ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年6号
メディア批評
改憲論者さえ邪道と断ずる96条改正案自民党の「壊憲」推進にメディアの対応は?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 JUNE 2013  64  カイケンには「改憲」と「壊憲」があ る。
安倍自民党が維新などを道連れに96 条 改正によってやろうとしているのは後者だと、 慶大教授の小林節が怒っている。
 小林は護憲論者ではなく、れっきとした 改憲論者。
四月九日付の『毎日新聞』夕刊 で紹介されているように「改憲派の理論的 支柱として古くから自民党の勉強会の指南 役を務め、テレビの討論番組でも保守派の 論客として紹介されて」きた人である。
 その小林が五月四日付の『朝日新聞』で は「 96 条から改正」というのは、改憲への「裏 口入学」で邪道だ、と憤慨している。
 つまり、安倍自民党は、かつての「改憲」 指南役の小林を置き去りにするほどに「壊憲」 になってしまっているのである。
 『毎日新聞』での小林発言を引く。
 「権力者も人間、神様じゃない。
堕落し、 時のムードに乗っかって勝手なことをやり始 める恐れは常にある。
その歯止めになるの が憲法。
つまり国民が権力者を縛るための 道具なんだよ。
それが立憲主義、近代国家 の原則。
だからこそモノの弾みのような多 数決で変えられないよう、 96 条であえてが っちり固めているんだ。
それなのに‥‥」  『毎日』の記者はその後に「静かな大学研 究室で、小林さんの頭から今にも湯気が噴 き出る音が聞こえそうだ」と情景描写を入れる。
 そして、小林発言を続ける。
 「縛られた当事者が『やりたいことができ ないから』と改正ルールの緩和を言い出すな んて本末転倒、憲法の本質を無視した暴挙 だよ。
近代国家の否定だ。
9条でも何でも 自民党が思い通りに改憲したいなら、国民 が納得する改正案を示して選挙に勝ちゃい いんだ。
それが正道というものでしょう」  「邪道」のタカ派は日本国憲法は世界一改 正が難しいなどと喧伝するが、アメリカは上 下各院の三分の二以上の賛成と四分の三以 上の州議会の承認が必要で、改正手続きは 日本よりも厳しい。
小林によれば、それで も日本国憲法ができた以降で六回も改正し ているという。
要するに安倍自民党は国民 の理解を得る自信がないから、改憲のハー ドルを下げたいというわけである。
これこ そ邪道のタカ派の考えそうな姑息なやり方で、 なぜ、そうなるかを小林は世襲議員が多く なったことに求める。
 昨春、自民党が公表した改憲案を小林は 「問題だらけ」と断罪し、たとえば国旗・国 歌を3条に定めているが、国民的合意がな いのに「憲法に書けば勝ち」というのは「な んじら国民に憲法で教えを授ける」という「上 から目線」で、それは「祖父や父の代から 地域の殿さまのように扱われてきた世襲議員」 が多いからこんなものになると手厳しい。
 「憲法を憲法でなくす」 96 条改正を邪道 とする小林は、いま、壊憲派から批判され、 二年前に自民党を含む超党派議員が 96 条改 正を目指す議員連盟を発足させた時、講演 を頼まれたが、  「僕は改正反対ですよ」  と言ったら、その話は立ち消えになり、以来、 その種の自民党の集まりには呼ばれなくな ったという。
改憲ならぬ壊憲派の頭目が石 原慎太郎で、石原が共同代表の維新と一緒 に安倍自民党は「裏口入学」を画策している。
それがいかに異常なことかを指摘する小林は、 壊憲派にとって目ざわりでしようがないの だろう。
 最近、「改憲派メディアからの取材も激減 した」と小林は言っているが、ということ は 96 条改正賛成の『読売』や『産経』は「壊 憲」になったということである。
 「私の知る限り、先進国で憲法改正をしや すくするために改正手続きを変えた国はない」 と小林は嘆いている。
「異常」や「邪道」が 多数となってしまっている現状にメディアは どう対応するのか? 改憲論者さえ邪道と断ずる 96 条改正案 自民党の「壊憲」推進にメディアの対応は?

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