2013年6月号
特集
特集
セブン−イレブンの物流 解説 「単品管理」のロジスティクス
JUNE 2013 16
特集
サプライチェーンの覇権を握る
セブン─イレブン・ジャパンはプライベートブラ
ンド(PB)「セブンプレミアム」の年間売上高を
二〇一五年度に一兆円に拡大する計画だ。
一二年 度実績の四九〇〇億円を三年で二倍以上にする。
品目数は一二年度の約一七〇〇から二四〇〇まで 増やす。
同社の総品目数は二八〇〇程度。
店全体 が同社のオリジナル商品で埋め尽くされることに なる。
しかも、セブンプレミアムの生産を請け負うのは、 いずれもトップクラスのナショナルブランド(NB) メーカーだ。
食品や雑貨品の消費量は人口が増え ない限り一定だ。
PBがシェアを伸ばせば、それ だけNBが売れなくなる。
そのためコカ・コーラ やネスレ、P&Gなど欧米のトップメーカーがPB 生産に本格的に手を染めることはない。
日本のNBメーカーも相手がセブン─イレブン以 外であれば、そこまで協力することはない。
実際、 イオングループはPB「トップバリュ」の多くで自 ら生産活動に入り込み、商品ラベルに製造者を記 載しないというスタンスを取っている。
トップバリュの一二年度の年間売上高は約七〇 〇〇億円でセブンプレミアムをはるかに上回って いる。
ただし、トップバリュの総品目数は約六〇 〇〇あり、一アイテム当たりの売上高は一・二億 円程度にすぎない。
これに対してセブンプレミア ムは二・八八億円で倍以上。
一五年に一兆円とい う計画を達成すれば、これが四・一六億円まで増 える。
一アイテムで一〇億円以上を売り上げてい るPBも既に八五品目あるという。
PBの競争力は一アイテム当たりの売上高が鍵 「単品管理」のロジスティクス セブン-イレブン・ジャパンの一人勝ちが鮮明 になってきた。
従来の利便性に加え、価格や価 値の訴求に成功したことで小売市場を制覇し、 強力なPBでサプライチェーンを支配した。
「単品 管理」の徹底と統制の効いたロジスティクスがそ の原動力となっている。
17 JUNE 2013 き上げた需給調整能力と、細部まで統制の効いた ロジスティクスがあるからだ。
創業以来、店頭における発注精度の向上に取り 組んできた。
現場ではスーパーバイザーと店舗オ ーナーがルーティンワークとしてSKUレベルの分 析を繰り返し、チェーン本部ではそれを支える情 報システムと物流の整備を継続的に進めている。
その結果、世界にも類のない高性能のサプライチ ェーンが出来上がった。
その吸引力にNBメーカーまでが飲み込まれよ うとしている。
セブン─イレブンのSCMはアウト ソーシングの活用を一つの特徴としている。
店舗 運営はフランチャイジー、商流は卸、物流は3P Lを、それぞれ推奨企業に指定してオペレーショ ンを委託している。
弁当や惣菜などの日配品の生 産は協力工場に任せている。
そこに消費財のメー カーまでが加わった格好だ。
独自のアウトソーシング戦略 その物流アウトソーシングを見る限り、セブン─ イレブンのサプライチェーンに編入されたパートナ ーは、同社の完全なコントロール下に置かれるこ とになる。
専用センターの運営と配送を委託され た3PLの荷主は直接的にはそのエリアのベンダ ーやメーカーだ。
セブン─イレブンと金銭上の取引 はない。
それでも業者の選択や具体的な業務指示 は全てセブン─イレブンから発せられる。
その要求 に応えることが取引継続の条件になる。
配送車に使用するタイヤ一つに至るまで、セ ブン─イレブンによって購入先が“推奨”される。
推奨という言葉が使われているのは法律的に強制 ができないためで、実際には逆らえない。
3PL になる。
「一アイテム一億円に満たないPBは利 益が出ない」と拓殖大学の根本重之教授は言う。
生産効率が悪い上、在庫管理や販売管理の固定費 負担が重くなるからだ。
逆に一アイテム当たりの 売上規模が大きくなると、PBの収益性は加速度 的に向上する。
それを原資に値下げすれば競争力 が一層強化される。
原材料費に充当してNB以上の品質を誇る高級 PBを開発することもできる。
セブン─イレブンは 二〇一〇年にNBよりも販売価格が高いPB「セ ブンゴールド」の展開も開始している。
一二年度 時点の品目数は十一。
これを一五年には三〇〇ま で増やす計画だ。
