ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年1号
特集
第2部 グローバル競争のSCM戦略 「トップダウンでSCMの意思決定を」 PwC PRTMマネジメント 尾崎正弘パートナー、上野善信マネージャー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

日本企業のグローバル化は周回遅れ ──
咫OPの分野ではサムスンがベンチマークの対 象となっているようです。
少なくとも日本の家電メ ーカーはどこもサムスンを目標に置いている。
尾崎 サムスンがグローバルオペレーションに長けて いるのは確かです。
今までのサムスンのビジネスモデ ルを一言で表すとすれば、『ファストフォロワー(迅速 な追随者)』という言葉が最も相応しい。
製品自体は それほど革新的であるわけではない。
しかし、イノ ベーティブな製品が市場に出ると、それを取り込み、 改良を加え、安く大量に売りさばく。
それを可能に している要因の一つが、卓越したグローバルオペレー ションです。
 一方の雄のアップルは、イノベーション追求モデル です。
サムスンとは方向性は異なりますが、グローバ ルオペレーションの卓越性という意味では共通してい ます。
アップルはその製品創造力にのみ着目されが ちですが、オペレーション力も見落とせない強みで、 その特徴はアーキテクチャ設計力とコラボレーション 力にあると言えます。
 製品開発では、製品コンセプトと製品アーキテクチ ャを徹底して考え抜いたら、その後の詳細設計の大 部分は外注してしまう。
自分達で担当するのはヒュ ーマンインタフェースとインダストリアルデザインぐ らいで、回路設計やメカ設計などは全部外注。
彼ら としてはそこは低付加価値業務だという判断です。
 サプライチェーンのアーキテクチャに関しても類似点 があります。
アップルは自分ではほとんど工場を持た ず、企業間の業務インターフェースの設計に注力し、 実際のオペレーションは新興国のEMSや部品サプラ イヤー、あるいは3PLに委託しています。
それでい て六〇万台もの新製品を世界同時に発売するといっ た離れ業をコラボレーションによって実現しています。
日本のメーカーと比べるとグローバルオペレーションは やはり一枚上手と言わざるをえません。
 日本のメーカーは今、サムスンとアップルという全 く違うタイプのライバルから同時に攻勢を受けていま す。
そしてグローバルオペレーションに関しては現状 では周回遅れとなっている。
とはいえ、サムスンやア ップルのやり方をそのまま真似するだけでは永遠に 追いつけない。
自らの強みを生かした独自のモデルを 生み出していく必要があります。
──
咤達佑離譽戰襪琉磴い蓮外からははっきりとは 見えません。
上野 
魁 11 後の対応では図らずもそれが露呈しま した。
被災した施設の復旧は早かった。
震災から一カ 月後には多くの工場が機能を回復していました。
し かし、実際にはそれから数カ月にわたって十分な稼 働ができなかった。
どのサプライヤーから何をどうや って調達するのか、サプライチェーンを再設計するの に時間がかかったからです。
その一方、グローバル企 業のなかには、わずか数日間でサプライチェーンの再 設計を済ませたところもあった。
この違いは極めて 大きい。
──日本と海外ではS&OPに対する関心に大きな 温度差があります。
日本ではS&OPがほとんど注 目されていない。
その理由をどう考えますか。
尾崎 ピンと来ないんだと思います。
S&OPのコン セプトは、SCMそのものだと言ってもいい。
それ だけに、セールスとオペレーションの調整ならウチだ って前からやってきた、当たり前の話だと考えてし まう。
実際、日本のメーカーが何もやっていないわけ ではない。
需給調整会議や製販合同会議に担当者を JANUARY 2012  18 PwC PRTMマネジメント 尾崎正弘パートナー、上野善信マネージャー 「トップダウンでSCMの意思決定を」  サムスンやアップルなどのライバルと比較すると、日本企 業のグローバル経営は周回遅れにある。
まずはキャッチアッ プが必要だ。
S&OPを始めとするソリューションを導入して トップダウンの意思決定を強化する。
