ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年2号
ケース
米CSXトランスポーテーション 欧米SCM会議㉓ 鉄道貨物会社が荷主に直接提案営業トラック輸送からの切り替えを促す

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2013  56 北米鉄道会社の“ビッグ4”  
達咤悒肇薀鵐好檗璽董璽轡腑鵑蓮▲侫蹈 ダ州のジャクソンビルに本社を置く鉄道貨物 輸送会社です。
 アメリカとカナダ、メキシコを含む北米で は、鉄道会社をその売上規模や経営基盤から、 大きな順に「クラス1」から「クラス3」の 三つに分類しています。
現在、七社が「クラ ス1」に分類されており、その中でもアメリ カ西部のバーリントン・ノーザン・サンタフ ェ鉄道とユニオン・パシフィック鉄道、東部 のノーフォークサザン鉄道、そしてCSXト ランスポーテーションが?ビック4?と呼ばれ ています。
 当社は現在、二三州に二万一〇〇〇マイル (三万三六〇〇キロ)の鉄道網と、四〇カ所 のターミナルを擁しています。
アメリカ国内の インターモーダル市場における当社の占有率 は約一〇%で、保有する鉄道コンテナは約六 五万本分となります(図1)。
 当社はCSXコーポレーションという持ち 株会社の傘下にあります。
CSXコーポレー ションは当社を含め「CSXインターモーダ ル・ターミナルズ」などの複数の子会社を持 っていますが、グループ全体の売り上げの九 〇%以上を当社が占めています。
実質的には 「CSXトランスポーテーション=CSXコー ポレーション」と言うことができるでしょう。
 親会社が現在の組織体制になったのは、一 九七〇年代後半のことで、八〇年にニューヨ ーク証券取引所に上場しました。
そして、八 〇年代半ばに、「シャーシー・システム」と 「シーボード・システム・レイルウェイ」とい う二つの鉄道会社を統合するかたちでCSX が誕生しました。
両社の頭文字である「C」 と「S」と、二つを掛け合わせるという意味 の「X」を加えて新たな社名としました。
 当社の歴史をさらに源流まで遡れば、一八 二〇年代に設立した「ボルティモア&オハイ オ鉄道会社」に辿り着きます。
当初は鉄路の 上の貨車を馬が引いていました。
輸送距離は わずか十三マイルに過ぎませんでした。
 その後、アメリカにおける鉄道貨物輸送 は、太平洋を渡って西海岸に荷揚げされ た完成品を消費地である東海岸へと運ぶ ?パイプライン?として発達してきました。
現 在も東海岸へ向かう鉄道貨物には家具や衣料 品、家電製品が多いことに、その名残りが見  鉄道貨物スペースの販売を仲介業者に全面的 に頼るのではなく、輸送キャリアが直接、荷主 に営業をかけることで業績を伸ばしている。
荷 主のサプライチェーンを分析、トラックから鉄道 へのモーダルシフトが可能にするコスト削減と環 境負荷低減効果を算出し、改革案を提示してい る。
同社の営業部門を率いるジム・ウィギンス氏 がその取り組みを語る。
欧米SCM会議㉓ 米CSXトランスポーテーション 鉄道貨物会社が荷主に直接提案営業 トラック輸送からの切り替えを促す 社名 CSXトランスポート 創業 1986 年 親会社 CSXコーポレーション 創業 1978 年 本社 フロリダ州ジャクソンビル CEO マイケル・ワード 株式市場 ニューヨーク証券取引所に上場 売上高 117億4300万ドル (1兆333 億8400万円) 当期利益 18 億2200万ドル 従業員数 3万1344人 (注1) 2011年度の親会社の年次報告書より (注2)1ドル=88 円で換算 会社概要 57  FEBRUARY 2013 られます。
一方、西海岸に向かう鉄道貨物は、 木材や食品、プラスティックなどが上位を占 めています。
 当社は二〇〇八年のリーマンショックまで 順調に業績を伸ばしてきました。
〇九年の決 算では売上高が二〇%近く減少し、一〇〇億 ドルを割り込みましたが、翌一〇年には再び 一〇〇億ドル台に乗せています。
 そして一一年にはリーマンショック前の売 上高を上回るまで回復しました。
しかも最 終利益率はリーマンショック前の十三%台を、 一一年には一五%台に向上させることができ ました。
これに伴い当社の株価もリーマンシ ョック前の水準を取り戻しています。
 好調な業績の背景としては、トラック輸送 の燃料費高騰や、トラックドライバーに関す る労働規制の強化で人手不足となっているこ と、ドライバーの賃金が上昇傾向にあること などが挙げられます。
 環境対策のために、二酸化炭素(CO2) の排出量の少ない鉄道輸送に期待が集まって いることも追い風になっています。
鉄道輸送 の場合、一ガロン(三・八リットル)のディ ーゼル燃料で、一トンの貨物を四五〇マイル 運ぶことができます。
