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物流指標を読む
第1 回
JULY 2013 76
高速道路のトラック事故が3年ぶりに減少
第55 ●貨物車が第1当事者となった高速事故が前年比3.6%減
●車種別では大型13.3 %減、中型1.3 %減、普通3.4%増
●トラック事業者の努力に加え、高速バスの事故が教訓に
さとう のぶひろ 1964 年
生まれ。 早稲田大学大学院修
了。 89年に日通総合研究所
入社。 現在、経済研究部担当
部長。 「経済と貨物輸送量の見
通し」、「日通総研短観」など
を担当。 貨物輸送の将来展望
に関する著書、講演多数。
ふんどしを締め直す
警察庁交通局「平成二四年中の交通事故の発生
状況」によると、昨年(二〇一二年)一年間におけ
る交通事故の発生件数は六六万五一三八件で、前
年(一一年)より二万六九一八件減少(三・九%
減)した。 発生件数の減少は八年連続であり、ピ
ークであった〇四年(九五万二七〇九件)と比較
して三〇・二%の低下となっている。 また、それ
に伴い死者数や負傷者数もこのところ着実に減少
しており、一二年の死者数は四四一一人(前年比
五・四%減)、また負傷者数は八二万五三九六人
(同三・四%減)とそれぞれ前年水準を下回った。
なお、近年交通事故による死者数が減少してい
る理由として、警察庁は、「シートベルト着用者率
の向上」、「事故直前の車両速度の低下」、「悪質・
危険性の高い事故の減少」、「歩行者の法令順守」
を挙げている。
次に、貨物車が第一当事者となった交通事故の
うち、事業用貨物車によるものは二万三五三九件
で、前年よりも一三二五件減少(五・三%減)し
ている。 事業用貨物車による交通事故発生件数
は、一〇年に七年ぶりの増加に転じたが、一昨年、
昨年と二年連続の減少になった。 事業用貨物車に
よる交通事故の減少数・減少率を車種別に見ると、
大型が四〇七件減(前年比五・一%減)、中型が三
一九件減(同三・五%減)、軽が二三二件減(同
五・四%減)に対し、普通は三六七件減(同一
〇・四%減)と減少率がやや大きい。
また、高速道路における貨物車の交通事故も減
少している。 高速道路における交通事故の全国数
値は一万一二九九件で、前年より四一一件減少し
ているが、貨物車が第一当事者となった交通事故
(注:軽を除く)についても合計で三七三〇件と、
前年比で一三八件減(同三・六%減)となってい
る。 車種別に見ると、大型は一一三八件で同一七
五件減(同十三・三%減)と三年ぶりに減少に転
じ、中型も一〇二六件で同一四件減(同一・三%
減)となった。 一方、普通は一五六六件で同五一
件増加(同三・四%増)している。 なお、高速道
路を利用する頻度は、事業用の方が自家用よりも
圧倒的に多いであろうから、事故の多くが事業用
貨物車によるものと推測される。
高速道路における貨物車の交通事故の減少は、
トラック事業者や業界団体などによる事故撲滅に
向けたたゆまぬ努力の賜物であることは言うまで
もない。 他方で、昨年四月二九日に関越自動車道
において発生した高速ツアーバスの交通事故も少
なからぬ影響を与えたのではなかろうか。 すなわ
ち、事故後、高速バスにかかる安全規制を強化す
る動きが出たことから、それを見たトラック事業
者もふんどしを締め直したと考えられる。
「高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討
会報告書」(二〇一三年四月)によると、例えば、
ワンマン運行の際の一日の乗務距離(上限)は従
来六七〇?であったものが、今年の八月より、夜
間は実車距離四〇〇?まで、昼間は同五〇〇?ま
で短縮される予定となっている。
今のところ、ワンマン運行の際の乗務距離制限
などがトラック事業者に課せられるといった話には
なっておらず、法令違反を行った事業者に対する罰
則規定の強化などにとどまっている。 しかし、万
「平成24年中の交通事故の発生状況」 警察庁交通局
「平成24年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締状況について」 同
77 JULY 2013
かの年齢層に比べて割合がかなり高い(注:全年
齢層における割合は五・四%にすぎない)。
確かに、自動車教習所では、「路上での子供の
飛び出しに注意せよ」と口を酸っぱくして指導し
ている。 一般に、大人よりも子供の方が、注意力
