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67 APRIL 2013
佐高 信
経済評論家
あまり批評されることのなかったメディア
がようやくマナイタの上にのせられるように
なったが、石橋湛山記念財団の発行する『自
由思想』第一二八号の「論壇季評」が興味
深かった。 出席者は「侠骨」の現代史研究
家、「源三」の経済ジャーナリスト、「徐福」
の経済誌論説委員、そして「蓼虫」と「楽天」
という経済評論家である。
侠骨は『中央公論』二月号の佐藤優「日
中武力衝突への隠れた火種」を取り上げ、
石原慎太郎亜流の猪瀬直樹と橋下徹の幼稚
な危険さに言及する。 私が思うには、二人
は幼稚ながら危険だという側面と幼稚だか
ら危険だという側面を併せ持っている。
橋下は、沖縄負担の軽減を言いながら、
初の沖縄訪問では、維新の会のメンバーに、
「日米安保は絶対に必要だ。 辺野古移転を容
認する」
「全ての県民が米軍基地を嫌だと言ってい
るわけではない」
と言って、沖縄県民の激しい反発を買っ
たという。
猪瀬は、尖閣諸島購入を支持して集まっ
た寄付金を使って日本人が利用する施設を
作るなどと『解決する力』(PHPビジネス
新書)に書いている。
これらの事実に言及しながら、佐藤優は、
「猪瀬・橋下に共通するのは、沖縄の歴史
的内在的論理に対する無理解で、この認識
ギャップのまま猪瀬知事がもし石原の夢であ
る施設を尖閣につくろうなどとしたら、日
本の戦後史を変えてしまうような事態を引
き起こすことを恐れる、と警告している」
と侠骨は要約する。
猪瀬については、緊急出版した拙著『自
分を売る男、猪瀬直樹』(七つ森書館)で触
れた「事件」が忘れられない。 そこで私は、
櫻井よしこが猪瀬を批判して書いた『権力
の道化』(PHP研究所)から、櫻井の指摘
を引いた。
「自分に対して批判的な記事を書く者は徹
底的に排除するかのような猪瀬氏には、い
かなる時も言論・表現の自由を尊重すると
いう気構えが欠落しているのであろう。 編
集者や記者苛めととられかねない行動に出
る猪瀬氏だが、今回は、さらに信じ難い行
動に出た。 こともあろうに言うに事欠いて、
(二〇〇四年)一月二二日、『新潮
45
』編集
長の中瀬(ゆかり)に電話をかけ反論の頁
を求めた後『もう櫻井さんには書かせない
でくれよ』『書かせないって約束してよ』と
要求したのである。 」
こんな男が都知事になってしまった。 猪
瀬にフェアプレーをモットーとするオリン
ピックを招致する資格などない。 猪瀬に投
票した人間は拙著を読んで彼の正体を知り、
猛省してほしい。
『自由思想』の「論壇季評」で「楽天」氏が、
今年の一月二〇日放送のNHK「日曜討論」
での浜田宏一と野口悠紀雄の激論を紹介する。
安倍首相の顧問格の浜田の推奨するアベ
ノミクスについて、野口が、日銀はベースマ
ネーを拡大したが、民間の資金需要がつい
てこないため、マネーサプライは増えなかっ
たのだから「大胆な金融緩和」には反対だ
と主張した。 私は浜田よりは野口に賛成だが、
「蓼虫」氏は、浜田をノーベル賞候補といわ
れる人にしては「俗」な感じで、品がない、
と指摘する。
続けて述べる次のような感想に私も賛成
である。
「自分の弟子でもある白川方明・日銀総裁
や野口氏のような浜田説反対の人には口を
極めて批判し、高橋洋一(嘉悦大学教授)
のような賛成派を繰り返し持ち上げる。 批
判するにも、大家なんだから人間性や説得
力が滲んでこないとね」
うるさいだけの橋下徹と似た感じを私は
浜田宏一に持っている。
幼稚な危険さの橋下・猪瀬と品のない浜田
『自由思想』が的確に批判する話題の三人
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