ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年3号
ケース
ブリヂストン 組織改革 1万4000人余りが所属する大部隊を設立SCMと商品戦略の統合で全体最適を実現

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2012  42 商品戦略・調達・物流を統合  ブリヂストンは二〇〇六年一〇月、「GL C(グローバル・ロジスティックス・センタ ー)」と呼ぶ部署を新設した。
間接部門だけ でも一〇〇〇人規模のスタッフを抱え、グル ープ全体では一万四〇〇〇人余りが所属する 大所帯である。
 
韮味辰話韻縫皀里琉榮阿望播世鯏てた組 織ではない。
サプライチェーンの全体最適化 を進める一方で、サプライチェーンの運用に ともなって集まってくる市場の情報や顧客の 声を社内にフィードバックし、タイヤの商品 戦略や技術開発の方向性を左右する重要な役 割を担っている。
 そのためにタイヤの商品戦略を策定する部 門をはじめ、調達、生産物流、さらには戦略 性の高い原材料や部材を自らつくる内製事業 をGLCに統合した。
傘下には物流子会社の ブリヂストン物流や、インドネシアなどで経 営するゴム農園、内製事業の工場などが含ま れている。
 
韮味辰糧足から半年遡る〇六年四月、ブ リヂストンは経営トップが交代している。
こ のとき就任した荒川詔四社長は「名実ともに 世界一」になるという経営の最終目標を掲げ、 サプライチェーン管理を基軸に据えたマネジメ ントの重要性を強調した。
その荒川社長が新 設した組織がGLCである。
 この組織は現在、常務執行役員をトップ に、「タイヤ商品戦略」、「生産物流・モール ド」、「調達」、「内製事業」をそれぞれ担当す る三人の執行役員(調達と内製事業は兼任) が管理している。
このうち「生産物流・モー ルド」を担当する関口匡一執行役員は、GL  グローバルサプライチェーンの統合を目指し 「GLC(Global Logistics Center)」を2006年に 発足させた。
調達・物流業務に加え、商品戦略部 門までGLCの傘下に置くことで部門間の調整業務 を排除。
意思決定を迅速化し、事業環境の変化に 即応できる柔軟性を獲得した。
組織改革 ブリヂストン 1万4000人余りが所属する大部隊を設立 SCMと商品戦略の統合で全体最適を実現 ブリヂストンのGLCで生産 物流・モールドを担当する 関口匡一執行役員 GLC(Global Logistics Center)の主な組織 GLC 管掌GLC 業務企画本部 消費財タイヤ商品戦略本部 生産財タイヤ商品戦略本部 生産物流管理本部 モールド本部 調達本部 内製企画本部 タイヤ商品戦略担当 生産物流・モールド担当 調達担当 内製事業担当 〈2012 年1月1日現在〉 43  MARCH 2012 C設立の意義を次のように強調する。
 「荒川は一貫して全体最適の重要性を強調 してきた。
とくに最近よく使う表現は『縦と 横』の広がりを最大活用する経営。
『縦』と いうのはサプライチェーンの垂直統合を意味 し、『横』はグローバルな広がりを意味してい る。
原材料の調達から全世界のお客様に商品 を届けるところまでのモノと情報の流れをス ピーディにすることがGLCの役割だ」  ブリヂストンは高品質の原料を調達するた めの天然ゴム園やスチールコードの工場、小 売店にまで至るタイヤの販売組織など、サプ ライチェーンを構成するプロセスの多くをグル ープ内に抱えている。
しかし従来は各組織が 個別に活動し、組織間の調整に時間を要して いた。
これを本当の意味で垂直統合し、グル ープ内のリソースを最大限に活用できるよう にすることが組織改革の狙いだった。
 とは言え、ブリヂストングループの海外販 売比率はいまや七割を超えている。
全世界に 一四万人超の従業員と一八〇余りの生産拠点 を抱え、自社保有あるいはフランチャイズ展 開しているタイヤ販売店は九〇〇〇以上に上 る。
農園から小売店にまで及ぶ事業領域の広 さに加え、グローバル化の進んだ巨大企業の 意思決定を迅速化するのは容易ではない。
 そのために荒川社長は組織全体の大胆な 簡素化も断行している。
グローバルの組織 を、「G H O(Global Head Office)」、「S BU(Strategic Business Unit)」、「GMP (Global Management Platform)」の三つに 大別し、それぞれのミッションを明確化した。
 本部となる「GHO」が定めた経営方針 を、事業の運営主体である「SBU」が実践 し、これをGLCや技術センターなどの「G MP」がサポートするという体制である。
市 場に密着するために各SBUの自主性を活か しながら、SBU間の業務の重複やトレード オフをGLCが調整していく。
まさにGLC は?荒川改革?のキモとなる組織だった。
「見える化」による情報共有を徹底  もっともGLCにサプライチェーンを管理 するための強権が与えられているわけではな い。
タイヤ事業における日常的な投資の判断 や需給調整、その結果としての在庫水準の最 終責任はあくまで各SBUにある。
GLCは これを常にウォッチしながら、適正な状態に あるかどうかをチェックしている。
 だからこそGLCが発足以来こだわってき たのが情報の「見える化」だ。
必要な情報を 常に見えるようにして、それを関係者が徹底 的に共有する。
そうすることで全グループに 横串を刺し、各SBUの活動をサポートしな がら全体として望ましい方向に進むように促 す。
「まずは組織を見直すことで、ブラックボ ックスになっていた部分をすべて見えるよう にした」と関口執行役員は振り返る。
 その上で各SBUの運営に問題はないか、 他のSBUとのバランスは適正かといった点 をKPIに基づいて管理している。
