ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年3号
特集
第1部 収益の見える化 「収支日計表」で赤字車両を無くす ロジスティクス・サポート&パートナーズ 黒澤明 代表

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2013  18 導入すれば必然的に儲かる  物流コンサルタントとして日頃から多くのトラ ック運送会社と接しているが、筆者の知る限り儲 かっているトラック会社はどこも「収支日計表」 を運用している。
「日別管理」「日次決算」など各 社で呼び方は様々だが、車両別もしくはドライバ ー別に日々の損益を算出して、それに基づいて採 算を管理している点で共通している。
 本誌が行った「物流生産性調査」(二〇一〇年 六月号と二〇一二年六月号の特集記事として掲載) でも、「日別業務計画に基づく実績管理」には明 らかな効果が認められた。
生産性に優れた上位二 〇%の現場は、それ以外の現場と比べて、日別管 理を導入している割合がずっと高かった(図表1)。
 同調査は庫内作業を対象にしたものだが、日別 管理の有効性は配送業務も同じである。
トラック 運送会社が日別管理を導入すれば、赤字の車両が 無くなり、質の良いドライバーの定着率が上がり、 売り上げが伸びる。
 それなのに大多数の運送会社が日別管理を導入 していない。
確実に成果の上がることの約束され た取り組みを怠っている。
あるいは、そのことを 知らないまま「実運送は儲からない」と嘆いている。
 全日本トラック協会の資料によると現在、運送 会社の約六割が営業赤字に陥っている。
そうした 会社の多くは社長が自分の目と耳で得た経験と長 年の勘に頼って経営を行っている。
 とりわけ大きな問題は税金計算のための「財務 会計」の数値は気にしても、経営判断に必要な「管 理会計」の仕組みは無く、そのことに疑問も感じ ていないことだ。
合理的な計画と管理を放棄して いることになる。
 日別管理とは、日々のオペレーションを商品と する物流業に適した管理会計の手法の一つである。
売り上げ(運賃)から原価(運行コスト)を引い て日別・車両別の利益を「見える化」する。
 図表2はそのサンプルである。
車両ごとにその 日の売り上げから、その日の変動費と固定費を差 し引いて損益を計算する。
そして赤字になった車 両については、その原因を分析し改善策を練る。
 管理会計と聞くと、難しいとか面倒だと感じる 方もいるかもしれない。
しかし、実際には財務会 計よりずっと容易い。
社内資料として使うだけな ので、数字の精度はそれほど気にしなくていい。
その日のその車両の利益が一〇〇〇円だったのか、 一〇〇一円だったのかを厳密に計算することに大 きな意味はない。
 一〇〇〇円ぐらい利益が出ている、二〇〇〇円 くらい赤字になっているというレベルで損益を把 握するだけでも十分な効果がある。
その日に明ら かになった問題点を明日の仕事に活かすことがで 「収支日計表」で赤字車両を無くす  日別・車両別の収支管理を導入すればトラック運送会社の 採算は確実に向上する。
難しいテクニックや高額なツールは 必要無い。
日々の車両別の収益を見える化することで、ドラ イバーが自発的に改善に向けて動き出す。
ところが大多数の 運送会社がそれを怠っている。
100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 90.9 72.7 9.1 60.0 27.3 40.0 図表1 収支日計管理導入企業(物流業のみ) 生産性 TOP20 企業 生産性 TOP20 外 企業 全体平均 未導入 導入 本誌2010 年6月号より ロジスティクス・サポート&パートナーズ 黒澤明 代表 第1部 収益の見える化 19  MARCH 2013 きる。
 むしろ最初から無理にハードルを上げようとは せず、正確性よりもスピードを重視して、身の丈 に合ったやり方でまずは始めてみることだ。
やる とやらないでは大違いであることにすぐに気が付 くはずだ。
 無数の定型作業を一日のうちに繰り返す庫内業 務と違って、トラック運送はいったん車庫を出発 してしまえば、しばらく帰ってこない。
人件費や 各種の経費は硬直的で削減余地は限られている。
 だからと言って、トラック運送の採算は運賃次 第と考えるのは間違いだ。
もちろん運賃は大きな 要素だが、車両の回転や帰り荷の状況によって採 算は全く違ったものになる。
 ドライバーがその気になれば、それまで一日一 〇軒しか回れなかったところを十一軒回るように なる。
貸切輸送でも、朝出てしまえば夕方になら なければ帰って来なかった車が昼過ぎには帰るよ うになる。
その結果、二便目を仕立てられる。
 日別管理を実施していない運送会社のドライバ ーの多くは、自分の仕事の採算はおろか、運賃さ え知らされていない。
