2013年5月号
特集

第5部 インドネシア──沸き上がる内需 ASEAN最大の消費市場を攻める

MAY 2013  36 マンダムの真似はできない  ASEAN最大の内需大国、インドネシア。
同 国の事情に詳しい個人コンサルタントの小野耕司 氏は、消費市場としての魅力をこう説明する。
 「二億四〇〇〇万人という世界四位の人口を誇 り、消費力のある中間層が急激なスピードで膨れ 上がっている。
しかも若年層が厚い人口構成のた め、内需を牽引役とした高い経済成長が長期にわ たって続くことがほぼ約束されている」  勃興する内需を目当てに、日系メーカーの進出 が相次いでいる。
従来の自動車や家電に加えて、 近年は日用品や食品分野の企業の投資も顕著だ。
既に多くの勝ち組も出ている。
ユニ・チャームは 紙おむつや生理用品市場でトップシェアを握って いる。
大塚製薬の「ポカリスエット」も、現地で 年間四億本以上を売り上げる大ヒット商品だ。
 マンダムは「ギャツビー」に代表される男性用 整髪料で八割のシェアを握っている。
同社は一九 六九年にインドネシア現地法人を設立し、七一年 から現地生産を開始した。
低所得者層向けにサチ ェット(少量入り袋)タイプを投入するなどの戦 略が奏功。
さらに、全土をカバーする流通網の構 築に成功したことが圧倒的な地位に結び付いた。
 インドネシアは東西五五〇〇?に約一万七〇〇 〇もの島々が広がる島嶼国家だ。
ジャワ島に人口 の六割以上が集中しているとはいえ、内需の恩恵 をフルに取り込むには、そのほかの島の小規模な 小売店にまで商品を届ける必要がある。
 マンダムの江藤慎一郎購買部・購買課主任は 「流通に関しては現地のパートナーに恵まれた。
当 初の合弁相手で、現在もインドネシアの総代理 店である『ASIA P A R A M I T A INDAH』社が先 頭を切って地場の 代理店を一つ一つ 開拓し、少しずつ 販路を拡げてきた」 と言う。
 各代理店が物流 機能も担っている。
島から島へと商品 が渡る度に、輸送 の担い手は二次、三次、四次の代理店へと変わる。
物流ルートは既に確立されているため、マンダム は煩雑な物流管理にはタッチせず、商品開発や生 産管理に専念することができている。
 マンダムは四〇年を掛けて現地パートナーとの 信頼関係を築き、末端までの配送網を練り上げた。
これを一朝一夕でまねることはできない。
これか ら市場を攻める日系メーカーは、ユニ・チャーム が日立物流に販売物流の元請け機能を委託してい るように、日系物流企業をパートナーに置くこと が現実的な選択肢になる。
 日系物流企業にとっては好機だ。
従来の自動車 部品や電子部品に加え、消費財を視野に入れた新 会社や倉庫拠点を設立する動きが相次いでいる。
 日本通運は今年一月から「ミトラカラワン・ロ ジスティクス・センター」を本格稼働させた。
イ ンドネシア日本通運の中村雅之社長は「川下まで を含めた国内3PLを強化し、主力の航空輸送事 業とのシナジーを図る。
まずはジャワ島の主要都 市であるジャカルタとスラバヤの間の幹線輸送網 ASEAN最大の消費市場を攻める  沸き上がる内需をものにしようと、日系メーカーが大攻 勢を掛けている。
成功の鍵は販売ネットワークの確立だが、 インドネシアには全土をカバーできる大手物流企業は存在 しない。
荷主が自らエリアごとの現地物流企業をまとめ上げ、 オペレーションを管理するのは負担が重い。
日系物流企業 が有力なパートナー候補になる。
       (石鍋 圭) インドネシア日本通運の 小野耕司氏 中村雅之社長 第 5 部 インドネシア──沸き上がる内需 ジャカルタ デンパサール ニューギニア島 スラウェシ島 ティモール島 スマトラ島 カリマンタン島 ジャワ島 バリ島 シンガポール マレーシア ブルネイ バンドン スラマヤ メダン スマラン 37  MAY 2013 げるのが我々の役目だ」と認識している。
