*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
たまに誤解されるのですが、我々イーソーコ・
グループが展開する?物流不動産B i z ?
は、単なる物流施設の仲介事業ではありませ
ん。 ただ要望通りに倉庫を案内するのではな
く、お客の物流拠点戦略を一緒に考え、適切
なソリューションを提案することが肝なんで
す。 今回はそのことを分かりやすく説明した
いと思います。
以前、あるお客から東京の城南地区で
五〇〇坪の倉庫を探してほしいという依頼を
受けました。 荷物は輸入品。 そのお客は大井
などの港で荷揚げした荷物を城南地区の倉庫
で保管し、そこから得意先に配送していまし
た。 既に城南地区に複数の倉庫を構えていま
したが、最近荷物の取扱量が増えてきたので、
新たに倉庫を追加したいという要望でした。
これだけの情報で「はい、そうです
か」と希望通りの倉庫を案内するのは時
期尚早です。 物流不動産B i zでは倉
庫を探し始める前に、まずお客の要望を
?深掘り?することを基本としています。 なぜ
なら、お客の要望には明確な意図がないケース
が圧倒的に多いからです。 「何となく今使って
いる倉庫の近く」、「何となくこれくらいの坪
数」といった具合です。 そうしたあいまいな
要望通りに倉庫を案内しても、その後のお客
の物流にとって最適になる可能性は低い。 本来、
もっとふさわしい倉庫があるはずなんです。
私がそのお客と面談し、なぜ城南地区なの
か理由を聞くと次のような答えが返って来ま
した。 「荷物が輸入品なので、港から倉庫ま
では割高なドレージ料金が掛かる。 それを少
しでも抑えるためには、港近くという立地条
件は外せない。 城南地区で長年ビジネスをし
ているし、これまで借り増してきた倉庫も近
くにある。 社員の通勤なども考えると、今さ
らほかのエリアはあり得ない」
これだけ聞くと妥当に思えますが、実は違
います。 さらに詳しく聞くと、倉庫からの
配送先は埼玉地区が多いことが分かりました。
城南地区からはかなりの距離があるため、高
額な運送コストが掛かっていたんです。 ここ
からが物流不動産Bizの本領発揮です。
さまざまな情報を分析した結果、このお客
の場合は埼玉地区に三〇〇〇坪ほどの大型拠
点を借りて、城南地区の倉庫は全て引き払っ
た方が効率的だという結論に至りました。 つ
まり拠点の集約です。 しかし、唐突に埼玉の
大型物件を薦めても突っぱねられるだけ。 一
つ一つ丁寧に説明をしなければいけません。
まず運送費の問題です。 埼玉に倉庫を移す
ことで、配送先までの距離は短縮され、輸送
費は大きく削減されます。 お客からは当然「港
から倉庫までのドレージ料金が増えるじゃな
いか」という反論がありました。 しかし、ド
レージ料金を抑えるために港近くに拠点を構
えるというのは一昔前の常識です。 今はドレ
ージ単価もかなり下がっているので、港から
コンテナのまま長距離輸送するケースは珍し
くありません。 このお客の場合、ドレージ料
金の増加分よりも倉庫から配送先までの輸送
費の削減分の方がはるかに大きかったんです。
次に賃料。 もちろん賃料相場も埼玉地区の
方が城南地区よりもお得です。 私が提案した
埼玉の拠点は最新鋭の大型倉庫のため、周辺
の物件に比べると賃料は高めでした。 それで
も、城南地区の複数の倉庫の合計賃料より
もかなり落ちました。 集約の面白いところは、
複数倉庫の時の総延べ床面積より、一拠点に
まとめた方が小さい延べ床面積で済むことで
す。 今回の場合も、二割近く総面積が減りま
した。 最新鋭の物件なので作業の効率化も同
時に実現できて一石二鳥です。
こうした利点を順序立てて説明することで、
経営者の理解を得ることができました。 し
かし最後の難関、社員の問題が残っています。
社員にとっては勤務先が変わることになるの
で、強い反発が起き、移転が頓挫することも
予想されました。 しかし幸い、今回のお客は
社員をしっかりとケアしていたので、何の問
題もなく移転することができました。
このように、物流不動産Bizでは、お客
の物流をしっかりと把握して提案することで、
お客が思っていた以上の成果を提供すること
ができるんです。
大谷巌一(おおたに・いわかず)
1957 年生まれ。 高千穂商科
大学卒。 81年東京倉庫運輸入
社。 同社物流部門、不動産部
門を経て2003 年イーソーコ副
社長就任(現職)。 2010年イ
ーソーコドットコム会長に就任。
現在に至る。 著書に『これから
は倉庫で儲ける!! 物流不動
産ビジネスのすすめ』(日刊工
業新聞社)など。
PROFILE
第4回 単なる倉庫仲介では貢献できない
75 JULY 2013
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