ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年8号
特集
第4部 タイのミルクランは品質勝負に──豊田通商

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2013  28 トヨタとともに成長  豊田通商の物流事業は、トヨタ自動車の海外戦 略をサポートするかたちで発展を遂げてきた。
ト ヨタ系列のサプライヤーが海外展開を加速した一 九九〇年ごろから、日本と米国、欧州、アジアな どを結ぶ「V to V( Vendor to Vendor :部品メ ーカー間の需給・物流管理サービス)」を本格的に 開始した。
 それを皮切りに、九三年にマレーシア、九六年 に中国の天津に物流会社を立ち上げるなど、段階 的に機能とインフラを拡充させてきた。
現在は世 界各地に四一社の物流企業を展開し、V to Vを含 む輸出入業務、構内物流、組付・加工、クロスド ックにミルクラン、小口配送、完成車輸送まで手 掛けている。
 連結従業員数は一万人以上に上る。
倉庫の総延 べ床面積は約八四万?(リース含む)。
運用する トラック台数はミルクラン用が一七九四台(うち 自社車両九二四台)、車両積載車は三四九五台(同 二三二台)。
物流センターの取扱量は月間一万五 〇〇〇FEU、部品・材料の輸送量は月間四万 六〇〇〇FEUに及ぶ。
 「当社の物流事業の歴史の中でエポックメーキン グとなったのが、タイにおける事業展開だ」と豊 田通商の福田幸裕物流事業部事業統括グループグ ループリーダー は振り返る。
二 〇〇一年にタ イのトヨタ自動 車( T M T : Toyota Motor Thailand) か ら大規模なミ ルクランを受 注した。
 翌〇二年に は豊田通商タ イランド( 五 一%)、豊田通 商( 二六%)、 キムラユニテ ィー(二三%) の三社による 共同出資で、タイにおける中核物流会社「TTK ロジスティクス(TTKL)」を設立している。
さ らに昨年十二月、TTKLの輸送機能を分割する かたちで「TTKアジア・トランスポート」を設立。
同社は現在、タイで最大規模の輸送会社とされて いる。
 背景にあるのは〇四年にスタートしたトヨタの 新興国戦略「IMV( Innovative International Multipurpose Vehicle)プロジェクト」だ。
新興 国ごとに異なる多様なニーズを開発に取り込み、 さらにその生産を日本ではなく、新興国同士で相 互補完するというもの。
 市場規模が大きく、自動車部品産業が集積する タイはその一大供給拠点として位置付けられた。
その結果、同国におけるトヨタの生産台数や輸出 量は飛躍的に伸びた。
豊田通商はこの流れを商機 ととらえ、拡大する自動車物流を取り込むために タイ市場への投資を活発に行ってきた。
 とりわけミルクランや完成車物流のルート数や 車両台数が飛躍的に伸びた。
トヨタはタイにおけ タイのミルクランは品質勝負に ──豊田通商  トヨタ自動車の新興国戦略に対応して、タイにおける 物流ネットワークの拡充を進めてきた。
しかし、タイの 自動車産業は今や拡大期から成熟期に移っている。
これ に伴い、物流ニーズも急増する物量への対応から品質向 上にシフトした。
ドライバーの教育施設や新たな輸送会 社を立ち上げ、その期待に応えようとしている。
(石鍋 圭) 福田幸裕物流事業部 事業統括グループ グループリーダー TTKはタイで屈指の輸送力を誇る 第4 部 29  AUGUST 2013 まだまだ十分ではない」と言う。
商社の強みを活かす  その一環で豊田通商は昨年一月、タイのチャチ ェンサオ県に「TTK交通安全教育センター(T PRO)」を開設した。
安全かつスピーディな運転 を実践できるプロドライバーを育成するのが目的だ。
主要協力物流会社の一社であるセンコーが滋賀県 で運営する交通安全教育施設「クレフィール湖東」 をモデルとしており、同社からノウハウ提供を受 けている。
