ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年3号
ケース
YKKAP コスト削減 在庫配置を見直して拠点間の横持ち解消配車システム開発し輸送も“見える化”

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2013  42 物流の構造改革に着手  
截烹縫哀襦璽廚脇鵑弔涼羈忙業を持つ。
一つはファスナー(ファスニング)事業だ。
国 内はもとより海外でも圧倒的なシェアを握り、 「YKK」の社名がその代名詞ともなってい る。
もう一つが住宅やビルの建材事業で、こ ちらも国内市場でトップシェアを競う位置に ある。
YKK本体ではこのうちファスニング 事業を展開し、建材事業は子会社のYKKA Pが担っている。
 
截烹烹腺个呂發箸發硲截烹砲両事部門と して一九五七年に発足した(発足時の社名は 吉田商事)。
当初はファスナーの輸出などを 手掛けていたが、YKKがアルミサッシなど 建材の製造販売に乗り出してからは、全国各 地の「産業会社」(販売会社)を管轄下に置き、 建材事業の販売部門を統括する役割を果たす ようになった。
 製造はYKK、販売はYKKAPという役 割分担を二〇〇〇年代初頭まで続けた後、事 業の一元化に動いた。
〇一年に沖縄を除く全 国の販社をYKKAPが吸収合併、さらに〇 三年にYKKの建材製造事業本部をYKKA Pに統合するかたちで建材事業の製販一貫体 制を構築し、今日に至っている。
 
