい る。
エステーがかつて取得しようとして叶わ なかった認証だ。
フマキラーの生産拠点は広島地区に集中し ている。
同社の東日本における物流業務をエ ステーの前橋センターに統合するにあたって、 広島から前橋までの輸送を可能な限り鉄道に 集約した。
物量をまとめることでJR貨物か ら有利なレートを引き出し、同時にモーダル シフトも進めようという目論見だった。
約四五%だったフマキラーの同業務のモー ダルシフト率は急伸し、一二年度の上半期に は七〇%まで高まった。
こうした点を評価さ れて、晴れて「エコレールマーク」の認定を 受けた。
エステーとしては、コスト削減を進 めたうえ、環境に優しい企業イメージをフマ キラーが獲得することにも寄与できた。
今後は「フマキラーさんに生産委託してい るインドネシア関連の物流共同化も視野に入 れながら、活動領域を広げていきたい」と岡 田参与は考えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) う流れが生まれた。
エステーとフマキラーは、いずれも季節性 の強い商品を多く扱っている。
フマキラーが 主力とする殺虫剤のシーズンは二月から九月 ぐらいで、シーズンオフになると流通業者か ら大量の返品が戻ってくる。
その際に流通業 者に着払いで自由に返品してもらうやり方が、 コスト高につながっていた。
一方、エステーも冬場に需要が集中するカ イロなどを扱っているが、その返品回収業務 は以前から効率化していた。
流通業者にある 程度の物量がまとまった段階で、エステーが 手配した車両で集荷する。
この工夫によって 低コスト化を実現していた。
一〇年末にエステーが、返品回収を刷新す るための提案をフマキラーにもちかけた。
当 初は調整業務に少し手間取ったが、一一年五 月にはテスト運用に着手。
エステー色が強く 出過ぎて余計な反感を買うことのないように、 まずプラネット物流が回収業務を手掛ける九 州でテストを行った。
次の段階では広島でも テストを実施した。
結果は上々だった。
九州や広島の担当者が 他のエリアに推奨してくれるといった動きも あって、返品シーズンが本番となる九月を前 に、フマキラーの全国の回収業務をエステー が受託することが決まった。
今年度も従来比 で二〜三割のコスト削減をめざしてエステーが 返品業務を管理している。
両社は今年二月、東日本の製品倉庫の統合 フマキラーの返品回収業務を受託して効率化 ?返品交渉 ?返品依頼 ?引取予定連絡 ?引取依頼 ?引取依頼 ?集荷 ?返品 ?引取予定連絡 ?受信確認 引取予定連絡 卸店 地区返品受付センター フマキラー 支店窓口エステー ビジネスサポート フマキラー 広島工場 フマキラー 担当セールス ※卸店とフマキラーの セールスの返品事前 確認が前提 11:00 受付までが 当日処理
二〇〇二年三月期に 三・七二%だったのが、一二年三月期には 二・六八%まで低下。
〇四年以降は売上高 が伸び悩むなか八期連続で改善している。
同社の物流効率化を長年、牽引してきた岡 田章一参与は「当社は二〇年前から売上高物 流費比率を追いかけてきた」と言う。
物流費 比率を経営指標の一つに掲げ、エステーの経 営陣も日頃からその推移や在庫水準などを熱 心にウォッチしてきた。
「ただし、他社との比較はあまり考えてい ない。
物流費の計上方法は企業によって違う し、製品のコスト負担力も異なる。
自分たち が下げ続けることを大事にしてきた」と岡田 参与は説明する。
エステーは日用品業界の共通ITインフラ 運用会社であるプラネットと、そこから派生 したプラネット物流の設立メンバーでもある。
こうした協業の場を通じて他社と情報交換し、 自らの管理レベルを客観視してきた。
物流管理の実務はシェアードサービス子会 社のエステービジネスサポート(STB)が担 っている。
グループの共通業務を管理する目 的で〇五年に設立した会社で、ロジスティク ス事業のほか、小売業の店頭管理支援サービ スなどを手掛けている。
岡田参与は一一年四 月までSTBの社長として、エステーの需給 調整や物流の高度化に取り組んでいた。
