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APRIL 2004 82
に城戸氏から声がかかった。 「マネジャーは作業をしてはいけません。
マネジャーはひとに作業をさせるのです」
概要書を作成するための議論を進めるうちに、目的とする物流セ
ンターのイメージがどんどんと詰まってくる。 最終目標、筋道、ラ
イフサイクルなど、全員のイメージがある程度まで固まり、大まか
な工程表ができあがった頃を見計らって城戸氏が次の作業を指示し
た。 今度は、センター構築のための作業体系(WBS)を作る。
工程表の設計盤上にある作業工程を見ながらWBSの作成にかかっ
た。 最上部にプロジェクト名を記入し、以下は階層構造的にフェー
ズ、機能、作業などを展開していきWBSが完成する。 WBSの最下位
にワークパッケージを設定し、工程表のアクティビティとの関連(展
開)を確認する。
工程設計には小道具として「アクティビティカード」と「アクテ
ィビティリンク(生産工程を表示する青紐)」を用いる。 作業に必要
な情報は前工程にあるが、それは後工程が自分で集める(Pull)もの
であることを学び、アクティビティ間に青紐をかけることで順序を
あらわすことでネットワークを構成した。 これによってプロジェクト
の成果管理の体系(管理の枠組)が完成する。
次に実行スケジュール計画を作成するが、まず個々のアクティビ
ティの作業量を見積もる。 それぞれの作業量を勘案して小道具の
「仕事のキュービクル」(仕事量の単位を表している)を1〜3個割
り当てる。 同時に「作業者(人形)」も割り当て、作業量と作業者数
から期間を設定する。 資源の山積み、負荷調整(期間を延ばしたり、
資源の増減)を行い、実行スケジュールのシミュレーションを体験
し、クリティカルパスの変化を確認する。
続いて作業タイムコントロールプロセスの設計(マイルストーン
の設定)を行うが、それは小道具の「マイルストーンカード」、「マ
ネジメントリンク(赤紐、生産工程の青紐と違う)」を用いて行う。
さらに消耗資源・コスト予算計画(小道具:経費チップ)、実行管
理組織編成(小道具:管理機能ボタン、PM要員人形、役割分担表設
計盤など)、作業量の計測、実行成果の評価(出来高管理)、実行成
果掌握計画(レポート計画)、などの演習を続けていった。
* * *
最終的には、工程表設計盤上にプロジェクトの成果管理の仕組み
(全体構造)が立体的に表現された。 WBS、ワークパッケージ、アク
ティビティ、スケジュール、クリティカルパス、ワークロード、プロ
ジェクト関係者、それぞれの関係などが俯瞰できた。
通常は紙の上に、平面的に記述されているそれらの要素が立体的
に配置され、しかもそれらは、いま自分たちが議論しながら作成し
た全体像であるから、非常に理解しやすく、見る人々にもアピール
する。 何らかの疑問がわいたときにも、その場でプロジェクトの実
態を見ながら議論できるので、議論の内容は非常に具体的になる。
従来の紙の上での教育、学習、議論とは一味違う体験をすることが
できた。
3月のフォーラムは23日に開催し、日本ロジスティクスシステム
協会(JILS)の浜崎章洋氏による「ロジスティクス成熟度評価」と
題した講演を行った。 その内容は、次回の本欄で紹介する。
4月のフォーラムは当初の計画では「輸送モードの研究」だった
が、SOLE東京支部と密接な付き合いのあるイスラエルのソフトウエ
ア会社が新しいロジスティクスソフトウエアを発表したため、その
デモンストレーションを見せていただくように当初予定を変更した。
このフォーラムは基本的に年間計画に基づいているが、単月のみ
の参加も可能。 1回の費用は6,000円。 参加希望の方やSOLE東京支
部の活動内容に関するお問い合わせはsole_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス
技術、ロジスティクスマネジメントに関する活発な意見交換、議論
を行い、会員相互の啓発に努めている。
前回のフォーラムは2月17日に開催し、デム研究所の城戸俊二社
長による講演「新しいプロジェクトマネジメント(PM)教育方法
論」を行った。 以下、講演の概要を紹介する。
はじめに
近年、官民を問わずプロジェクトマネジメント(PM)に熱い視線
が注がれている。 それはそれで結構なことだが、そうした議論のな
かで本当にプロジェクトの成果管理手法が正しく理解されているの
かどうかなど、さまざまな問題がある。
たとえば、PMではWBS(Work Breakdown Structure)を描いて
ワークパッケージ(WP)を設定するが、そのWPについて必要事項
を正しく設定しているだろうか。 それは誰がやるのか。 どのような
資源を必要としているのか。 コスト予算はどの程度で、スケジュー
ルはどのようになっているのか。 これらを明確にして取り組んでい
るのか。 また、プロジェクトの進行をどのようにとらえて、どのよう
にコントロールしているのか――など、あいまいなものがある。
そもそもプロジェクトマネジメントとは何か。 これを一言で表現
すると、「所定の目標を、与えられた要件の下で、チームで達成する
活動がプロジェクトで、これを上手く取り進めることがマネジメン
トである」となる。 複数の人が共通の目標に向かって協働するため
には、そのプロセスを可視化することが重要である。 しかし、この
可視化のテクニックを修得するのはなかなか難しい。
プロジェクトの成果管理の全貌を理解してもらうためのツールを
考案したので、今回のフォーラムではそれを紹介する。 プロジェク
トマネジメント教育のための小道具(演習キット)を用いて、フォ
ーラムの受講者に体験的にプロジェクト成果管理の仕組みを理解し
てもらうとういう試みである。
* * *
フォーラムでの演習は、流通業者の物流センターの構築計画を題
材に行った。 具体的な作業内容は以下の通り。
<フォーラムの際に実施された演習の概要>
受講者は建設業者の立場にあるという前提で、まず流通業者の
RFP(提案要求書)に基づいてプロポーザル(プロジェクト概要書)
を作成した。 プロジェクト遂行のためのプロジェクトマネジメント
要領の提示(デモンストレーション)を求められ、そのデモンスト
レーションを「イメージ機材(演習キット)」を用いて行うことを要
求されている、という設定である。
まず、5〜6人のグループに分かれて、グループごとにプロジェ
クトマネジャーを決めた。 次いで演習要領、資料(RFP)、城戸氏オ
リジナルのPMキットが配布された。 PMキットは作業盤(磁石を貼
り付けることができる)、作業名やフェーズ名を書くことのできる磁
気ラベル、人形(プロジェクトチーム構成員の役割別、マネジャー、
リーダー、メンバーなど)、作業の先行/後続の関係を表示するため
のリンク(磁石付のピンとゴム紐でできている)などからなり、そ
れぞれ用途をわかりやすく示すためにカラフルに着色してある。
マネジャーを選出した後、「プロジェクトの概要書」の作成を指示
された。 概要書のフォームには、プロジェクト名、センターの基本
構成(建屋、機械設備、運用システム)、工期、総費用、プロジェク
トマネジメント要員などを記入するようになっている。 グループご
とにメンバーで議論しながら概要書を作成するのだが、マネジャー
役が率先して取り仕切り、自分で作業を進めようとすると、とたん
SOLE東京支部フォーラムの報告
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