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る相手と協力関係を深め、その事業を
強化する。 そうやって各分野に優秀な
会社を育て、グループとして成長して
いくことが大事なのであって、その事
業会社が必ずしも一〇〇%子会社であ
る必要はありません」
──� 咤韮未�悊┐討い寝歛蠅箸蓮�
「まず表面に出てくる問題として売
り上げが伸びていませんでした。 様々
な理由がありますが、その一つは取り
扱っている荷物に偏りのあることでし
た。 これから国内人口が減っていくこ
となどを考慮すれば、そのままでは成
長は期待できない。 もちろん自律的な
改善努力は続けていましたが、会社の
方向性を大きく変えるというのはそう
簡単ではない」
「一方でハマキョウさんは3PL事
業で高い収益性を誇っていて、しかも
取扱品目がちょうどSGLと補完関係
にあった。 両社が手を組むことで、ほ
ぼ全ての業種、全ての品目に対応でき
るようになります。 ハマキョウさんに
鍛えてもらうことでロジスティクス事
業の収益性も向上できると考えました」
──� 咤韮未蝋�悊任靴拭�
「ただし、ハマキョウさんと比べれば
利益率には大きな開きがあった。 なぜ
それほど違うのか。 実際に3PL事業
に携わっている者たちに尋ねてみるの
ですが、今一つ明快な答えが返ってこ
規模拡大より収益性を重視
──ハマキョウレックスとの提携は寝
耳に水でした。 全く予想できませんで
した。
「こうした案件の常ですが、極めて
一部の人間だけで交渉を進めていたこ
とに加え、展開のスピードも大変速か
ったため、話が外に漏れなかったのだ
と思います」
──いつ頃、どちらからコンタクトを。
「昨年秋口に我々からハマキョウさん
に話を持ち掛けました。 二〇一三年度
から我々は二〇〇七年に策定した経営
ビジョンの『サードステージ(一三〜
一五年度)』に入ります。 その具体策
を詰めるに当たって昨年の早い段階か
ら『セカンドステージ(一〇〜一二年
年度)』における計画の進捗を検証し
ていたのですが、積み残した課題のう
ち重要度の高いものの一つがロジステ
ィクス事業の強化でした」
「我々は宅配便事業に依存する構造
から脱却し、第二、第三の柱を育て
ることを経営ビジョンに掲げています。
中でもロジスティクス事業には最も期
待しているのですが、残念ながら現状
では、柱と言うにはほど遠い。 何らか
のテコ入れが必要でした。 その方策と
していくつかオプションを検討する中
で、ハマキョウさんとの提携が実現し
たわけです」
──他のオプションとは。
「グループ内やSGL(佐川グローバ
ルロジスティクス)内での自律的な強
化はもちろんとして、それと並行して
社外との取り組み、具体的には買収や
提携を検討してきました。 そのうちの
一つがハマキョウさんとの提携であり、
幸い基本合意を結ぶことができたので
先日発表したということです」
──� 咤妊曄璽襯妊�鵐哀后複咤韮函砲�
ハマキョウレックスでは企業規模に大
きな違いがあります。 この組み合わせ
だと通常は提携よりM&Aを選ぶのが
自然では。
「佐川急便が中堅運送会社と手を結
ぶと言うのであれば、そうかも知れま
せん。 しかし、当社のロジスティクス
事業の売り上げは五〇〇億円足らずで
あって中堅に過ぎません。 また完全買
収にこだわっていれば、いつまで経っ
ても身動きが取れない。 当社もそうで
すが、日本の物流会社は大手や上場企
業でもオーナー系が多い。 そんなに簡
単に買収の話は進みません」
「持ち株会社という視点では、事業
ポートフォリオを改善することも重要
です。 そのためには、それぞれの事業
分野においてお互いにメリットが出せ
SGホールディングス 和田潔 執行役員経営企画担当
「ハマキョウと組み3PL事業を強化する」
一月三一日、ハマキョウレックスと国内3PL事業の統合を柱
とする資本・業務提携を結ぶと発表した。 傘下の佐川グローバル
ロジスティクスを会社分割し、ハマキョウと統合する。 ハマキョウ
の上場は維持するが、SGホールディングスはハマキョウの株式の
一部を取得する。 (聞き手・大矢昌浩)
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ない。 恐らく外から見ているだけでは、
なかなか分からないことなのでしょう。
だったら、中に入って教えていただこ
うと」
──� 咤韮未呂發箸發蛤汗邉淙悗了渦�
で宅配便事業の付帯サービスを手掛け
ていました。 そこから抜け出せていな
かった?
