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JUNE 2013 22
通過型センターのオペレーション
基本的にセブン─イレブンの配送センターは、商
品の管理温度帯別に設置される。 温度帯の区分は
四つ。 フローズン(マイナス二〇℃)、チルド(五℃)、
米飯(二〇℃)、常温である。
また配送センターは、センター内に在庫を保管
する「在庫型センター」と、在庫を持たずに入荷
した商品の仕分けおよび店舗への配送のみを行う
「通過型センター」の二つのタイプに分かれる。 販
売可能期間の長いフローズンと常温は主に在庫型、
米飯、チルドのデイリー商品は通過型となっている。
それぞれの配送センターのオペレーションには、
物流業務を効率的かつスピーディに遂行し、店舗
への納品をスムーズに行うための多様な仕組みが
導入されている。 その詳細を以下に解説しよう。
デイリー品の配送センターは通過型で、店別仕
分けが済んだ状態で各ベンダーから商品が入荷さ
れるため、庫内作業はそれを店別にまとめるだけ
である。
ただし、牛乳・乳飲料に関しては各ベンダーか
ら総量を入荷して、店別仕分けを配送センター内
で行っている。 これは本特集一部で解説した通り、
共同配送化の最大の難関だった牛乳・乳飲料メー
カーを巻き込むために必要な施策であった。
コンビニ店舗は「年中無休」であり、スーパー
等が休みの日には通常以上に客数が増える。 とこ
ろが当初は、年末年始や旧盆期間に牛乳・乳飲料
の納品を受けられない状態が続いた。 牛乳・乳飲
料のメーカー特約店が休業してしまうためである。
しかも、特約店の営業日は地区ごとに異なって
いるため、地区によって店舗の納品の取り扱いに
格差が生じていた。 すなわち全ての店舗に同じサ
ービスを提供するというセブン─イレブンの基本方
針を守ることができずにいたのである。
特約店の休業日にはメーカーがベンダー業務を
代行するという案も検討されたが、メーカーには
特約店保護の観点から小売りと直接結び付くこと
に戸惑いがあった。 とはいえ、休日にも牛乳など
を購入したいという消費者ニーズを無視するわけ
にもいかない。
意見の調整には時間を要したものの最終的には
全てのメーカーが休日の出荷を了承した。 ただし、
メーカーには店別の仕分け機能がない。 そこでセ
ブン─イレブンのチルド配送センターで店別仕分け
を行うことになったのである。 牛乳・乳飲料のほ
かにも、地域密着型の小規模なベンダーが多い豆
腐や納豆、漬物などについてもチルド配送センタ
ーで店別仕分けを行っているケースもある。
チルド配送センターにおける牛乳・乳飲料の店
別仕分けは、入荷した順にすぐに作業を処理する
ために「種まき式」で行っている。 店舗の注文締
め時間は十一時。 牛乳メーカーから配送センター
への納品は一四時以降。 それを商品ごとに運んで、
配送コースに合わせて店舗別に仕切った棚を回り、
各店舗の注文数を投入していく。
コンビニで取り扱う牛乳・乳飲料には一リット
ルパックのほかに、「チコブリック」と呼ばれる
小型サイズの商品が多数あり、プリンやヨーグル
トなどのカップ類も含めるとアイテム数(SKU)
はかなりの数に上る。 牛乳の配達は翌日の二時〜
五時に行われるため、二二時までには仕分けを終
えなければならない。
熟練者でなくても素早くミスなく仕分け作業が
オペレーションの構築と運用
セブン─イレブンの物流インフラは4つの温度帯
別に構築されている。 その拠点配置、在庫コント
ロール、庫内作業のフロー、配送方法とも温度帯
ごとに異なっている。 各商品の物流特性と顧客ニ
ーズ、販売戦略に応じたオペレーションの改善が
日々進められている。
23 JUNE 2013
特集
行われる。 午後には店舗納品の出荷があるためで
ある。 ほとんどの配送センターが入庫バースと出
庫バースを分けていない。 つまり入出庫を同じバ
ースで処理することになるため、二四時間を有効
に活用してバースの混雑を避けている。