豊田通商グループおよび協力物流企業 の現地ドライバーに日本と同等の実地教育を施す ことで、荷主への貢献につなげる。
 今後、TPROには他企業のドライバーも受け 入れる方針だ。
その上で、国家認定の取得や各研 修プログラムの提供にまで機能を広げ、将来的に はアジア新興国における交通安全施設のベンチマ ーク的存在となることを目標に掲げている。
施設 の運営には当然、コストが掛かる。
それでもドラ イバーの能力アップや荷主へのアピールを考えれ ば必要な投資だと判断している。
 福田グループリーダーは「自動車メーカーのグロ ーバル拠点であるタイで期待される品質を実現で きなければ、他の新興国のビジネスまで失うこと になる。
反対に、タイで期待に応えられれば、他 の新興国での取引拡大や新規顧客の獲得にもつな がる。
当社にとっても大事な局面だ」と言う。
 昨年十二月には同じくセンコーとの共同出資(豊 田通商タイランド五一%、センコー四九%)で「セ ンコーロジスティクス(タイランド)」も立ち上げた。
ネットワークの拡充に加え、センコーと共同でミ ルクランのレベルをさらに引き上げることが主な る部品調達でも、当然、ジャスト・イン・タイム(J IT)を志向している。
ただし、生産規模や契約 条件、サプライヤーの実力、部品工場の集積度な どが障壁となって、日本のようなサプライヤー単 位の高度なJIT物流は困難だ。
 そこで日本国内では展開していないミルクラン を新興国における部品調達手法の柱に位置付けた。
豊田通商をはじめとする物流パートナーには、ト ヨタの現地生産能力の拡大に併せてそのネットワ ークを拡充していくことが求められた。
 しかし、今ではタイの自動車産業も成熟期に差 し掛かっている。
引き続き成長してはいるものの、 インドネシアをはじめとする他の新興国ほどの飛 躍的な伸びは期待できない。
それと同時に、トヨ タの現地生産のレベルが上がり、物流に対しても より高い品質が求められるようになってきた。
 福田グループリーダーは「こうした状況に対応 するためにも、タイにおいては規模を追う施策か ら品質を高める施策へと重点をシフトする必要が 出てきた。
これまでもタイにおけるミルクランの 品質は当社の先進モデルという位置付けだったが、 自動車メーカーの高度化についていくためには、 目的だ。
 タイ以外の新興国での動きも活発だ。
インドネ シアでは、今年三月に稼働したトヨタのカラワン 第二工場における調達物流の大半を受注した。
ト ヨタはインドネシアで複数の物流会社に調達物流 を委託しているとみられるが、今回の受注によっ て豊田通商グループの扱い規模が最も大きくなっ たことがほぼ確実となった。
 爆発的な成長が続く同国では、ネットワークの 拡充と品質の向上を同時に追求している。
現在は 約一五〇社のサプライヤーをミルクランで回り、ト ヨタグループの生産拠点に部品を納めている。
そ の規模をさらに拡大させる。
ミルクランで稼働し ているトラック台数を、現在の約一六〇台から今 年度中に最大一八〇台に、ルート数を一三五本か ら約一五〇本にまで広げる方針だ。
並行して、車 両のスペックアップなども順次実施する。
 昨年六月からはテクノパーク事業も開始し、部 品サプライヤーに土地、工場、事務所などを貸し 出している。
ハードだけではなく、物流や総務、 経理、人事といった業務も一環で支援する。
初期 費用を抑えることができるため、資金力の弱い中 小サプライヤーのインドネシア進出を促進する効果 がある。
現地での部品調達率を引き上げたいトヨ タに貢献することにもなる。
 福田グループリーダーは「当社は物流専業者で はない。
物流機能の提供だけではなく、商流と物 流をセットにしたさまざまなサービスを提供でき ることが特徴であり強みだ。
自動車メーカーのサ プライチェーンはますます複雑化しているが、当 社の強みを活かしながらその拡充・発展に貢献し ていきたい」と語る。
GPS でミルクランの運行管理を徹底 タイのドライバー教育施設「TPRO」 特集 調達物流

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