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FEBRUARY 2013 34
大和物流
──ハウスメーカーの共同物流を軌道に乗せる
停滞を続ける住宅市場を主戦場としながら2期連
続で前年比10%以上の成長を達成。 今期も増収増
益を見込んでいる。 親会社である大和ハウス工業
のライバル各社をプラットフォーム型の共同物流に
取り込んでいる。 住宅物流以外の事業にも積極的
に進出し、最終目標の売上高1000億円を目指す。
不況を追い風に
──住宅市場は厳しい環境が続いています。 御社は
そこを主戦場にしているにも関わらず、一〇年度の
売り上げは前年比一〇%増、一一年度は同一六%増
という高い成長率を達成しています。 要因は?
「四年ほど前から本格的にスタートした共同物流
が軌道に乗ったことが大きい。 親会社である大和ハ
ウス工業だけでなく、他のハウスメーカーの建築資
材も当社がまとめてミルクランで調達し、全国に配
備した『サテライトセンター』と呼ぶ倉庫に入れる。
そこで必要な流通加工を施し、建築現場の作業工程
に合わせてJIT(ジャスト・イン・タイム)で納
入するというプラットフォーム型のスキームです。 こ
の提案が受け入れられ、現在ではパナホームさんを
はじめ、ほぼ全ての主要なハウスメーカーと大なり
小なりの協力をしている。 当社の外販比率は七割に
届くところまで来ています」
──競合同士の物流共同化には軋轢がつきものです
が、各社との交渉はスムーズに進んだのですか。
「もちろん互いに強力なライバルではありますが、
各社の経営層の多くは物流や購買など協力できると
ころは協力したいと考えています。 厳しい市場環境
が、物流の合理化を後押ししている」
──不況を追い風に、各ハウスメーカーのコスト削減
ニーズを取り込んだわけですね。
「はい。 ですが狙いはコスト削減だけではありません。
このマーケットの物流は独特の問題を多く孕んでい
ます。 例えば、従来はハウスメーカーからの出荷指
示を受けた各サプライヤーがそれぞれ資材を建築現
場に納めていました。 一戸の住宅を建設するには多
くの種類の資材が必要になるので、現場に出入りす
るトラックの数もそれだけ多くなる。 現場での受入
作業に掛かる負荷は相当なものです。 さらには近隣
住民にも迷惑が掛かるし、環境負荷という観点から
も好ましくはありません」
「それでも必要な資材が適切なタイミングで届けば
まだ良いのですが、物流をサプライヤー任せにして
いてはそれも完全には守られない。 これは現場の作
業進捗の大きな妨げになっていました。 当社の提案
する共同物流は、こうした問題の解決とコスト削減
を同時に実現しようというものです」
──それだけ効率化の余地が大きい分野なら、他の
物流企業が乗り出してきても良さそうなものです。
「住宅物流には独特のノウハウが必要です。 単に
物流センターや工場に納品するのとは違い、建築現
場とコミュニケーションを図って進捗状況を正確に
把握し、それに合わせてセンター作業をして納入し
なければいけない。 運ぶ、保管するという基本的な
機能だけでなく、住宅そのものを理解していないと
難しいのです。 一般の物流企業が一朝一夕に身に付
けられるものではなく、当社のようなハウスメーカー
の物流子会社だからこそ実現できる」
──住宅に強い物流企業と言えば、積水ハウスや旭
化成を主要荷主にしているセンコーの存在がありま
す。 同社の『住宅事業』は一一年度実績で五八四
億円の売り上げを計上している。 やはりベンチマー
クはしていますか。
「住宅物流でナンバー1になりたいと常々考えてい
るので、もちろん早く追い付きたいと考えています。
センコーさんも住宅分野の共同物流を展開されてい
るので、良いところはどんどん学びたい」
──昨年十二月に物流システム会社フレームワークス
を傘下に持つSCSホールディングスをM&Aで子
舘野克好 社長
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第18 位
35 FEBRUARY 2013
会社化しています。 その狙いは。
「共同物流をさらに推進していこうとした時、一
つの課題になるのが物流システムの強化です。 複数
のハウスメーカーやサプライヤーの荷物を扱うには、
各社固有のシステムに対応できる標準システムを構
築する必要があります。 今は力業で何とか乗り切っ
ている部分がありますが、今後物量が増えれば必ず
限界が来る。 フレームワークスの買収を機に、本腰
を入れてそのシステム開発に着手する方針です」
建築現場の工程管理に強み
──メーンの住宅物流以外の分野も好調です。
「当社の事業は『住宅』『流通』『産業』『環境』『ロ
ジテック』『海外』の六つに分類されますが、その
うち『住宅』が売り上げの約六〇%を占めます。 次
いで大きいのが『流通』で約一五%。 これが営業に
力を入れた甲斐あって、一〇年度、一一年度と連続
で二〇%以上の成長を果たしている。 業績を押し上
げた大きな要因の一つです」
──その流通事業とは?
