*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
物流不動産市場レポート
MARCH 2012 82
面積も上昇している(図3)。 安定した需要が
創出される中、限られた募集区画に対して複
数の引き合いが見られる状況にあり、優良物
件に対するニーズは強まっている。
テナントの動きとしては、コスト削減を背景
とした統廃合による移転マインドが高まってい
る。 特に消費財を取り扱う企業による統合移
転の動きが多い。 来年以降は、震災復興事業
により荷動きが活発化することが予想される
ため、物流施設マーケットへの波及効果に注目
が集まる。
物流施設の開発動向としては、足元の需給
バランスの改善や、今後も優良物件への需要
シフトが見込めることから、各プレイヤーの開
発意欲は旺盛となっている。 新規プレイヤーの
参入もあり、大型用地の獲得競争は今後激化
する可能性が高い。
一二年は平均的な供給量が想定され、現段
特別編
三大都市圏
物流施設マーケット動向分析
シービーアールイー 鈴木公二 シニアコンサルタント
二〇一一年下半期
シービーアールイーは一月、「ジャパンインダストリアルマーケットビュー2H 2011」を発表
した。 空室率は改善傾向が継続し、首都圏は五・二%へ、近畿圏は二・九%へと大幅改善した。
大型優良物件に対する品薄感は強まり、各プレーヤーの物流施設への投資意欲も高まっている。
リーマンショック以降の供給の抑制により、
大型物流施設マーケットの需給バランスは改
善傾向を続けている。 旺盛な需要を背景に、こ
れまで物流施設開発を手掛けてこなかった国
内大手不動産会社の新規参入の動きも目立っ
ている。 また、今期はシンガポール政府系の
物流不動産大手GLプロパティーズがラサー
ルインベストメントマネージメントより一五の
物流施設を一二二六億円で取得するなど、大
型取引がみられた。 物流不動産市場は新たな
局面を迎えつつある。
首都圏
大型用地の獲得競争が激化
■中大型物流施設市況
今期の首都圏の中大型規模の募集賃料水準
については、東京都で対前期比マイナス一・
〇%、千葉県で同プラス〇・九%、埼玉県で
同プラス二・五%、神奈川県で同プラス四・
八%という結果となった(図1)。 今期は、東
京都でマイナスでの推移となったが、他のエリ
アではプラスでの推移となった。
大型優良物件については、品薄感から底打
ち傾向が顕著である。 空室率の低下基調から
賃料水準についても底打ち感が見られるもの
の、テナントのニーズが物流コスト削減を考え
た拠点再編が中心であるため、本格的な賃料
上昇局面までには相応の時間を要すると考え
られる。
■大型マルチテナント型物流施設市況
今期の首都圏の空室率は、前期から〇・四
ポイント改善し五・二%となり、二期連続の
改善となった(図2)。
大型新築物件に対する需要は底固い。 一一年
に竣工した大型物件のほとんどが満室・高稼
働となっている。 これに伴い、全体の稼働床
83 MARCH 2012
図2 首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
【空室率算出基準(調査棟数:54 棟)】
地域:千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、延床面積:
10,000 坪以上、竣工:既竣工物件、空室確認方法:
ヒアリングによる、建物形態:原則として、開発当時に
おいて複数テナント利用を前提として企画・設計された
建物であること
※今期首都圏で調査対象となった54 棟については、上
記算出基準により抽出したものであり、必ずしも物流
施設ストック全体の需給バランスを示したものではない
(%)
04
年3月
04
年6月
04
年9月
04
年1
2月
05
年3月
05
年6月
05
年9月
05
年12月
06
年3月
06
年6月
06
年9月
06
年12月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09
年
12
月
10
年3月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
11
年3月
11
年6月
11
年9月
11
年
12
月
07
年9月
07
年12月
20
15
10
5
0
図3 首都圏の稼働床面積(指数)( 2004/03=100)
04
年3月
04 年
6
月
04
年9月
04
年1
2月
05
年3月
05
年6月
05
年9月
05
年1
2月
06
年3月
06
年6月
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
9年
12
月
10
年3月
11
年3月
11
年6月
11
年3月
11
年6月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
400
350
300
250
200
150
100
0
空室率既存物件空室率(竣工1 年以上)
5.6 5.2
6.2
5.6
11.5
7.0
4.2
9.9
4.5
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
4.0
3.0
2.0
1.0
0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
-6.0
2007年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011年
下期
東京都
図1 首都圏の中大型物流施設の平均募集賃料
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
8.0
6.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
2007年
賃料水準
変動率
(%) (円/坪) (%)
