ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年3号
特集
第4部 現場の見える化 現場の改善ポイントを画像で共有──ダイセー倉庫運輸

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2013  36 社長直轄で「8S」運動を展開  ダイセー倉庫運輸は愛知県小牧市に本社を構え る中堅物流業者だ。
愛知、千葉、茨城、福岡、滋 賀の五県に計十一の物流センターを展開し、大手 化学品メーカーなど四〇〇社以上の荷主にサービス を提供している。
一九八四年にスタートした共同 配送「ジャスト便」が主力のサービスだ。
 中京地区は自動車工場が数多く集まっているこ となどから、化学製品の物流が多い。
この特性を 生かすため、化学品メーカーに照準を絞り、配送費 など荷主負担の軽減というメリットを全面に掲げて 積極的に共同配送の営業を展開。
ゴムやフィルム、 溶剤などの輸送需要を着実に獲得してきた。
 トヨタ自動車とグループ企業、同社と取引がある 石油化学品や自動車部品のメーカーが主な仕事相 手とあって、高いサービス水準を日常的に要求さ れている。
そのため、共同配送でトヨタ流のジャス ト・イン・タイム(JIT)納品を実施するなど、 早くから品質向上には力を入れてきた。
 吉田憲三社長は「世界一の企業のイミテーション をするのが一番良いだろうと思い、見える化やJ ITなど、トヨタさんの品質向上を模範にしてき た。
トヨタさんや関連する多くの荷主さんとの取 引を通じてだいぶ鍛えていただいた」と語る。
 ダイセーの物流品質を裏付ける上で大きな役割 を果たしているの が「8Sパトロール」 だ。
日本の生産現場 で広く普及している 「5S(整理・整頓・ 清掃・清潔・躾)」 に、「セーフティー(安全)、スマイル(笑顔)、ス ペース(空間)」の「3S」を独自に付け加えた。
 社長直轄の「品質安全向上室」が、倉庫の安全 管理徹底や清潔さの維持といった基本的事項がき ちんと守られているかどうかを毎月チェックしてい る。
審査員が各センターを訪ね、チェックポイント ごとに、求められる水準に達しているかどうかを 見極める。
 チェックの対象項目は「庫内や屋外に不要な什 器・備品・事務用品・資材を置いていないか」「棚 番と商品の整合性が取れているか」「フォークリフ ト始業前点検項目の正規手順が守られているか」 「空間の利用方法に創意工夫が見られるか」「入庫・ 出荷時の指差呼称やあいさつは明確に行われてい るか」など二〇を超える。
荷主からの要望や取り 扱う荷物の変化などを踏まえ、チェックポイントの 内容は随時見直している。
 審査員が守れていると判断すれば、各チェックポ イントに設定されている基準点を付与し、総合評 価が最も優れている物流センターを表彰している。
毎月の8Sパトロールの結果は全ての物流センター に配布、社内に周知している。
従業員に競争意識 を持たせ、安全管理の徹底や庫内スペースの有効 活用を促す狙いだ。
 二〇〇八年からは、8Sパトロールに見える化 を本格的に取り入れた。
パトロール活動の際、審査 員が各センターで改善すべきだと判断した点などを 写真に収め、画像データを社内の情報システムの共 有ファイルに保存している。
全ての従業員が職場 のパソコンから自由に閲覧できる。
 庫内にある袋詰めされた化学物質の積み方が不 安定だったり、隙間なく詰め込まれたりして、保 現場の改善ポイントを画像で共有 ──ダイセー倉庫運輸  トヨタ式の「5S」に独自の「3S」を加えた「8S パトロー ル」を継続することで品質向上に取り組んできた。
それ をさらに「見える化」。
改善ポイントを写真に収めてデー タを社内のシステムに保存、全従業員が閲覧可能にして 優れた事案の横展開を図っている。
    (藤原秀行) 吉田憲三社長 第4部 現場の見える化 37  MARCH 2013 視』で自主的に改善方策を考えさせるのがうちの 特徴だ」と狙いを解説する。