が散漫であると考えられるため、ほかの年齢層よ
りも一時不停止の違反が多いのはさもありなんで
はあるが、他方で、親や学校は子供に、「道路に
出る前には必ず一時停止せよ」といった初歩的な
交通安全教育すらしていないのだろうかという疑
問がわく。
思い当たる節がないわけではない。 筆者は、三
鷹市在住であり、時々、自宅と利用駅(中央線・
武蔵境駅)の間を約二五分掛けて歩くことがある。
そのルートの途中に小学校があるため、通学する小
学生の集団に出くわすこともしばしばであるが、そ
のマナーの悪さにはあきれるばかりだ。 三〜四人で
横列をつくって道路の左側を歩行し、前から人が
来てもよけようともしない。 筆者が小学生の時は、
「車は左、人は右」と教育されたものだ。 そう言え
ば、これは三鷹市や武蔵野市だけの現象なのかどう
か分からないが、老若男女を問わず、道路の左側
を歩いている人がやたらと多い。 何かの本で、「人
は無意識に大切な心臓をかばうため、道路の左側
を歩く習性がある」と読んだことがあるが、日本
では車両が道路の左側を走行するのであるから、歩
行者が右側を歩くことは安全上理にかなっている。
その一方で、道路の右側を通行する自転車も
非常に多い。 以前、本欄でも書いたことがあるが、
三鷹市や武蔵野市では自転車のマナーが非常に悪
い。 歩道を無灯・横列で走行するなどまだ可愛い
方で、おそらく半数以上が一時停止をしていない。
先日、横道から一時停止せずに本道に入ってきた
自転車の側面に、本道を走っていた自転車が突っ
込み、前者がひっくり返ってうめいていているの
を見た。 悪質なケースでは、駅のコンコースを自転
車で通行している者もしばしば見かける(もちろ
ん、自転車の通行は禁止されている)。
前述の高速バスの件のように、自転車がルール
を守らないのであれば、もはや規制を強化するし
かないのではなかろうか。
が一、事業用トラックが過労運転などにより多数
の死者を出すような大きな交通事故を引き起こし
た場合、「トラック運転手にもワンマン運行の際の
乗務距離制限を設けよ」といった世論がわき起こ
らないとも限らない。 仮に、高速バス並みに四〇
〇?までといった制限が課されたならば、中小・
零細事業者の多いトラック業界にとっては死活問
題となる。 トラック事業者は、ふんどしをさらに
きつく締め直す必要がありそうだ。
目に余る自転車のマナー違反
ところで、蛇足ではあるが、「平成二四年中の
交通事故の発生状況」に自転車事故について分析
している興味深い箇所があったので紹介したい。
自転車乗用中(第一・二当事者)の死傷者数は
十二万九〇一四人であったが、そのうち自転車側
に違反があったケースにおける死傷者数は八万二一
九四人と、実に六三・七%を占める。 中でも、安
全不確認 【注1】が三万二七〇人(自転車乗用中
における全死傷者数の二三・五%)、動静不注視
【注2】が一万四三七四人(同十一・一%)、交差
点安全進行義務違反が一万三七五三人(同一〇・
三%)と多い。
また、自転車乗用中の死傷者数を法令違反別・
年齢層別に見ると、十五歳以下の子供については、
違反のある者の割合が七一・八%を占め、ほかの
年齢層に比べて特に高くなっている。 中でも、安全
不確認(十五歳以下の自転車乗用中における全死
傷者数の二八・一%)、交差点安全進行義務違反
(同十一・一%)、一時不停止(同一〇・三%)と
いった違反が多いが、一時不停止については、ほ
【注1】減速や一時停止をしたにもかかわらず、安全確認が不十
分なために相手当事者を見落としたり、その発見が遅れ
たことが事故の決定的原因になった場合の違反
【注2】相手当事者を認識しながら、その危険を軽視・過小評価
して動静を注視しなかったことが事故の決定的原因にな
った場合の違反
高速道路における貨物車交通事故件数推移(各年12 月末)
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
(件)
06
年
07
年
08
年
09
年
10
年
11
年
12
年
1,025 1,188
3,972
3,534
918 1,100
1,626
1,472
1,574
989
1,099
1,515
1,040
1,313
1,566
1,026
1,138
814
925
普通貨物
中型貨物
大型貨物
※07年から中型自動車免許が導入
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