ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年2号
特集
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第5位 二葉──食品通関のシェアを活かし垂直展開 鈴木英明 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2013  26 二葉 ──食品通関のシェアを活かし垂直展開  京浜港を地盤とするオーナー系の港湾会社で、輸入食品の通 関業務では圧倒的シェアを誇る。
それを軸に港湾運送から冷 凍冷蔵倉庫、国内配送へと展開してきた。
顧客層も広がって いる。
メーンとする総合商社に加え外食チェーンや食品メーカー との直接取引が増えている。
2014年には大阪・南港に大規模 冷蔵倉庫を竣工し、関西進出に本腰を入れる。
メーカーや外食チェーンに販路を拡大 ──御社の事業概要を教えて下さい。
 「当社は温度管理を必要とする港湾貨物の総合物 流会社です。
取り扱う貨物の九五%以上が食品関連 です。
売り上げの内訳は約六割が通関業務を含む港 湾運送で、冷蔵倉庫が三割、配送その他が一割とい う構成です」 ──オーナー企業で鈴木社長は四代目に当たるとか。
 「世代で言えば三代目で、祖父に当たる鈴木勢喜 蔵が大正一三年に艀(はしけ)運送業として横浜で 創業しました。
戦後は京浜港を基盤に陸上港湾運送、 通関、倉庫と川下へ事業を展開していきました。
近 年は冷蔵倉庫部門が伸びています」 ──これまで安定的に業績を拡大させてきましたが、 二〇一〇年三月期以降は特に大きく伸びています。
 「円高やデフレで食品輸入が増加していることが 背景です。
また横浜の大黒ふ頭に〇五年と〇九年に それぞれ冷凍倉庫を立ち上げたことも、収益に大き く貢献しています。
冷凍倉庫は初期投資が大きい分、 稼ぎ始めると数字がどんどん良くなる。
その結果、 一二年三月期のグループ売上高は前期比十一・七% 増の二一五億六〇〇〇万円、経常利益は同五一・二% 増の一七億九〇〇万円で、いずれも過去最高となり ました。
今期もまだ第4四半期を残していますが前 期を若干上回ることができそうです」 ──主な顧客層は?  「当社は三井物産さんや三菱商事さんなどの総合 商社に育てられた会社です。
今も商社はメーン顧客 ですが、近年は食品メーカーや外食チェーンとの取 引が増えています。
彼らが商社に頼らず自社で輸入 しようとすると、通関や倉庫機能が必要になってくる。
そこで、我々をパートナーに選んでもらえる。
ある いは商社が介在する取引でも、意思決定権は食品メー カーや外食チェーンにあることが多く、『通関業務は 二葉に』と指名してくださる」 ──総合商社や大手食品メーカーは系列下に物流会 社を抱えています。
彼等とはどう差別化しているの ですか。
 「確かに物流に関しては他に素晴らしい会社が沢 山ありますが、食品輸入に関するスペシャリスト集 団として、我々は強い自信を持っています。
当社の 輸入畜産物の年間取扱いは約七九万トン、輸入水産 物は約三一万トンで、それぞれ約三一%、十二%の 全国シェアを獲得しています。
食品の通関業務では 日本で一、二を争うスタッフを抱えており、この商 材がどういう成分で、どこの由来で、何日掛かって 港まで届いて、コストはどれぐらいで、といった情 報が一人ひとりの頭の中に入っている。
しかも当社 は通関だけでなく港湾運送から保管、配送まで一貫 したサービスを提供できる。
輸入食品分野で同じこ とができる会社はそう多くないはずです」 ──港湾運送から冷蔵倉庫業に本格的に踏み出した きっかけは。
 「顧客の要望に応えるためでした。
当初から顧客 のために倉庫を探すという業務を行っていたのですが、 必ずしも最適な施設が見つかるとは限りませんでし た。
そこで、我々は顧客のニーズも分かるし、商品 知識もあるので、自分でやってみようと判断したの です。
それまでパートナーとして付き合ってきた倉 庫業者のライバルになることから、相当の反発も覚 悟しましたが、現会長が社長に就任した一九九五年 以降、集中して倉庫を増やしてきました」  「冷蔵倉庫会社としては後発だったので、乳製品 鈴木英明 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第 2 位 第 5 位 第 7 位 第 9 位 第15 位 第18 位 27  FEBRUARY 2013 や濃縮果汁など、他社の取扱いが少なかったニッチ な商材も積極的に手掛けました。