 他にも、各種製品を庫内に保管する際の望まし くない積み方を写真で紹介した「規則書」を物流 センターに常備し、庫内にも写真入りで分かりや すく掲示するなど、見える化を活用して従業員が トラブル防止を意識して行動できる環境を整えよう と試行錯誤を続けている。
 社内の品質改善の旗振り役を果たしてきた加藤 進執行役員人事総務部長は「8Sパトロールと見 える化をリンクさせたことで従業員は職場のある べき姿と現状のギャップにより明確に気付くように なった。
言葉や文字だけではなかなか改善策を思 い付かないが、画像を見ると皆がこれではいけな いと考えるようになる。
今日よりも明日、今月よ りも来月を良くしていこうと意識が変わっている。
常に問題点を見えるようにしておけば、改善の取 り組みはずっと続けることができる」と社内の変 化を説明する。
ドライバーの作業品質もパトロール  倉庫部門に加え、輸送部門も業務改善を図ろう と、〇九年からは8Sパトロールの仕組みを活用 し、自社や傭車先のドライバーを対象とした「J (ジャスト)パトロール」も実施している。
 ダイセーのサービスエリアを全部で一〇チームに 分け、各チームから毎月一人のドライバーを対象 に選定。
指導員がトラックに同乗して、「ルール・ マナー」「安全運転」「検査業務」などの基本部分 について、「始業前点検が確実に行われているか」 「身だしなみを整えているか」「荷物積み込み時や 納品時の検査は指差呼称を合わせて実施している 管・出荷時の危険が懸念される姿などが写真に収 められている。
庫内の注意喚起のために貼ってい る表示板が空きパレットの山に隠れていて読み取り にくい。
充電用コードが無造作に放置されている。
トイレの清掃が不十分。
喫煙コーナーの灰皿にあ る吸い殻が満杯のままで片付けられていない等々、 問題の所在が一目で分かる。
 前回のパトロールで指摘された箇所がきれいに改 善されていた場合なども、同様に写真を撮影する。
吉田社長は「単に悪いところばかりを責めるので はなく、良いところを探し出してほめる『美点凝 か」「トラックのフロントガラスやミラーに曇りやほ こり、汚れが付いていないか」「荷台の床面にペレ ットや木屑が散乱していないか」といった二五の 確認事項を細かくチェックする。
 対象となるのは正社員のドライバー約九〇人と、 ダイセー専属の傭車先ドライバー約三〇人。
点数は ポイントごとに四〜〇点を付与し、8Sパトロール と同様、一〇〇点満点でトータルの点数が一番高 いドライバーと所属するチームを表彰している。
参 加者の採点結果は社内で公表しており、個人の成 績を可視化することで8Sパトロールと同じくチー ム間、ドライバー間の競争を促す狙いもある。
 ただし、吉田社長はJパトロールに関し、「仕組 みは一応作ったが、技能や意識の向上を個々のド ライバーのレベルから、いかに全体に波及させてい くかが課題だ。
その意味ではまだまだ肉付けが足 りない。
現場のリーダーら管理者自身のレベルアッ プも不可欠だ」との問題意識を持っている。
 同社は〇七年から関東地方でジャスト便と同じ 仕組みの共同物流を提供。
昨年は福岡にもセンタ ーを設置したほか、今年二月からは滋賀県米原市 で防虫剤・除湿剤メーカーの白元から物流センター 運営を請け負い、一般消費財の分野にも力を入れ るなど、業容拡大に腐心している。
 吉田社長は「全国で運送業が六万社もある一方、 荷物は減ってきており、必然的に品質の競争とな る。
スピーディーでリーズナブルかつ心のこもった サービスができるところへ当然仕事は来る。
目標 を達成して生き残っていくには社員同士がきちん とコミュニケーションを取らなければ駄目だ。
その ためのツールが見える化だ」と、見える化をさら に徹底していく決意を示している。
庫内に掲示している「不安全見本」。
危険な積み方を写真で説明、トラブル 防止を図っている。
《8Sパトロールの写真》 庫内で荷物のはみ出し(?)、不安定な積み方(?) を指摘。
注意喚起の表示がパレットの山に隠れている (?)ところも警告。
フォークリフトに「後方良し」 の呼称促進の表示を貼っている(?)前向きな取り 組みも紹介。
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