 在庫管理について一例を挙げれば、成熟し た汎用品と、ブリヂストンが先陣を切って市 場を開拓している「ランフラットタイヤ」の ような戦略的な商品では、在庫の持ち方や原 商品戦略から生産・調達・物流までを一元管理するGLCの活動領域はきわめて広い サプライチェーン全体の競争力強化 ?グループ全体最適の視点でのGLC 組織・機能の整備/強化 ?GLC(Global Logistics Center) 活動領域明確化とサプライチェーン 全体の競争力強化策の着実な推進 ◆当社が考える最適なサプライチェーン  領域を対象として活動 ◆お客様ニーズへ迅速に対応できる体制  の構築 開発・設計 etc 商品戦略 調達(原材料・設備) タイヤ生産 タイヤ物流 販売 etc GLC 部署 ステージ Product lifecycle 企画・投入 (導入期) 成長期〜 成熟期 販売終了 (衰退期) GLCの活動領域 一般的な サプライチェーン マネジメント領域 タイヤ商品戦略室 内製マネジメント機能強化 需給オペレーションセンターの新設 ※G-LSCM機能強化 ※G-LSCM=Global Logistics Supply Chain Management 商品戦略 調達 (原材料・設備) 生産・物流 (タイムリーな供給) MARCH 2012  44 材料の調達方針が自ずと変わってくる。
その 判断を各SBUに任せきりにすれば、自部門 の短期的な利益を優先しかねない。
 以前は同じサプライチェーンを構成する機 能でありながら、それぞれに個別のKPIを 追求していた。
これを現在では、各機能部 門が自らの管理下にあるKPIを改善すると、 それが他部門にどのような影響を及ぼすのか まで情報を共有している。
さらにはGLCの 内部で利害の反するような判断が必要になれ ば、GLC管掌の常務執行役員を中心に合意 を形成する。
そうすることで部門単位の個別 最適に陥ることを防いでいる。
 意思決定の基礎となる中期経営計画の作り 方にも工夫を凝らしている。
一般的な企業の 中計は、いったん目標値を設定した後は、よ ほど大きな環境変化がない限り期間中に目標 値を変えることはしない。
ところがブリヂス トンは、五年間の中計の目標を毎年ローリン グして見直している。
 もちろん「名実ともに世界一になる」とい う経営の最終目標がぶれることはない。
荒川 社長の就任後、〇六年十一月に初めて発表し た中計で示された「連結のROA(総資産利 益率)六%を経営目標とする」という数値も 変わっていない。
 しかし、目標達成の時期については、〇六 年の中計では「一一年にROA五%超」、翌 〇七年の中計では「一二年に六%」と微調整 している。
さらに〇八年の中計では「一二年 二年にROA六%に到達」と明記するまで売 上高・利益とも急回復している。
徹底した目 標管理と組織改革が、現在のブリヂストンの 経営を支えている。
SCM情報を商品開発に活かす  ブリヂストンは一九八八年に米ファイアス トンを買収したことで、世界のタイヤ市場に おいて仏ミシュラン、米グッドイヤーと並ぶ三 強の一角に浮上した。
現在は最大手の地位を 手中に収めている。
しかし近年、この三大タ イヤメーカーのグローバル市場での地位は地盤 沈下している。
 二〇〇〇年に五六・八%あった三大メー カーの合計シェアは、二〇一〇年には四二・ 一%まで低下した。
韓国や台湾、中国など、 新興国のタイヤメーカーが価格攻勢をかけて いる。
これに対して上位メーカーは、商品力、 技術力による差別化を志向している。
 ここでもGLCに求められる役割は大きい。
タイヤの商品企画を担当する「商品戦略本部」 は、市場へのアンケートやヒアリング、実地 調査などをグローバルで実施することで常に ユーザーのニーズを注視している。
さらに世 界各地の道路の状況、タイヤが装着される車 の条件などをデータベース化しており、集積 された膨大な情報に基づいて議論を重ねなが ら商品戦略を練っている。
 「将来、お客様が欲しくなる商品とはどの ようなものなのか。
『こういう商品があれば 六%は変更せず、一三年には更にプラス」とし た。
こうした見直しは、各部門から上がって くる情報を積み上げることで、その都度、達 成の可能性を精査しているからこそ発生する。
 「一二年にROA六%」という目標値につい ては、〇八年秋のリーマンショック後に連結 売上高が二割以上落ち込んだときにも見直さ なかった。
実際、直近の一一年中計では「一 組織全体を3 機能に大別しミッションを明確化した Global Management Platform (GMP) Strategic Business Unit (SBU:事業運営主体) ● 日本タイヤ ● 米州 ● 欧州 ● 中国タイヤ ● アジア・大洋州タイヤ ● 中近東・アフリカタイヤ ● 特殊タイヤ ● 化工品  (スポーツ/サイクル) サポート ● 技術 ● サプライチェーンマネジメント ● 管理など専門機能 方針方針 Global Head Office(GHO) 方針・意思決定会議体&コーポレート・スタッフ 45  MARCH 2012 る技術を発表している。
また、パンクして空 気圧がゼロになっても八〇キロメートルを走行 できる「ランフラットタイヤ」では、GLC 傘下の内製事業で独自の素材を実用化したこ となどが寄与した。
 続々と新製品を展開しているエコタイヤや、 世界市場でミシュランと覇を競っている特殊 タイヤについても同様だ。
ブリヂストンは昨 年、建設・鉱山車両用の超大型ラジアルタイ ヤの新工場を米国に新設するために約一億ド ルを投資することを決めた。
この戦略的な大 型投資も、将来の事業環境に関する情報をG LCが中計のローリングに織り込んできたか らこそ迅速に判断できた。
 いずれもGLCが単にモノの移動を管理す るだけでなく、自ら情報を発信する部門であ ることがカギになっている。
そしてGLCが 発する情報は、世界各地のSBUの活動とも 密接に連携している。
それが結果として、ブ リヂストン全体の企業活動のスピードを速め、 変化への対応力に結びついている。
製品物流と調達物流を一元化  
韮味辰魯灰好抜浜にも大きな影響を及ぼ してきた。
この組織で物流全般を統括してい る駒見俊彦生産物流管理本部長は、「従来は タイヤの物流と原材料の調達物流を別々に管 理していた。
それがGLCに統合されたこと で船会社との運賃交渉などを一元的に進めら れるようになった」という。
以前は月二回だ った販売計画の見直しを四回にするなど、よ り緻密なオペレーションも実現している。
 