截烹烹腺个亮莪珪ι覆魯汽奪靴筌疋◆▲ ャッター、雨戸など建物の開口部を始め、門 扉、カーポート、バルコニー、フェンスなど のエクステリア商品まで多彩だ。
また近年は サッシにガラスを組み合わせた「窓」を商品 化し、事業の新たな柱として力を入れている。
これらを合わせると受注用のカタログに掲載 している商品数は二〇万点を超える。
 同社は単に材料を加工して最終製品に仕上 げるだけの加工メーカーではなく、材料の生 産から加工まで自社工場で一貫生産体制を取 っている点に特徴がある。
 主要工場は東北(宮城)、富山(黒部・滑 川)、四国(香川)、九州(熊本)、埼玉の六 つ。
このうち埼玉と滑川を除く四工場はアル ミ合金や樹脂など材料を製造する工程を持ち、 出来た材料をサッシなどに加工している。
全 商品の九割がこれらの主要工場で生産される。
このほかに、他工場から材料を調達して加工 だけを行う工場を北海道から九州まで計一八  物流センター間の在庫移動を無くすため在庫の 配置を見直した。
同じ商品を全センターに配分す るのを止め、商品ごとに東西それぞれ1カ所に在庫 を集約した。
横持ち輸送が解消されて工場からセ ンターへの輸送やセンターの荷役費用も減少、大 幅なコスト削減を達成した。
コスト削減 YKKAP 在庫配置を見直して拠点間の横持ち解消 配車システム開発し輸送も“見える化” YKKAP 改革の変遷 1957 年 7月吉田商事(現YKKAP)設立 2001 年 4月YKKAP販売会社(沖縄を除く43社)を YKKAPに統合 2002 年 8月YKKAP工業(4社)をYKKAPに統合 1990 年 2月吉田商事からYKKアーキテクチュラルプロダクツに 社名変更(略称YKKAP) 欠品問題→物流管理システムの構築 販売体制→産業会社96社を統合     →全国47Y販体制 吉田工業からYKKに社名変更 販売会社の社名統一:YKKAP(地名) 1959 年11月アルミサッシ生産販売開始[吉田工業(現YKK)] 2002 年10月YKKAPをYKKの完全子会社化 YKKアーキテクチュラルプロダクツから YKKAPに社名変更 2003 年10月YKK建材製造本部をYKKAPに統合 1994 年 8月 43  MARCH 2013 カ所に置き、緊急品の生産に対応している。
 同社は〇九〜一二年度の第三次中期経営 計画で国内建材事業の構造改革に取り組んだ。
景気の低迷で国内の新設住宅着工戸数がピー ク時の半分に落ち込む中、「売り上げの伸びな い事業環境下でも利益を確保できる体制づく り」を構造改革の目的とした。
 同中計では構造改革の主要なテーマとして 「製造拠点の再編」「新ラインの開発・改良」 「ロジスティクス改革」「営業業務の構造改革」 の四項目を掲げ、項目ごとにコスト削減目標 を定めた。
 最終年度までの四年間に総額で一九八億円 の削減を目指している。
このうち「ロジステ ィクス改革」によるコスト削減の目標金額は 四一億円。
その達成のため〇九年四月にロジ スティクス統括部が発足し、同部を主体に物 流の構造改革がスタートした。
欠品防ぐ仕組みに落とし穴  
截烹烹腺个了業は大きく住宅建材とビル 建材の二部門に分かれる。
住宅建材は原則と して保管型の物流センター(DC)に在庫を 持ち注文に応じて、主要な販売チャネルであ る「流通店」(サッシやガラスの販売店)や問 屋の倉庫にDCから納品。
流通店や問屋が工 務店の指定する住宅施工現場へ商品を納める。
 ただし流通店や問屋が在庫を持たず、YK KAPが施工現場への納品を代行しているケ ースもある。
その場合、物流センターからは 出荷せずに工場から施工現場へ直送する。
ま たビル建材も工場から施工現場への直送が基 本だ。
 この物流の枠組みは九〇年代の半ば頃に出 来上がったものだった。
九〇年に全国に九六 社あった産業会社を四七都道府県に一社ずつ の販社組織に再編。
これに続いて、物流体制 の整備に着手した。
 当初は各販社がそれぞれ独自に商品を仕入 れて在庫を抱え、物流管理も別々に行ってい た。
販社は独立採算であったため、ある県で 欠品が起き、隣接県の倉庫に在庫が大量に余 っていても融通し合うことはなく、販売機会 を逃すことがたびたびあった。
 この問題を解決するため、全国を九ブロッ クに分けてDCを設け、販社の在庫を集約。
同時に「YOURS」と名付けた物流管理シ ステムを構築して各DCに導入し、入出荷・ 在庫管理を一元化した。
 欠品を無くすことに重点を置き、出荷頻度 の高い商品については全てのDCに在庫を配 置した。
DCごとに出荷担当エリアを設定し、 顧客からオーダーが入るとYOURSで在庫 引当を行い、担当エリアのDCに自動的に出 荷指示が出る仕組みにした。
 このときに全国の輸配送ネットワークも構 築した。
主要工場はそれぞれ特定の商品を集 中生産する体制を取っている。
そこでまず各 工場が生産した商品を全DCへ補充するため の輸送網を整備し、さらに各DCから顧客へ 納品する配送網を整備していった。
 
庁辰錬截錬妝劭咾粒発を手掛けた情報シ ステム部が管轄し、在庫管理や需給管理を担 当した。
その後、〇三年に製販体制を一本化 したのに伴って現在の生産本部に当たる部署 にDCの管轄を移した。
 これによって生産計画の立案から需給管理、 在庫管理までの機能を同じ部署に集約した。
もともとDCの一部は工場に隣接して設置さ れており、生産管理と在庫管理を一元化する ことで効率化を図る狙いだった。
 このときの製販一本化と管理の一元化によ って、同社は欠品防止や在庫圧縮などの成果 を上げることができた。
だが物流システムの 運用に慣れるにつれ、効率的と考えられてい たシステムにも弱点のあることが明らかにな ってきた。
 
