ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年8号
物流指標を読む
第56回 荷動き指数が2年ぶりのプラス水準へ 「景気動向指数」内閣府「日銀短観」日本銀行「企業物流短期動向調査」日通総合研究所

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む 第1 回 AUGUST 2013  74 荷動き指数が2年ぶりのプラス水準へ 第56 ●13年4〜6月の国内向け出荷量が前期比16ポイント上昇 ●アベノミクス効果で景気底入れ、荷動きの回復にも寄与 ●株価上昇に伴う資産効果も堅調な個人消費を後押し さとう のぶひろ 1964 年 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
中小企業への波及はまだ先か  本欄の過去の原稿を読み返してみたところ、「企 業物流短期動向調査」を頻繁に使用していること に気付いた。
筆者が担当している調査であること から、当然思い入れが強いせいもあるし、また本 調査を世の中に知らしめたいという使命感もあっ て多用している面もある。
また、手前味噌ではあ るが、景気動向等を判断する上で非常に有用なツ ールであることも多用している理由の一つだ。
 大変恐縮であるが、今月号も「企業物流短期動 向調査」(六月調査)の結果をメインに、原稿を書 かせていただくことをお許し願いたい。
 さて、本誌二〇一三年五月号において、「日銀 短観」および「企業物流短期動向調査」(ともに三 月調査)の結果を引用した上で、「日銀短観」に 関しては、「大企業・製造業における一三年度計 画の設備投資額(注:含む土地投資額)は、前年 度比マイナス〇・七%と低調だ。
もっとも、想定 している為替レートは回答企業平均で一ドル=八 五・二二円と、足元に比べてかなりの円高水準で あり、次回調査において設備投資計画が上方修正 される可能性が高い」と書いた。
また、「企業物流 短期動向調査」に関しては、「景気の変動に対し て比較的敏感に反応すると考えられる生産財につ いては、荷動きに大幅な改善が見られる。
その一 方で、機械類については改善の動きが鈍いが、円 安水準が定着し、輸出が回復するとともに設備投 資も持ち直していくにつれ、徐々に上向いていく 可能性が高い」と書き、最後に「次回の六月調査 において、国内向け出荷量『荷動き指数』がさら に上昇し、プラス水準まで浮上するようであれば、 荷動きならびに国内景気の回復を実感できるかも しれない。
従って、『日銀短観』ともども次回調 査結果は要注目である」と締めくくった。
 これまで期待先行の感が強かったアベノミクスで あるが、実体経済においても、夏ごろにはジワリ とその効果が現れてくるのではないかという期待 を込めて、そのように書いたのだが、このたびま とまった両者の六月調査結果を見ると、幸いにも 予感は的中したようだ。
 まず「日銀短観」であるが、想定為替レート は、回答企業平均で一ドル=九一・二〇円と、前 回(三月)調査時点と比較して約六円の円安とな り、また、一三年度計画の設備投資額(大企業・ 製造業)は前年度比六・七%増となっている。
円 安水準の定着により、海外移転を予定していた企 業が日本国内に踏みとどまり、その結果、国内に おける設備投資(注:更新投資が中心)の増加を 計画しているものと考えられる。
もっとも、一二 年度下期の実績値が、前回調査時点における計画 値よりも大幅に下方修正されたため、その反動増 という要素も少なからずあるようだ。
 ちなみに、大企業・製造業における最近の業況 判断DIはプラス四と、前回調査より十二ポイン トの大幅な改善となった。
また、三カ月後の先行 きについてもプラス一〇と、さらなる上昇が見込 まれている。
ただし、中堅企業・製造業における 最近の業況判断DIはマイナス四(注:先行きは マイナス三)、中小企業・製造業における最近の業 況判断DIはマイナス一四(注:同マイナス七)と、 それぞれ改善の動きは続くものの、依然として水 「景気動向指数」内閣府 「日銀短観」日本銀行 「企業物流短期動向調査」日通総合研究所 75  AUGUST 2013 見通しでは、さらに十一ポイント上昇してプラス二 まで浮上する見通しとなっている。