CO2排出量がトラック 輸送の約三分の一で済むことが大きなセール スポイントになっています。
中距離輸送の需要を掘り起こす  しかし、そうした外的要因以上に大きいの は、当社がここ数年力を入れてきた、荷主へ の直接営業だと考えています。
 これまで鉄道会社は、鉄道インフラの強化 や補修などを主な事業と見なし、貨物スペー スの販売はインターモーダル会社(日本でい う通運業者に相当)に任せるのが業界の慣例 でした。
荷主企業と鉄道輸送会社の間に、イ ンターモーダル企業が介在することでサービス が成り立っていたわけです。
 当社と長年にわたりパートナー関係を結ん でいるインターモーダル企業はペイサー・イン ターナショナルです。
他にも、トラック企業 であるシュナイダー・ナショナル、ハブ・グ ループ、J.B.ハント──などがあります。
 しかし、当社では、時にはインターモーダ ル企業と組んで、また時には当社単独で、荷 主のサプライチェーンの最適化に関する提案営 業をするように企業文化を変革してきました。
 我々が狙いを定めているのは、これまでト ラック輸送一本でサプライチェーンを組み立て てきた荷主企業です。
 インターモーダル貨物は、トラック輸送に 比べて運賃は安いものの、輸送時間が掛かる という特徴があります。
そのため、トラック 輸送と比べて効果を発揮するには以下の三つ の条件を満たす必要があります。
(1) ターゲットとする貨物は輸送距離が五〇〇 マイル(八〇〇キロ)以上であること (2) ターミナルから配送先までの横持ちの距離 が一五〇マイル以下であること (3) 貨物輸送に極端なスピードが求められない こと  現状では、輸送距離が五〇〇マイルから二 〇〇〇マイルの貨物における、トラック輸送 と鉄道貨物輸送の割合は、七七%対二三% にとどまっています。
その中でも、五〇〇マ イルから七五〇マイルという区切りでは、九 四%対六%という非常に不利な状況となって います。
逆に言えば、五〇〇マイルから六〇 〇マイルといった中距離の貨物に大きなビジ ネスチャンスが眠っていると考えることがで きます。
 市場全体の動向を見ると、ある民間の調査 では、二〇三五年には全体のトラック輸送と 図1 南東部に集中したCSX の鉄道網 ●40カ所のターミナルで人口 の66%をカバー ●貨物輸送量の多いシカゴと 北東部に強い ●大西洋に面したニューイング ランドからフロリダまでをカバー ●2011 年にカナダのケベック に新ターミナルを開設 FEBRUARY 2013  58 鉄道輸送の割合が、五〇%対五〇%にまで 高まると試算されています。
アメリカや中国、 ロシアのように国土が広い国では、鉄道輸送 が有利なことは、世界銀行の調査でも明らか にされています。
アメリカにおける鉄道輸送 事業は、大きな成長の可能性を持った分野と して市場からも注目されています。
自社で荷主を開拓へ  当社が荷主に直接営業をかけて契約にこ ぎつけた事例を二つご紹介します。
その一つ、 A社はアメリカに本社を置く日用雑貨品のグ ローバルメーカーです。
この会社は中西部に 主要六工場を持ち、そこにサプライヤーから 部品を集めて完成した製品を卸や小売りに輸 送していました。
図2はトラック輸送だけだ ったときの、A社の貨物の動きです。
子供が 落書きでもしたかのように、いろいろな方向 に輸送ラインが伸びているのが分かります。
 これらの貨物の動きの六〇%までは、先に 挙げた六カ所の工場間での横持ち輸送で輸送 距離が五〇〇マイル以下でしたので、鉄道貨 物輸送に切り替える条件を満たしていません でした。
しかし、カリフォルニア州やフロリ ダ州、北東部の州など、A社の取引先である 大手小売業者への輸送は、モーダルシフトの 先の三つの条件を満たしていました。
 当社がA社のサプライチェーンを分析した 結果、全体の二八%の貨物がインターモーダ ル輸送に切り替えることが可能だ、という結 論に達しました。
これを元に当社の営業部門 は、A社の経営陣に対して、二八%の全部 をインターモーダル輸送に切り替えれば、年 間で輸送費を四八〇万ドル削減することがで きること、そして二五〇〇台分のトラック輸 送に相当する、約一万五〇〇〇トンのCO2 排出を抑えることができることを伝えました。
その結果、当社はその半分の貨物を、トラッ ク輸送からインターモーダル輸送に切り替える ことに成功したのです。
 二つ目の事例として紹介するB社はアメリ カ国内の食品メーカーです。
B社はカリフォ ルニア州と中西部に主要工場を持ち、全米に 物流センターやデポを配置していました。
そ してB社もまた、当社が提案するまでトラッ ク輸送だけでサプライチェーンを組み立ててい ました。