日系物流業が続々と参入  近鉄エクスプレス(KWE)は一一年九月に倉 庫会社「近鉄ロジスティクス・インドネシア」を 設立。
昨年十二月からプロガドゥン地区で約二六 〇〇?の新倉庫の営業を開始した。
 現地では以前から「KWEインドネシア」がフ ォワーディング事業を行っているが、この三年ほ どは主力の航空貨物が伸び悩んでいた。
海上貨物 は好調に推移しているものの、売り上げの絶対額 は小さい。
ニーズの旺盛な国内物流に参入するこ とで、インドネシア事業の強化を図る狙いだ。
 両現地法人の指揮を執る池内正悟社長は「KW Eは航空貨物偏重というイメージがあるが、実は グローバルでトータル一〇〇万?近い倉庫を運営 し、様々な種類の荷物も扱っている。
インドネシ アでは参入が遅れたが、国内倉庫ナンバー1にな るつもりで取り組む」と語る。
 山九も今年十二 月に新倉庫を稼働 させる。
同社はこ れまでプラントの 据付などの機工事 業を切り口に、そ こから派生する物 流を取り込んでき た。
しかし、プラ ントの開発ラッシ ュは永久には続か ない。
新たな柱と して消費財物流へ を構築し、つないだ各都市を面でカバーする体制 を整える」と展望を明かす。
 これを実現するため、倉庫拠点や配送網の構築 に力を入れる。
倉庫拠点への投資では従来とは違 った戦略が求められる。
これまでの国内物流の取 り扱いは部品などの生産財が中心だったため、郊 外の工業団地内に拠点を設けることが多かった。
しかし、川下への配送に踏み込むとなれば拠点は 消費地に近いエリアに構えるのがセオリーだ。
 末端配送では現地物流会社の選定がポイントと なる。
中村社長は「重要エリアでは自社配送を志 向しているが、すべてを賄うのはコスト的にも時 間的にも現実的ではない。
実力を備えた物流企業 を選び抜き、競争力のある物流サービスを作り上 の取り組みは不可欠と判断し、倉庫を先行投資し た。
 別の狙いもある。
山九インドネシアの山田順三 GMは「近年の3PL案件のビッドでは、国ごと や機能ごとではなく、グローバルレベルでの対応 を求められる。
成長著しいインドネシアの内販に 対応できなければ、それだけでビッドから外され てしまう。
山九のグローバル戦略上からも、ここ に拠点を構えることに価値がある」と説明する。
 投資を活発化させているのは日系だけではな い。
DHLエクスプレス・インドネシアは昨年九月、 二五万ドルを投じて「ジョグジャカルタ・サービ スセンター」を開設した。
さらに、今後三年を掛 けて国内拠点二五ケ所の処理能力を拡大させる方 針を打ち出している。
 同社はジャカルタやスラバヤなどの主要空港を 中心に豊富なインフラを構え、一日に八〇便の航 空輸送を行っている。
エクスプレス事業の収益ベ ースでは、ライバルのインテグレーターに大きく水 をあけて首位に立っていると見られる。
今回の投 資で、その基盤をさらに強固にする構えだ。
 同社のアーマッド・モハマド・マネージングディ レクターは「消費力の向上とともに、取扱貨物も 順調に増えている。
特に輸入の伸びが顕著だ。
今 後もインドネシアに強くコミットしていく」と語る。
 また国内ロジスティクス事業を担当するDHL サプライチェーンも、インドネシア事業に約五〇億 円を投下し、倉庫や車両の拡充を図る計画を発表 している。
既に西ジャワ州のチマンギスには一万 七〇〇〇?の倉庫を新設している。
日系物流企業 とは正面からぶつかる領域だ。
内需をめぐる激し い争いが、今始まろうとしている。
KWEインドネシアの 池内正悟社長 DHLエクスプレス・インドネ シアのアーマッド・モハマド・ マネージングディレクター (上)生理用品や紙おむつは日系メー カーの独壇場 (左)マンダムのサチェットタイプの 整髪料。
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