(%) (%)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011 年
下期
千葉県
4.0
2.0
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
2007年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011年
下期
埼玉県
6.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
2007年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011 年
下期
神奈川県
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
変動率変動率
賃料水準
5,680
2.7
5,640
-0.7
5,620
-0.4
5,510
-2.0
5,230
-5.1
5,180
-1.0
賃料水準
3,850
2.1
3,990
3.6
3,640
-8.8
3,720
2.2
3,450
-7.3
3,480
0.9
変動率
賃料水準
4,160
2.7
4,070
-2.2
3,850
-5.4
3,570
-7.3
3,670
2.8
3,760
2.5
変動率
賃料水準
4,620
0.7
4,710
1.9
4,410
-6.4
4,070
-7.7
3,960
-2.7
4,150
4.8
CBRE
CBRE
CBRE
物流不動産市場レポート
MARCH 2012 84
階で入居テナントが内定している物件もある
ことから、空室率は引き続き低水準で推移
することが予想される。 一三年以降につい
ても、現時点では平均的な供給量となる見
込みだが、各プレーヤーの旺盛な開発意欲を
勘案すれば今後上積みされることも十分あ
り得る。 特に、神奈川内陸部や常磐道周辺
に供給が集中する懸念があり、エリアによっ
ては一時的に空室率が上昇する可能性も考
えられる。
近畿圏
今年五月に二年ぶりの大型供給
■中大型物流施設市況
大阪府の大型物流施設については、前期
までに空室消化が大幅に進んだ結果、一〇
〇〇坪以上の需要に対応できる優良物件に
対して不足感が出てきている。 一方の中小
物流施設は、汎用性を有する物件を除くと、
空室が長期化している物件も散見される。 東
日本大震災の影響としては、需要自体は限
定的だが、内陸部への進出意向が一部で出
てきている。
中大型施設の平均募集賃料は、前期から
マイナス四・〇%となっている(図4)。 優
良立地の高機能物件に対する品薄感は依然
として強いが、全般的に物流コスト削減目
的の動きがメーンであるため賃料上昇に転じ
るまでには至っていない。 今後もこの傾向
が続くと思われる。
■大型マルチテナント型物流施設市況
図5 近畿圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
【空室率算出基準(調査棟数:11 棟)】
地域: 大阪府、兵庫県、延床面積:10,000 坪以上、 竣工:既竣工物件、 空
室確認方法:ヒアリングによる、空室率:空室は集計時点で空室であるものを対
象とする、建物形態:原則として、開発当時において複数テナント利用を前提とし
て企画・設計された建物であること
※今期関西圏で調査対象となった11 棟については、上記算出基準により抽出した
ものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したものではない
(%)
(%)
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09 年
12
月10
年3月
10
年6月
11
年3月
11
年6月
11
年9月
11
年
12
月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
35
30
25
20
15
10
5
0
平均空室率既存物件空室率(竣工1 年以上)
首都圏の今期の主なトピックス
※各社公表情報を基に作成
2007年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011 年
下期
図4 大阪府の中大型物流施設の平均募集賃料
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
変動率
賃料水準
4,060
2.3
3,990
-1.7
3,700
-7.3
3,470
-6.2
3,500
0.9
3,360
-4.0
6.2
7.1 5.8
2.9
着工
竣工
開発
開発
開発
開発
開発
開発
開発
開発
竣工
開発
2012/10
2011/7
2012/10
2013/5
2013/3
2013/4
2013/ 秋
2013/2
2013/4
2013/ 春
2011/11
2012/12
ラサール、マルチテナント型施設「ロジポート北柏」建設着工
センコー、野田第1・第2PDセンター竣工
ティーエルロジコム、新物流施設を建設
GLプロパティーズ、「GLP 三郷?」建設
東邦薬品、新物流センター「TBC埼玉」建設
公共シィー・アール・イー、シングルテナント型施設「KCRE草加物流センター」建設
ラサールと三菱地所、大型物流施設「ロジポート相模原」を共同開発
ヤマト運輸、新物流拠点建設
郵便事業、東扇島総合物流拠点地区で物流拠点を計画
ラサール、BTS型の大型物流拠点を建設
福山通運、新物流拠点の藤沢支店を開設
大和ハウス工業、物流倉庫建設
千葉県柏市
千葉県野田市
千葉県野田市
埼玉県三郷市
埼玉県久喜市
埼玉県草加市
神奈川県相模原市中央区
神奈川県愛川町
神奈川県川崎市川崎区
神奈川県厚木市
神奈川県藤沢市
神奈川県横浜市神奈川区
127,164
計113,399
31,635
93,831
33,928
30,000
210,000
89,841
55,440
53,000
31,166
27,361
区分 概要 所在地 竣工 延床面積(?)
