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JANUARY 2013 54
「JDセンター構想」が新たな段階へ
全国約二三〇社・三八〇〇店近い中小ス
ーパーが加盟する共同仕入れ機構、CGCグ
ループの本部として活動しているシジシージャ
パン(CGCジャパン)は、二〇一二年十一
月、「神奈川JD(ジョイント・デリバリー)
センター」を稼働させた。
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リプレースするかたちで、全国一四カ所の在
庫型拠点をはじめとする物流インフラの整備
を進めてきた。 神奈川JDセンターの新設も
その一環だ。 ただし、同センターの位置付け
は他の拠点とはかなり異なっている。
「これまでのセンターを第一世代とすれば、
神奈川JDセンターは次世代型。 三年前から
プロジェクトを組織して仕組みを検討してき
た」とCGCジャパンの永田孝司商品本部物
流部事業部長は説明する。
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だけでなく、関東地区本部としての役割も担
っている。 そして神奈川JDセンターは、関
東地区の加盟スーパーに商品を供給する施設
であると同時に、グループのチェーン本部が
ノウハウを結集して構築したモデル拠点とい
う側面を持っている。
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北・関東・北陸・東海・関西・中国・四
国・九州)のブロックに、それぞれ地区本部
を置いている。 自らの業態を「小売り企業主
宰のコーペラティブ・チェーン」と定義して
おり、そこでは地区本部や加盟スーパーの独
自性が尊重される。 CGCジャパンはグルー
プ全体を牽引する立場にあるが、通常のチェ
ーン本部のような強制力は持たない。
一九七三年の創立以来、CGCは「商品こ
そすべて」という基本理念を掲げて、PB商品
の開発や、NB商品の共同仕入れなど、商品
戦略の高度化で大手チェーンに対抗してきた。
しかし、その後、大手チェーンが相次いで
自社物流インフラの整備に動き、一括物流が
普及していったことによって、CGCも物流
にまで踏み込んだ協業が必要になってきた。
八九年に日配品の共同配送をスタートさせ
ると、九一年にはグループの長期ビジョンの
一環として「CGCロジスティクス構想」を
発表。 物流面でも加盟企業を支援していく姿
勢を鮮明にした。
そして二〇〇三年、加盟企業の店舗に三温
度帯の商品を一括納品する「JDセンター構
想」を発表。 同年六月に「東海JDセンター」
を稼働させたのを皮切りに、全国ネットワー
クの整備をスタートした。
ボランタリーチェーンに加盟する中小スーパー各
社の自主性を尊重しながら、グループ全体の物流
高度化を進める必要がある。 2012年11月稼働の
「神奈川JDセンター」で、その新たなモデルを提
示した。 規模やレイアウトがばらばらな店舗に対
して、NBとPBをまとめて細かくカテゴリー納品
する仕組みを備えている。
拠点政策
CGCグループ
次世代型のモデルセンターが稼働
PB・NB一括のカテゴリー納品実現
シジシージャパン・商品本部
物流部の永田孝司事業部長
55 JANUARY 2013
当初、各地のJDセンターの規模は、約一
〇〇店舗をカバーすることを目安にしていた。
しかし、この規模では、PB商品の生産を委
託しているメーカーから物流拠点への直接物
流を実施するには、物量が足りなかった。 店
舗が望む継続的かつローコストの商品供給も
難しかった。
そこで、PBメーカーとの直接物流などを
実現できる規模として「三〇〇店舗・売上高
三〇〇〇億円」に基準を改めた。 これを目安
に各地でグループを組み、その中核拠点とし
てJDセンターを設置。 そのうえでグループ
ごとに帳合や物流の統合を進めていった。
その際、店舗物流の最適化も進めた。 店舗
の視点で考えれば、同じカテゴリーの商品が
PBとNBで別々に納品されるのは困る。 し
かもPBだけでは十分な物量の確保もできな
い。 ここからCGCが在庫型で管理するPB
商品と、取引卸に供給してもらって通過型で
処理するNB商品を、JDセンターで積み合
わせて運ぶやり方が定着していった。
一般のチェーン本部とは異なる立場
現状のCGCの物流ネットワークは、三つ
のタイプの拠点で構成されている。 ?PB商
品の保管と、NB商品の共配機能を併設する
「JDセンター」および「地区本部センター」、
?通過型の「トランスファー・センター(T
C)」、そして?加盟企業の自社センターに商
品を供給する「広域センター」を東京・関西