午前中にメーカーから納品された商品は直ちに
棚に格納する。 可能であればケース商品をピース
にばらす小分け作業も午前中に行ってしまう。 そ
うすることで、十一時二四分に発注データ(仕分
できるように、セブン─イレブンではかなり早い段
階で「デジタル・ピッキング・システム(DPS)」
を導入している。 また車両への積み込みは、各ル
ートの最終店舗から順に処理する。 納品時の荷卸
し時間を短縮するための仕組みだが、これも全て
システムによってコントロールされている。
在庫型センターのオペレーション
「非デイリー」と呼ばれる常温品、フローズン品
の配送センターは、ほぼ全てが在庫型である。 当
然ながら店別仕分けも全て配送センターの作業員
が行う。 さらにはメーカーに対する在庫発注も基
本的にはセンターの作業員が担当している。 その
オペレーションを以下に見ていこう。
セブン─イレブンに限らず、コンビニでは基本的
に火曜日が新商品の発売日となっている。 それに
合わせてメーカーはメディアに広告を打ち、店頭
で販促活動を展開する。 発売初日は店舗からの発
注も集中することになるため、事前準備が必要に
なる。
セブンイレブンの商品部と営業部、配送センター、
そしてメーカーならびにベンダーの各担当者が協
議を行い、それぞれのアイテムについて配送セン
ターに置く在庫量を決める。 店舗からの納品希望
数を予測し、それを完納できる量を確保する。
そのほかの既存商品については、メーカーの配
送効率を考慮したロットで在庫の補充発注をかけ
る。 ただし、配送センターの在庫キャパシティに
は制約があるため、原則的にはセンターの要望し
た数量通りに納品してもらえるように、メーカー
ないしベンダーに依頼している。
非デイリー品の在庫納品は原則として午前中に
けデータ)を受信して、すぐに店別の仕分け作業
に入ることができる。
店別の仕分けにはデイリー品の牛乳と同様にD
PSを利用している。 ただし、こちらは「摘み取
り式」だ。 DPSの表示器に従って棚から商品を
ピッキングする。 その作業を効率化する上での最
大のポイントは作業員の移動距離をいかに短くす
るかということだろう。 そのために棚の配置や商
品のロケーションを毎週の商品改廃に合わせて徹
底的に行っている。
通常、新商品や新たに取り扱いを開始した商品
の初週は非常に発注数が多くなる。 それだけピッ
キング回数が多いということである。 しかし二週
目以降は商品によっては格段に発注数が落ちる。
つまりピッキング回数が減る。 そのような各商品
のピッキングの頻度をロケーションに反映させて作
業動線を極力短くしている。 作業時間が短縮され
て生産性が上がるだけでなく、作業精度の向上に
も効果がある。
出荷するロットによって作業スペースを明確に
分けている点も非デイリー品の配送センターの特
徴の一つだ。 同じ菓子でもスナックのようにケー
ス単位で動かさないと効率が落ちるものもあれば、
ガムのようにインナーカートン(内箱)単位で仕
分けるもの、珍味などピース単位で仕分けるもの
がある。 そこでケース単位、内箱単位、ピース単
位の三つに仕分けエリアを分けている。 それを最
終的に出荷バースで店別にまとめる。
ピッキングが済んだケースや折り畳み式コンテナ
(オリコン)の出荷バースまでの搬送には、コンベ
ヤなどのマテハン機器を導入しているセンターが
多い。 新たにセンターを構築する際にマテハン投
図1 庫内オペレーション
デイリー商品
デジタル表示機
商品A
商品C
商品A
店舗
1-1
店舗
1-2
出荷口
非デイリー商品
店舗
1-1
店舗
2-1
出荷口出荷口コンベア
歩行
店舗
1-2
店舗
2-2
商品B
商品D
出荷口
店舗
1-1
歩行
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資は大きな負担になる。 しかし、初期投資の抑制
を重視する余り、ランニングコストの増加を招く
ことは避けなければならない。 仕分け作業員の人