その一環で、一〇年には業務管理を高度化 するための新システムを二つ稼働させている。
一つは「PIS」(プロダクション・インベン トリー・セールス)と呼ぶシステムで、製品 の在庫量や販売データを一元管理することに よって需給調整業務を支援する。
この仕組み の導入によってエステーは需給管理の高度化 に成功した(本誌二〇一〇年九月号参照)。
ほぼ同時期に物流コストの分析システムも 導入した。
主にSTBで利用しており、協力 物流会社に委託している輸送業務のコスト管 理や、その際に蓄積されるデータに基づくコ スト分析などを行っている。
エステーにとって、商品別や顧客別に輸送 コストを正確に把握することは長年の課題だ った。
保管料や荷扱料については以前から細 部まで把握できていた。
ところが輸送費につ いては、一〇トン車でどんな製品を運び、金 額はいくらだった、といった協力会社の請求 伝票レベルの情報しかなかった。
日々の輸送データを蓄積し、それを分析す れば改善はさらに進む。
しかし、「その部分 売り上げが伸び悩むなか、8期連続で売上高物 流費比率を改善している。
卸の物流センターの大 規模化に対応して、物流拠点の集約や直送化など を推進してきた。
その管理ノウハウを業務提携先 のフマキラーにも適用。
フマキラーのコストを削減 しながら、自身の物流効率も高めるという好循環 につなげている。
コスト削減 エステー 売上高物流費比率を8期連続で改善 フマキラーとのシナジー効果も実現 エステーの岡田章一参与 49 DECEMBER 2012 はドンブリになっていた。
輸送費を商品ごと に落とし込んだり、顧客ごとに分析するため の仕組みをずっと考えていたのだが、なかな か実現できずにいた」と岡田参与。
そんなな かで出会ったのが上記の分析ツールだった。
主力品の設計を見直しコスト大幅減 エステーは数百万円を投じて、この物流コ スト分析システムを導入した。
協力輸送会社 との間でも新たなルールを整備し、従来は請 求伝票というかたちでしか収受していなかっ た運賃情報をデータでも受け取れるように改 めた。
そのデータとエステー自身の出荷伝票 を突き合わせることでシステムを活用できる 体制を、二カ月ほどかけて整備した。
準備が整うと、さっそく主力製品の一つで ある「ドライペット・スキット三個入り」と いう除湿材の分析に適用した。
二〇年余り前 に発売したこの製品は、当初、七〇〇円程度 で販売されていた。
だが近年は二〇〇円を割 り込む水準まで実勢価格が下がっており、コ スト削減が急務になっていた。
この製品の物流に改善の余地があることは 誰の目にも明らかだった。
約二〇年前の発売 時には、パレチゼーションを前提に製品を設 計していなかった。
このため製品サイズがパ レットに適合しておらず、積み付けたときに 多くのムダな隙間が発生していた。
もちろん、この点は物流部門も自覚してお り、かねて製品の設計変更を要望していた。
だが「ドライペット」は売れ筋商品であり、エ ステーの国内三工場(福島・埼玉・九州)に それぞれ専用ラインを構えている。
設計変更 には数千万円の投資が避けられない。
その妥 当性を判断するためには、投資のリターンを 明示する必要があった。
ところが設計変更によるコスト削減の効果 を正確に見積る方法がなかった。
以前から経 営陣や他部門に尋ねられるたびに、人手で調 べて、おおよそのコスト計算はしていた。
し かし、投資の判断を裏付けられる精度ではな かった。
それだけに新しいコスト分析システ ムへの期待は大きかった。
「ドライペット」について調べた結果は、衝 撃的なものだった。
「売上高物流費比率が 八・四九%もかかっていた。
この物流コスト の高さはもちろんだが、仮に製品の設計変更 をした場合に見込める削減額の大きさにも驚 かされた。
『え、こんなに下がるの?』とい う結果が出た」と岡田参与は振り返る。
データの裏づけを得たエステーは、ついに 「ドライペット」の設計変更に踏み切った。