に計四カ所設けている。
このうち関東地区にある拠点と、全国の広
域センターをCGCジャパンが管理している。
その他の拠点とTCについては、全国に九つ
ある地区本部が個別に管理している。
一二年十一月現在、JDセンターおよび地
区本部センターが全国に計一四カ所ある。 こ
れを設置できるだけの物量がないエリアには
出先機関として計四カ所のTCを構え、JD
センターの在庫から切り出した商品をクロス
ドックして加盟企業に届けている。
近年のCGCグループの成長には目を見張
るものがある。 新規加盟を希望するスーパー
は跡を絶たず、当面の目標としている五兆円
の大台も見えてきた。 物流ネットワークもほ
ぼ完成の域に近づいてきた。 今後も新たな加
盟企業の動向に応じて物流ネットワークを修
正していく考えだが、骨格はすでに固まって
いる。
もっとも、CGCグループの物流戦略には、
一般のレギュラーチェーンにはない難しさが常
につきまとっている。 その最たるものが、加
盟企業のなかに自前の物流センターを持つ企
CGCグループの物流体制
メーカー
(海外含む) 在庫センター
(DC)
加盟社センター
(TC)
店舗
店舗
店舗
トランスファー
センター(TC)
JDセンターを中心とした供給体制
ベンダー
各広域センター
(DC)
温度帯別センター
(冷凍、冷蔵、常温、
青果温度帯)
共配センター
(TC)
物流ネットワーク(JDセンター14カ所、TC4カ所、広域センター5カ所)
JDおよび地区センター
トランスファーセンター(TC)
広域センター
北海道本部センター
(DC)
東北本部センター
山形TC(TC) (DC)
米子TC(TC)
群馬TC(TC)
茨城TC(TC)
北関東JDセンター
(DC+TC)
神奈川JDセンター(DC+TC)
(DC+TC)
千葉JDセンター
北陸JDセンター
(DC+TC)
四国本部センター
(DC+TC)
関西JDセンター
(DC+TC)
中国JDセンター
(DC+TC)
九州JDセンター
(DC+TC)
南九州JDセンター
(DC+TC)
神戸チルド
広域センター
広域センター
東京チルド
東海JDセンター
(DC+TC)
新潟JDセンター
(DC)
沖縄支社センター
(DC)
広域センター
グロサリー
青果広域センター
生鮮広域センター
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業が少なくない点だ。
独立したスーパーの自主的な参加で成り立
つCGCグループにとって、グループの物流
機能を活用するかどうかは各企業の判断に任
されている。 自社センターの機能を補完する
ため、グループの物流機能の一部だけを利用
することも許される。 このためCGCとして
は、加盟企業の自社センターを、グループ内
のTCと同様に位置付けることで物流ネット
ワークの高度化を図ってきた。
また、一般的なレギュラーチェーンは出店
託費と施設利用料を支払うという関係である。
ただし、センターの機能についてはCGCジ
ャパンが中心になって構築した。
同センターの二階半分は、PB商品のDC
になっている。 残り半分は取引卸の一社に入
計画に基づいて物流拠点の整備を進めるが、
CGCの加盟企業が出店計画をつぶさに教え
てくれるとは限らない。 情報開示に積極的な
企業であっても、既存物件に入居する?居抜
き出店?などでは、出店が決まってから知ら
されてもCGC側に物流機能を手直しする時
間的な余裕がないことも多い。
メンバーの新規加盟や脱退は常に起こり得
る。 新規出店とは比較にならないレベルで突
然、物量が増減する。 近年はPBの供給を受
けるために新規加盟してくる企業も多く、で
きるだけ早く商品供給をスタートすることを
求められる。 こうした場合にも滞りなく商品
を供給できる体制を整えることが、CGCグ
ループの物流管理には求められている。
「こんなことはレギュラーチェーンでは考え
られないことだ。 フランチャイズチェーンでも
ありえない。 唯一、我々のような業態にだけ
起こる。 こうした供給量の変化と、加盟企業
が持っている自社センターまで含めて物流の
ネットワーク化を図っていくことが、CGC
グループの物流戦略にとって最大の鍵になっ
ている」と永田事業部長は言う。
店舗支援とコスト削減を両立
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セット型だ。 神奈川JDセンターの場合、大
手低温物流事業者のヒューテックノオリンに
設備投資から運営までを全面的に委託してい
る。 同社に対してCGCジャパンが、業務委
カテゴリー仕分けで店舗を支援 店舗支援のためストレージ導入 神奈川JDの延べ床は16400?
