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日系企業の第3 次ベトナムブームが起こっている。 地理的
な条件と政治的安定から“チャイナプラスワン”の最有力候
補として注目され、工場の建設ラッシュが続いている。 内需
拡大と外資に対する販売規制の撤廃により、国内販売市場と
しても重要性を増している。 これに伴い、輸出入、国内の販
売物流ともに物流ニーズが拡大している。 (梶原幸絵)
二輪車販売が急拡大
日本梱包運輸倉庫は昨年末、ベトナムで三社目と
なる現地法人、「ニッポン・コンポウ・ホーチミン」を
設立した。 三月にも営業を開始する予定だ。 ベトナ
ム南部における保管、輸送、梱包などの国内物流業
務を当初はメーンとする。 同社を足がかりに日本梱
包は南部での業務を拡大し、将来的にはフォワーディ
ングなどの国際物流機能も展開していく考えだ。
加えて今年中に首都ハノイ近郊と中部のダナンにも
現地法人をそれぞれ設立する。 またベトナム北部最
大の貿易港のあるハイフォンでは通関事務所を設置す
る計画を進めている。
同社のベトナム進出は二〇〇六年で、他の有力日
系物流企業と比べると決して早いほうではなかった。
ここに来ての矢継ぎ早の展開を、同社の長岡敏巳取
締役常務執行役員は「それだけ顧客のニーズが強い。
ベトナムでは内需が拡大しているのに加え、中国やタ
イなどに比べて人件費も安いため、日系企業の進出
は今後も続くだろう。 これに合わせて当社もネットワ
ークの強化を進めていく」と説明する。
これまでは、ハノイに国内物流を主業務とするニ
ッポン・コンポウ・ベトナム(NKV)と国際物流を
担当するNKVロジスティクス(NKVL)の二社を
置き、得意とする自動車関連の物流を手掛けてきた。
二輪車をメーンに部品から完成車までの物流機能を
フルに備え、日本国内と同様のサービスを提供してい
る。
ベトナムでは〇四年頃から二輪車需要が急拡大し
ている。 二〇〇〇年時点では四六万台だった二輪車
生産台数は、一〇年には約三〇〇万台に達した。 こ
れに伴い、二輪車の輸送需要に変化が起きている。
以前は生産拠点のある北部から商業都市ホーチミ
ンへの完成車輸送が主流だったが、最近ではハノイ、
ダナン、ホーチミンの三大都市圏での保管・輸送需要
が増加している。 一方で部品メーカーのベトナム進出
も進んだために、南部から北部への部品輸送も活発
化している。 日本梱包は、ハノイ、ダナン、ホーチミ
ンを拠点にハブ&スポーク型の輸送ネットワークを構
築し、そうした需要に応えていく構想だ。
これまでベトナムでは二度の日系企業進出ブームが
起きている。 第一次は「ドイモイ(刷新)」政策の下、
政情も安定した九四年からアジア通貨危機までの九
七年にかけて。 第二次は中国を補完するチャイナプラ
スワンとして注目された〇五年からリーマンショック
まで。 そして現在、第三次ブームが始まっている。
日系二輪車メーカーは、新工場を建設するなどベ
トナムでの生産能力の拡大を進めている。 旺盛な内
需に対応するばかりでなく、通貨安の続くベトナムか
らの輸出を強化する方針も打ち出している。
兼松など日系五社と、ベトナム国営船社ビナライ
ンズとの合弁物流会社、VIJACO(ベトナム─
ジャパン・インターナショナル・トランスポート)は、
その恩恵を受けている。 リーマンショックで一時物量
は落ち込んだが、その後は年率一〇%程度の成長が
続いているという。
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ぶ日系のパイオニア。 北部の玄関港であるハイフォン
を地盤とし、ハノイおよび近郊のビンフック、ホーチ
ミンなどに拠点を置いている。 運営倉庫面積はおよ
そ一万五〇〇〇平方メートル、自社車両は約九〇台、
人員数は約二四〇人。 輸出入業務から国内輸送まで
総合物流業を展開してきた。
現在、ベトナムでは高速道路、港湾などのインフラ
MARCH 2012 36
ベトナム
──チャイナプラスワンの最有力候補
注目5カ国の物流市場勢力図
第2部
整備が急ピッチで進んでいる。 特に北部は政府主導
で製造業の誘致が進められ、産業集積が急速に進展
したため、輸送インフラが追いついていない。 北部の
玄関口であるハイフォン港は水深が浅いだけでなく、