自分がいくら売り上げたの か、どれだけ儲かったのか分からない状態で頑張 れと言われても、やる気は沸いてこない。
 配車係も同じである。
早くて翌月中旬、通常は 翌月末になって、ようやく財務処理が終わり、前 月もしくは前々月の結果が知らされる。
しかも拠 点全体の月次業績が分かるだけだ。
それが赤字で あっても、どうすれば改善できるのか手掛かりが ない。
損益を見せると何が起きるか  車両別の収支日計表を作成し、毎日の仕事の成 果を見えるようにすることでドライバーの意識が 変わる。
赤字を避けるため自発的に動くようにな る。
配車係は自社車両が帰って来ないために傭車 に回していた仕事を内製化できる。
運賃の下払い が減る。
つまり儲かるようになる。
 「日々決算」で有名なハマキョウレックスでは、 経営陣の給料まで含めた全ての情報を末端のパー 図表2 《日別配送実績表》 車番 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 配送員 A B C D E F G H 日計 走行距離(km) 燃料給油(L) 燃費(km/L) オイル給油(L) 高速代 配送重量(kg) 運送売上(円) 配送件数 積載率(%) 配送コスト(円/kg) 配送重量(kg) 運送売上(円) 配送件数 積載率(%) 配送コスト(円/kg) 配送重量(kg) 運送売上(円) 配送件数 積載率(%) 配送コスト(円/kg) 配送便数(便) 軽油代金 オイル消耗費 修理修繕費 タイヤ消耗費 高速代 小計(円) 人件費 車両償却費 税・保険料 その他・運送費 小計(円) 運送費合計 一般管理費 合計 損益 日報入力欄1便2便総計変動費固定費 87 22 4.0 1 1,800 25,000 6 90% 13.9 1,200 10,000 6 60% 8.3 3,000 35,000 12 75% 11.7 2 1,540 300 900 174 0 2,914 25,000 2,500 800 3,000 31,300 34,214 3,700 37,914 -2,914 108 25 4.3 1,800 27,000 6 90% 15.0 1,200 15,000 6 60% 12.5 3,000 42,000 12 75% 14.0 2 1,750 0 900 216 0 2,866 25,000 2,500 800 3,000 31,300 34,166 3,700 37,866 4,134 120 28 4.3 2 1,800 27,000 6 90% 15.0 1,200 8,000 6 60% 6.7 3,000 35,000 12 75% 11.7 2 1,960 600 900 240 0 3,700 25,000 2,500 800 3,000 31,300 35,000 3,700 38,700 -3,700 75 20 3.8 1,800 23,000 6 90% 12.8 1,200 15,000 6 60% 12.5 3,000 38,000 12 75% 12.7 2 1,400 0 900 150 0 2,450 25,000 2,500 800 3,000 31,300 33,750 3,700 37,450 550 95 25 3.8 1,800 22,000 6 90% 12.2 1,200 18,000 6 60% 15.0 3,000 40,000 12 75% 13.3 2 1,750 0 900 190 0 2,840 25,000 2,500 800 3,000 31,300 34,140 3,700 37,840 2,160 230 60 3.8 2 1,800 32,000 6 90% 17.8 500 4,000 1 25% 8.0 2,300 36,000 7 58% 15.7 2 4,200 600 900 460 0 6,160 25,000 2,500 800 3,000 31,300 37,460 3,700 41,160 -5,160 96 24 4.0 1,800 27,000 6 90% 15.0 1,200 11,000 6 60% 9.2 3,000 38,000 12 75% 12.7 2 1,680 0 900 192 0 2,772 25,000 2,500 800 3,000 31,300 34,072 3,700 37,772 228 89 23 3.9 1,800 24,000 6 90% 13.3 1,200 15,000 6 60% 12.5 3,000 39,000 12 75% 13.0 2 1,610 0 900 178 0 2,688 25,000 2,500 800 3,000 31,300 33,988 3,700 37,688 1,312 900 227 4.0 5 0 14,400 207,000 48 90% 14.4 8,900 96,000 43 60% 10.8 23,300 303,000 91 73% 13.0 16 15,890 1,500 7,200 1,800 0 26,390 200,000 20,000 6,400 24,000 250,400 276,790 29,600 306,390 -3,390 特集 物流の 見える化 最新版 MARCH 2013  20 トにまで公表しているという。