新規採用した手袋式スキャナー 移動ラックでスペース効率向上 入荷品を垂直搬送機で2階へ
2012年11月に稼働した「神奈川JDセンター」(神奈川県厚木市)
加盟企業と本部、およびアソシエイト企業による協業が基本
CGCグループ
全国229 社
3,773 店舗
4 兆3,193億円
(2012年12月現在)
329 社
加盟企業
地区本部
CGC 本部
CGCアソシエイツ会
全国14 拠点
規模の経済効果
ネットワーク経営
バリューチェーン
CGC=Co-operative Grocer Chain
小売企業主宰の「コーペラティブ・ チェーン」
協業活動の基本姿勢
●中堅・中小のスーパーマーケットが力を合わせて大手と互角に立ち向かう
●異体同心(一人ひとりの力は小さくても、皆が同じ気持ちで事に当たれば、大きな力を発揮できるという意味)
●よく集まり、よく話し合う
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あるカテゴリーの商品を一気に処理すること
で、常温品を全一四分類(定番七、特売七)
に仕分けるカテゴリー納品を実現した。
ソーターのシュート下で商品を店別のカゴ車
に積む作業では、新たに手袋式のハンディス
キャナーを導入した。 この機材を手の甲に装
着することで作業者は両手が自由になる。 こ
うして作業者の負担を軽減しながら、一方で
は商品をカゴ車に積むときに一つひとつスキ
ャンするという工程を加えた。 カゴ車と商品
をひも付けると同時に、出荷検品まで行うた
めだ。 これによって誤配の防止と作業の生産
性向上を図っている。
センターの一階には、日配品などのチルド
部門と、肉・魚・総菜を扱う生鮮部門のた
めの冷蔵スペースもある。 毎日午後五時頃か
ら入荷される商品を通過型で店別に仕分ける。
この工程を、既存の拠点ではデジタル・ピッ
キング・システム(DPS)など固定式のマ
テハンでこなしていた。 しかし、このやり方
には、スペースなどの問題で細かいカテゴリ
ー仕分けが難しいという難点があった。
そこで神奈川JDセンターでは、ハンディ
ターミナルとカゴ車を組み合わせるだけのシン
プルなオペレーションに変更した。 作業内容
をあらかじめ予測・準備するシステムを活用
することで、チルド分野でも七分類以上のカ
テゴリー納品を実現している。
他にもスペース効率を高めるマテハンの活用
や、作業進捗を示すディスプレーの要所への
設置、防災対策の強化など、ここでは次世代
センターに相応しい多くの試みが施されている。
まだ稼働したばかりのため既存センターとの
生産性の違いは把握できていないが、徐々に
明らかになっていくはずだ。
とは言え、CGCの各地のセンターは地区
ごとに個別に管理されており、効率や生産性
を比較するのも現状では難しい。 永田事業部
長は「今後は各地のJDセンターの効率など
を比較できるようにしていく。 簡単ではない
が、ルール化や効率指標の統一といったこと
を進めていきたい」と考えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之)
居してもらい、NB商品のDCとして使って
もらう。 この二つのDCでピッキングした商
品を一階の自動仕分け機に流していく。 ここ
に取引卸が毎日納品してくる通過型の商品を
合流させ、一緒にソーターに掛けることで常
温品の店別仕分けを行っている。
特筆すべきは、神奈川JDセンターで初め
て実現したカテゴリー納品の高度化だ。 物流
センターのレイアウトの工夫などでカテゴリー
納品を実現できるレギュラーチェーンと違って、
このセンターで細かいカテゴリー納品を実現す
るのは簡単ではなかった。 商品を供給すべき
加盟企業は二八社を数え、店舗数も二八五店
舗に上る。 各店の規模やレイアウトがばらば
らな点がネックになった。
「センターで在庫しているPBだけならカ
テゴリー納品は難しくない。 だが店舗にとっ
ては、PBと一緒にNBも届かなければ意味
がない。 取引先が大手卸さんであれば事前に
カテゴリー分類に応じて納品してもらえるが、
規模の小さい卸さんになるとそうはいかない。
このため神奈川JDセンターでは、新たにス
トレージを導入して、カテゴリーごとに貯留
することで細かく分類するように工夫してい
る」(永田事業部長)
二階建ての施設の中二階に長さ約五〇メ
ートルのストレージラインが一〇本設置され
ており、約一五〇〇ケースを一時保管でき
る。 カテゴリーとは無関係に納品される商
品を、このストレージに一時待機させておく。
天井裏に点検通路を付け防災強化 作業進捗モニターを随所に設置
見学に備え随所に説明の看板 屋根に855枚の太陽光パネル
モデルセンターとして新しい試みを多数採用
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