製 品一個で除湿できる容量(水換算)を三五〇 ミリリットルから四〇〇ミリリットルに増量 工場直送の推進と拠点集約などによって物流の効率化を進めてきた 仕入先 工場 (3工場) 福島工場 埼玉工場 九州工場 在庫センター (3カ所) 福島在庫C 埼玉在庫C 九州在庫C 流通センター (4カ所) プラ物北海道 プラ物中部 近畿流通C プラ物九州 ※プラ物=プラネット物流 製品 仕入輸入 (横持) 横持 横持 工場直送 配送 卸店 物流アウトソーシング 一体運用 エステーの売上高(単体)と物流費の推移 売上高(億円)、物流費(千万円) 売上高物流費比率(%) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 01 /3 02 /3 03 /3 04 /3 05 /3 06 /3 07 /3 08 /3 09 /3 10 /3 11 /3 12 /3 売上高 物流費比率 物流費 DECEMBER 2012 50 し、形状を円筒型から四角のボックス型に変 更。
サイズも改めた。
そして旧製品の供給を 続けながら、生産ラインの刷新に着手。
埼玉 工場からスタートして、福島工場、九州工場 の順にラインを入れ換えていった。
結果として、一枚のパレットに積める製品 数は三〇個から四八個に増えた。
保管効率や 輸送効率が高まったことで、売上高物流費比 率は五・七三%に低下。
この目覚ましい成果 は、物流コスト分析システムの有用性を社内 に認知させることにつながった。
もっともエステーにとって「ドライペット」 は例外的なケースだった。
他の主力製品につ いては、すでにリニューアルなどのタイミング で物流効率の観点から見直していた。
たとえば消臭剤の主力である「消臭力」は、 一ケースあたりの製品数を一八個にしている。
一般には一〇個単位やダース単位が多いため、 あえて一八個という中途半端な入り数にする ことには多くの抵抗があったのだが、物流効 率を盾に押し切った。
このため物流コスト分析システムによって 劇的な改善を次々に実現できるわけではなか ターを構えていた理由は、BCP(事業継続 計画)のためのリスクヘッジという意味合いが 大きかった。
だが東日本大震災を経験し、埼 玉在庫センターの堅牢性が実証されたことか ら、拠点を分散する必然性は薄れた。
そこで 流通センターを集約すると同時に、埼玉在庫 センターに流通センターの機能をもたせるこ とにした。
この拠点集約によって埼玉在庫センターの 運営パートナーである愛宕倉庫の取扱物量は 大幅に拡大した。
さらに後述するフマキラー の物流業務の一部も愛宕倉庫に任せた。
業務 委託先を集約するかたちで協力会社とのパイ プを太くしたことが、一層のコスト削減を後 押しすることになった。
フマキラーの物流業務を受託し効率化 エステーは一〇年五月、殺虫剤大手のフマ キラーと資本・業務提携を結んだ。
すでに物 流面でも本格的な共同化が始まっている。
ま ずはエステーの返品回収の仕組みをフマキラ ーに適用した。
さらに両社の物流拠点も一部 統合して、物流効率化につなげている。
両社の協業は、「業務提携委員会」の物流 部会を通じて、提携の果実を生み出す方策を 模索するところからスタートした。
当初は相 手がどのような物流管理をしているのかもわ からなかった。
互いの物流管理について情報 を交換するうちに、物流の共同化や返品回収 についてエステーがフマキラーに提案するとい った。
それでも、いざ問題が発生したときに 事実関係を裏付けられるツールを得たことは、 物流部門にとって大きな武器になった。
STBの箱守直人シェアードサービス事業 部長は「問題をこの分析システムで掘り下げ ることで原因を特定する。
どこを変えれば良 くなるのかも確認する。
そうやって、ある事 象の問題点や対策の正しさを証明できるよう になった」と説明する。
こうした物流管理手法の高度化と並行して、 工場直送比率の向上や、物流拠点の集約とい った施策にも取り組んできた。
日用品業界では近年、卸売業者の集約が急 速に進んだ。
パルタックやあらたといった大 手卸による物流インフラの整備が進み、これ に応じてメーカーの納品先も大型化した。
そ の結果、製品を細かく仕分ける「流通センタ ー」を経由せず、一〇トン車などで直接、卸 に納品できる環境が整ってきた。
この変化を追い風に、エステーは「工場直 送」の比率を高めてきた。
