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FEBRUARY 2012 20
豊通物流
──トヨタ仕込みのハンドリングを武器に
親会社の豊田通商の約6割の物流業務を担っている。
これまでは日本からの自動車部品輸出の拡大で取扱規模
を伸ばしてきた。 しかし、今後は海外におけるオペレーショ
ンに軸足を移す。 日本でトヨタに鍛えられた経験がそこ
でも武器になる。 (聞き手・大矢昌浩)
中小部品メーカーを主要荷主に
──事業の内訳は?
「売り上げの約半分が自動車部品関連で、残りは
化学品や素材、金属などです。 売り先としては親会
社の豊田通商向けが約七割、関連会社が二割、残り
の一割が純粋な外販です」
──自動車部品を「ティア1(一次取引先)」から
組み立てメーカーに納品しているのですか。
「いや、我々は『V
to
V( Vendor toVendor)』
と呼んでいるのですが、中小の部品ベンダー間の物
流が中心です。 ティア3からティア2、ティア2か
らティア1、その逆もありますし、同じ自動車部品メー
カーの国内工場と海外工場を結ぶ物流もある。 自動
車部品は多品種少量かつ多頻度で、複雑に動いてい
ます。 それを当社がコントロールして生産ラインに
納品しています」
「例えば愛知県みよし市に二〇〇五年に開設した
『三好センター』では、海外にあるトヨタさんやデン
ソーさんの工場に送る中小メーカーの部品を集中的
に管理しています。 物量のあるトヨタさんやデンソー
さんであれば、自分で持っていける。 そこで当社は、
それ以外の中小メーカーの部品を三好センターに集
めて、混載便にまとめて海外に輸出しているんです。
既に『三好センター』はフル稼働状態ですので、今
後は輸入部品が増加することも期待して今年一月六
日に『第2三好センター』を新たに稼働させました。
投資総額は約二二億円で、売り上げとしては初年度
が六億円、五年後の一七年度に十二億円を見込んで
います」
「またトヨタ自動車九州の隣接地(福岡県若宮市)
には『九州センター』を置いています。 中部地方で
生産した部品を九州センターに持ち込み当社が現地
で組み立ててから生産ラインに納入しています」
──そうした中小メーカー向けのサービスを、どうやっ
て営業しているのですか。
「豊田通商の『グローバル生産部品・ロジスティク
ス本部』が営業し、当社がオペレーションを処理す
るという役割分担です。 同じスキームで電子部品を
対象とした『安城デバイスセンター』(愛知県安城市)
や化学品などのかんばん納入センター、車のシート
関係の『豊田ファブリックセンター』(愛知県豊田市)
等を運営しています」
──リーマンショック以降も豊通物流の業績が堅調
だった理由は?
「ものづくりに関わる物流というのは、それほど
急激に増えたり減ったりしません。 また、当社が取
り扱っている製品には日本でしか生産できないもの
が多い。 ビス一つとっても日本でしか作れないもの
が今でもかなりあるんです。 そのため輸出先が先進
国から新興国にシフトしても日本から出ていく量と
しては、それほど影響を受けない。 リーマンショッ
クで一時的に荷物は減ってもすぐに戻った」
「それともう一つ、豊田通商の物流を段階的に当
社に集約してきたことも業績の下支えになりました。
一〇年ほど前まで、豊田通商の物流に占める当社の
シェアは三五%に過ぎませんでした。 それが現在は
五八%まで上がっている」
「〇六年に豊田通商はトーメンとの合併に踏み切っ
ています。 その相乗効果を出すために、豊田通商は『物
流会議』と呼ぶプロジェクトを組織し、物流の集約
と豊通物流の強化を進めてきました。 物流コストを
削減し、同時にコンプライアンスを強化する狙いです」
──物流子会社の統合も実施しましたね。
大重幸二 社長
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第5位
21 FEBRUARY 2012
「そのシナジー効果も大きい。 〇七年ににトーメン
の物流管理会社のティーエムロジスティクスと、通関
