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FEBRUARY 2013 28
バンテック
──物流とフォワーディングの統合効果が表面化
ロジスティクス事業では日産以外の自動車メーカー向
けが増加。 フォワーディング事業は、ロジスティクス事
業の既存荷主を新たな顧客に取り込んでいる。 2005年
に実施した旧・東急エアカーゴ買収のシナジー効果が数
字に現れてきた。 昨年の日立物流グループ入りをテコに、
今後は自動車物流分野で海外投資を積極化する。
非自動車物流が売上高の三割まで成長
──二〇一二年三月期は売上高、利益ともに過去最
高でした。
「一つは体質改善です。 リーマンショックを機に固
定費の削減を進め、贅肉を減らすことに成功しました。
配送と庫内作業のオペレーションを分社化し、一〇
年にバンテックイースト、バンテックセントラル、バ
ンテックウエスト、バンテック九州の四つの地域子会
社に再編しました。 その後、震災復興や輸出の回復
で物量が上向いたことで、体質改善の成果が数字に
現れてきました」
「もう一つはフォワーディングを統合したシナジー
効果です。 〇九年四月にバンテックワールドトランス
ポート(〇五年にバンテックが買収した旧・東急エ
アカーゴ)との経営統合を行い、ドア・ツー・ドア
の輸送サービスが可能になりました。 これによって
ロジスティクスの顧客にフォワーディングのサービス
を売り込んでいくというシナジー効果が発揮できま
した」
── 逆にフォワーディングの荷主にロジスティクス
サービスを売り込むのは難しいのですか。
「確かにフォワーディング事業の顧客数はロジスティ
クス事業と比較すると桁違いに多い。 約二〇〇〇社
にも上ります。 しかし、その多くは単発の仕事をもらっ
ているだけで、コアと言える顧客となると限られて
います。 それに対してロジスティクス事業は年単位
の継続的な仕事です。 そこにフォワーディングを組
み込みました。 その結果、航空便でも船便でも単発
ではなく年間で取れるようになりました」
「そしてロジとフォワーディングの統合が進んだこ
とで本当の一貫サービス、軒下から軒下までのドア・
ツー・ドアがグローバルレベルで提供できるように
なりました。 そのことが主要顧客の日産自動車も含
め荷主にインパクトを与えた。 フォワーディングの買
収は成功だったと評価しています」
──それが業績に現れてきたのが、この二年という
ことですか。
「いえ、その前の〇七年から当時のトップが“ハ
イブリッドサービス”と名付けたロジとフォワーディ
ングを統合したサービスの売り込みを始めて徐々に
成果も出ていたのですが、組織体制やリーマンショッ
クの影響もあって、それが外からは見えにくかった
んです。 また、三菱自動車やダイハツなど、日産以
外の自動車メーカーさんの仕事が増えてきたことも
成長の基盤になっています」
──昨年秋の尖閣問題以降、日系自動車メーカーは
苦境に立たされています。
「短期的には今は我慢の時期です。 厳しい状況は
一三年度の前半まで続くと考えています。 年度後半
からの反転に向けた準備を今からしています。 現在
は工場の操業度が落ちてしまっているため、サブコ
ントラクターのトラック業者さんたちにも色々と我
慢をしてもらっています。 しかし、関係性を維持し、
一緒に耐えるという形を取るよう努めています。 そ
れが反転のための一手です」
──自動車物流以外はどういう状況ですか。
「我々は“ノンオート”と呼んでいますが、現状
では売り上げ全体の約三〇%を占めるまで成長しま
した。 〇一年に日産からMBO(マネジメント・バイ・
アウト:子会社経営陣による買収)で独立した当時、
ノンオートはほぼゼロでした。 一〇年掛けてようや
く柱の一つに成長しました」
──バンテックのノンオート事業は、具体的にどこ
小山彰 社長
注目企業 トップが語る強さの秘訣
第 2 位
第 5 位
第 7 位
第 9 位
第15 位
第18 位
29 FEBRUARY 2013
を狙うのか、戦略が明確ではありませんでした。 競
争の激しい分野に新規参入して、利益面で足を引っ
張られていた印象があります。
「試行錯誤があったことは否定しません。 しかし
今ではノンオートでも何とか利益を確保できるよう
になりました。 MBO当時の我々は、日産がくしゃ
みをすれば肺炎になるような状況でした。 資本関係
も無くなったのに、そのままで良いのかという議論
は常にあった。 現在も売り上げ全体に占める日産関
係の仕事の割合は約三〇%に上っています。 一本足
打法を脱して、ノンオートでもう一つの軸足を作る
ことは必要なんです」
──ターゲットも見えてきましたか?