件費などの変動費がいずれ、マテハンを導入した
場合の固定費を上回ってしまうことになる。 その
ため機械化できる部分は、できる限り機械化する
方針を採っている。
配送コースの作成
セブン─イレブンの店舗納品の最大の特徴は「事
後検品」であろう。 一部の高額商品や予約商材な
どを除いて、配送員の立ち会い検品は行っていな
い。 納品後に店舗スタッフが商品を棚に陳列する
時点でスキャン検品を行う。
納品した商品に汚損や毀損があった場合の店舗
からの返品に関してのみ、返品伝票に基づき配送
員立ち会いの下で検品を実施する。 これは現行の
オペレーションでは共同配送に乗っていないたばこ、
雑誌、山崎製パンの商品についても同じである。
この事後検品によって配送員は荷降ろし後すぐ
に次の店舗に向かうことができる。 各店舗に約束
している定時納品を順守できるのである。 仕分け
精度の向上をはじめとする物流品質改善の積み重
ねによって立ち会い検品の排除が可能になった。
しかし、まだノー検品は実現していない。 現状
の納品精度(ミス率)はデイリー品で〇・〇一五%、
非デイリーで〇・〇〇三%程度であり、目標とす
る〇・〇〇〇一%(一〇〇万分の一)には達して
いない。
納品の予定時刻を順守するために、配送コース
の作成には事前に試走などを重ねて、細心の注意
を払っている。 各店舗の物量や店舗間の移動距離、
曜日や日付(五・十日、祝日、給料日など)に
よる道路状況の変化などを考慮するのはもちろん、
できる限り右折進入しなくて良いコースを選んで
いる。 そのため配送コースの多くは地図上を時計
回りするかたちとなっている。
右折進入の回避には二つの意味がある。 交通事
故の削減と遅延の回避である。 セブン─イレブンの
配送車は、ほぼ全車両が詳細に規格を定めた「シ
ステム車」で、荷台の側面にはロゴマークが大き
く貼られている。 絶えず消費者から監視されてい
るわけである。 事故を起こしたり、渋滞を発生さ
せればその直接的な被害だけでなく、ブランドイ
メージまで大きく悪化してしまう。
セブン─イレブンのシステム車には無線機能を備
えた車載端末とドライブレコーダーが搭載されて
いる。 配送車両が店舗に到着し、後部のドアが開
いた時点で店舗到着を知らせる信号が無線機経由
で配送センターに伝送される。
この動態管理機能は平時もさることながら、災
害時や悪天候時、連休などによる渋滞発生時にも
その効力を発揮し、センターから配送車両に対し
てう回路の指示や配送員から物流部に対する配送
状況報告にも利用される。
蓄積した配送実績データは運行の安全と配送コ
ースの改善に役立てている。 例えば、初店の到着
時刻は予定時刻に対して余裕があるにも関わらず
最終店舗の納品が遅れがちなコースは、どうして
も後半は「焦った運転」になりやすい。 交通事故
のリスクに加え、納品予定時間に合わせて準備を
進めている店舗に対しても迷惑を掛けることになる。
早急にコースを見直す必要がある。
安全管理面では、スピード、アクセルやブレー
キの踏み方、エンジン回転数などから、各配送員
の運転を評価すると同時に、その心理を読み取り
配送コースや店舗との相性まで配慮して、各配送
員と配送コースとのひも付けを行っている。
デイリー品の配送オペレーション
デイリー品の配送は、都心部と地方では多少形
図2 セブン-イレブン配送の種類
米飯 20℃
(1日4 回)
チルド -5℃
(1日3 回)
常温
(週7 回)
フローズン -20℃
(週3〜7 回)
雑誌配送センター(週6)
たばこ配送センター(週3)
山崎製パン配送センター(週7)
セブン-イレブン店舗
各社の自社配送
(共同配送対象外)
1
3
2
4
5
●ソフトドリンク、加工食品
●インスタントラーメン
●雑貨類
●アイスクリーム
●冷凍食品
●ロックアイス
等
●調理パン
●サラダ、惣菜、麺類
●牛乳・乳飲料
等
等
●弁当
●おにぎり
●焼きたてパン
等
25 JUNE 2013
特集
態が異なっている。 都心部では、「チルド」と「米
