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JULY 2013 28
ケーススタディ
昨年度は三九四〇件の要望に対応
生活協同組合連合会コープネット事業連合(コ
ープネット)は、関東甲信越の六つの会員生協(コ
ープみらい、いばらぎコープ、とちぎコープ、コ
ープぐんま、コープながの、コープにいがた)と
その子会社で構成する事業グループだ。 商品の共
同企画、共同仕入れ、物流施設の共同利用等を
行っている。
二〇一三年三月期の会員生協の総事業高は四九
三〇億円で、コープネットから会員生協への出荷
高は三三八五億円。 売り上げの約七割を「コープ
デリ宅配」事業が占めている。 毎週一回、同じ曜
日・時間帯に会員生協の配達員が各家庭に商品を
届け、翌週分の注文書を回収する。
その時に組合員の声を拾う。 「お届け明細書兼
請求書」に組合員が意見や要望を記入する「声の
ポスト」というコーナーを設けているほか、配達
員に配布している「観たこと・聴いたことカード」
で現場の情報を吸い上げている。 問い合わせのコ
ールセンターも沖縄に置いている。 宅配事業に関
するものだけで年間八万件近いコメントが集まる。
さらに、上部組織の日本生協連が運営する「ク
イックプロ」と呼ぶデータベースで、全国の生協
と問い合わせ情報を共有化している。 コープ商品
やNB商品、物流事故に対する苦情等をインター
ネット上で閲覧
できる。 コープ
ネットを含めて
現在三五生協が
同システムを利
用している。
こうして把握した組合員の声を商品企画やサー
ビス向上に役立てている。 昨年度、コープネット
では三九四〇件の要望に対応した。 例えばこんな
声があった。 「生理用品は『目隠し包装でのお届け』
とカタログに書かれているのに、包装の袋が薄い
ため商品が丸見えの状態です。 配慮して下さい」。
しかし、外から全く中身が分からなくしてしま
うこともできない。 生協の宅配事業には、近所同
士でグループを作って共同購入する利用法がある。
まとめて届いた商品をグループ内で分けるのに、
全く中身が見えないと結局、袋を開けなければな
らなくなってしまう。 そこで従来は目隠し包装に
灰色で半透明のビニール袋を使っていた。 その色
を濃くして、ぎりぎり中身が分かるレベルに調整
した。
一方、「書籍も目隠し包装してほしい」との声
があったので、これにも同じビニール袋を使うこ
とにした。 そのために物流センターの書籍の保管
ロケーションを見直した。 目隠し包装した書籍は、
ピッキングの際に中身が分からないのでミスを起
こしやすい。 書籍をアイテムごとに離して保管す
ることで、これに対応した。
昨年十一月には配達員が納品時にペットボトル
のキャップを回収してリサイクルする取り組みを
開始した(コープながの・コープにいがた除く)。
これまで組合員の要望に応じて、ポリ袋・プラス
チック製品、カタログ類、飲料紙パック、食品ト
レー、卵パック、アルミ缶と回収サービスの対象
を拡大してきた。 そこにペットボトルのキャップ
を加えた。
こうした細かな仕組みの修正に常に取り組んで
きた。 宅配便では実現できないサービスが生協の
配達員に「観たこと聴いたことカード」
──コープネット事業連合
配達員に最前線のニーズを収集する役割を持たせて
いる。 そこから吸い上げた情報を元に、不要品の回収
や目隠し包装など宅配便では対応できないサービスを実
現してきた。 今年6月には物流センターの運営をカスタ
マイズして、配達後の賞味期限が2日しかない冷蔵品の
取り扱いを開始した。 (大矢昌浩)
下野司コープデリ宅配
事業本部物流担当部長
29 JULY 2013
特集
武器になっている。 コープネットの下野司コープ
デリ宅配事業本部物流担当部長は「我々も一部の
ギフト品などは宅配会社も利用しているが、末端
の配達は組合員との大切な接点であり、生協にと
っての生命線」と言う。
仕組みの高度化に長い時間を掛けてきた。 それ
でも改善のネタが尽きることはない。 とりわけ二
〇一一年の東日本大震災後には組合員からの問い
