2013年2月号
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「物流市場にはチャンスが眠っている」 大塚倉庫 大塚太郎 社長
FEBRUARY 2013 6
「そこは少し特殊事情もあります。
食品業界などはオーナー系企業が多く、 そういう方たちと以前から個人的に交 流があるんです。
そのため、取りあえ ず話は聞いてもらえる。
とはいえ、単 に知り合いだから仕事がもらえるわけ もありませんので、我々の共通プラッ トフォームに乗れば絶対にメリットが 出るところにしか営業しません」 ──大塚製薬のブランドマネジャーや 大塚ベバレジ社長などグループの要職 を歴任し、一一年に大塚倉庫のトップ に就任された。
いわば表舞台から裏方 に回ったわけですが、物流業界をどの ようにご覧になりましたか。
「非常に魅力的なマーケットだと感じ ています。
医薬品業界で今からすぐに 売り上げを二割伸ばせと言われても相 当に難しいはずですが、物流業界にお いてはそのチャンスが十分にある。
物 流業界は市場規模がこれだけ大きいに も関わらず、まだまだ開発され尽くさ れていない。
過去のしがらみや非効率 な部分が数多く残っています。
それを 少しずつ正していくことで事業規模を どんどん拡大していける」 ──先入観なしで物流の現状を見て、 違和感等はありませんでしたか。
「ありましたね。
例えば倉庫の事務所 に行くと巨大なプリンターが大量の紙 を音を立てて印刷している。
そして印 物流業の常識を疑え ──二〇一一年三月期、一二年三 月期と売り上げが急激に伸びています (物流企業番付で総合一六位)。
「そのほとんどが外販です。
『共通プ ラットフォーム』と呼んでいる共同物流 事業が伸びています。
大塚グループに は非常に強い商品分野が三つあります。
一つは『ポカリスエット』や『オロナ ミンC』などの飲料。
もう一つは医薬 品。
大塚製薬は医薬品会社としてトッ プメーカーではありませんが、点滴な どに使う輸液の分野では圧倒的なシェ アを持っている。
そのために物量の面 では医薬品業界でナンバーワンなんで す。
そして三つ目がグループのアース 製薬の殺虫剤です。
約五〇%のシェア があります。
それらを活かして同業他 社に共同物流を提案しています」 ──外販営業は従来から行っていたの では? 「それまでのアプローチを抜本的に 改めました。
何でもいいから仕事を下 さい、というスタイルの営業は全て止 めさせました。
そして採算の合わない 仕事は条件の見直しを荷主にお願いし、 それができない場合は手を引きました。
目先の小さな仕事を追い掛けることで、 逆に成長が阻害されていると考えたか らです。
当社の事業規模や営業マンの 人数などの物理的な条件を考慮すると、 目の前の一〇〇円玉ばかり拾っていて も成長はできない」 「一万円稼がなければいけない時に、 一つの仕事が一〇〇円なら一〇〇円 玉を一〇〇枚集めなければいけませ ん。
そのためには一〇〇〇件ぐらい営 業する必要があるし、仕事を取れたら 取れたで膨大な管理負担が発生します。
そんなやり方ではなく、スタッフには ?マグロを釣れ?と言っているのですが、 しっかり準備して一万円の仕事を一件 取る。
そうすることで一人当たりの売 り上げが伸びる。
余裕を持って顧客の 要望にきちんと応えられるようになる」 ──具体的なターゲットは? 「各業界の二番手、三番手、四番手 ぐらいの企業です。
最大手企業には 共同物流のニーズがありません。
一方、 一〇番手以下になると物量が少な過ぎ る。
一定の規模はあるものの自前で物 流をやるには効率が悪いところに、き ちんとロジックを組み立て、こういう 仕組みを一緒に作ったらこのような効 果がありますね、と提案していく」 ──しかし、各社とも既存の物流の仕 組みを持っているわけですから、いく ら合理的な提案でもそう簡単に仕事が 取れるとは思えません。
大塚倉庫 大塚太郎 社長 「物流市場にはチャンスが眠っている」 グループの要職を歴任してきた創業家出身者が物流子会社のトッ プに就任。
経営の在り方を抜本的に改めた。
焦点の定まっていなか った外販営業を止めさせて、ドメインを再定義。
ターゲットを絞り 明快なロジックを組み立て、荷主に切り込み、新規案件を次々に受 託している。
(聞き手・大矢昌浩、藤原秀行) 7 FEBRUARY 2013 刷した紙を人がちぎってフォークリフト の作業員に指示書として手渡している。
これは全く?イケてない?。
どうして も許せなかったので、この春から現場 のフォークマンに一人一台『iPad』 を配布することにしました」 「『Wi─Fi』(無線LAN)でiP adに作業指示を飛ばし、作業が済ん だら『終了』を入力して次の作業に 移る。
