2013年7月号
特集
特集
第4部 ケーススタディ 専任部署を新設して1年でミス半減──JFE物流
JULY 2013 36
C S/Q A 部の
香月秀彦部長は「運
んでいるのが重量物
のため、多少の汚
れや傷には不感症に
なっていた部分があ
ったかもしれない。
じゃんじゃんクレームが寄せ られていたというわけではないが、お客様にご迷 惑をお掛けしていた」と振り返る。
同社では鉄鋼製品の物流の安全・品質に関する トラブルの中でも、配送先や配送すべき商品、個 数を間違える「誤納入」、「商品落下」、取り扱い のミスで一度に多くの商品を傷付ける「大量不適 合」の三つを最優先課題と位置付け、その全てを 撲滅することを目標に掲げた「CS/QAトリプ ルゼロ」活動を開始した。
三つのトラブルの中でも特に防止へ力を注いで いるのが誤納入だ。
CS/QA部が中心となって 過去に起こった誤納入の要因を分析した結果、運 転手の勘違い、配送先を指示する際の間違い、倉 庫での商品引当ミスの三つに分類することができた。
この結果を踏まえ、JFE物流グループ一体と なって改善策を練り上げた。
運転手の勘違いや配 送先の指示ミスを繰り返さないために、営業所か らトラックで出発する前に、ドライバーと営業所 の担当者が納入先の会社名、住所を点呼し合って うろ覚えを解消するなどのダブルチェックを強化 している。
引当ミス対策としては、JFE物流グループで 商品出荷時のバーコードによる最終照合の拡大に 取り組んでいる。
既に物流現場で在庫管理のツー ルとして広く使われているバーコードだが、鉄鋼 誤納入、商品落下、傷付けを解消へ JFE物流の小俣一夫社長は、二〇一一年四 月に親会社のJFEスチールから物流子会社トッ プに赴任した。
着任早々、看過できない問題を目 の当たりにした。
親会社が主力とする鉄鋼製品で、 届け先を間違ったり、トラックの荷台から落とし たり、クレーン作業の不手際で表面に傷を付けて しまったりといったミスが頻発していた。
改善活 動には取り組んでいるものの、ミスの発生件数が 減っていなかった。
JFEスチール時代には東日本製鉄所長を務め るなど、製品やサービスの品質を高めることがい かに重要かを現場で肌身に染みて感じてきただけに、 この事態に強い危機感を覚えた。
「これまで日本は高級鋼で勝負してきたが、海 外メーカーも最新設備を稼働させて力を付けてい る。
日本のメーカーが差別化できる商品は今やそ う多くない。
我々が勝負できるのは品質、サービ スだ。
このような大競争時代に品質やデリバリー のトラブルを起こすことは自らの仕事をなくす行 為だと認識してほしい」。
全国の各事業所を回り、従業員を前にCS(顧 客満足)・QA(品質保証)の重要性について自 ら講話した。
会社のためという「内向き」ではな く顧客のためという「外向き」思考を徹底するこ となど、従業員に意識の刷新とトラブルゼロへの 協力を求めた。
一一年の一〇月には、本社に専任部署「CS/ QA部」を新設。
全国の事業所に置かれているC S/QAの担当者と連携し、施策を末端まで浸透 させる司令塔の役割を担わせた。
専任部署を新設して1年でミス半減 ──JFE物流 主力の鉄鋼製品で物流品質の改善活動が停滞して いた。
危機感を覚えた経営トップが自ら先頭に立ち、 2011 年に専任部署を新設。
3つのKPI を設定してミス 撲滅を目指す「CS / QA トリプルゼロ」活動を進めて いる。
物流現場のクレームやトラブルの情報を遅滞な く本社に上げる体制も確立した。
(藤原秀行) 香月秀彦CS/QA部長 ケーススタディ 37 JULY 2013 全社的取り組みで誤納入三分の一 全社的に「CS/QA」への取り組みを強化す る前は、取引先からのクレームが荷主のJFEス チールやJFE商事へ先に伝わり、肝心のJFE 物流やグループ企業の担当者の把握が遅れるとい うことが起こっていた。
