2005年2号 |
メディア批評 自虐であっても自慢史観よりはずっと良い韓流ブームの今こそ省みたい日本の過去 |
*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。 佐高 信経済評論家71 FEBRUARY 2005 歴史はつじつまの合 たきれいなことだけをつらねることではない 誇りとともに恥もかみしめる勇気が必要です 元東亜日報社長で韓国政府の副総理 統一相だ た權五が朝日新聞論説主幹の若宮啓文との対話 韓国と日本国 朝日新聞社 でこう言 ている 至言だろう 權は 日本の 新しい歴史教科書をつくる会 が 自虐史観ではダメだと盛んに攻撃していたことを捉え それでは これからは 自慢 史観にしようというのか と批判している たしかに 自慢 よりは 自虐 の方が自信のある者のやることである 權は そして 韓国人に自慢を少しおさえて自虐ができるくらいの自信をもてるようにな てもらいたい と希望している 自虐のすすめ というわけだが これを自慢史観の日本人はどう受けとめるか あるとき 權は 選挙に出たことがないのかと問われ ないと答えたら 理由を聞かれたので こう答えたという 私は昔から 自分のことを自慢するやつにろくなやつはいないと思 てきたし 自分にはそれができない 自慢ばかりするということは嘘をつくことだ 選挙に出れば 私が当選すれば極楽だが 対抗する候補が勝てば地獄だ というふうに言わなくてはならない こういう言葉の使い方は私は嫌いだから 選挙に立候補なんかしないのです ジ ナリズムは批判がいのちである 批判ばかりしてと言われて怯んではならない 自虐などと言われても 自慢よりはず といいのである 權はインドの首相 ネ ルを見たことがある それで 堀田善衛の インドで考えたこと 岩波新書 を興味深く読んだ その本にネ ルの インドの発見 岩波書店 の一節が紹介されていたからである IloveIndiawithfullofdislike 私はインドを 嫌悪 で愛する 嫌悪 で 愛する というのは矛盾だが インドの状況を考えれば インドはすばらしいところばかりだから 愛している というのは必ずしも 愛国 にならない ということだろう 權はこれを韓国に当てはめ いまのままの韓国がいいと言 ている 愛国 は韓国を愛しているのではない と指摘する 本当に韓国を愛するのなら 韓国を嫌悪しなくてはいけない と これはそ くりそのまま 日本の多くの 愛国者 にも当てはまる と若宮も応答する 日本のことを批判しただけで 反日 だ 売国 だとレ テルをはるような人がいるのは困 たものだからである 若宮によれば 韓国の元大統領 盧泰愚は日本の国会での演説に詩人の韓龍雲の次のような一節を引いた 私があなたを愛するのは 他の人は私の紅顔 私の微笑だけを愛するけれど あなたは私の白髪さえ 私の涙さえ愛するため そして 盧は 暗い時代を生きたこの詩人の祖国愛のように 民主主義も憎しみまでを愛する心で根を下ろさなければならないと私は信じています と続けたのである 韓国と日本国 は非常に示唆に富む対話だが 若宮は一九〇五年九月一日の 朝日 を戒める意味で引く 日露戦争に勝 て ポ ツマスの講話条約を屈辱的だと感じた日本人は日比谷公園で暴れ 交番や派出所を焼き打ちした それを報ずる 朝日 は講話を伝える記事を黒枠で囲み 一切日本の譲歩のみにして吾人は之を急報するを恥づ と わざわざ前書きに書いた そして日本はこの条約を背景に 強引に韓国を保護国にしたのである まさに 何をかいわんや だろう 自虐であ ても自慢史観よりはず と良い韓流ブ ムの今こそ省みたい日本の過去 |