紙でやるより絶対に効率がいい。
しかも、この仕組みの本当に良いとこ ろは単に印刷や紙が要らなくなるだけ でなく、実績が全て記録として残ると ころです。
作業員個人単位、拠点単 位で実績を分析することで作業効率の 底上げや、これまではベテランの経験 や勘に頼っていたレイバーコントロール を仕組み化できる」 「一人一台iPadを配ることなど、 て独自のネットワークを持っています。
しかし物流のことなら我々のような専 門会社に任せたほうが効率はいい」 ──インドネシア以外は? 「我々が出ていって効率が上がるので あれば必ず出ていきます。
しかし、効 率が上がらないのなら当社の売り上げ が増えたとしてもやらないほうがいい。
インドネシアのようにロジスティクスが 複雑な場所では我々を使うメリットも 出てくる。
しかし単純な保管や輸送だ けならメーカーが自分でやってもそれ ほど変わらない。
まずはインドネシア でしっかりと足場を固めます」 世間では既に当たり前のように行われ ています。
大塚グループでも営業マン は皆iPadを持って顧客を回ってい る。
ところが物流業界では誰もやって いないと聞いて驚きました」 新しいことをやろう! ──大塚倉庫という会社自体は、どう 評価されていますか。
「社内には素晴らしく地道にこつこ つ物事を進められる人たちがいる。
グ ループの物量を滞らせることなく、常 にきちんと処理してきた実績も残して いる。
そうした底力はありますが、一 方で会社の成長を牽引するような新し いことを考える人がこれまでは不足し ていました。
そこで今、全てにおいて 新しいことをやろうという話をみんな と進めています」 ──社員たちは理解してくれますか。
「最初は皆、ポカンとしていました。
社長が何を言っているのかさっぱり分 からない。
せっかく取ってきた仕事か ら手を引いて売り上げが下がったら自 分たちはどうなるんだ、というのが 正直な気持ちだったと思います。
そ れでも、だんだんと結果が出てきて、 ?とりあえず聞いておいた方がいいの かな?と変わってきました。
今はかな り消化してもらえていると思います」 ──足下の業績と中期目標は。
「一三年三月期は売上高が四〇〇億 円を超える見通しです。
共通プラット フォームを活用し、二年ぐらいで五〇 〇億円を達成しようと社内では言って います。
昨年十一月には北関東と関西 にそれぞれ医薬品向けの『ロジスティ クスセンター』を新設しました。
BC P(事業継続計画)対策のため在庫の 分散を検討している医薬品会社に利用 を提案していきます」 「荷物だけではなく情報、つまり受 注処理業務も外販の対象です。
当社は 現在、年間一五〇万件の受注処理を こなしています。
しかも東京・晴海と 徳島に受注センターを置く二拠点体制 なので、この点でもBCPに対応でき ます。
実際、東日本大震災の時には、 東京のセンターは業務がストップしま したが、徳島でカバーできました」 ──大塚グループは海外売上比率が約 五割に上っています。
大塚倉庫として も積極的に国際物流へ関わっていく必 要があるのでは。
「昨年、インドネシアにある大塚グ ループのロジスティクス会社の運営を 始めました。
大塚グループはインドネ シアで点滴やポカリスエットなどを古 くから販売していて、相当な物量があ ります。
インドネシアはたくさんの島 から成る島国で、その隅々まで商品を 届ける必要があるため、メーカーとし 食品メーカーと共同物流を推進 一九六一年、大塚グループ傘下の大塚製 薬工場の運輸倉庫部門が独立する形で発足 した。
現在はグループを統括する持ち株会 社、大塚ホールディングスの完全子会社。
大塚製薬などの医薬品や飲料、食品の共同 物流を展開しているほか、3PLも提供し ている。
創業家出身で大塚製薬のプロダク トマネジャーや大塚ベバレジ社長を歴任し てきた大塚太郎氏が二〇一一年、トップに 就いた。
一二年三月期の売上高は三九一億 円、当期利益は九億円。
物流子会社ながら、輸送計画立案などグ ループ全体の物流に関する裁量権が極めて 大きい。
こうした特徴を生かし、自社の物 流インフラを用いた外販の拡大に力を入れ ている。
一二年七月には即席めん大手のサ ンヨー食品と共同物流を開始。
飲料と即席 めんという異例のタッグを実現した。
自社 の拠点を使った受注業務代行なども手掛け、 外販比率を現状の約三割から、五割まで高 めることを目指している。
本誌解説 業績の推移(大塚倉庫単体) 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 1,200 1,000 800 600 400 200 0 918 39,167 ※単位はいずれも百万円 売上高(左軸) 当期利益 (右軸) 08年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期