CS/QA部発足後は、グループ企業を含め、 物流現場でトラブルが起こればすみやかにJFE 物流へ情報を上げるよう徹底。
そうした事態は解 消された。
取引先の信頼を損ないかねない事態を 早急に察知し、迅速に対応するよう努めている。
また、社長や担当役員、グループ企業の幹部ら が集まって毎月一回開催している全社CSR会議 に、一一年度から「トリプルゼロ」にかかわるト ラブルがあった場合、担当者から報告させるよう にしている。
幹部も交えて全社的に情報を共有す ることで、現場の緊張感を高め、各部署で対策を 素早く講じられるようにするのが狙いだ。
トラブ ルから六カ月後には再発防止がきちんと図られて いるかフォローもしている。
安全や物流品質向上へ従業員の意識を高める新 たな試みにも着手している。
その一環が一一年一 〇月に始まった「MVP─Q表彰制度」だ。
個人 やチームで地道に取り組んでいる業務改善活動の うち、全社的に模範となるものを毎月選んで表彰、 社内に周知している。
一例を挙げると、東北事業所では、薄板コイル を出荷する際、梱包紙の破れや製品の折れ曲がり が頻繁に起き、さびの原因になっていることが判 明した。
このため、JFEスチールや顧客企業と 協力して、薄板コイルの仕様を折れ曲がりにくい 製品は形状や長さ、厚さがまちまちなことなどが 原因で、バーコードを製品に貼り付けるのが難し いものが多い。
そうした製品は担当者が二人がか りで出荷先などを確認し合い、引当ミスを防いで いるが、人手を要するのがネックだ。
香月部長は「まだバーコード活用が進んでいな い商品の一部については一三年度中に技術的な問 題を解消し、バーコードによる最終照合を可能に していきたい」と説明する。
併せて、JFEスチールが〇九年八月に稼働し たウェブによる鉄鋼商品の納入指示受付システム の利用を、顧客に働き掛けている。
電話やファク スによる受付では連絡を受けた担当者が内容を聞 き間違えたり、JFE物流の仕様書に転記する際 に書き誤ったりすることが起きていた。
同システ ムを使うことでこうした初歩的なミスを一掃した いと考えている。
ものに変えたり、梱包紙を見直したりした結果、 折れ曲がりはほぼ解消、梱包紙の破れも発生率が 半減したという。
東北事業所が主体的に改善への 取り組みを進めた点などを評価した。
さらに、今年一月には「CS/QAポイント制度」 を開始した。
全国の各事業所やグループ会社など を対象とし、配送先間違いといった事故が一カ月 間ゼロであったり、「MVP─Q」で役員や社長か ら表彰されたりするごとに一定のポイントを付与。
ポイントがある程度貯まれば、対象区分の従業員 が表彰金などのメリットを享受できる仕組みだ。
逆に事故を起こしてしまった場合はポイントが 減らされるほか、過去に各事業所間で情報を共有 して再発防止を誓ったはずの事故を再び起こして しまった場合は減点幅が拡大。
さらに、誤納入、 商品落下、大量不適合のいずれかを犯した時は貯 めていたポイントが一気にゼロとなる。
「トリプル ゼロ」実現のためのインセンティブを設定し、従 業員の意欲を高める狙いだ。
こうした改善努力を地道に積み上げてきた結果、 一二年度のトラブルは前年度の半分程度の水準に 減少。
特に誤納入は三分の一程度まで大きく減ら すことができた。
香月部長は「クレームがあった から直すというのではなく、お客様からクレーム が寄せられる前に、責任を持って自発的に改善に 取り組んでいる」と強調する。
同社は一三年度の課題として、バーコード適用 拡大による手作業縮小、CS/QAポイント導入 に伴うトラブル情報や優れた対策の水平展開など を挙げる。
そうした情報をデータベース化して従 業員が自由に業務改善へ活かせるようにし、今後 ともあくまで「トリプルゼロ」を目指す構えだ。