そのうえで自らの強み を活かした独自のモデルを見つけ出していかなくてはならない。
(聞き手、大矢昌浩、梶原幸絵) グローバル競争のSCM戦略 特 集 集めて計画策定は行ってきました。
 しかし、そうした会議における議論には限界があ った。
在庫リスクと機会ロスリスクのトレードオフな どについても、データ分析に基づいた周到な経営判断 まで行かず、『声の大きなほうの意見が通る』みたい なことになる。
そして結局、『営業が作った販売計画 を基に各部門で独自に鉛筆を舐めて計画を作る』こ とが普通になる。
需給調整と言いながら、販売計画 →生産計画→物流計画という一方通行です。
──それを一つの計画に統合しようというのがS& OPですね。
上野 統合することが技術的に可能になったんです。
例えば、金額ベースの販売計画を数量ベースのオペレ ーション計画に置き換えてみたところ、オペレーショ ンに大きな負担のかかることが分かったとします。
そ こでオペレーションの効率に配慮して計画を修正する と、金額ベースにはどのような影響が出るのか。
そ れをシミュレーションするのに従来は丸一昼夜かかっ ていた。
 各部門の担当者がシミュレーションのたびに毎日集 まるわけにも行かないので、結局は各部門が経験と 勘を働かせてバッファーを持つなりして解決するしか なかった。
ところが現在は同様のシミュレーションが 数秒で処理できてしまう。
複数のシナリオを事前に 用意して、それを基に議論できるようになっている。
つまり初めて本来の意味でのSCMのPDCAサイ クルを回せるようになったわけです。
──
咤達佑竜蚕儚弯靴髻△覆柴本企業は自分のも のにしようとせず、サムスンはすぐに採り入れること ができたのでしょう。
尾崎 先ほどピンと来ないと言いましたが、もっと 言えば苦手なんだと思います。
一般に日本企業は現 場重視のボトムアップ型組織です。
それ自体は悪いこ とではなく今後も強みとして維持していくべき部分 なのですが、問題はその裏返しでトップダウンの意思 決定と実行が不得手なところです。
 見過ごされがちですが、S&OPの肝は『意思決 定』なのです。
在庫/機会ロス、コスト/安全率、等 のトレードオフを踏まえ経営視点で判断し、トップダ ウンでの実行が求められます。
これは多くの日本企 業にとって組織文化的にも組織能力的にも簡単な事 ではありません。
それに対してサムスンに限らずLG や現代自動車などの韓国系のグローバル企業は、上意 下達の典型的な軍隊型組織ですから、上がしっかり 意思決定しその指示が末端まですぐに徹底されます。
SCMの「司令塔」が必要 ──どうすればキャッチアップできますか。
尾崎 日本企業が現状を打開する第一歩は、自分た ちのS&OPの実力をベンチマーキングを通じて客観 的に把握することです。
他社とのパフォーマンスギャ ップを定量的に把握すると共に、自社業務モデルと ベストプラクティスとの差を明確にする。
そのうえで 改革ビジョンを組織として合意し、ステップ・バイ・ ステップで改革に取り組む。
 そうした議論を重ねていくことで多くの企業は、S CMに関する『司令塔(コントロールタワー)』の必 要性に気がつくと思います。
KPIを監視、経営判 断に必要な情報をトップに提供し意思決定をサポート する、そして意思決定を踏まえて各部門の活動を支 援/調整する組織と仕組みを作るわけです。
そうやっ て経営レベルでPDCAをしっかり回していく中で、 サムスンともアップルとも違う、日本の強みを活かし たモデルを見つけ出していく必要があります。
19  JANUARY 2012 上野善信マネージャー 尾崎正弘パートナー  1976年に米国で設立された大手戦略コンサルティン グファーム。
世界18カ所に拠点を置き、600人以上の コンサルタントを抱える。
事業戦略の立案に加えて事業 戦略と実務をつなぐことにフォーカスし、コンサルティ ングサービスを提供。
特にR&D、SCM、マーケティング・ セールスマネジメントおよびカスタマーサービスの分野 に強みを持つ。
東京オフィスは99年に開設。
2011年、 英国を本拠とするプライスウォーターハウスクーパース (PwC)の傘下に入った。
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