ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年2号
ケース
サッポロライオン 定温物流 老舗の外食チェーンが一括物流を導入委託先に3PLを選択し卸依存を回避

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2013  52 卸主導の一括物流に懸念  「銀座ライオン」をはじめ全国に約二〇〇店 の飲食店を展開するサッポロライオンは、二 〇一一年から首都圏で一括物流を開始した。
神奈川県愛甲郡愛川町に在庫型の物流センタ ーを設置。
約九〇社の取引先が同センターに 商材を納品し、ここから首都圏の約一二〇店 舗に週六日ペースで届けている。
 従来は店舗への商材の搬入を全て仕入先に 依存していた。
大型店ともなると一日に四〇 社以上が別々のトラックで納品に訪れ、店舗 の負担になっていた。
これを抜本的に見直し てバックヤード業務を効率化した。
 同社は創業一一〇年を超える外食チェー ンの老舗で、母体となったビール会社が明治 三二年に日本初のビヤホールを開設して以来、 パブや居酒屋、バーなどの飲食店を展開して きた。
現在、店舗の種類は三〇に及ぶ。
 その事業展開の特徴を、同社で経営戦略部 の副部長とCSR推進室長を兼務する淀縄富 雄執行役員は次のように説明する。
 「当社はアルコール主体で事業をスタートし たため、基本的に車での来店は想定せず、働 く男性の多い都市部を中心に出店してきた。
どうしたらお客様に飲んでいただけるか、楽 しんでいただけるかを重視し、物流は後付け で何とかなるものと考えてきた。
オペレーシ ョンの合理化に熱心な外食チェーンとは出店 戦略が真っ向から違う」  出店場所も雑居ビルの中や繁華街の路面店、 駅の地下や空港内など多岐にわたり、各店舗 の業績はそれぞれの支配人や店長の腕次第で 決まる。
こうした出店方針が過去には活力に 繋がった。
ところが近年は非効率が目立つよ うになっていた。
 二〇〇〇年代初頭に三期連続の最終赤字 を計上した。
その後、ビヤホールの復活など で一時的に業績は持ち直したが、〇八年秋に リーマンショックが発生すると再び営業赤字 に転落。
事業の合理化が急務となった。
 それ以前から、一括物流には関心を持って いた。
複数の卸からの売り込みも受けていた。
しかし、年商二百数十億円のサッポロライオ ンが大手食品卸に物流を依存するようになれ ば、いずれ商流の主導権まで握られてしまう のではないかという懸念があった。
 食品卸への物流の委託で先行した他の外食 チェーンからは、初年度こそコストダウンで きたが二年目以降が続かなかった、あるいは 商流が一本化されたために品質改善が停滞し てしまった、という話も伝わってきていた。
 それでもリーマンショックを機に、心配し  商流に影響が及ぶことを危惧して、食品卸と組 む一括物流には二の足を踏んでいた。
3PLをパー トナーにすることで懸念を払拭。
2011年11月から 首都圏で一括物流を開始した。
受発注システムの 運用やコールセンター業務などもアウトソーシング して、オペレーションの効率化を図っている。
定温物流 サッポロライオン 老舗の外食チェーンが一括物流を導入 委託先に3PLを選択し卸依存を回避 サッポロライオンの淀縄富雄 執行役員 53  FEBRUARY 2013 てばかりもいられなくなった。
「仕組みで売 り上げや利益を確保できるようにしなければ 今後の成長を見込めないという意識が社内に 広がっていった」と淀縄執行役員は言う。
 一〇年の秋に、物流専業者が主導する新た な一括物流のスキームが持ち込まれた。
サッ ポログループの物流会社であるサッポロ流通 システムから、九州を地盤に外食チェーンや 小売業の一括物流を手掛ける中堅物流会社の トワードを紹介された格好だった。
 「それまでの話との最大の違いは、商流が 絡むかどうか。
卸さんによる一括物流は結局 のところ商流の話になる。
そうじゃないのは トワードだけだった。
彼らは未来永劫、商流 は持たないと言う。
われわれにとっては非常 に新鮮だった」。
サッポロライオンで今回の物 流改革を牽引してきた商品開発部の石見祐治 シニアマネージャーは、そう振り返る。
 検討の結果、物流専業者を使うと、卸に任 せるのに比べて導入時のイニシャルコストが 高くなることや、コストメリットが不透明で リスクがあることなどが明らかになった。
 一方で多くのメリットを見込めることも分 かった。
既存の取引関係を維持しながら直接 交渉によって個々に改善していく自由がある。
何より自ら物流と商流を管理できるため、取 引の透明性が高まる。
うまくいけば継続的に コストメリットも得られそうだった。
 業務フローに基づいてコストを詳細に分析 してみた。