就任後に事業所で物流品質 向上や安全確保について講 話する小俣一夫社長 薄板コイルに貼られているバー コードで出荷の最終照合をする 従業員 顧客に利用を働き掛けて いるウェブ納入指示受付 システム 特集
じゃんじゃんクレームが寄せ られていたというわけではないが、お客様にご迷 惑をお掛けしていた」と振り返る。
同社では鉄鋼製品の物流の安全・品質に関する トラブルの中でも、配送先や配送すべき商品、個 数を間違える「誤納入」、「商品落下」、取り扱い のミスで一度に多くの商品を傷付ける「大量不適 合」の三つを最優先課題と位置付け、その全てを 撲滅することを目標に掲げた「CS/QAトリプ ルゼロ」活動を開始した。
三つのトラブルの中でも特に防止へ力を注いで いるのが誤納入だ。
CS/QA部が中心となって 過去に起こった誤納入の要因を分析した結果、運 転手の勘違い、配送先を指示する際の間違い、倉 庫での商品引当ミスの三つに分類することができた。
この結果を踏まえ、JFE物流グループ一体と なって改善策を練り上げた。
運転手の勘違いや配 送先の指示ミスを繰り返さないために、営業所か らトラックで出発する前に、ドライバーと営業所 の担当者が納入先の会社名、住所を点呼し合って うろ覚えを解消するなどのダブルチェックを強化 している。
引当ミス対策としては、JFE物流グループで 商品出荷時のバーコードによる最終照合の拡大に 取り組んでいる。
既に物流現場で在庫管理のツー ルとして広く使われているバーコードだが、鉄鋼 誤納入、商品落下、傷付けを解消へ JFE物流の小俣一夫社長は、二〇一一年四 月に親会社のJFEスチールから物流子会社トッ プに赴任した。
着任早々、看過できない問題を目 の当たりにした。
親会社が主力とする鉄鋼製品で、 届け先を間違ったり、トラックの荷台から落とし たり、クレーン作業の不手際で表面に傷を付けて しまったりといったミスが頻発していた。
改善活 動には取り組んでいるものの、ミスの発生件数が 減っていなかった。
JFEスチール時代には東日本製鉄所長を務め るなど、製品やサービスの品質を高めることがい かに重要かを現場で肌身に染みて感じてきただけに、 この事態に強い危機感を覚えた。
「これまで日本は高級鋼で勝負してきたが、海 外メーカーも最新設備を稼働させて力を付けてい る。
日本のメーカーが差別化できる商品は今やそ う多くない。
我々が勝負できるのは品質、サービ スだ。
このような大競争時代に品質やデリバリー のトラブルを起こすことは自らの仕事をなくす行 為だと認識してほしい」。
全国の各事業所を回り、従業員を前にCS(顧 客満足)・QA(品質保証)の重要性について自 ら講話した。
会社のためという「内向き」ではな く顧客のためという「外向き」思考を徹底するこ となど、従業員に意識の刷新とトラブルゼロへの 協力を求めた。
一一年の一〇月には、本社に専任部署「CS/ QA部」を新設。
全国の事業所に置かれているC S/QAの担当者と連携し、施策を末端まで浸透 させる司令塔の役割を担わせた。
専任部署を新設して1年でミス半減 ──JFE物流 主力の鉄鋼製品で物流品質の改善活動が停滞して いた。
危機感を覚えた経営トップが自ら先頭に立ち、 2011 年に専任部署を新設。
3つのKPI を設定してミス 撲滅を目指す「CS / QA トリプルゼロ」活動を進めて いる。
物流現場のクレームやトラブルの情報を遅滞な く本社に上げる体制も確立した。
(藤原秀行) 香月秀彦CS/QA部長 ケーススタディ 37 JULY 2013 全社的取り組みで誤納入三分の一 全社的に「CS/QA」への取り組みを強化す る前は、取引先からのクレームが荷主のJFEス チールやJFE商事へ先に伝わり、肝心のJFE 物流やグループ企業の担当者の把握が遅れるとい うことが起こっていた。
CS/QA部発足後は、グループ企業を含め、 物流現場でトラブルが起こればすみやかにJFE 物流へ情報を上げるよう徹底。