 先ほどのA社のケースでは取扱貨物が日用 雑貨品であることから、サプライチェーンの 図2 日用雑貨メーカーA 社の改善提案 分析と、その後の交渉が比較的スムーズに進 みました。
しかし、B社は食品メーカーであ るため、鉄道輸送に切り替える上での三番目 の条件に挙げた、「貨物輸送に極端なスピード が求められないこと」がネックでした。
 まず当社はB社のサプライチェーン上にお ける貨物の流れを詳細に分析しました。
その 際、サプライチェーンを、「?サプライヤーか ら工場」「?工場から物流センター」「?物流セ ンターから小売りの店舗」──の三つに分け 3% 図3 B社の貨物のうちインターモーダルに切り替えが可能なもの 原材料の出荷 完成品の サプライヤー 工場 工場 物流センター 小売りの店舗 物流センター その他が3% 35% 14% 18% 4% 6% 6% 9% 1% 原材料の サプライヤー 59  FEBRUARY 2013 は、スピードが要求されるだけでなく、繊細 な取り扱いが必要なため、鉄道で運ぶのには 無理がありました。
しかし加工食品であれば 十分に対応が可能でした。
 合計すると約六五%の貨物を、現状のトラ ック輸送からインターモーダル輸送に切り替え られる、という結論を下しました。
しかし当 社の鉄道網は、南東部に限られていますので、 そのうち当社が取り扱えるのは三〇%強にと どまることも分かりました。
 
村劼侶弍朕悗紡个靴督鶲討靴親睛討蓮∩ 体で三〇%強あるインターモーダル輸送に適し た貨物のうち、二〇%分を即座に切り替える。
それによって年間二億四〇〇〇万ドル近い輸 送費と五万六〇〇〇トンのCO2の削減が可能 になるというものでした(図3)。
この提案を 受け入れたことでB社のサプライチェーンは図 4のように変化しました。
 我々のような鉄道貨物会社は、これまでの ようにインフラや設備を整え、後はインターモ ーダル企業が荷主を連れてきてくれるのを待 つというだけの消極的な姿勢では、事業を発 展させていくことが難しくなっています。
鉄 道輸送枠の販売をインターモーダル企業に全面 的に委ねるのではなく、これまで協力関係に あったインターモーダル企業との連携は維持し つつも、自らも荷主に対して直接提案営業す ることを求められるようになっているのです。
 ただし、そうした積極的な経営展開には、 荷主企業のサプライチェーンを分析して、最 適化の提案を行うことのできる人材が必要で あり、その確保が今後はますます重要になっ てきます。
 最後に、鉄道貨物輸送に不安を持つ荷主企 業から頻繁に聞かれる質問について答えてお きたいと思います。
一つは、鉄道貨物会社は 強い組合を抱えているため、ストライキで輸 送スケジュールが大幅に遅れることがあるの ではないかという懸念です。
 確かに当社の全従業員三万一〇〇〇人のう ち約二万六〇〇〇人が組合に所属しています。
しかし、当社は組合員が所属する計十二の組 合のうち十一組合と、強固な労働協定を結ん でいます。
そこには各種の労働条件に加えて、 その条件が満たされていればストライキは打 たないという項目も含まれています。
 残る一つの組合とも、常に話し合いを続け ています。
また彼らの多くは、整備部門で働 いているため、仮に彼らがストを打ったとし ても、輸送ダイヤが乱れる可能性は低いと考 えています。
当社がストによって輸送ダイヤ が大幅に乱れたのは一九九一年が最後である という事実も言い添えておきます。
 また、鉄道輸送は輸送距離が長いため天候 や天災の影響を受けやすい、あるいは、積み 替えが多いために輸送品質においてトラック 輸送に劣るというご指摘もしばしばいただき ます。
この点については、今後の改善課題と して社内を挙げて取り組んでいく考えです。
(フリージャーナリスト・横田増生) ました。
このうち「?物流センターから小売 りの店舗」については、初めから手を着けま せんでした。
この部分はB社が自社便で輸送 しているところであり、また最もスピードが 必要とされるのに加えて輸送距離も短いため、 鉄道貨物には向かないと判断しました。
モーダルシフトの効果を分析提案  反対に、最も大きな可能性があると考えた のが、「?サプライヤーから工場」、すなわち 調達物流の部分でした。
原材料の段階なら、 それほどスピードは求められないと判断しま した。
また、工場間の横持ち輸送も同じよう に考えました。
 次に検討したのが、「?工場から物流センタ ー」という流れです。
ここには、完成した食 品を納めるサプライヤーからの輸送も入って きます。
全体で見れば二七%ありますが、こ のうち、一八%が加工食品で、九%が生鮮 食品であることが分かりました。
生鮮食品に 図4 食品メーカーB 社への改善提案

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