飯」をそれぞれ別の配送車両で納品している。 一
方、首都圏の郊外や地方には荷台に間仕切りを入
れて二つの温度帯を管理できる車両を投入し、「チ
ルド米飯混載」で配送を行っている。
物量の多い都心部では「チルド」と「米飯」を
単体で配送した方が効率は良い。 しかし、物量の
比較的少ないエリアは混載によって納品回数を削
減した方が、配送効率だけでなく、店舗オペレー
ションにとってもプラスになるという判断だ。 こ
のため都心部の「チルド」は一日三回配送、「米
飯」は米飯三回+焼き立てパン一回の一日四回配
送。 地方は「チルド」、「米飯」ともに一日四回配
送となる。
どちらのパターンも店舗への納品時刻は同一基
準であるため、配送サービスに差がつかないよう
にしているが、地方と都心部の運用をこのように
分けることが、特に地方におけるセンターの安定
運営に役立っている。
常温品の配送オペレーション
常温商品の配送は、第一部で述べた通り、毎日
配送のソフトドリンクとビールに、「菓子」と「加
工食品+雑貨」を一日置きに交互に混載すること
で、物量の平準化および重量と容積のバランスの
最適化を図っている。
その店舗納品にはカゴ台車は使っていない。 ピ
ース商品がピッキングされたオリコンとケース商品
の手積み・手降ろしである。 カゴ台車の利用はか
なり以前から検討はされているが、積載率の低下
とそれに伴う配送費の高騰が懸念され、今のとこ
ろ導入が見送られている。
しかし、配送員の人手不足や高齢化が目立って
きた昨今、作業負担を軽減する必要性は増加して
いる。 カゴ台車の導入に伴う積載率の低下を、積
み降ろし作業の効率化による配送効率の改善など
でカバーするかたちで、近い将来、納品形態は変
更されることになるかもしれない。
各店舗への納品は一日一回だが、車両は一日二
回転させる。 前半は一七時〜二〇時、後半は二二
時〜深夜一時が納品時間である。 二〇時〜二二
時は夜間の来客ピークとなるため納品を避けている。
日中の納品をしないのも、道路渋滞の問題に加え
て、店舗オペレーションの高度化を進める狙いが
あるからだ。
店頭での品出し作業を客数の少ない深夜を中心
に処理すれば日中の作業負担が軽減される。 また
セブン─イレブンは現在、なるべく多くの店舗スタ
ッフで発注作業を分担して、アイテムごとの発注
精度を高めるという営業政策を進めている。 いわ
ゆる「単品管理」の思想だが、常温品の品出しを
深夜に行うことで、その時間帯に勤務するパート
タイマーにも発注を担当させようという狙いがある。
フローズン品の配送オペレーション
フローズン品の配送は近年「保冷ボックス」を
導入したことで、その体制が大きく変化した。 そ
れまでは納品時に溶解を確かめるため配送員の立
ち会い検品が必要だった。 保冷ボックスの導入で
溶解の恐れがなくなったことからデイリー品など
と同様の「事後検品」が可能になった。
一店舗当たりの納品に必要な時間が短縮された
ことで配送店舗数は大きく拡大した。 配送員を二
交代制にして一日に車両を四回転させることがで
きるようになり、配送コストの大幅な削減が実現
した。 さらに冷凍保管設備のコスト負担も軽減さ
れた。
しかし、フローズンはどうしても夏場のアイス
クリームに主眼を置いた配送になる。 そのために
季節によって大きな物量の格差が発生する。 夏場
は毎日納品しなければならないが、冬場は週三回
の納品で十分だ。 夏場のピーク時の配送や作業ス
タッフの確保、閑散期となる冬場の業務の割り振
りなど、配送センターにとっては頭の痛い問題が
多い。
近年は、フライヤー(揚げ物)の原材料やセブ
ンプレミアムの冷凍食品など、新しいタイプのフ
ローズン品の販売が伸びており、冬場でも物量を
確保できるようになりつつあるが、季節波動が解
消されたわけではない。 (信田洋二)
積載率を重視して現状ではカゴ台車を使っていない。
作業負荷の軽減は課題だ
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