業の三幸運輸、さらに一一年にはNVOCCのホッ
トライン国際輸送を統合しました。 これによって国
際一貫輸送から海外のオペレーションまで、手を広
げていける体制が整いました」
──これまでの豊通物流は、国内のオペレーション
がメーンだったわけですから、今後はかなり業態が
変わってくる。
「その通りです。 私が豊田通商から当社に移った
のは一一年六月のことですが、それ以前にも豊田通
商の役員として物流会議の議長などを務めていたの
で、豊通物流の概略はあらかた分かっていた。 これ
まで順調だったことは知っていました。 しかし同時に、
これからはどうするのか、という懸念もあった」
「自動車部品の物流はこれから大きく変わります。
国内生産量は現状維持が精一杯で、これから増える
ことはあまり考えにくい。 部品メーカーも海外進出
がティア2のレベルにまで広がってきた。 海外シフト
は今後もどんどん進むでしょう。 豊田通商自身、海
外にテクノパークを立ち上げて日本の部品メーカーの
現地進出を後押ししています。 そうした環境で当社
がこれまでと変わらずに日本からの部品輸出に頼っ
ていれば、近い将来大変なことになる」
「そこで『グローバル六〇』と呼ぶ取り組みを開始
しました。 現在、当社から海外の豊田通商に派遣し
ている社員は一〇人程度に過ぎません。 これを毎年
一〇人ずつ増やして一六年には六〇人まで増やす。
豊田通商は日本では当社にオペレーションを任せてく
れています。 豊田通商の社員に代わって当社が現場
を仕切っている。 海外でも同じ関係を作っていきます。
このことについては豊田通商の合意も得ています」
──これまでは、なぜ海外に手を出さなかったので
すか。
「結局のところ国内だけで手一杯だったんだと思
います。 国内の自動車生産が拡大している間は、そ
れについていくので精一杯だった」
自動車物流の差別化ポイント
──海外の自動車物流は既に多くの日系物流企業が
手掛けています。 豊通物流は後発です。 巻き返しは
容易ではないはずです。
「当社は現場オペレーションを、トヨタさんから仕
込んでいただきました。 自動車物流というのは、必
要なものを必要な分だけ持っていく物流であると同
時に、ビス一本欠けることも許されない、ビス一本
で生産が止まってしまう物流です。 そこで培ったD
NAが海外事業でも当社の強みになる」
──具体的には?
「例えば、当社の三好センターには輸出の船が週
二便であっても、毎日、部品が納品されてきます。
出荷が二便なら納品も週二回にまとめてしまう、ま
た我々の入荷後の処理も週二回に集中させたほうが
効率が良いようでも、そうはしない。 部品メーカー
は納品先の工場の生産に合わせて部品を生産し出荷
する。 それを我々は入荷後すぐに梱包して、他のメー
カーの部品と一緒にコンテナに積み込む。 そうする
ことで、コンテナを受けとった側では仕分けをする
必要がなくなります。 コンテナの順番通りにデバン
ニングするだけで、すぐにデリバリーできる」
「そうした一つひとつのやり方自体は他社であっ
ても真似をすればできるかも知れない。 しかし、そ
の底に流れるDNA、ものづくりへの使命感は簡単
には真似できないと自負しています」
豊田通商の物流事業を集約
豊田通商の100 %子会社で、自動車部品のかん
ばん物流オペレーションおよび輸出梱包をメーンと
する。 2011年3月期の売上高は前年比6 %増の138
億5200万円で過去最高を記録した。 外販比率は約
10%。
1963年、民成紡績(現在のトヨタ紡績)の全額
出資でセントラル倉庫として設立。 73年、豊田通
商が株式を全額引き受け、社名を豊通倉庫に改称。
90年、社名を豊通物流に改称。 2006年の豊田通商
とトーメンとの合併後、トーメン系のティーエムロジ
スティクス、通関業の三幸運輸、NVOCCのホット
ライン国際輸送を吸収合併。
本誌解説
三好センターでは中小メーカーの部品を混載して海外工場
に一括納品している。 今年1月には第2センターも稼働さ
せた
特 集 《平成 24年版》
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