現場の一人ひとり が自律的に改善に取り組む組織を作るには、最も 理想的なやり方だろう。
 しかし、そこまではできないという会社が実際 には大多数を占めている。
自分の給料まで社員に 見せたくないという社長は多い。
その場合には社 長の給料や本社コストを共通費として一律で配分 してしまっても構わない。
 情報のオープン化は両刃の剣だ。
個別の運賃や 給料をオープンにすることで社内に余計な軋轢を 生む恐れがある。
配車係への不満やドライバー同 士の仲違いが発生しかねない。
そのために日別管 理の数字を誰にどこまで見せるべきかで、多くの 会社が頭を悩ます。
幹部社員だけに見せる、配車 係まで見せるという選択肢もある。
それでも何も 見せないよりは、ずっとましだ。
ただし、効果は 薄くなる。
 やはりドライバーに見せることが大事である。
運送会社の収益改善は何と言ってもドライバーの 頑張りに掛かっている。
なぜ頑張らないといけな いのか。
どれだけ頑張れば黒字になるのかが明確 になれば、ドライバーは自ずと動く。
 その日の二便目や帰り荷を、全ての車両に用意 できるとは限らない。
通常は一便目の仕事を終え た車両から順番に仕事を割り振っていく。
遅く帰 った車両には次の仕事はない。
それでも大して給 料が変わらないとなれば、サボるドライバーが当 然出てくる。
 そこで、個人損益の見える化と同時に、赤字を 出したらそのドライバーが損をする仕組み、逆に 頑張ったらそれだけ報われる仕組みを整える。
そ うすることで、一便目だけでは今日は赤字だとい うドライバーが昼飯を抜いても早く帰って次の仕 事にありつこうと考えるようになる。
 その一つの方法として「配車しない仕組み」を 筆者は運送会社に薦めている。
仕事の振り分けを 自動化するのである。
どのルートが楽で、どのル ートがきついのか、現場の人間たちは皆分かって いる。
その上運賃までオープンになれば割の良い 仕事、どの仕事が“美味しい”のかはっきりする。
 通常はそれでも不平が出ないように配車係がバ ランスを取って仕事を割り振るわけだが、所詮人 間のやることなので、「アイツばかり贔屓しやがって」 と不服に思う者がどうしても出てくる。
 そこで予め、美味しい順に仕事に番号を振って おく。
そして車両別収支日計表の前月の成績が 良かったドライバーから機械的に仕事を割り振る。
これだと文句は出ないし、配車係の負担は大きく 軽減される。
 浮いた時間はドライバーの個人面談などに当て ればいい。
ドライバーはそれぞれ事情を抱えている。
もうすぐ結婚する、子供が生まれるといったドラ イバーは、どんどん尻を叩けばいい。
しかし、中 には給料が安くても楽な仕事がいいというものだ っている。
それを踏まえて配車係は仕事の割り振 りを工夫する。
その匙加減が配車係の腕の見せ所 となる。
何を営業すれば良いのかも明確に  このような仕組みにすることで、情報のオープ ン化によって社内の雰囲気が悪くなることを回避 できる。
しかも辞めて欲しくないドライバーの定 着率が上がり、駄目なドライバーが会社から去っ て行くようになる。
 美味しい仕事にありついたドライバーは当然そ の月の成績も良くなる傾向がある。
逆もまたしか り。
しかし、やる気のあるドライバーならいった ん成績が下がっても、一便目を終わらせた後サボ らずに帰ってきて、二便目を取ることで順位を上 げてくる。
それさえしないドライバーは安い給料 が固定化して他社に流れていく。
 ここまで読んで、勘の良い方なら一つ疑問に思 われているかも知れない。
公平な競争の仕組みを 作ることで優秀なドライバーの定着率が上がった としても、直接そのことで会社全体の売り上げが 増えるわけではない。
同じ仕事を誰にやらせよう が会社全体の収入は同じではないかという疑問で 図表3 変動費(運行3 費)の見える化 運行3費主な費目変動要素管理レベル 燃料油脂費 修理費 タイヤ費 オイル関連 一般修理費 交換費用他 ◎ △ △ 日々の消費量、運行内容・ 走行距離との相関に注視 ⇒収支日計等で管理 基本的に変動要素は少な いが、ドライバーのスキル・ 癖によって大きく変わる場 合がある 変動費としては運行3費に加え、有料自動車道(高速代)と人件費の 残業代や手当(歩合部分)も大きく変動する要素である。
燃料費と同様 に日々「見える化」が必要となる。
燃料費 車検費用 タイヤ費 21  MARCH 2013 ある。
