ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年2号
メディア批評
3・11事故後も前科を悔いない原発文化人と政府の方針通り現地から逃げ出したメディア

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 FEBRUARY 2013  80  『噂の真相』という雑誌があった。
大岡昇 平が愛読していたので城山三郎も購読し始 めたという雑誌だが、大手メディアが書けな いことを次々とスクープしたタブーなき雑誌 がいまは休刊中で、「あった」と過去形で書 かなければならないのが無念である。
 その雑誌に関わったり、刺激を受けてい た気鋭のジャーナリストの青木理と久田将義 が『僕たちの時代』(毎日新聞社)で、私た ちは「こんな時代」に生きているのだ、と 語っている。
たとえば原発事故の発生直 後、青木がかつて勤めていた共同通信社では、 現地に入っている記者や福島支局にいる記 者に対して、社会部長名で「すぐ県外に逃 げろ」と命じたという。
 「これは相当に絶望的なミステイクだろう」 と青木は指摘し、こう続ける。
 「本来は人が入れないところや入りにくい ところに入り、見えないものや見えにくいも のを見て、聞いて、報ずる。
それがメディア の大きな役割の一つです。
なのに役割を放り 投げ、逃げ出してしまった。
組織メディアな ので労働組合もあるし、死ぬのがわかってい るところに突っ込むなんていう無謀なことは すべきじゃない。
だけど、地元紙の福島民 報や福島民友の記者たちは取材を続けている。
警察や自衛官も活動している。
何より福島 の人はまだそこにいるわけなのに、県全域 からの退避命令です。
少なくとも一般市民 が残っている段階で、いの一番にメディアが 逃げ出してしまうというのはどういうことか」  もちろん、「逃げ出し」は共同通信だけで はない。
規制について青木はNHKの報道 局長名で出された内部文書を挙げる。
それ には、原発周辺の現地取材は「政府の決め た指示に従え」という趣旨のことが書かれ ていたという。
つまりは「お上の言うこと に従って現地入りするな」ということである。
 これは「逃げ出し」より「もっとひどい」 と青木は怒る。
 事故直後の福島第一原発を映すテレビの 画面には「これは二〇キロ以上離れたとこ ろから撮影しています」と注釈が付いていた。
 もっと近く寄れないのかと思って、青木が テレビ局の連中に聞くと「政府が規制してい るのに、その圏内に入るとはどういうことか」 という抗議が来るのを恐れているのだとか。
 これでは「お上」がつくりだした「安全神話」 を覆すことはできないだろう。
神話の形成 にメディアは大協力してきたわけだが、さら に共犯を重ねているのである。
 私は『原発文化人 50 人斬り』(毎日新聞社) で、ビートたけしや勝間和代、そして田原 総一朗など、原発推進に協力してきたタレ ントや文化人を実名を挙げて批判した。
 田原を指弾する久田に青木はこう答える。
 「田原さんは独特のひねくれたところがあ るから論評がむずかしい。
もちろん田原さ んも批判されるべきところはある。
資源エ ネルギー庁などが主催する原発イベントに出 演した際は一〇〇万円ものギャラを受け取 っていたらしいしね。
でも、中部電力の原 発CMに出ていた勝間さんはレベルが違うよ。
この前、ある有名ジャーナリストに聞いたん だけど、中部電力のCMは勝間さんの前に そのジャーナリストに出演オファーがあった らしい。
もちろん断ったって言ってたけれど、 提示されたギャラが何と三〇〇〇万円だった って」  そんな勝間が都知事選で猪瀬直樹の応援 団となっていた。
まったく?前科?になっ ていないのである。
猪瀬については私は『自 分を売る男、猪瀬直樹』(七つ森書館)で徹 底批判したので、特に彼に投票してしまっ た人は、必ず読んで責任を感じてほしい。
 久田は『AERA』に災害現場をキレイ に撮った写真を載せた藤原新也に怒っている。
 「人の不幸をキレイに撮る権利が誰にある か」と憤慨する久田に私は共感する。
3・ 11 事故後も前科を悔いない原発文化人と 政府の方針通り現地から逃げ出したメディア

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