二年前の直送比 率は全体の二〇%程度だったが、現在では三 〇%以上に増えている。
物流拠点の集約も進めてきた。
二年前に 全国に六カ所構えていた「流通センター」は、 現状では四カ所まで減っている。
埼玉県内に 二カ所あった流通センターを、埼玉工場の近 郊に構える「埼玉在庫センター」に集約した ためだ。
それまで埼玉県内だけで二カ所の流通セン エステービジネスサポートの 箱守直人シェアードサービス 事業部長 51 DECEMBER 2012 にも踏み切った。
カイロを扱うエステーの前 橋センターは、以前から夏場に扱う荷物を探 していた。
フマキラーの殺虫剤と組み合わせ れば一年通して荷物を確保でき、双方にとっ てメリットが大きい。
そこでフマキラーが千葉 県野田に構えていた東日本の物流拠点を、愛 宕倉庫が運用するエステーの前橋センターに 統合することにした。
季節波動を補完しあえる商材を組み合わせ ることで両者の協業は軌道に乗った。
配送の 共同化も視野に入ってきた。
かつて外販をほ とんど扱っていなかったSTBの売り上げの うち、いまや一割程度をフマキラー関連の業 務が占めるようになっている。
この件に絡んでフマキラーは、商品輸送に 貨物鉄道を一定割合以上利用している荷主を 認定する「エコレールマーク」を取得してい る。
エステーがかつて取得しようとして叶わ なかった認証だ。
フマキラーの生産拠点は広島地区に集中し ている。
同社の東日本における物流業務をエ ステーの前橋センターに統合するにあたって、 広島から前橋までの輸送を可能な限り鉄道に 集約した。
物量をまとめることでJR貨物か ら有利なレートを引き出し、同時にモーダル シフトも進めようという目論見だった。
約四五%だったフマキラーの同業務のモー ダルシフト率は急伸し、一二年度の上半期に は七〇%まで高まった。
こうした点を評価さ れて、晴れて「エコレールマーク」の認定を 受けた。
エステーとしては、コスト削減を進 めたうえ、環境に優しい企業イメージをフマ キラーが獲得することにも寄与できた。
今後は「フマキラーさんに生産委託してい るインドネシア関連の物流共同化も視野に入 れながら、活動領域を広げていきたい」と岡 田参与は考えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) う流れが生まれた。
エステーとフマキラーは、いずれも季節性 の強い商品を多く扱っている。
フマキラーが 主力とする殺虫剤のシーズンは二月から九月 ぐらいで、シーズンオフになると流通業者か ら大量の返品が戻ってくる。
その際に流通業 者に着払いで自由に返品してもらうやり方が、 コスト高につながっていた。
一方、エステーも冬場に需要が集中するカ イロなどを扱っているが、その返品回収業務 は以前から効率化していた。
流通業者にある 程度の物量がまとまった段階で、エステーが 手配した車両で集荷する。
この工夫によって 低コスト化を実現していた。
一〇年末にエステーが、返品回収を刷新す るための提案をフマキラーにもちかけた。
当 初は調整業務に少し手間取ったが、一一年五 月にはテスト運用に着手。
エステー色が強く 出過ぎて余計な反感を買うことのないように、 まずプラネット物流が回収業務を手掛ける九 州でテストを行った。
次の段階では広島でも テストを実施した。
結果は上々だった。
九州や広島の担当者が 他のエリアに推奨してくれるといった動きも あって、返品シーズンが本番となる九月を前 に、フマキラーの全国の回収業務をエステー が受託することが決まった。
今年度も従来比 で二〜三割のコスト削減をめざしてエステーが 返品業務を管理している。
両社は今年二月、東日本の製品倉庫の統合 フマキラーの返品回収業務を受託して効率化 ?返品交渉 ?返品依頼 ?引取予定連絡 ?引取依頼 ?引取依頼 ?集荷 ?返品 ?引取予定連絡 ?受信確認 引取予定連絡 卸店 地区返品受付センター フマキラー 支店窓口エステー ビジネスサポート フマキラー 広島工場 フマキラー 担当セールス ※卸店とフマキラーの セールスの返品事前 確認が前提 11:00 受付までが 当日処理