「コンビニさんをはじめとする小売りチェーンの物
流を受託しています。 と言っても、日雑品などの商
品自体を扱うわけではありません。 店舗の新規オー
プンや閉店リニューアル、店内の什器の入れ替えな
どに伴って発生する建築物流を取り込んでいるのです。
住宅と同様、建築現場の進捗に合わせて、必要な部
材や什器を最適なタイミングで納入する」
──御社の強みを活かせる分野ということですね。
「その通りです。 同様の論理で、この二〜三年で
通信事業会社向けの物流受託にも力を入れています。
近年のスマートフォンの普及に伴い、KDDIさん
やソフトバンクさん、NTTドコモさんは通信基地
局の改廃を急ピッチで進めている。 そこで、当社は
各通信事業者に住宅と同様の共同物流を提案してい
ます」
「基地局に必要なアンテナや産業用バッテリー、ラッ
ク、ポール、通信機材などを当社が一括して調達し、
必要に応じて基地局に納入する。 この事業が今では
年間売上二〇億円規模にまで育ってきました。 まだ
まだ拡大の余地は大きいと見ています。 住宅や流通、
通信といった分野以外にも、建築現場の工程管理を
必要とする物流は当社の得意とするところです。 今
後もそういった分野には積極的に進出していく」
──一一年四月には上海に現地法人『大誼和国際貨
運代理』を立ち上げ、中国事業に進出しました。
「正直、苦戦しています。 当社のミッションは日
本で親会社向けに提供しているのと同等のサービス
を中国国内でも実施することなのですが、サプライ
ヤーとの取引慣行などが日本とは全く違う。 黒字化
を実現するまでには、もう少し試行錯誤の時間が必
要です」
──足下の業績および今後の戦略は。
「今期は売り上げ四六〇億円、来期は五一〇億円
を見込んでいますが、これはあくまで通過点。 最終
的には売り上げ一〇〇〇億円を目指します。 一〇〇
〇億というのは全物流企業で一〇位前後に相当する
規模で、これを実現できれば荷主に対してもう一段
上の貢献ができる。 ただし、今の延長線上では達成
できません。 流通や通信などのように住宅以外の柱
をスピーディーに立ち上げ、育てていく必要がある。
そのためには優れた人材が欠かせません。 受け身で
はなく、自分でモノを考え、市場を観察し、ニーズ
を掘り起こせるリーダーを育てていくことが、今後
の私の役割です」
1000億円企業を目指して
ハウスメーカー大手・大和ハウス工業の100% 物流子会社。
2004年12月にジャスダックに上場するも、大和ハウスグループの
資本政策により06年7月に上場を廃止した。 ただし、外販志向は
一貫して強く、現在は売り上げの約7割をグループ外から稼ぎ出し
ている。
11年度の売上高は406億円で、そのうちの約6割(243億円)
を住宅物流が占める。 金融危機で急落した新設住宅着工戸数は、
その後も低位横ばいを続けている。 逆風をよそに2期連続の2桁成
長を実現した。 ハウスメーカーの共同物流や流通事業の拡大など
が牽引役となった。 11年度決算においては、東日本大震災による
仮設住宅関連の需要も、一定程度、業績に寄与している。
今期も前年比11%以上の成長を果たす見込みで、来期には500
億円の壁を突破する勢い。 最終的には創業60周年となる19年度
までに1000億円体制の構築を目指している。 既存事業の強化に
加え、第2、第3の核となる新規事業を立ち上げられるかがポイント。
本誌解説
08 年
3月期
09 年
3月期
10 年
3月期
11 年
3月期
12 年
3月期
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
1,650
1,600
1,550
1,500
1,450
1,400
1,350
1,300
(百万円) 業績推移(連結)
売上高(左軸)
営業利益(右軸)
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