截錬妝劭咾倭瓦討裡庁辰虜澹砲魄豸鬼 理し、出荷担当ブロックのDCに在庫が無け れば自動的に別のブロックのDCの在庫を引 き当てて出荷指示を出す仕組みになっていた。
全国規模の輸配送網を整備したことで、どの DCから出荷しても全国の顧客へ配送するこ ロジスティクス統括部の岩 稔企画部長 MARCH 2013  44 とができるようになった。
AブロックのDC から出荷した商品を拠点間輸送網によってB ブロックのDCに横持ちし、そこから顧客に 納品するというかたちだ。
 この仕組みだと、出荷の変動で在庫の過不 足が生じても、極論を言えばどこか一カ所で もDCに在庫があれば欠品は発生しないこと になる。
そこに落とし穴があった。
 工場ではDCごとに細かく需給を管理せず に在庫総数だけを見て生産し、在庫の薄い DCから順に補充していくという大まかな供 給方法を取るようになっていった。
その結果、 遠隔地にあるDC間で調整のための在庫移動 が頻繁に起こり、横持ち輸送費の増大を招い た。
製品ごとに在庫を東西二カ所に集約  ロジスティクス統括部は、DC間の在庫移 動を無くして横持ち輸送を解消することをコ スト削減の重点課題と位置付け、そのために 在庫配置の大胆な見直しを行った。
 従来は同じ商品の在庫を全てのDCにまん べんなく配置していた。
それを改めエリアを 大きく東日本と西日本に分割。
各商品の在庫 を東西それぞれ一カ所のDCだけに置くよう にした。
 例えばある工場の製品は東日本では「東北 DC」に在庫を置き、そこから北海道・東 北・関東・首都圏の各エリアへ供給する。
西 日本では「中国DC」に在庫を置き、中国・ フトの変更などでTC化に対応した。
TC機 能の整備に伴ってビル建材についてもTCを経 由して施工現場に納める仕組みを構築し、タ イムチャートを別途設定した。
 一連のネットワーク改革によってDC間の 在庫移動のための横持ち輸送が解消された。
各工場からの一次輸送も補充先が東西二カ所 に集約されたことで積載効率がアップし、輸 送費を大幅に削減できた。
DC側でも特定の 工場からしか入荷しなくなり、荷役回数が減 って業務を効率化できた。
 生産側が担当する在庫・需給管理業務へ の負荷も軽減された。
従来、各工場の生産管 理担当者は全てのDCの在庫を管理しながら 生産計画を立て需給管理を行わなければなら なかった。
新体制では二カ所の在庫だけを見 て補充計画を立てれば良くなった。
業務負担 が軽減されると共に需給管理の精度が高まり、 トータル在庫の削減に繋がった。
 同社は〇三年に製販の一体化に伴って在庫 の管理体制を一新した際に、二〇〇〇年度の 在庫水準に対し六割まで在庫を抑制している。
今回の改革でさらに二〇〇〇年度比四割の水 準まで減らすことができた。
 これらの施策が実り、四年間にわたる中期 経営計画の成果として、同社はロジスティク ス改革で目標を上回る四六億円のコスト削減 を達成できる見込みとなった。
ロジスティク ス統括部の岩稔企画部長は「在庫配置の見 直しから派生したいくつかの合理化策が波及 四国・九州の各エリアへ供給するという具合 だ。
 ただし、在庫拠点の「東北DC」と「中国 DC」から全ての顧客へ直送するのではなく、 九州地区の顧客ならば「中国DC」から「九 州DC」へ幹線輸送し、「九州DC」を中継 基地として配送便に積み替え顧客へ納品する。
 これに伴い輸配送ネットワークも再編した。
従来は各工場から全てのDCへ商品を補充す るルートがあり、また全てのDC間に在庫移 動のための幹線輸送ルートがあった。
これを 整理した。
工場からは原則として二カ所のD Cへの補充ルートがあればいい。
DC間の幹 線輸送も出荷担当エリアの中継拠点に行くル ートだけに絞った。
 並行して各DCには中継を行うためのTC 機能を整備した。
同社では午後二時までに 受けた注文に対し翌日午前中から納品を行う。
このリードタイムを維持しながら遠方のDC から供給するにはDCで深夜に積み替えを行 う必要があった。
 同社はDCを自社で運営しているが、最も 規模の大きい首都圏DCは固定費軽減のため 再編を機に廃止した。
代わりに外部委託のT Cを設け、首都圏の顧客へは東北と北陸のD Cから出荷してTC経由で配送する形に変え た。
建材の供給で、首都圏のような一大消費 地向けの在庫拠点を撤収し中継輸送に切り替 えた例は珍しいという。
 これ以外の自社で運営するDCでは勤務シ 45  MARCH 2013 でどんなルートを組み、どれだけの積載率で 配送したのかを詳細に把握できていなかった。
配車組みに無駄は無かったのか、請求された 運賃の金額が果たして妥当なものなのか判断 が付かなかった。
 そこで自ら車両の運行実態を把握して輸送 コストを管理できるようにした。
そのために 従来のYOURSに代えて、輸配送管理を含 め物流業務全般を管理する基幹システムとし て、新たに「APOLO─
鵤s(YKKA P最適化ロジスティクスシステム)」を自社開 発した。
昨年夏までに物流センターや工場に 導入を終えている。
 