食品メーカー向け の原料となる商材ですので、デリケートで取扱いも 非常にシビアですが、現在はそういった部分が水産物・ 畜産物に続く当社の主力に育っています」 ──冷蔵倉庫需要の拡大は今後も続きますか。
 「大型倉庫の竣工がいくつも予定されていて、油 断できない状況です。
特に川崎・東扇島では合計一 八万トンに上る大型冷蔵倉庫の竣工ラッシュが控え ています。
為替の状況も不透明です。
長期的には人 口減時代にも突入しています。
ただし更新時期が近 付いている倉庫が日本全国にかなりありますので、 現代的な倉庫へ建て替えたり、移転したりという需 要は確実にあるはずです」 ──関西にも新たに拠点進出する計画ですね。
 「大阪南港地区の中ふ頭に二万五千トンの大型冷 蔵倉庫を作ります。
今年六月に着工し、一四年十月 ごろ竣工予定です。
震災以降、リスクヘッジ的な観 点から、関西にも倉庫が欲しいという要望が増えて きました。
当社で一手に仕事を引き受けている顧客 も多く、そのフォローをする必要が出てきたという のが出発点です。
関西の倉庫は満杯で、しかも全体 的に設備の老朽化が目立っています」 ──大阪の既存業者にとっては脅威では?  「大阪には九四年に通関・営業部門を設置して、 これまで一八年間にわたって業務を行ってきました。
そこで築いた実績・信用力なども背景に、新天地で のビジネスに望みたいと考えています」 ──倉庫は基本的に自社所有する方針なのですか。
 「二葉本体の倉庫はほとんどが自社物件です。
借 りる方がイニシャルコストは低くて済むわけですが、 時間は掛かっても『稼いで、貯めて、建てる』とい う循環を回し、一歩一歩進んでいくのが当社の方針 です。
顧客との付き合いも基本的に長い。
信頼関係 をベースに組み立てていく商売で、コンペ、コンペ という形の顧客はあまりいない。
しかも我々は港か ら撤退することもあり得ない。
それなら自分で所有 したほうがいいという考えです」 通関スタッフの半分は女性 ──今後、力を入れていく点は。
 「今、意識しているのは定温倉庫ですね。
ワインや チョコレートなど、冷蔵・冷凍の必要はないけれど 一定の範囲の温度管理を必要とする貨物が対象です。
一〇年に大井埠頭の既存施設を一五度〜二〇度で商 品を管理する定温倉庫に改装しました。
既に損益分 岐点を大きく超えて、黒字化に成功しています」 ──十分、上場が可能な業績ですが。
 「上場を本格的に検討した時期もありましたが、 現時点ではその必要性が薄らいでいます。
資金調達 に不自由はしていないし、優秀な人材の確保もでき ている。
新卒採用には例年約三〇〇〇人ものエント リーがあります。
地味な会社ですが、口コミなどで “あそこは給料がいいぞ”と噂が回るようです。
実際、 当社の待遇や給与水準は世間相場と比べるとかなり いい」  「たくさんの女性も活躍しています。
今年は新卒 を一五人採用しましたが、半数が女性です。
通関業 務とりわけ対税関、厚生労働省・農林水産省の各検 疫所などの対応を行う職場は専門色が強く、緻密さ が要求される仕事で、女性には向いている。
メンバー の半分が女性で定着率も高い。
女性の役職者は今の ところ次長までしかいませんが、今後は部長、役員 も出していきたいと考えています」 港湾運送を背景に輸入食品の総合物流会社に転身  鈴木勢喜蔵初代社長が1924年「二葉組回漕店」とし て横浜で創業。
戦後段階的に業務領域を広げ、今は輸 入食品の港湾運送・通関・保管を中心に一貫した物流サー ビスを行っている。
90年代以降は食品輸入自由化の流 れに対応し、倉庫事業の強化に注力している。
 2000年には三井物産から第一冷蔵を買収。
冷蔵・冷 凍倉庫への集中投資を進め、現在は合計18万トン超の 収容能力を持つ。
近年は定温倉庫や配送センターなど、 さらに川下・周辺へと領域拡大を狙っている。
 商社と深い関係を持ちつつも、どこの系列にも属さな いオーナー系の非上場企業。
鈴木英明社長は2012年6月、 4代目社長に就任した。
本誌解説 09年 3月期 10年 3月期 11年 3月期 12年 3月期 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 (百万円) 業績推移(連結) 売上高(左軸) 経常利益(右軸)

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