 しかし、実際には収入自体も増える。
日別管理 を運用していくと、売り上げが足りずに、いつも 赤字を出している車両、その車両の空いている時 間帯が誰の目にも明確になる。
そこに集中して営 業をかける。
一便目の荷物は確保しているのだか ら二便目は運賃を多少安くしても採算は取れる。
 営業マンと連携すると同時に、時間を持て余し ているその車両のドライバーにも荷主を当たらせる。
二便目を確保できれば、自分の成績がぐっと上が る。
赤字の汚名を払拭できるのだからモチベーシ ョンは高い。
結果としてドライバーの底上げが可 能になる。
 そのため日別管理は赤字体質の会社のほうが、 効果を出しやすい。
全ての車両が黒字の会社や儲 かり過ぎている会社だと、現場から「給料を上げろ」 との声が上がってしまうことにもなりかねない。
 それを避けるため、一定の割合で赤字の車両が 発生するように、各車両に均等に割り振る共通費 を調整する。
頑張っているドライバーは黒字にな るが、そうでないドライバーは赤字になるように、 数字に手心を加えている会社もある。
ずるいやり 方で、作為がばれた時には反発を免れないが、効 き目はあるようだ。
財務会計を信用するな  最後に収支日計表を運用していく上でのポイン トを一つ指摘しておこう。
現在、トラックの任意 保険料は一台当たり一月およそ三万円が標準だ。
これに団体割引や無事故割引が適用されて、実際 には一万五〇〇〇円から二万円程度を支払ってい る会社が多い。
当然ながら財務会計上はその金額 で任意保険料を計上する。
 しかし、管理会計ではそうならない。
その会社 の任意保険料が仮に一台当たり一万五〇〇〇円で 定価の半額で済んでいたとしても、それはその車 両の貢献によるものではない。
その会社の企業努 力、それまでに蓄積してきた事業基盤や安全活動 の成果である。
 実際、今は一万五〇〇〇円でも、事故を起こせ ば割り増しになって三万円を超えてしまうことだ ってある。
従って、収支日計表の原価の欄に記入 する任意保険料は月三万円として設定しなければ ならない。
 燃料費も同じだ。
ガソリンスタンドの店頭価格 で一リットル当たり一一〇円と表示されている軽 油を、団体契約を結んでいる運送会社で一〇〇円、 インタンク(自家用給油施設)を持っている運送 会社なら八〇円程度で購入している。
これも管理 会計上の原価は一一〇円で設定する。
 そうしないと、その車両の本当の収益は見えな い。
ところが既存の運送業向けシステムは、財務 会計をベースにしているため、管理会計上の原価 を扱えない。
そのため会社の収益体質を判定する ことができない。
経営者は財務会計を信用しては ならない。
税金を払っているから儲かっていると 考えてはいけないのである。
 先日、筆者が以前にコンサルティングに入った 運送会社の現場を久しぶりに訪れた。
壁のあちこ ちに「ワン・モア運動」と大きな張り紙がしてある。
「何ですかこれ?」と現場の配車係に聞くと、「も う一軒、もう一個多く積もうという運動です」と 言う。
 その配車係は収支日計表の導入に当初は最も強 硬に反対し、社長命令でしぶしぶ承知した人物で あった。
あれだけ嫌がっていた人が自発的に動き 出すようになったのかと感銘を受けると同時に、 この会社の収益体質が大きく改善されていること を確信した。
 日々のオペレーションを商売とする物流業に一 発逆転のホームランは無い。
ワン・モア運動のよ うな毎日の地道な改善の積み重ねこそが物流業の 収益力を強化する唯一の方法なのである。
収支日計表の運用サービスを開始  収支日計表はエクセル(Excel)などの 一般的な表計算ソフトでも作成することはでき る。
ただし、「運行三費(燃料油脂費、修理費、 タイヤ費)」は単価が常に変動する(図表3)。
それを毎日入力するのは手間が掛かる。
車両や ドライバーの入れ替わりもあるため、マスター管 理も必要になる。
本格的に運用しようと思えば、 表計算ソフトでは難しいだろう。
 一方でトラック運送業向けの既存の管理システ ムや運行管理システムのパッケージは、車両別・ ドライバー別の損益を出せても、月次しかアウト プットできないので、日別管理には使えない。
 そこで我々ロジスティクス・サポート&パート ナーズ(LOGI─
咤弌砲郎鯒一〇月、物流 システム開発会社のロジ・コンビニエンスと共同 で、インターネットを介して誰でも簡単に収支 日計表を運用できるクラウドシステム「スマート ロジ日別・車両別損益管理システム」を開発し た。
車両一台当たり一月九八〇円から利用でき る。
興味のある方はLOGI─
咤弌 www.logisp. com) もしくはロジ・コンビニエンス( www. logi-cv.com)まで。
特集 物流の 見える化 最新版

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