バイイングパワーでイオンに劣り、独自の製造 技術を持つわけでもない同社がNBを凌ぐPBを 開発できるのは、「単品管理」の徹底によって磨 の運営コストは利益を含めて全て丸裸にされる。
安定した仕事ではあっても美味しい商売にはなり 得ない。
セブン─イレブンの仕事で得たノウハウを、 ほかのコンビニに横展開することも許されない。
推奨企業に指定されている中堅3PLの役員は 「小売りチェーンごとに協力物流会社の系列化が 進んでいるので、我々としても相手を選ぶ必要が ある。
しかし、将来性を考えれば、セブン以上に 有望な相手はいない。
要求されるレベルは驚くほ ど厳しいが、セブンに付いていくしかない」と覚 悟を決めている。
本特集では二〇〇九年まで同社の物流部に在籍 し、この三月に「セブン─イレブンの『物流』研究」 (商業界)を上梓した経営コンサルタントの信田洋 二Believe─UP代表に、サプライチェーン、 オペレーション、情報システム、物流コストとい う四つの切り口からセブン-イレブンのロジスティ クスを解説いただいた(第1部〜第4部)。
さらにセブン─イレブン・ジャパン元常務で長年 同社の情報システム開発の推進役を務めてきた碓 井誠オピニオン代表には、セブン─イレブンが開発 したコンビニという業態の現在の競争力と今後の 可能性についての解説をお願いした(第5部)。
それを読めば分かる通り、セブン─イレブンのロ ジスティクス戦略やそこで利用されている要素技 術に驚くような秘密が隠されているわけではない。
ただし、同社は理詰めで考え抜いた仮説を実行し、 その結果を検証して次の仮説を導くというシンプル なサイクルを、全社が一丸となって飽きずに繰り返 すことができる。
アウトソーシングをフルに活用し ながら、運営の主導権は手放さない。
取り組みの 徹底度に普通の会社との違いがある。
(大矢昌浩) 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 5 4 3 2 1 0 (単位:億円) 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 11 年度 12 年度 13 年度 14 年度 (計画) (計画) 15 年度 (計画) アイテム数(左軸) 売上高(左軸) 1アイテム当たり 平均売上高(右軸) セブンプレミアムの売上計画
一二年 度実績の四九〇〇億円を三年で二倍以上にする。
品目数は一二年度の約一七〇〇から二四〇〇まで 増やす。
同社の総品目数は二八〇〇程度。
店全体 が同社のオリジナル商品で埋め尽くされることに なる。
しかも、セブンプレミアムの生産を請け負うのは、 いずれもトップクラスのナショナルブランド(NB) メーカーだ。
食品や雑貨品の消費量は人口が増え ない限り一定だ。
PBがシェアを伸ばせば、それ だけNBが売れなくなる。
そのためコカ・コーラ やネスレ、P&Gなど欧米のトップメーカーがPB 生産に本格的に手を染めることはない。
日本のNBメーカーも相手がセブン─イレブン以 外であれば、そこまで協力することはない。
実際、 イオングループはPB「トップバリュ」の多くで自 ら生産活動に入り込み、商品ラベルに製造者を記 載しないというスタンスを取っている。
トップバリュの一二年度の年間売上高は約七〇 〇〇億円でセブンプレミアムをはるかに上回って いる。
ただし、トップバリュの総品目数は約六〇 〇〇あり、一アイテム当たりの売上高は一・二億 円程度にすぎない。
これに対してセブンプレミア ムは二・八八億円で倍以上。
一五年に一兆円とい う計画を達成すれば、これが四・一六億円まで増 える。
一アイテムで一〇億円以上を売り上げてい るPBも既に八五品目あるという。
PBの競争力は一アイテム当たりの売上高が鍵 「単品管理」のロジスティクス セブン-イレブン・ジャパンの一人勝ちが鮮明 になってきた。
従来の利便性に加え、価格や価 値の訴求に成功したことで小売市場を制覇し、 強力なPBでサプライチェーンを支配した。
「単品 管理」の徹底と統制の効いたロジスティクスがそ の原動力となっている。
17 JUNE 2013 き上げた需給調整能力と、細部まで統制の効いた ロジスティクスがあるからだ。
創業以来、店頭における発注精度の向上に取り 組んできた。