その結果、トワードへの支払い を商材の通過金額のパーセンテージで設定し、 そのパーセンテージを上回るフィーを取引先か ら収受できれば、物流改革の果実を確実に手 にできることがはっきりした。
 もっとも、そのためには約九〇ある取引先 から協力を取り付けなければならない。
物流 センターに寄託在庫を置くことや、保管や入 出庫・配送のためのフィーの支払いに応じて もらう必要がある。
手間の掛かる作業だが、 やってみる価値は十分にある。
 
械丕未魍萢僂垢觀弉茲鮴擬阿坊弍朕悗忙 った。
一一年二月の経営会議でこの計画が承 認されたことで、サッポロライオンの一括物 流が具体的に動き出すことになった。
取扱アイテムを四分の一に削減  ほどなく両社によるプロジェクトを立ち上げ、 毎週金曜日の定例会をスタートさせた。
まず はトワードが一括物流の実務について説明し ながら互いの理解を深めていった。
 ただサッポロライオンにとってこの時期は、 一括物流の実現性を見極める段階でもあった。
現場は従来と同じやり方で動いており、プロ ジェクトをいつでも中断できた。
トワードに はコンサルティングフィーに当たる対価を支払 い、物流センターを実際に設置するフェーズ とは区別して検討を進めた。
 その後、東日本大震災によって二カ月ほど の停滞を余儀なくされたが、五月になると活 動を再開。
それから約半年掛けて準備を進め る中で、トワードを実務パートナーとして迎え 入れる流れが自然にできあがっていった。
結 局、物流コンペを開くこともなく、両社によ サッポロライオンの石見祐治 商品開発部シニアマネージャ ー 「首都圏物流センター」を活用する一括物流の業務フロー 発注情報開示(TC・直送)(D+0) 13:00   (深夜1:00) 取引先 保管型在庫 商品 (DC) 商品 (TC) センター通過型 メーカー直送型 商品 (直送) サッポロライオン本部 首都圏 各店舗 約120 店 サッポロライオン 首都圏物流センターサッポロライオン Net SAM (技術サポート/トワード) 商品マスター 問合せ対応 在庫補充(随時) 出荷指示 (D+0) 13:00 商品・ 納品問合せ 店舗発注締め (D+0) 昼12:00 店舗直送 (従来通り) 発注商品 持込み (総数/店別) *18 時〜20 時 店舗一括納品 (D+1) 週6日 ※日曜休み 深夜24 時〜 翌朝10 時 入出庫業務 保管運用 配送業務全般 ※(D+0)・(D+1)の“D”とは、店舗発注締日を意味。
FEBRUARY 2013  54 る協業は実行段階へと移行した。
 複数の作業を同時並行で進めた。
まずサッ ポロライオンとしては、約九〇社の取引先と 一社ずつ交渉を進める必要があった。
 「五月からの四カ月間ぐらいは取引先との 交渉ばかりしていた。
営業マンが店舗納品ま で手掛けている取引先などでは『物流費など 負担できない』というケースもあった。
だが すんなりと話が進む会社も多かった。
最終的 には、物流費の負担を理由に取引を取りやめ る事例もなく話を進めることができた」と石 見シニアマネージャーは言う。
 取扱アイテムの絞り込みも進めた。
それま でサッポロライオンは、仕入れる食材の選定 力の増強を必要としていたトワードの思惑が 一致した。
 丸運トワード物流は、神奈川県の愛川町で 家電量販店が使っていた延べ床面積およそ一 万一〇〇〇平方メートルの物流センターを冷 蔵倉庫に改築することを決めた。
そして、こ の施設の第一号の大口荷主としてサッポロラ イオンが入居することになった。
受発注システムの構築・運用まで委託  こうして「サッポロライオン首都圏物流セ ンター」が稼働した。
現在では対象となる約 一二〇店舗に対して、一日当たり十数コース の配送ルートを組んで商材を供給している。
 トワードによる現場運営は、全国各地の中 堅定温物流会社が組織する日本コールドネッ ト協議会(JCN)が実践する「F&Eシス テム」と呼ぶプログラムに基づいている。
ト ワードの常務でもある丸運トワード物流の塚 原純二専務はこれを、「保管時は三温度帯と か六温度帯で厳密に管理して、配送時にはド ライバーがいかに簡単に温度管理できるかを 追求するノウハウ」と説明する。
を店舗の裁量に委ねていた。
同じ調味料でも 店舗ごとに異なるメーカーの商品を当たり前 のように使っていた。
登録上のアイテム数は 約五万に上り、一括物流センターで扱うべき アイテムだけでも約二万を数えた。
 大幅なアイテム削減が不可欠だった。
サッ ポロライオンはこの作業についてもトワードと 一緒に取り組んだ。
今回の物流改革でトワー ド側の実務責任者を務めた同社東京営業企画 本部の梅本貴男ジュニアマネージャーは外食 産業の出身だった。
その経験を活かしてサッ ポロライオンの担当者と調整を進めた。