腺丕錬味呂錬廝唯咫柄匕亡浜システム) とTMS(輸配送管理システム)で構成され、 WMSの出荷データを基にTMSで配送ルー トを組み配車計画を作成する。
配車業務を運 送会社に一任せず、APOLOによって同社 側が毎回、車両台数やルーティングを設定し 運送会社に配送指示を出す形に変えた。
 配送先や数量は日によって変わり、時間指 定などの制約もあるため、効率の良い配車計 画を人手で作成するのは極めて困難だ。
この ため従来ほとんどの運送会社が配送ルートを 毎回変えることはせず、物量が増えれば増便 するという対応を取っていた。
この場合、二 便目は著しく積載率が低くなるケースが多か った。
システム化によって無駄な増便を避け て効率良く配車できるようになった。
 岩部長は「全国でどの方面に何台の車両 がどれだけ荷物を積んで走っているかが、い つでも分かり、一運行ごとに輸送費を把握で きるようになった。
輸送の効率化を進める上 で必要なデータベースの蓄積が可能になった 意義は大きい」と強調する。
 今回のロジスティクス改革では物流センタ ーから流通店や問屋までのルートをターゲッ トとした。
次のステップでロジスティクス統括 部は工場から施工現場へ直送するルートにメ スを入れる。
 近年、YKKAPが主力事業に位置付ける 窓事業は、住宅一棟ごとに多品種少量生産し 邸別に仕分けて工場から施工現場へ直接送る ビジネス形態を取っている。
これを物流面で 支援するための改革に取り組む考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 効果を生んで、予想以上の成果に繋がった」 と振り返る。
台数や配送ルートを自ら設定  今回のロジスティクス改革では、もう一つ のテーマとして輸送の?見える化?にも取り 組んだ。
 同社は輸配送業務を全て協力運送会社に委 託している。
従来は工場やDCで商品を出荷 した後の輸配送業務については管理を全て運 送会社に一任していた。
このため何台の車両 在庫配置の見直しとそれに伴う輸送方法の変更 ■改革のキーワード:遠距離輸送を最小にする、実受注商品は輸送しない 改善前改善後 生産工場物流拠点販売エリア生産工場物流拠点販売エリア 東日本西日本 東日本西日本 1 2 3 4 5 ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎   ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎     ◎ ◎ ◎ 1 2 3 4 5 各工場で生産した商品を全DCに在庫分 を輸送し担当エリアで受注引当後に納品 (上図◎印)。
担当DCで在庫が欠品になると全国のDC 間に在庫引当を行い、横持ちとなってい た(上図○印)。
工場から全DCへ在庫するのでなく配置先 を限定する在庫管理に変更(輸送便数削 減、積載効率向上)。
更にTC(Transfer Center)機能を各DC に設置して実受注分のみを中継する納品 体制(横持ち輸送廃止)。
ア DC イ DC ウ DC エ DC ア DC・ TC イ DC・ TC ウ DC・ TC エ DC・ TC A 工場 B 工場 C 工場 D 工場 A 工場 B 工場 C 工場 D 工場 国内建材事業構造改革の効果金額 製造供給拠点再編 新ライン開発・改良 ロジスティクス改革 営業業務の構造改革 項目 推定実績 進捗 第3 次中期 経営計画 1 年前倒し 19億円 21億円 完了 112億円 132億円 計画以上 198 億円273 億円 41億円 46億円 計画以上 26億円 73億円 計画以上 ※2009〜12 年度の累計

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