処理能力も限界に近づきつつあるため、その南東の
ラックフェン地区で港湾の開発計画が進んでいる。
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部では、消費地としてのハノイ、生産拠点としての
ハイフォンというかたちで棲み分けの進む可能性があ
る。 ハイフォン港はこれからどんどん開発が進む。 当
社はハイフォンでの二〇年以上にわたる基盤を活かし
て次の成長につなげたい」と話す。
日系の宅配便も進出
内販物流も順調に拡大している。 ベトナムは人口
八六〇〇万人のうち三〇歳未満の若年層がおよそ五
〇%を占める有望市場だ。 〇九年一月に国内販売に
対する外資規制が撤廃されたのを受けて日系消費財
メーカーの本格進出が続いている。 これまで代理店
経由で販売していた日系メーカーが現地法人による
直接販売に切り替えている。
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は今年三月一日、北部の首都ハノイと南部の商都ホ
ーチミンで宅配便事業を開始する。 一二年度第2四
半期には中部のダナン、その後も各都市に順次エリア
を広げていく計画だ。 主な荷物は部品類だが、通販
向けのB
to
Cも既に一部で取り扱っている。 今後も
B
to
Cの需要は大きいと見て、代引き決済やカード
決済のライセンスを申請した。
ライバルのヤマトホールディングスもベトナムで宅
急便の事業化調査を進めており、参入は時間の問題
と目されている。
37 MARCH 2012
代表的な現地法人
日本通運
山九
日立物流※3
近鉄エクスプレス
日新
三菱倉庫
郵船ロジスティクス※5
バンテック
日本梱包運輸倉庫
主要物流企業のベトナム展開
※1 2012 年1月時点
※2 2011 年 9月時点(外注先の運用車両台数は一定ではないため、ヒアリングベースの概数)
※3 2011 年12月31日時点。 持ち文法適用会社含む。 バンテックグループは除く
※4 日本人スタッフには現地採用日本人も含む
※5 2011 年12月末時点
会社名都市・
拠点数
倉庫延べ床
面積合計スタッフ数運用車両台数
(うち自社保有台数)
29,060?
7,390?※2
─
4,500?
18,000?
なし
48,862?
0
79,322?
4 都市
16拠点
8 都市
8 拠点※1
2 都市
2 拠点
3 都市
5 拠点
2 都市
4 拠点
2 都市
2 拠点
10 都市
31 拠点
2 都市
2 拠点
3 都市
5 拠点
日本人11 人、
現地採用600 人
日本人8 人、
現地採用155 人※1
日本人3 人、
総スタッフ約7人
日本人4 人※4、
現地採用196 人
日本人4 人、
現地採用150 人
日本人2 人、
現地採用10 人
日本人9 人、
現地採用739 人
日本人2 人、
現地採用1 人
日本人10 人、
現地採用1,183人
16 台
(11 台)
─
─
─
─
80 台
(40 台)
約1,000 台
(30 台)
62 台
(62 台)
なし
Kintetsu World Express (Vietnam)、Kintetsu Logistics
(Vietnam)
YUSEN LOGISTICS INTERNATIONAL (VIETNAM)、
YUSEN LOGISTICS SOLUTIONS (VIETNAM)
NIPPON KONPO VIETNAM、NKV LOGISTICS、
NIPPON KONPO HOCHIMINH
ベトナム日本通運
山九ベトナム、山九ロジスティクスベトナム
日立物流ベトナム
NISSIN LOGISTICS (VN)、NR GREENLINES LOGISTICS
MLC ITL Logistics
駐在員事務所
タイ
ラオス
カンボジア
ベトナム
中国
カイラン港
ハイフォン港
ランソン
ハノイ
ラオ・バオ
ダナン
ホーチミン
ミトー
モック・バイ
※2
VIJACO は07 年、ハイフォン地区で日系
初の保税倉庫を開設。 VMI( ベンダー主導型
在庫管理) なども行っている
物流大手の
特集
日本梱包運輸倉庫の
長岡敏巳取締役常務
執行役員
VIJACOの重田和康
会長
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