 「当時は商品の絞り込み次第で、物流の枠組 みを組めるかどうかが決まるという状況。
サ ッポロライオンさんの商品開発部の総料理長 さんたちと打ち合わせを重ねて四、五カ月掛 けてアイテム数を減らしていった」と梅本ジ ュニアマネージャー。
これによって約二万ア イテムを約五〇〇〇まで減らした。
 施設の準備も着々と整えていった。
佐賀県 に本社を構えるトワードは、九州では二〇年 前から三温度帯対応の一括物流センターを運 営してきた実績を持つ。
東京でも〇五年から 事務所を構えていた。
しかし、まだ首都圏に は自前の物流施設が無かった。
 そこで一一年六月に、大手物流会社の丸 運と共同出資で丸運トワード物流(出資比率 は丸運六〇%、トワード四〇%)を設立した。
食品の「多温度帯一括配送」に関するノウハ ウを求めていた丸運と、東京進出のため資本 トワードの梅本貴男ジュニア マネージャー センターの使用電力 の3分の1を賄える 自家発電機を設置。
災害時のリスク対応 や、電気料金の抑 制などのために活用 している。
施設の延べ床面積 は約11000平米。
「多温度帯一括配 送」のノウハウを駆 使して、外食チェ ーンやスーパーの物 流を手掛けている。
サッポロライオンの業務を手掛ける丸運トワード物流の拠点 55  FEBRUARY 2013 は、基本的に店舗と取引先を結ぶ機能しかな かったところに難点があった。
 「ネットサムなら物流センターと卸、そして メーカーまで繋げられる。
今回の一括物流は、 このシステムを導入したからこそ可能になっ た」とトワードの梅本ジュニアマネージャーは アピールする。
同社が協力IT会社を使って 自ら作り込んでいるシステムだけに、新機能 の追加にも柔軟に対応できる。
今後はレシピ 管理や棚卸システムなどの機能を持たせ、い ずれは自動発注システムに発展させることも 構想に入っている。
 サッポロライオンにとって初めての経験だっ たため、当初は不安もあった。
しかし同社の 石見シニアマネージャーは「トワードの仕事ぶ りに直に接していた我々は、彼らを信頼して いた。
店舗配送の実地調査を最低三回実施し たり、配送業務を誰でも手掛けられるように マニュアル化するなど、とにかく仕事の進め 方が緻密だった」と言う。
 実際、センター運営はスムーズに軌道に乗 った。
これによってサッポロライオンには新し い可能性が開けた。
過去には実現したくても できなかったセントラルキッチンや、食品リサ イクルなどが視野に入ってきた。
物流センタ ーで食材を大量に一括購入するメリットも享 受できるようになった。
 業務改善への期待も大きい。
この点につい ては3PLパートナーの側も、「今後は共同配 送などを進めてコスト削減を進めていくこと が大切。
そうすることで競争力を高めていき たい」(塚原専務)と意気込んでいる。
協業が 発展する余地は、まだ存分に残されている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之)  首都圏物流センターでも、このノウハウに 基づいて特注したロールボックスなどを多数 採用している。
庫内オペレーション自体はシ ンプルで、施設内に自動化機器はほとんど無 い。
店別仕分けも紙の帳票に基づくリストピ ッキングが中心だ。
それでも作業品質は一〇 万分の四程度を確保しているという。
 センターは朝七時から動き出し、まず在庫 品の入荷が午前十一時ぐらいまで続く。
各店 舗からの発注を正午に締め、それからピッキ ングリストなどを作成。
午後一杯掛けてDC で在庫品をピッキングして、店別のロールボ ックスに積み分けていく。
一九時頃にTC品 の入荷がスタート。
これを在庫品と積み合わ せて深夜便で店舗に届ける。
 週六日という配送頻度は、サービスレベル とコスト効率のバランスを取った結果だ。
従 来、取引先に物流を依存していたときは、取 引先の都合に応じて隔日配送だったり特定の 曜日が休みだったりとサービスレベルがまちま ちだった。
これを日曜日以外は祝日も配送す る週六日体制に統一した。
これによって店舗 側では、不規則な休みに備えた店舗在庫が不 要になった。
バックヤードをその分だけ圧縮 でき、客席を増やすことに繋がっている。
 また、サッポロライオンは今回、店舗から 注文を受ける受発注システムとして、トワー ドが独自開発した「NetSAM(ネットサ ム)」を新たに採用。
その運用まで同社に任 せた。
過去に使っていたパッケージシステム 2期工事で常温庫を冷蔵庫へ転換 冷凍庫入口にあるエアカーテン リストピッキングで店別仕分け 現状の物流精度は約10万分の4 自動化機器はほとんど未使用 トワードの独自仕様のカゴ車

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