合わせが急増した。 欠品や遅配が多発したからだ。
大量の欠品や遅配を組合員に正確に連絡する仕組
みが十分ではなかった。
下野担当部長は「それまでは大量欠品は発生さ
せないという前提に立っていた。 そのために先の
震災では、組合員からおしかりを受けてしまった。
BCP(事業継続計画)の重要性を改めて認識さ
せられた」と言う。
そこで昨年七月から、「商品の欠品・遅配等に
関するお詫びとお知らせ」の配布を開始した。 物
流センターの仕分け実績情報に基づき、欠品や遅
配が発生した場合にお知らせを印刷するシステム
を構築した。 それを「お届け明細書兼請求書」と
一緒に届けるようにした。
組合員の声をベースに業態革新
今年六月、コープデリ宅配はコープみらいがカ
バーする東京・千葉・埼玉を対象エリアに、配達
日を含めて賞味期限が二日しかない商品の取り扱
いを開始した。 食材を下調理して献立に合わせて
一式揃えた食材セットがその中心だ。 「生協の宅
配で他社のようにメニュー、レシピ付の食材セッ
トを扱ってほしい」という組合員の声に応えた。
これを実現するには、冷蔵商品の物流体制を大
きく変更する必要があった。 コープデリ宅配は、
カテゴリー別に設置した計一五カ所のコープネット
の物流センターで商品を小分けして、計一二〇カ
所の会員生協の宅配センターに配送、約四〇〇〇
台の車両で一都七県の約一六〇万人の組合員に配
達する体制を取っている。
各家庭への納品は一週間に一回なので、配達エ
リアを月曜〜金曜の五つに分けて、基本的には毎
日同じタイムスケジュールで各拠点と配達業務を
回している。 通常の冷蔵品は朝八時までに物流セ
ンターに商品が入荷されるため、仕分け作業は朝
九時からがメーンになる。 それに対して賞味期限
が二日の冷蔵品は製造日の一四時までに入荷し、
その日のうちに仕分けを済ませなくてはならない。
そこで各センターの作業ラインの空き時間を調整し、
夕方から始まる新たな勤務シフトを設定した。
現在、各会員組合の企画商品はそれぞれ年間三
〇〇〇アイテム近くにも達している。 アイテム数
は年々増加する傾向にある。 これに対応するため
に物流センターではオペレーションを見直してアイ
テムフリー化も進めている。
週五日毎日、弁当を配達する「コープデリの夕
食宅配」も二〇一〇年一〇月から地域限定で開始
した。 高齢者や一人暮らし世帯を中心とする組合
員のニーズに応えたものだ。 しかし、コープデリ
宅配は曜日によって配達が固定化されたルート配
達。 毎日配達する弁当配達とは同期が取れない。
さらに会員生協の一部の店舗ではネットスーパ
ーも開始している。 その配達も既存の宅配インフ
ラとは相いれない。 多様化の進むチャネルに物流
面でどう対応し、それを統合するか。 物流企画部
門に課せられた大きなテーマとなっている。
商品供給イメージフロー
取引先コープネット物流センター会員生協
グロサリーセンター
1,410.8 億円
集品 1,165.9 億円
別積 200.3 億円
パン 41.9 億円
要冷センター
1,625.3 億円
冷凍 962.7 億円
冷蔵 662.6 億円
青果センター
供給高比
約9%
供給高比
約6%
供給高比
約46%
供給高比
約39%
324.9 億円
集品 295.5 億円
別積 29.4 億円
組合員
宅配事業物流センター施設
拠点配置図
15施設
小山物流センター
新潟物流センター
(新潟青果集品センター)
塩尻要冷集品センター
(塩尻青果集品センター)
石岡青果集品センター
川口青果集品センター
川島青果集品センター
柏青果集品センター
印西冷凍センター
東金要冷集品センター
コープネット事業連合資料より
野田グロサリー集品センター
城グロサリー集品センター
坂之下要冷集品センター
須田グロサリー集品センター
桶川グロサリー集品センター
桶川要冷集品センター
製造・物流拠点
宅配センター直納品・
スクロール・カタログ・ギフトなど
宅配センター
※物流区分別の供給高は2012 年度受注実績ベースの参考値
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