食品業界などはオーナー系企業が多く、 そういう方たちと以前から個人的に交 流があるんです。
そのため、取りあえ ず話は聞いてもらえる。
とはいえ、単 に知り合いだから仕事がもらえるわけ もありませんので、我々の共通プラッ トフォームに乗れば絶対にメリットが 出るところにしか営業しません」 ──大塚製薬のブランドマネジャーや 大塚ベバレジ社長などグループの要職 を歴任し、一一年に大塚倉庫のトップ に就任された。
いわば表舞台から裏方 に回ったわけですが、物流業界をどの ようにご覧になりましたか。
「非常に魅力的なマーケットだと感じ ています。
医薬品業界で今からすぐに 売り上げを二割伸ばせと言われても相 当に難しいはずですが、物流業界にお いてはそのチャンスが十分にある。
物 流業界は市場規模がこれだけ大きいに も関わらず、まだまだ開発され尽くさ れていない。
過去のしがらみや非効率 な部分が数多く残っています。
それを 少しずつ正していくことで事業規模を どんどん拡大していける」 ──先入観なしで物流の現状を見て、 違和感等はありませんでしたか。
「ありましたね。
例えば倉庫の事務所 に行くと巨大なプリンターが大量の紙 を音を立てて印刷している。
そして印 物流業の常識を疑え ──二〇一一年三月期、一二年三 月期と売り上げが急激に伸びています (物流企業番付で総合一六位)。
「そのほとんどが外販です。
『共通プ ラットフォーム』と呼んでいる共同物流 事業が伸びています。
大塚グループに は非常に強い商品分野が三つあります。
一つは『ポカリスエット』や『オロナ ミンC』などの飲料。
もう一つは医薬 品。
大塚製薬は医薬品会社としてトッ プメーカーではありませんが、点滴な どに使う輸液の分野では圧倒的なシェ アを持っている。
そのために物量の面 では医薬品業界でナンバーワンなんで す。
そして三つ目がグループのアース 製薬の殺虫剤です。
約五〇%のシェア があります。
それらを活かして同業他 社に共同物流を提案しています」 ──外販営業は従来から行っていたの では? 「それまでのアプローチを抜本的に 改めました。
何でもいいから仕事を下 さい、というスタイルの営業は全て止 めさせました。
そして採算の合わない 仕事は条件の見直しを荷主にお願いし、 それができない場合は手を引きました。
目先の小さな仕事を追い掛けることで、 逆に成長が阻害されていると考えたか らです。
当社の事業規模や営業マンの 人数などの物理的な条件を考慮すると、 目の前の一〇〇円玉ばかり拾っていて も成長はできない」 「一万円稼がなければいけない時に、 一つの仕事が一〇〇円なら一〇〇円 玉を一〇〇枚集めなければいけませ ん。
そのためには一〇〇〇件ぐらい営 業する必要があるし、仕事を取れたら 取れたで膨大な管理負担が発生します。
そんなやり方ではなく、スタッフには ?マグロを釣れ?と言っているのですが、 しっかり準備して一万円の仕事を一件 取る。
そうすることで一人当たりの売 り上げが伸びる。
余裕を持って顧客の 要望にきちんと応えられるようになる」 ──具体的なターゲットは? 「各業界の二番手、三番手、四番手 ぐらいの企業です。
最大手企業には 共同物流のニーズがありません。
一方、 一〇番手以下になると物量が少な過ぎ る。
一定の規模はあるものの自前で物 流をやるには効率が悪いところに、き ちんとロジックを組み立て、こういう 仕組みを一緒に作ったらこのような効 果がありますね、と提案していく」 ──しかし、各社とも既存の物流の仕 組みを持っているわけですから、いく ら合理的な提案でもそう簡単に仕事が 取れるとは思えません。
大塚倉庫 大塚太郎 社長 「物流市場にはチャンスが眠っている」 グループの要職を歴任してきた創業家出身者が物流子会社のトッ プに就任。
経営の在り方を抜本的に改めた。
焦点の定まっていなか った外販営業を止めさせて、ドメインを再定義。
ターゲットを絞り 明快なロジックを組み立て、荷主に切り込み、新規案件を次々に受 託している。
(聞き手・大矢昌浩、藤原秀行) 7 FEBRUARY 2013 刷した紙を人がちぎってフォークリフト の作業員に指示書として手渡している。
これは全く?イケてない?。
どうして も許せなかったので、この春から現場 のフォークマンに一人一台『iPad』 を配布することにしました」 「『Wi─Fi』(無線LAN)でiP adに作業指示を飛ばし、作業が済ん だら『終了』を入力して次の作業に 移る。
紙でやるより絶対に効率がいい。
しかも、この仕組みの本当に良いとこ ろは単に印刷や紙が要らなくなるだけ でなく、実績が全て記録として残ると ころです。
