ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年1号
特集
IT・マテハン活用 大塚商会 ──ハンディの運用を工夫してエラー半減

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 注文データを受信してから出荷まで最短一五分と いう次世代型センターを二〇一〇年九月に稼働し た。
そこで構築したノウハウを他の拠点にも展開。
会社全体の庫内作業エラー率を半減させた。
配送 面でもドライバーから顧客の声を吸い上げデータベ ース化。
不良率を三分の二に減らした。
データ受信から最短一五分で出荷  大塚商会は首都圏二カ所と中部、関西、九州の 計五カ所に物流センターを構えている。
そこで取り 扱っている物量の九割以上はオフィス通販の「たの めーる」関連の商品だ。
二〇〇〇年のサービス開 始以来、成長を続け、一一年度の売上高は一〇七 九億円に達している。
 大塚商会はこのサービスを単なる通販とは見てい ない。
たのめーるは、もともと同社の営業・サー ビス部門で行っていたサプライ品の配送が原点だ。
その背後にはO A機器販売やI Tソリューショ ンの提供といっ た同社の主力事 業がある。
 「飛び込み営業 で高価なコピー機を買ってくださいと言うより、カ タログを配ってコピー用紙を注文してもらう方がは るかに簡単だ。
たのめーるによって大塚商会のサ ービスを実感してもらえれば、次のビジネスにつな がる。
それだけに物流面でも高い品質を保つ必要 がある」と同社営業本部・物流推進部の築地冬樹 部長は強調する。
 「品質優先」の考えは一〇年九月に完成した東 京・高島平物流センターに鮮明に表れている。
た のめーるの全国コア倉庫で、首都圏配送の中核で もある同センターでは、最新のITとマテハン機器 の利用によって、受注から出荷までのスピードアッ プとミスの低減が図られている。
 センターに注文が届くと、機械が自動的にオリコ ンの組み立てを開始する。
オリコンは指示書ととも にピッキングエリアへ向かい、その後、検品・包装 を経て、配送フロアまでそれぞれ自動搬送される。
注文情報がセンターに到着してから、出荷準備完 了まで最短一五分というスピードだ。
 六階建てのセンターは、出入荷フロアに近い下層 階ほど、出荷頻度が高いアイテムを保管するよう にしている。
最も出荷頻度が高い商品を扱う二階 には、デジタル・ピッキング・システム(DPS) を採用した。
 ランプの点灯している棚からデジタル表示器に示 JANUARY 2013  42 された数だけ商品をピッキングして、コンベア上の オリコンに投入。
「完了」ボタンを押すと次のオリ コンが到着する。
作業員それぞれが決まったゾーン を担当するので動線のムダがない。
 比較的注文数の少ない商品を保管する三階以上 のフロアには大型のピッキングカートを導入した。
カートには九個のオリコンを搭載できる。
最初に全 てのオリコンのIDをハンディで読み込むと、最短 の動線でピッキングが終わる順番をシステムが自動 的に解析する。
その指示に従って作業員はカート を移動させてピッキングすればいい。
 商品や数量の間違いを防ぐための仕組みは、何 重にも施されている。
ピッキングの段階では、外 箱と個装で同じJANコードを使用しているなど、 ミスの起きやすい商品は、バーコードを読み込んだ 時点で警告音が鳴る、あるいは注意画面を表示す ──ハンディの運用を工夫してエラー半減 大塚商会IT・マテハン活用 営業本部・物流推進部 築地冬樹部長 センター2階に設置されたデジタル・ピッキング・システム 43  JANUARY 2013 るようにハンディを設定している。
 検品エリアのハンディ活用にも工夫がある。
例え ばガムテープなど、五個パックと一個単位とでバー コードの共通する商品がある。
その納品書が指示 しているのはどちらの単位なのか、バーコードを読 み込んだ時点で検品用のディスプレーに画像を表示 する。
 壊れものや取り扱いに注意が必要な商品の包装 時には、目立つ位置にカラーテープを貼るようにし ている。
消しゴム一個やボールペン一本などの小物 類は、オレンジ色の袋にまとめて入れる。
こうし た細かな配慮が配送時の破損防止や届け先で開封 する時の商品確認にも一役買っている。
 高島平物流センターで構築した運用ノウハウを随 時、同社の他のセンターにも横展開していった。
そ の結果、同センターの稼働から一年が経過した一 一年九月には、会社全体の庫内作業のエラー率が 半減したという。
配送時の注意事項をデータベース化  配送は協力運送会社への委託だが、首都圏と京 阪神の主要地域には計約六三〇人の専属ドライバ ーを投入している。
午前十一時までの注文は当日 中、午後六時までの注文は翌日午後一時までの配 送という一日二便体制を敷いている。
 一二年五月から、大塚商会のスタッフが各拠点 に足を運び、専属ドライバーに向けて同社のビジネ スモデルや考えを直接語り掛ける説明会を随時開 いている。
「大塚商会のサービスを支える一員とし てモチベーションを高めてもらうためには、面と向 かって気持ちを伝えるのが一番だ」と築地部長は 力を込める。
 築地部長自身、商物一体だった時代に約二年間 にわたって技術サービス担当者として顧客に直接商 品やサプライ品を届けていた経験がある。
その時代 に抱いていた思いを直接ドライバーに伝えたいと始 めた取り組みだ。
 情報交換にはテレビ会議システムも併用してい る。
ITソリューションプロバイダーが本業の同社 では「社員同士が打ち合わせをするための出張」 は禁止されている。
その代わりにイントラネットや 大画面モニターを活用し、臨場感のある会議がで きるようになっている。
「バーコードの表記を工夫 したい」という議題の際にも、カメラの前に品物 を持ってくれば、十分数字が読み取れるレベルの 解像度・高画質だ。
 〇九年からは、顧客の声のデータベース化にも着 手している。
「納品書は庶務課へ」「台車使用不可」 「何時から何時までは受付できない」など、顧客ご との細かな要望がドライバーや営業を通じて本社の データベースに蓄積されている。
 配送時にはそれらの声が自動的にドライバーにフ ィードバックされる。
配達するドライバーが変わっ ても、配達時には逐一注意事項が伝達されるため、 いつもと同じレベルのサービスを提供することが可 能となっている。
 データ化される顧客の要望は一カ月で二万件に 上る。
現在は約三〇万件の情報がデータベースに蓄 積されている。
このデータベースは全社的に一元管 理されていて、配送だけでなく営業成績など他の システムとも一体となっている。
 これら一連の取り組みによって、都内の配送品 質(不良率)を二〇一〇年比で約三分の二まで減 らした。
             (渡邉一樹) 大型のピッキングカートでオリコン9台をまとめて移動する 検品時、間違いやすい商品の画像をディスプレーに表示 特集

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