「荷動き指数」 がプラスとなるのは一一年七〜九月実績以来、実 に二年ぶりのことだ。
本調査は、従業員数の多い 製造業・卸売業の事業所を対象としていることか ら、荷動きの面からも、少なくとも大企業におい ては、アベノミクスの効果が波及し始めてきてい るものと見てよいのではないか。
 「荷動き指数」の動向を業種別に見ると、四〜六 月実績において、木材・家具が一〜三月期実績よ りも低下したものの、残り一四業種において改善 の動きが見られた。
ただし、十二業種が引き続き マイナスのままであった。
しかし、七〜九月実績 では、パルプ・紙以外の一四業種において四〜六 月実績を上回り、かつプラスの業種が八業種に増 加する見通しとなっている。
 なお、株価の上昇に伴う資産効果も足元の堅調 な個人消費を後押ししているとみられるが、その 結果、食料品・飲料、木材・家具、消費財卸な どの業種における「荷動き指数」の上昇につなが ったものと推測される。
   株価の変動が調査結果に影響?  さて、図は「景気動向指数(CI:一致指数)」 と「荷動き指数」の推移を示したものだ。
「景気 動向指数」は一二年十一月の一〇〇・六を底に上 昇に転じている。
一方、「荷動き指数」は一三年 一〜三月で底入れした形となっており、両者の間 には若干のタイムラグが認められる。
 「景気動向指数」は前月と比較してどの程度の水 準であるかということを把握するための指数であ って、前年同期の水準との比較を目的とした「荷 動き指数」とは性格が異なるため、横並びで論じ るべきものではないのかもしれないが、いずれに せよ、両者の形状から、一二年一〇〜十二月ない しは一三年一〜三月に景気は底入れしたものと判 断できよう。
 最後に蛇足ではあるが裏話を一つ。
実は、「企 業物流短期動向調査」(六月調査)の一次集計(回 収率:三六・〇%)の時点において、「荷動き指 数」は四〜六月実績がマイナス八、七〜九月見通し がプラス五であった。
しかし、最終集計(同:四 四・六%)の段階では、四〜六月実績がマイナス 九、七〜九月見通しがプラス二に下方修正された。
六月調査においては、五月下旬に調査票を回答者 の元に郵送し、六月の第二週までに回収した分で 一次集計を行い、その後督促を経て、六月の第三 週以降に回収した分を追加して最終集計を行った。
すなわち、第三週以降に回収した回答が、それ以 前に回収した回答に比べてかなり弱気であったと いうことになる。
これは株価の急落と無関係では あるまい。
 日経平均株価は、五月二三日に前日比一一四 三円安の暴落を演じた後、六月十三日には一万二 四一五円八五銭の安値を付け、その後、六月下旬 まで、一万三〇〇〇円を挟んだもみ合いが続いた。
このころから急に「反リフレ派」の勢いが強まり、 「アベノミクスはもう終焉」といったマスコミ記事 が増えていったように思う。
回答者が景気の先行 きに対してやや弱気になり、その結果、「荷動き指 数」は下振れしたのではないだろうか。
「景気も 『気』のうち」なのである。
面下の推移となっており、アベノミクスの効果が中 堅企業・中小企業に波及するまでには至っていな いことが分かる。
 次に、「企業物流短期動向調査」について見る と、一三年四〜六月の国内向け出荷量「荷動き指 数」はマイナス九と、前期(一〜三月)実績より 一六ポイントの大幅な改善となり、また七〜九月 景気動向指数(CI:一致指数)と国内向け出荷量『荷動き指数』の推移 注)荷動き指数は四半期ごとの数値のため、2月、5月、8月、11月の位置にプロットしている。
CI C1 荷動き指数 荷動き指数 110 105 100 95 90 85 40 20 0 -20 -40 -60 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 2009 2010 2011 2012 2013

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