「否定はしません。 当社はグループ
売り上げの八割以上を宅配便事業に依
存し、SGLにも宅配便事業出身のス
タッフが多くいます。 しかし宅配便と
3PLでは事業モデルが全く違います。
3PL事業の営業の在り方、施設その
他のインフラの使い方など、技術的な
側面を学ぶことと同時にメンタリティ
の部分を変える必要がありました」
──提携の申し出に対する先方の当初
の反応は。
トラックは基本的にツーマン運行です
ので大きな荷物でも取り扱うことがで
きます。 ただし、現状では全国インフ
ラにはなっていないので、パートナー
を必要としているのも事実です。 近物
レックスさんはその有力候補の一つで
す」
──� 咤韮未蝋馥發裡械丕未世韻任覆��
グローバル物流も手掛けています。 そ
こを会社分割してグループ内に残す理
由は?
「現状ではグローバル物流の売り上げ
は僅かですし、海外では他にやりたい
ことがある。 フォワーディング事業を
もっと伸ばしたいと考えています。 そ
のためにM&Aも積極的に手掛けてい
きます。 国内と比べて海外ならM&A
のハードルも高くない。 二〇一三年度
から始まる中期計画では、そうした海
外事業や3PL事業など、宅配便以
外の事業の強化・育成に、さらに本腰
を入れていきます」
「一緒にやるということに関しては
当初から前向きに対応していただきま
した。 佐川急便の配送力やグループの
事業基盤に魅力を感じていただけたの
ではないでしょうか」
──スキームの詳細についてはまだ固
まっていないところもあるようですが、
このタイミングで発表に踏み切った理
由は。
「一つは一月三一日がハマキョウさん
の決算発表日だったからですが、我々
の社内事情もありました。 提携の基本
合意を経てこれから我々はデューデリ
ジェンスに入っていくわけですが、提
携を秘密にしたままでは、各種の資
料の作成や現場の視察に支障が生じる。
相手は上場企業ですので、機密保持な
どで迷惑を掛けることは絶対に避けな
ければならないため、完全に中身が固
まっていない段階でもリリースするこ
とにしたんです」
──今回の提携報道ではSGHが取得
するハマキョウの株式比率を「二〇%
未満」とする記事がありました。 それ
が事実だとすると、SGHの連結対象
から3PL事業が外れる。 事実上、3
PLから手を引くことになりませんか。
「まったく逆です。 提携の目的は3
PL事業を強化することです。 今の段
階で具体的な数字を申し上げることは
できませんが、お互いに心地良い水準
というのがありますので、最終的には
そういう水準に落ち着くのではないで
しょうか」
──仮に連結対象になったとしても、
グループの連結売上高は目減りしそう
です。
「重要なのは売り上げではなく収益
性です。 佐川急便の宅配便事業でも今
は売り上げより採算性を重視して適正
運賃収受のために単価の交渉に臨んで
います」
──ライバルのヤマトホールディングス
とは対照的です。 ヤマトは当日配達の
インフラに大型投資を断行し、二〇一
九年度までに市場シェア五〇%超とい
う目標を掲げています。
「シェアを追っても利益が出ないのな
ら意味がありません」
近物レックスとのシナジーも
──今回の提携によって、ハマキョウ
の子会社で中堅路線会社の近物レック
スとも繋がりができます。 そこでもシ
ナジーが発揮できますか。
「大いに期待しています。 宅配便サ
イズとそれ以外の荷物をはっきりと分
けて施設を効率的に回していこうとい
う狙いで、昨年から非定型や宅配便の
規格外の荷物はSGムービング(旧・
佐川引越センター)をご利用下さいと
お願いしています。 SGムービングの
� � Gホールディングスグループのロジス
ティクス事業会社。 国内3PL事業、フォ
ワーディング事業、海外における3PL事
業、宅配便事業等を手掛ける。 今回の提携
では同社を会社分割し、国内3PL事業を
ハマキョウレックスに統合する。
二〇一二年三月期の業績(単体)は売
上高四六四億二九〇〇万円、営業利益
一〇億九二〇〇万円。 従業員数四八四八
人。 作業子会社の佐川ロジスティクスパー
トナーズの業績を単純合算した売上高は
四八七億一六〇〇万円。 このうち国内3P
L事業の売上高は約四〇〇億円を占める。
佐川グローバルロジスティクスの概要
和田潔(わだ・きよし)
都市銀行、外資系金融
を経て2010年11月にSG
ホールディングス入社。 事
業戦略部理事、経営企画
部長を経て12年6月、同
社執行役員(経営企画担当)
兼経営企画部ゼネラルマネ
ジャー。 現在に至る。
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