そうした事態は解 消された。
取引先の信頼を損ないかねない事態を 早急に察知し、迅速に対応するよう努めている。
また、社長や担当役員、グループ企業の幹部ら が集まって毎月一回開催している全社CSR会議 に、一一年度から「トリプルゼロ」にかかわるト ラブルがあった場合、担当者から報告させるよう にしている。
幹部も交えて全社的に情報を共有す ることで、現場の緊張感を高め、各部署で対策を 素早く講じられるようにするのが狙いだ。
トラブ ルから六カ月後には再発防止がきちんと図られて いるかフォローもしている。
安全や物流品質向上へ従業員の意識を高める新 たな試みにも着手している。
その一環が一一年一 〇月に始まった「MVP─Q表彰制度」だ。
個人 やチームで地道に取り組んでいる業務改善活動の うち、全社的に模範となるものを毎月選んで表彰、 社内に周知している。
一例を挙げると、東北事業所では、薄板コイル を出荷する際、梱包紙の破れや製品の折れ曲がり が頻繁に起き、さびの原因になっていることが判 明した。
このため、JFEスチールや顧客企業と 協力して、薄板コイルの仕様を折れ曲がりにくい 製品は形状や長さ、厚さがまちまちなことなどが 原因で、バーコードを製品に貼り付けるのが難し いものが多い。
そうした製品は担当者が二人がか りで出荷先などを確認し合い、引当ミスを防いで いるが、人手を要するのがネックだ。
香月部長は「まだバーコード活用が進んでいな い商品の一部については一三年度中に技術的な問 題を解消し、バーコードによる最終照合を可能に していきたい」と説明する。
併せて、JFEスチールが〇九年八月に稼働し たウェブによる鉄鋼商品の納入指示受付システム の利用を、顧客に働き掛けている。
電話やファク スによる受付では連絡を受けた担当者が内容を聞 き間違えたり、JFE物流の仕様書に転記する際 に書き誤ったりすることが起きていた。
同システ ムを使うことでこうした初歩的なミスを一掃した いと考えている。
ものに変えたり、梱包紙を見直したりした結果、 折れ曲がりはほぼ解消、梱包紙の破れも発生率が 半減したという。
東北事業所が主体的に改善への 取り組みを進めた点などを評価した。
さらに、今年一月には「CS/QAポイント制度」 を開始した。
全国の各事業所やグループ会社など を対象とし、配送先間違いといった事故が一カ月 間ゼロであったり、「MVP─Q」で役員や社長か ら表彰されたりするごとに一定のポイントを付与。
ポイントがある程度貯まれば、対象区分の従業員 が表彰金などのメリットを享受できる仕組みだ。
逆に事故を起こしてしまった場合はポイントが 減らされるほか、過去に各事業所間で情報を共有 して再発防止を誓ったはずの事故を再び起こして しまった場合は減点幅が拡大。
さらに、誤納入、 商品落下、大量不適合のいずれかを犯した時は貯 めていたポイントが一気にゼロとなる。
「トリプル ゼロ」実現のためのインセンティブを設定し、従 業員の意欲を高める狙いだ。
こうした改善努力を地道に積み上げてきた結果、 一二年度のトラブルは前年度の半分程度の水準に 減少。
特に誤納入は三分の一程度まで大きく減ら すことができた。
香月部長は「クレームがあった から直すというのではなく、お客様からクレーム が寄せられる前に、責任を持って自発的に改善に 取り組んでいる」と強調する。
同社は一三年度の課題として、バーコード適用 拡大による手作業縮小、CS/QAポイント導入 に伴うトラブル情報や優れた対策の水平展開など を挙げる。
そうした情報をデータベース化して従 業員が自由に業務改善へ活かせるようにし、今後 ともあくまで「トリプルゼロ」を目指す構えだ。
就任後に事業所で物流品質 向上や安全確保について講 話する小俣一夫社長 薄板コイルに貼られているバー コードで出荷の最終照合をする 従業員 顧客に利用を働き掛けて いるウェブ納入指示受付 システム 特集