韮味辰粒萋阿鯔楹焚修垢襪砲△燭辰董▲ リヂストンは情報システムなどへの大規模な 投資は実施していない。
見える化の推進でも、 IT投資は既存システムの手直し程度にとど まっている。
仕組みの高度化ではなく、組織 の見直しに重点を置いてサプライチェーンの全 体最適化に取り組んできた。
 組織改革は今もつづいている。
今年一月に は日本国内に五つあった広域販売会社を一社 に統合した。
今後は新たに設立されたブリヂ ストンタイヤジャパンとGLCが連携していく ことで、国内における市販用タイヤ販売の効 率化を進めていく方針だ。
 「商品戦略・生産・物流・販売という四つ の機能が強く有機的に連携できるようにな った。
リーマンショック後の業績の急回復や、 東日本大震災への対応、タイの洪水からの復 旧といったことへの迅速な対応もGLCがあ ったからこそ可能だった」と関口執行役員は 改革の効果を確信している。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) ワクワクするよね』といった商品を提供でき なければナンバーワンにはなれない。
生み出 されたアイデアを設計部門にフィードバック し、商品を実際に作るために必要な技術開発 の要素はどのようなものなのかといったステ ップへと高めている」(関口執行役員)  昨年十一月に発表した?空気を使わない タイヤ?は、そこから生まれた成果の一つだ。
今年一月にはタイヤの側面に自在に印刷でき ブリヂストンの駒見俊彦 生産物流管理本部長 売上高・営業利益と在庫の推移(連結) 売上高(億円)・営業利益(千万円) (見込み) 棚卸資産回転期間(カ月) 92 / 12 93 / 12 94 / 12 95 / 12 96 / 12 97 / 12 98 / 12 99 / 12 00 / 12 01 / 12 02 / 12 03 / 12 04 / 12 05 / 12 06 / 12 07 / 12 08 / 12 09 / 12 10 / 12 11 / 12 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 連結売上高(億円) 営業利益(千万円) 棚卸資産回転期間(カ月)

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