CBRE
CBRE
CBRE
85 MARCH 2012
ズが前期に引き続き堅調であることから、空
室物件が減少している。 中小型物件への需要
も同様だ。 震災後に見られた名古屋港エリア
での短期契約は契約を延長するケースが目立
っている。 また、タイの洪水に関連して同エ
リアでの工場・倉庫需要が増加したことから、
引き続き満床に近い状態が続いている。
しばらく大規模空室を抱えていた物件の空
室消化が進んだことで、空室率は対前期比マ
イナス二・九ポイントの二・九%まで低下した
(図5)。 引き続き大型新規供給は発生しなか
ったため、競争力を有する優良物件において
は高稼働が継続している(図6)。 新規開発計
画の動きも見られ始めている。
新規供給動向では、今年五月に約二年ぶり
に大型マルチテナント型施設の竣工が控えてい
る。 顕在化する大型需要をどの程度吸引して
いくか、その動向が注目される。 一三年以降
については、大阪湾岸部で大型マルチテナント
型施設の開発計画が発表されたが、現段階で
は全体の供給量としては限定的であり、しば
らくは需給バランスが大きく崩れる可能性は低
いと考えられる。
中部圏
タイ洪水の影響で稼働率向上
■中大型物流施設市況
短期契約を更新する動きも
今期の愛知県における中大型施設の平均募
集賃料はマイナス三・二%と減少傾向となって
いる(図7)。 実勢の賃料水準は、マーケット
全体の空室が少なくなっていることから、優
良物件では前期比で概ね横ばいでの賃料水準
を維持しているが、その他の物件ではやや弱
含みとなっている。
愛知県内においては、物流拠点の集約・統
合やコスト削減に伴う大型物件への移転ニー
先日、当社で世界各地の五五の
優良物流立地をモニタリングした結
果、東京は物流拠点賃料水準で世
界一のポジションにあることが判明
した。 アジア圏の中では、シンガポ
ールの約一・五倍、香港の約二倍
という飛び抜けた賃料水準だ。 こ
れは、もともと日本の土地価格が
相対的に高いということに起因し
ている。
日本の首都圏はただでさえ港湾
使用料や空港着陸料が割高だ。 そ
のうえ不動産にかかるコストも高
いとなると、グローバル展開を考
える企業にとっては重荷になる。
いくら東京が世界有数の消費マー
ケットとはいえ、近い将来、企業
から敬遠されはじめてしまわない
か心配だ。
東京の賃料は世界一高い
図6 近畿圏の稼働床面積(指数)( 2006/9=100) 図7 愛知県の中大型物流施設の平均募集賃料
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09
年
12
月
10
年3月
10
年6月
11
年3月
11
年6月
11
年9月
11
年
12
月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
400
350
300
250
200
150
100
0
6.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
-12.0
-14.0
-16.0
2007年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2008年2009年2010年2011 年
上期
2011 年
下期
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
変動率
賃料水準
3,250
-9.0
3,370
3.7
2,890
-14.2
2,700
-6.6
2,790
3.3
2,700
-3.2
CBRE CBRE
|