ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年3号
メディア批評
たんなる暴力団の排除だけで問題は解決せず「札つきでない不良」の追及がメディアの役割

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 MARCH 2012  68  太宰治の『斜陽』(新潮文庫)に、こんな 一節がある。
 「世間でよいと言われ、尊敬されている人 たちは、みな嘘つきで、にせものなのを、私 は知っているんです。
札つきの不良だけが、 私の味方なんです。
札つきの不良。
私はその 十字架にだけは、かかって死んでもいいと思 っています。
万人に非難せられても、それでも、 私は言いかえしてやれるんです。
お前たちは、 札のついていないもっと危険な不良じゃないか、 と」  たとえば総会屋という「札つきの不良」が いる。
竹中平蔵などは、総会屋をなくせば会 社はよくなるめいたことを言っているが、総 会屋は会社の暗部があるから出てくるのであ り、決してその逆ではない。
 粉飾決算や派閥争い、あるいはトップのス キャンダル等の暗部がなくならない限り、次々 と総会屋は生まれてくるのである。
つまり、 東京電力会長の勝俣恒久や大王製紙元会長の 井川某の方が「札のついていないもっと危険 な不良」なのだ。
 同じことが暴力団排除条例についても言え る。
社会が病んでいるから暴力団は出てくる という視点がなければ、暴力団はなくするこ とができないはずなのに、簡単にレッテルを 貼って排除すれば社会はよくなるといった単 純な発想で条例や法律がつくられ過ぎる。
 作家の宮崎学は、暴力団というかヤクザが いない国は世界にただ一つだけある、と言った。
それは北朝鮮である。
それには、統治者がヤ クザだからだというオチがつくのだが、日本 の政府や警察官僚は北朝鮮を目標としている わけではないだろう。
 『週刊東洋経済』の一月二八日号が、暴力 団対策の名の下で、警察
錬造鯡魄に迎えた 上場企業一覧を載せている。
 たとえば大王製紙は二〇〇八年に警察庁 から社外監査役を迎えた。
その他、目につく 企業を挙げれば、大日本住友製薬、シャープ、 コナカ、丸紅、沖縄銀行、高知銀行、東日本 旅客鉄道、東海旅客鉄道、日本郵船、中国電 力、コナミ等々。
 大王製紙など?危機?を予知してそうした のかと皮肉りたくもなるが、警察
錬造慮柩 拡大に役立っていることは確かだろう。
 しかし、そもそも、法律(条例を含む)は 行為を罰するものであり、身分を罰するもの ではない。
 ところが、暴対法や排除条例はまさに身分 というレッテルを罰するものであり、著しく 法律制定の原理に反する。
 前掲の宮崎学は『東洋経済』のインタビュ ーに応じ、過去の事例では規制のあるとこ ろには官僚や天下りが権益を持っていたとし、 今回はそれと同じ構造が警察主導で生まれて くるとして、それを「コンプライアンス利権」 と名づけている。
 『東洋経済』には「福島原発に巣くう暴力団」 という潜入ルポも載っているが、事故収束に 当たる臨時作業員集めに暴力団が介在してい るという。
 しかし、これも東京電力が莫大なカネを使 って原発安全神話をつくりあげ、世論を買い 占めたことによって、被爆リスク一〇〇%の 作業員を集めなければならなくなったのであり、 東電の責任がまず問われなければならないの である。
 総会屋と同じく、暴力団が介入する原因を 生じさせた東電の責任を棚上げして、「死ん でもいいのを集めろ」と暗躍している暴力団 を責めるのはおかしい。
 メディアは「札つき」の「札」とは何かを問い、 むしろ、「札のついていないもっと危険な不良」 の危険さを明らかにするのが仕事だと思うの だが、非常に安易に札というレッテルを貼り、 それを追放することに血道をあげている。
 怠惰というしかない。
自分たちの札はどう なのか、疑うことから始めてほしいものだ。
たんなる暴力団の排除だけで問題は解決せず 「札つきでない不良」の追及がメディアの役割

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