現場ではスーパーバイザーと店舗オ ーナーがルーティンワークとしてSKUレベルの分 析を繰り返し、チェーン本部ではそれを支える情 報システムと物流の整備を継続的に進めている。
その結果、世界にも類のない高性能のサプライチ ェーンが出来上がった。
その吸引力にNBメーカーまでが飲み込まれよ うとしている。
セブン─イレブンのSCMはアウト ソーシングの活用を一つの特徴としている。
店舗 運営はフランチャイジー、商流は卸、物流は3P Lを、それぞれ推奨企業に指定してオペレーショ ンを委託している。
弁当や惣菜などの日配品の生 産は協力工場に任せている。
そこに消費財のメー カーまでが加わった格好だ。
独自のアウトソーシング戦略 その物流アウトソーシングを見る限り、セブン─ イレブンのサプライチェーンに編入されたパートナ ーは、同社の完全なコントロール下に置かれるこ とになる。
専用センターの運営と配送を委託され た3PLの荷主は直接的にはそのエリアのベンダ ーやメーカーだ。
セブン─イレブンと金銭上の取引 はない。
それでも業者の選択や具体的な業務指示 は全てセブン─イレブンから発せられる。
その要求 に応えることが取引継続の条件になる。
配送車に使用するタイヤ一つに至るまで、セ ブン─イレブンによって購入先が“推奨”される。
推奨という言葉が使われているのは法律的に強制 ができないためで、実際には逆らえない。
3PL になる。
「一アイテム一億円に満たないPBは利 益が出ない」と拓殖大学の根本重之教授は言う。
生産効率が悪い上、在庫管理や販売管理の固定費 負担が重くなるからだ。
逆に一アイテム当たりの 売上規模が大きくなると、PBの収益性は加速度 的に向上する。
それを原資に値下げすれば競争力 が一層強化される。
原材料費に充当してNB以上の品質を誇る高級 PBを開発することもできる。
セブン─イレブンは 二〇一〇年にNBよりも販売価格が高いPB「セ ブンゴールド」の展開も開始している。
一二年度 時点の品目数は十一。
これを一五年には三〇〇ま で増やす計画だ。
バイイングパワーでイオンに劣り、独自の製造 技術を持つわけでもない同社がNBを凌ぐPBを 開発できるのは、「単品管理」の徹底によって磨 の運営コストは利益を含めて全て丸裸にされる。
安定した仕事ではあっても美味しい商売にはなり 得ない。
セブン─イレブンの仕事で得たノウハウを、 ほかのコンビニに横展開することも許されない。
推奨企業に指定されている中堅3PLの役員は 「小売りチェーンごとに協力物流会社の系列化が 進んでいるので、我々としても相手を選ぶ必要が ある。
しかし、将来性を考えれば、セブン以上に 有望な相手はいない。
要求されるレベルは驚くほ ど厳しいが、セブンに付いていくしかない」と覚 悟を決めている。
本特集では二〇〇九年まで同社の物流部に在籍 し、この三月に「セブン─イレブンの『物流』研究」 (商業界)を上梓した経営コンサルタントの信田洋 二Believe─UP代表に、サプライチェーン、 オペレーション、情報システム、物流コストとい う四つの切り口からセブン-イレブンのロジスティ クスを解説いただいた(第1部〜第4部)。
さらにセブン─イレブン・ジャパン元常務で長年 同社の情報システム開発の推進役を務めてきた碓 井誠オピニオン代表には、セブン─イレブンが開発 したコンビニという業態の現在の競争力と今後の 可能性についての解説をお願いした(第5部)。
それを読めば分かる通り、セブン─イレブンのロ ジスティクス戦略やそこで利用されている要素技 術に驚くような秘密が隠されているわけではない。
ただし、同社は理詰めで考え抜いた仮説を実行し、 その結果を検証して次の仮説を導くというシンプル なサイクルを、全社が一丸となって飽きずに繰り返 すことができる。
アウトソーシングをフルに活用し ながら、運営の主導権は手放さない。
取り組みの 徹底度に普通の会社との違いがある。
(大矢昌浩) 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 5 4 3 2 1 0 (単位:億円) 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 11 年度 12 年度 13 年度 14 年度 (計画) (計画) 15 年度 (計画) アイテム数(左軸) 売上高(左軸) 1アイテム当たり 平均売上高(右軸) セブンプレミアムの売上計画
