2012年2月号
特集

注目企業 トップが語る強さの秘訣 第17位 瀬戸内物流──現場力でJFEグループの構内物流支える 中島一麿 社長

FEBRUARY 2012  24 瀬戸内物流 ──現場力でJFEグループの構内物流支える  JFE物流の100 %子会社で、製鉄所内の物流業務を 担う。
JFE物流などからの業務移管によって、業容が拡大。
一方で、現場改善と緻密なデータ管理によって利益率 を向上させている。
その現場力は製鉄所のコスト削減 にも大きく寄与している。
     (聞き手・梶原幸絵) 五年間で売上高は二倍に ──親会社のJFE物流とはどのような役割分担に なっているのですか。
 「当社は原材料や半製品の輸送など、製鉄所内の 上流工程の物流を得意とし、JFE物流は製品の扱 いをメーンとしています。
同じ製鉄所でも上流と下 流で棲み分けているイメージです。
また、当社はい わゆる物流業務のほかにも加工業務、配管の清掃な ど製鉄所の環境美化、車両・設備の保全業務などさ まざまな業務を手掛けています」  「当社はもともと川鉄物流の子会社です。
川崎製 鉄と日本鋼管が統合してJFEスチールが発足し、 川鉄物流とNKK物流が合併したのに伴い、〇五年 に当社と日本鋼管のグループ企業二社が合併しました。
〇六年以降、JFE物流からの業務移管が続いており、 業容は大きく拡大しています。
〇六年三月期の売上 高は約七〇億円でしたが、今では一五〇億円になり ました。
今後は二〇〇億円を目標としています」 ──JFE物流からの業務移管の理由は。
 「以前は大まかに言って、JFEスチールからJ FE物流が元請けとして受託した仕事を、当社が請 け負うという三段階の重層構造になっていました。
それを製鉄所内の上流工程の業務については当社に 集約し、当社が元請けとなって一括して行うことで、 仕事と情報の流れをすっきりさせる。
それによって 作業の安全性と効率を高めようという判断でした」  「実際、その通りになりました。
広大な製鉄所内 のさまざまなセクションの間でうまく情報のやり取 りをするよう改めたことで、非常に改善がやりやす くなりました。
西日本製鉄所は倉敷地区と福山地区 に分かれており、現状、当社が元請けになっている のは倉敷地区だけですが、今後は福山地区でもグルー プ会社から業務の移管を受ける方向です」  「現場力によって地道に改善を進め、自社の原価 を引き下げる。
同時に、JFEスチールのコスト削 減に貢献する。
改善活動を進めるために、JFEス チールには、改善に対するインセンティブ制度も設 けてもらいました。
JFEスチールとの間で各セクショ ンの改善目標を設定し、それを達成すれば当社はボー ナスをもらえるというものです。
これによって現場 は大いに活性化されました」 ──JFEスチールにとってはコストアップになりま せんか。
 「それどころかJFEスチールには大変に喜ばれて います。
作業効率を上げれば製鉄所の生産リードタ イムを短縮できます。
当社が担っているのは製鉄所 の中核ともいえる製銑(鉄鉱石から鋼を取り出す工 程または取り出された鉄)・製鋼物流です。
この分 野は製鉄所の生産効率という点で非常に重要なファ クターです。
また、製銑と製鋼はコストの塊で、規 模も大きいだけに細かい改善でも合理化効果として はかなりの金額になります」 ──瀬戸内物流も〇七年三月期以降、利益率が大き く改善しています。
 「〇六年を境にグループから多くの人材が投入され て、会社基盤の整備が始まりました。
これによって、 以前は言われた仕事をその通りに実行していただけ でしたが、一人ひとりが考えながら仕事をする体質 に変わってきたと思います」  「現場の操業状況の見える化とライン(現場を持 つ直接部門)管理者の育成、そして全体の意思疎通 を図るために、あえて会議体を多く設置しています。
会議を通じてスタッフ部門が操業データを収集・解 中島一麿 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第17位 25  FEBRUARY 2012 析し、さまざまなかたちでラインに提供することによっ て、ライン管理者は操業状況を定量的に把握した上 で、現場を見るという体制を作りました。
そのために、 管理部と企画部を新設してスタッフ部門を拡充して います。
以前はライン管理者が直接データ収集をし ていましたが、ライン管理者の負担を軽減し、現場 管理に集中できるように改めました」  「特に会社の操業上の核になっているのが収益改 善会議です。