「飲料系に強みがあります。 現在はコカ・コーラさん、
スターバックスさん、ファミリーマートさん、三菱食
品さんなどの仕事を請け負っています。 ノウハウも
蓄積されてきました。 例えば夏場の週末、天気が良
いような場合にはトラックを前もって手配しておく。
それによって急な傭車にも対応する」
──食品物流だけで三〇〇億円程度の売り上げがあ
るとなると、事業展開の選択肢も増えてきますね。
「食品物流の大手に比べればまだまだ脆弱です。
案件の規模も小さい。 それでもトラックの共用化な
ど柔軟性は生まれてきています」
日立物流グループ入りで自由度が拡大
──一一年四月にTOBで日立物流グループ入りし、
一二年三月には一〇〇%子会社になりました。 この
影響は。
「ファンドが株主だった時期と比べると、一番違う
のは投資姿勢ですね。 例えば海外で事業展開をする
ため、二〇億〜三〇億円の投資をしたいと言っても、
ファンドだと『一年後のリターンは?』『明日の株価
はどうなる?』となる。 我々が物流企業としての将
来ビジョンを訴えてもなかなか理解してもらえない。
事業会社が親会社になったことで、それが理解して
もらえるようになりました」
「日立物流グループの中にあっても、バンテックの
ブランド、アイデンティティーを残すことが我々の存
在価値になると思っています。 そのことを日立物流
もよく理解してくれている」
──中長期的な展望は?
「現在一五年度までの中期計画を策定中ですが、
日立物流グループ全体の売上目標は一五年度に七五
〇〇億円、バンテックはそのうちの二〇〇〇億を担
うことになりそうです。 その上で五%の営業利益率、
つまり一〇〇億円以上の利益を確保することが目標
になります」
「そのために海外に目を向けていきます。 海外現
地法人の売り上げ比率は現在バンテックグループ全
体の約一七%ですが、これを一五年度までに二五%
に引き上げる。 既に一二年度は海外への種まきの年
と位置付け、投資、人材育成、海外法人の設立に取
り組んできました」
──具体的には。
「投資金額が大きいものでは、イギリス・サンダー
ランド市に約三〇億円で倉庫を新設しました。 今年
二月に開所式を行います。 インドネシアにも約十三
億円を先行投資し、一二年十二月に倉庫を開設しま
した。 いずれも日産の仕事を請け負う狙いです。 他
にインドに倉庫を開設、ロシアに拠点を設けたり、
タイでも賃借で倉庫を増やしたりしています。 イン
ドネシアやロシアは、日立物流との共同進出で、お
互いにリスクヘッジが可能になっています」
飲料など自動車以外でもノウハウを蓄積
日産自動車のゴーン改革の一環で、2001年1月
にMBOで独立。 04年にフォワーディング業の東急
エアカーゴを買収(その後バンテックワールドトラ
ンスポートと名称変更)。 07年に東証一部に株式
上場。 11年4月にTOBにより日立物流グループ入
り。 これに伴い12年3月に上場を廃止、日立物流
の完全子会社に。
12年7月、バンテックと日立物流のフォワーディ
ング事業を日立物流シーアンドエアに統合。 同社
の社名を日立物流バンテックフォワーディングに変
更し、バンテックの連結子会社として位置付けた。
日産から独立後も同社のメーンパートナーの立
場を維持しながら、他の自動車メーカーにも販路
を拡大している。 非自動車のノンオート事業でも
食品・飲料を中心に取り扱い規模を伸ばしている。
本誌解説
07 年
3月期
08 年
3月期
09 年
3月期
10 年
3月期
11 年
3月期
12 年
3月期
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(億円) (億円) 業績推移(連結)
売上高(左軸)
経常利益(右軸)
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