作業員個人単位、拠点単 位で実績を分析することで作業効率の 底上げや、これまではベテランの経験 や勘に頼っていたレイバーコントロール を仕組み化できる」 「一人一台iPadを配ることなど、 て独自のネットワークを持っています。
しかし物流のことなら我々のような専 門会社に任せたほうが効率はいい」 ──インドネシア以外は? 「我々が出ていって効率が上がるので あれば必ず出ていきます。
しかし、効 率が上がらないのなら当社の売り上げ が増えたとしてもやらないほうがいい。
インドネシアのようにロジスティクスが 複雑な場所では我々を使うメリットも 出てくる。
しかし単純な保管や輸送だ けならメーカーが自分でやってもそれ ほど変わらない。
まずはインドネシア でしっかりと足場を固めます」 世間では既に当たり前のように行われ ています。
大塚グループでも営業マン は皆iPadを持って顧客を回ってい る。
ところが物流業界では誰もやって いないと聞いて驚きました」 新しいことをやろう! ──大塚倉庫という会社自体は、どう 評価されていますか。
「社内には素晴らしく地道にこつこ つ物事を進められる人たちがいる。
グ ループの物量を滞らせることなく、常 にきちんと処理してきた実績も残して いる。
そうした底力はありますが、一 方で会社の成長を牽引するような新し いことを考える人がこれまでは不足し ていました。
そこで今、全てにおいて 新しいことをやろうという話をみんな と進めています」 ──社員たちは理解してくれますか。
「最初は皆、ポカンとしていました。
社長が何を言っているのかさっぱり分 からない。
せっかく取ってきた仕事か ら手を引いて売り上げが下がったら自 分たちはどうなるんだ、というのが 正直な気持ちだったと思います。
そ れでも、だんだんと結果が出てきて、 ?とりあえず聞いておいた方がいいの かな?と変わってきました。
今はかな り消化してもらえていると思います」 ──足下の業績と中期目標は。
「一三年三月期は売上高が四〇〇億 円を超える見通しです。
共通プラット フォームを活用し、二年ぐらいで五〇 〇億円を達成しようと社内では言って います。
昨年十一月には北関東と関西 にそれぞれ医薬品向けの『ロジスティ クスセンター』を新設しました。
BC P(事業継続計画)対策のため在庫の 分散を検討している医薬品会社に利用 を提案していきます」 「荷物だけではなく情報、つまり受 注処理業務も外販の対象です。
当社は 現在、年間一五〇万件の受注処理を こなしています。
しかも東京・晴海と 徳島に受注センターを置く二拠点体制 なので、この点でもBCPに対応でき ます。
実際、東日本大震災の時には、 東京のセンターは業務がストップしま したが、徳島でカバーできました」 ──大塚グループは海外売上比率が約 五割に上っています。
大塚倉庫として も積極的に国際物流へ関わっていく必 要があるのでは。
「昨年、インドネシアにある大塚グ ループのロジスティクス会社の運営を 始めました。
大塚グループはインドネ シアで点滴やポカリスエットなどを古 くから販売していて、相当な物量があ ります。
インドネシアはたくさんの島 から成る島国で、その隅々まで商品を 届ける必要があるため、メーカーとし 食品メーカーと共同物流を推進 一九六一年、大塚グループ傘下の大塚製 薬工場の運輸倉庫部門が独立する形で発足 した。
現在はグループを統括する持ち株会 社、大塚ホールディングスの完全子会社。
大塚製薬などの医薬品や飲料、食品の共同 物流を展開しているほか、3PLも提供し ている。
創業家出身で大塚製薬のプロダク トマネジャーや大塚ベバレジ社長を歴任し てきた大塚太郎氏が二〇一一年、トップに 就いた。
一二年三月期の売上高は三九一億 円、当期利益は九億円。
物流子会社ながら、輸送計画立案などグ ループ全体の物流に関する裁量権が極めて 大きい。
こうした特徴を生かし、自社の物 流インフラを用いた外販の拡大に力を入れ ている。
一二年七月には即席めん大手のサ ンヨー食品と共同物流を開始。
飲料と即席 めんという異例のタッグを実現した。
自社 の拠点を使った受注業務代行なども手掛け、 外販比率を現状の約三割から、五割まで高 めることを目指している。
本誌解説 業績の推移(大塚倉庫単体) 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 1,200 1,000 800 600 400 200 0 918 39,167 ※単位はいずれも百万円 売上高(左軸) 当期利益 (右軸) 08年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期