これは各ラインの課長らによる会議で、 毎週毎週、収支を締めて、その月の収益予想を行う ものです。
それ以前は月末に収支を締めていただけだっ たので、蓋を開けてみて結果に驚くということも珍 しくなかった。
しかし、収益改善会議によって、月 次予算が未達になりそうであれば、対策を考えるよ うになる。
収支に対する意識を持つことで、現場改 善のためのアイデアが出るようになるんです」  「またJFEスチールとの間では、契約と実際の 輸送距離が違っていたり、赤字が出るような単価で 請け負っていたりといった仕事も多くありました。
それらの契約の見直しを進めたことも、利益率が上 がった要因の一つです」 独自技術の外販を検討 ──コスト削減については?  「〇七年頃から、特に車両修繕費の削減に取り組 んでいます。
当社の売り上げの約四割は、自社の人 員と車両によるものです。
この売り上げに占める修 繕費比率が高い。
そのため、車両一台当たりの売り 上げと稼働時間、修繕費を管理しています。
また、 車種別にメンテナンスのデータを蓄積するようにし たことで、どのような状態になれば修繕すべきか、 どのくらいの頻度ですればよいのか、といったこと がわかるようになってきた。
使用年数が経てば経つ ほど、修繕費は上がります。
どの時点で車両を更新 すれば最もコストが押さえられるのかという判断も できるようになりつつある」  「今後は一部の車両にGPSを搭載する予定です。
車両がある一定時間以上動いていなければ、それは 配車が過剰だということです。
あるいはJFEスチー ルの方の都合で待ち時間が発生しているということ も考えられる。
車両の動きを見える化することで、 滞留の原因をつきとめることができる」 ──会社の基盤を強化しても、物流子会社の業績は JFEスチールの生産量に左右されてしまいます。
 「そこで外販を検討しています。
当社には製鉄所 内の配管清掃など行う環境部門があり、同部門の持 つ技術は他社にはないものです。
例えば普通であれ ば配管に足場を組み、人が中に入って危険な作業を 行うようなところを、当社では機械化、遠隔化して います。
安全性が格段に向上する上、さまざまな設備・ 機材を組み合わせて高圧高温洗浄を行うので、作業 品質が高く、しかも工期は短期間ですむ。
この技術 はグループ会社のJFE電制と共同で開発・展開し てきたもので、当社の現場の知恵も大いに活かされ ています。
昨年四月にはJFE電制から事業譲渡を 受け、当社が一括して扱う体制になりました」  「最初は倉敷地区の仕事が中心でしたが、福山地 区からもニーズが出てきて現在はフル稼働の状態です。
近い将来、東日本製鉄所にも進出したいと考えてい ます。
ほんの一部ではありますが、グループ外への 販売もしています。
今後はこれを本格化したい。
ど んな工場でも配管というものはあり、定期的な清掃 が必要です。
それらのニーズに応えるために、体制 を整えながら、さらに技術を高めていきます」 JFE物流からの業務移管で業容が拡大  1990年に川鉄物流(現JFE物流)の子会社として設立。
2000年にアクト物流に社名を変更。
02年から03年にか けて川鉄物流から一部業務の移管を受けた。
03年にク ラシキ物流に改称し、05年に旧日本鋼管グループの福山 日栄、扶桑レクセルと合併。
瀬戸内物流に社名変更した。
 06年以降、JFE物流から業務移管を受け、JFEスチー ル西日本製鉄所の倉敷地区での川上工程の物流業務の 一括元請けとなることで業容を拡大した。
同様に、福 山地区でも元請けとなる見込み。
06年を境に会社の基 盤整備を進め、収支意識を徹底するなど体質転換を図 り、業績を伸ばしている。
今後は外販を本格的に開始し、 製鉄所の外に打って出る。
 安全教育に力を入れているのも特徴。
教育のための「錬 成館」と呼ぶ施設と、製鉄所の危険を体感する施設「錬 磨館」を開設し、協力会社の社員も受け入れている。
本誌解説 06 年 3月期 07 年 3月期 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期 (見通し) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 12 10 8 6 4 2 0 単位:億円 業績の推移 経常利益(右軸) 売上高(左軸) 特 集 《平成 24年版》

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから