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MAY 2013 34
ペースで新規荷
主が増えている。
今年二月には現
地企業との提携
によってハノイ、
ホーチミン以外
の全国に配送エ
リアを拡大。 有
力な現地企業の
買収や資本提携
も検討している
という。
現状の取り扱
いの九八%はB
2BでB2Cは
二%程度しかな
い。 そのほとん
どがテレビ通販の代引き貨物だ。 ベトナムでは現
在七社がテレビ通販事業を行っている。 ただし自
社配送が基本で、そこから漏れた荷物だけが佐川
急便に流れてくる。
昨年暮れごろからベトナムでネット通販やテレビ
通販をやりたいという日系や外資系企業から相談
を受けるようになった。 当初予想していたより早
いタイミングでの引き合いだ。 しかし、ネット通
販が本格的に普及するまでには、まだ時間が掛かる。
それでもベトナム佐川急便の島崎順二社長は「当
社の狙いは必ずしもB2Cだけではない。 今始め
ておかなければ日系企業の内販が本格化する二〇
一五年に間に合わない。 決して早過ぎることはな
い」と事業基盤の強化を進めている。
ハノイとホーチミンに一人ずつセールスドライバ
ターゲット絞り付加価値サービス
ホーチミンでは日系中小企業の進出が目立つよ
うになっている。 「それも中国の次にベトナムとい
うのではなく、いきなり進出というケースが多い」
とベトナム日本通運の荒牧健二郎セールスマネジ
ャーはいう。
会社のホームページもないような町工場が主要
顧客の打診を受け、否応なく海外シフトに踏み切
っている。 突然ベトナムに一人送り込まれた工場
長は、右も左も分からない状態で何から何まで一
人で処理しなければならない。
そこでベトナム日本通運では昨年からそうした
中小荷主を対象に、物流だけでなくレンタル工場
の確保や住居の手配、現地スタッフの採用、法務
事務などワンストップで仲介する進出支援サービ
スを開始した。
「現地語はもちろん英語もままならない方が多
いので、我々が間に入って日本語で対応すること
で安心してもらえる。 中小荷主向けに物流サービ
スのパッケージ化も進めている」と荒牧セールス
マネジャーは説明する。
ベトナム佐川急便は二〇一二年三月に宅配便を
スタートした。 ハノイとホーチミン間を定期便で
結び、個建て貨物の集配を行っている。 スタート
開始から一カ月の取り扱いは、わずか三〇〇〇個。
それが一〇カ月後
の今年一月には
月間二万個まで
増え、単月黒字
を達成した。
毎月一〇〇件
2015年に向けビジネスモデルを競う
既にベトナムには有力な日系物流会社の現地法人が出揃
っている。 日系同士の競争が激化すると同時に、ローカル
企業とバッティングする場面も増えてきた。 現地化を進め
るだけでは十分ではない。 マーケティング戦略とビジネスモ
デルによる差別化に各社は取り組んでいる。 (大矢昌浩)
ベトナム佐川急便の
島崎順二社長
ベトナム日本通運の荒牧
健二郎セールスマネジャー
ベトナム──物流会社も走り出す
第 4 部
ロジテムベトナムが運営
する二輪車センター
35 MAY 2013
道四時間掛かる。 荷物の積み卸しまで含めると、
単純輸送では一日一ラウンドしかできない。
そこで夜中のうちに荷物をピックアップしてネ
ットワークに乗せてしまう。 夜間であれば幹線輸
送は往復六時間で済む。 荷主の了解を得られれば、
夜中にシャーシを納品先で切り離して、トラクタ
ーヘッドを次の仕事に向かわせることもできる。
そのためにトラクターヘッドの三倍の数のシャー
シを導入し、ドライバー二人が交替で運転するツ
ーマン運行を実施している。 この方法だとトラク
ターヘッドを一日に二ラウンドから三ラウンド回す
ことができる。
同社の赤堀達也ゼネラルディレクターは「人件
費の安い国なので運行コストは車両の減価償却が
大きな比率を占める。 稼働率を上げれば収益性が
大きく違ってくる。 既存のボックス型のトラック
も今後はトラクターヘッドに徐々に切り替えてい
くつもりだ」という。
ベトナムモデルをミャンマーへ
日本ロジテムにとってベトナムは特別な国だ。
同社の二〇一二年三月期決算における海外売上高
は金額にして四四億円余り。 その大部分をベトナ
ムで稼いでいる。 現地法人の設立は一九九四年。
「ドイモイ(刷新)」政策を掲げる現地政府から直
接の要請を受けて、「ロジテムベトナム
No.
1」、同
「
No.
2」という
二つの会社を
同時に立ち上
げた。
うち「
No.
2」
はトラック運
ー経験のある日本人スタッフを配置、一六人の現
地社員を雇用して、実践を通じて佐川急便流の仕
事の仕方を教え込んでいる。 この一六人を現場リ
ーダーに育て上げてオペレーションの現地化を徹底
する。 それには一年から二年は掛かるという計算だ。
通常の宅配便よりも大きくて路線便よりも小さ
い、個建て運賃の中ロット貨物を現状のメーンタ
ーゲットに据えている。 「当社の運賃はローカル企
業に比べれば高い。 それでも確実に届ける。 急ぐ
荷物であれば航空便も使う。 代引きや大きな荷物
も断らない」と島崎社長。
通常のチャーター便はローカル相場に引っ張られ
るため外資系には旨味がない。 現在ベトナムには
主だった日系物流会社だけでも五〇社近くが参入
していて、日系同士の競争も激しい。 二〇年前の
日本の佐川急便のビジネスモデルをそのままベトナ
ムに持ち込むことで差別化を図ろうとしている。
それに対して住友商事が三四%、鈴与が三一%
を出資するドラゴン・ロジスティクスは輸出入貨
物に集中し、車両の回転率を高めることでコスト
競争力を確保するという戦略を取っている。
港湾地区と工場の集積する内陸部の工業団地に
それぞれ拠点を置き、拠点間の幹線輸送と拠点を
軸としたショートドレージで構成するハブ・アンド・
スポーク型の輸送ネットワークを構築している。
ハノイではハイフォン港から日系工場が集積す
る内陸部のタン
ロン工業団地ま
で距離にして一
三〇?ある。 道
路事情も良くな
いため輸送に片
送をメーンとする通常の物流会社だが、「
No.
1」
は旅客運送。 現地進出を検討する日系企業の担当
者や駐在員に、ハイヤーや送迎バス、引越、賃貸
マンション等の世話をしている。
二〇〇三年にはL&Kトレーディングを設立し
て現地で小売業を開始した。 さらに昨年一一月に
はロジテムベトナムトレーディングを設立、輸入貿
易と中間流通業にも進出した。 いずれも日系荷主
の内販支援がその目的だ。
同社の小倉章男取締役上席執行役員国際本部
長は「当社のベトナム進出は完全な先行投資だった。
参入した当時はインフラも未整備で物流需要は限
られていた。 そのため物流事業だけにこだわらず
荷主の現地進出を幅広くサポートするところから
仕事を始めていった」と説明する。
その後、二〇〇〇年代に入って日系の大手セッ
トメーカーが次々にベトナムに拠点進出。 ロジテム
はそのサポート役として頼りにされ先行者利益を
得ることができた。 今後の拡大が期待される内販
物流でも同社は他社を一歩リードしている。 一三
年三月期は極端な景気の落ち込みに直面したが、
それでも同社はベトナム事業売上高(グループ四
社の単純合算)として前期比二六%増の五六億円
(一ドン=〇・〇〇四六八円換算)を見込む。
このベトナムモデルをミャンマーに持ち込むこと
を現在検討している。 その指揮を取る飯島隆上席
執行役員国際本部副本部長兼国際戦略部長は「今
のミャンマーはかつてのベトナムとよく似ている。
将来性はあるがインフラは未整備で物流需要が本
格化するまでには時間が掛かる。 そこに我々が先
に入り込んで荷主の進出を丸ごと支援するかたち
で物流事業へと繋げていきたい」という。
ドラゴン・ロジスティクス
の赤堀達也ゼネラルディ
レクター
日本ロジテムの小倉章男
取締役上席執行役員国
際本部長
特 集 中国物流
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